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2022年2月28日 (月)

マラソン界に新星現る

昨日、大阪中心部では大阪マラソンが行われた。新型コロナの影響で2年ぶりの開催。記念すべき第10大会。しかも世界陸上マラソンの代表選考レース。そこに設楽悠太や川内優輝といったメジャー選手が参加する。たまたま我が家の前の通りがコースになっているのだが、きっと沿道は応援の人垣で埋め尽くされるに違いない。外出は控えた方が良いだろうか。

―――と身構えながら朝食に出たのだが、沿道で選手の到着を待つ人は誰ひとりとしていない。左右を見渡しても私だけ。あとはジョギングをする人。犬の散歩をする人。自転車に乗りどこかへ急ぐ人。私にしたところで朝食を済ませての帰途である。時間を間違えたのかと思ったがそうではない。観客より警備・ボランティアの人数が圧倒的に多いという異様な雰囲気の中を、先頭集団が風のように駆け抜けていった。

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昨日は競馬でもマラソンが行われている。阪神9レースの松籟Sは3勝クラスの芝3200m戦。条件戦とはいえ菊花賞3着馬に万葉S好走馬も加わり興味深い一戦となった。勝ったベスビアナイトは前走のオリオンSで5着に敗れている。レース後、騎乗したルメール騎手から「2200mは忙しすぎる」と異例のコメントが出ていた。断っておくが「1200」の誤記ではない。ともかく追走が楽になった今回は3コーナーから内ラチ沿いを縫うように進出。直線でもしっかり伸びて完勝だった。このような長距離の条件戦がなければ、ベスビアナイトはひたすら追走に苦労していたに違いない。

Shorai

一時期は絶滅の危機に瀕した長距離戦だが、最近は増加に転じている。頭数も菊花賞がフルゲートの18頭だったことはともかく、その後も古都S11頭、ステイヤーズS13頭、万葉S13頭、ダイヤモンドS14頭、そして昨日の松籟Sが10頭と、以前のようにレース成立を心配することもなくなった。長距離戦に対する関係者の考えにも変化が見られる。一昨日のサウジアラビア国際競走「レッドシーターフH」におけるステイフーリッシュの勝利などはその象徴であろう。

もともと2000~2400mを主戦場としていたステイフーリッシュだが、矢作調教師は昨年の香港遠征をきっかけに今年は長丁場で勝負することを決めていたという。実際、サウジに選出されなければダイヤモンドSに出走することになっていた。年齢とともに元来のワンペースな脚質がより顕著になったことがその理由だというが、これも父ステイゴールドの良さのひとつ。7歳にして異国の重賞を圧勝したことも含め、ますます父の軌跡をたどっているように思えてならない。

ステイゴールドの母であるゴールデンサッシュの全兄サッカーボーイは、種牡馬としてナリタトップロード、ヒシミラクル、アイポッパーなど長距離得意の産駒を多く輩出した。そんな一族の出自であるステイゴールド自身も天皇賞・春に3回挑戦して②⑤④着の成績を残している。

ステイゴールド最大の長所は、タフなスタミナとベテランになってから発揮される勝負根性。これを受け継いだステイフーリッシュの充実期は、実はこれからなのかもしれない。その答えは次走3月26日のドバイ・ゴールドカップ(3200m)で明らかになる。そしてその先には父が勝てなかった天皇賞・春も見えてきた。競馬のマラソン界にもニューヒーロー誕生の予感が漂っている。

 

 

***** 2022/2/28 *****

 

 

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2022年2月27日 (日)

阪急電車に乗って

梅田から阪神競馬場へ向かうには阪急神戸線に乗って西宮北口で阪急今津線に乗り換えるのが一般的。西宮北口までは10分おきに出発する特急が便利だが、それに乗ると競馬場に着く前に競馬気分が楽しめるのをご存知だろうか。それが阪急ユーザーなら誰もが知る「十三ステークス」だ。

阪急梅田駅には神戸線・宝塚線・京都線の3本が乗り入れているが、それぞれの優等列車が同時に梅田駅を発車する「3線同時発車」の光景が日常的に見られる。いずれの列車も次の停車駅は「十三」。梅田駅を出発する瞬間はいつも「さあ、各車一斉にスタート」という実況の声がどこかから聞こえてくる。十三までの駅間がよりによって2400mなのは、果たして偶然だろうか。

私が乗る神戸線特急・新開地行きが梅田駅の8番枠、もとい8号線から好発を決めて先頭。しかし、ひと呼吸置いて動き始めたはずの宝塚線急行・宝塚行きがそれをあっさりと交わしてハナを奪う。京都線特急・京都河原町行きは最内1号線から痛恨の出遅れ。しかし、二の脚で前を行く2列車に並びかけると、淀川橋梁手前では先頭に立った。しかし、淀川を渡り切ってから神戸線が巻き返す。京都線と宝塚線はずるずると後退。結局、十三駅には神戸線、京都線、宝塚線の順に入線した。

Juso

折しも今日は阪急杯。これは8枠を買えという阪急電鉄からのお告げか。ならばモントライゼで決まり。栗毛のクリノガウディーより、モントライゼの鹿毛の方が阪急の車体の色に似ている。

実際のレースも似たような展開になるにはなったが、枠の色が違っていたようだ。素晴らしいダッシュで先頭に立ったのは1番人気のダイアトニック。それを外からモントライゼが交わしてハナに立つ。さらにヴィジュネルも先頭に並びかけるが、見せ場はそこまで。それを見ながらレースを進めていたダイアトニックが、内ラチとモントライゼとのわずか一頭分の隙間を割って突き抜けて、そのまま先頭ゴールを果たした。

Tonic

ダイアトニックはこれで1400mに限れば(6,1,1,0)。スペシャリストと言っていい。しかし、2月1日付「はざまの距離で」に書いたようにJRAで行われるレース中で3番目に多い距離でありながら、JRAで1400mのGⅠは行われていない。阪急杯は高松宮記念の前哨戦だが、京王杯SCやスワンSのようにマイルGⅠの前哨戦の場合もある。

そもそも1400mという距離のカテゴリはマイルなのか、それともスプリントなのか。昨夜ソングラインが勝った1351ターフスプリントは、その名の通り1351mで「スプリント」とされているが、それから49m伸たらどっちなのか。結局わからない。その答えは高松宮記念でのダイアトニックの走りで教えてもらおう。

 

 

***** 2022/2/27 *****

 

 

 

 

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2022年2月26日 (土)

仁川とスミレ

今日の阪神はリステッドレース二本立て。黒地に黄色の数字のゼッケンが続く。

メインの仁川Sは古馬オープンのダート2000mにフルゲート16頭。人気の中心は白毛馬・ダノンハーロック。1勝クラスから3連勝でオープン入り。前走で連勝は止まったが、それでもソダシの従兄妹となれば簡単には人気は落ちない。

筆者の注目は4歳馬ラーゴム。きさらぎ賞勝ちの実績に加え、3走前のオープン特別もしっかり勝っている。それでも新味を求めてダートに矛先を向けてきた。一昨年のこのレースで2着したクリンチャーも、芝重賞勝ちの実績をかなぐり捨ててのダート初挑戦だった。その後ダート重賞で3勝していることを思えば仁川Sは間違いなくターニングポイントである。芝長距離路線で活躍していたモンテクリスエスが7番人気で豪快に差し切ったこともあった。芝発走の阪神2000mはダート初挑戦の芝馬にも挑戦しやすい。ラーゴムも今日の結果次第では展望が大きく広がる。

Nigawa

しかし勝ったのはデビュー以来ダート一筋の7歳馬グレートタイムだった。母はダート重賞8勝のミラクルレジェンドだからこれくらい走ってもおかしくない。注目のラーゴムは6着。絶好の展開だった割には案外だった。ダノンハーロックはまったく走る気なし。シラユキヒメ一族にはたまにこれがある。ソダシもそうだ。

大阪に来てから電車に乗る機会が激減したが、レース名の「仁川」には週二で来ている。うちの最寄り駅以外では、仁川駅はいちばん利用している駅かもしれない。すっかり時刻表も覚えてしまった。ただし土日ダイヤである。

作家の遠藤周作は青年期にこの地に暮らしていた。「黄色い人」「口笛をふく時」などの作品に仁川の地名が登場する。駅から競馬場への専用地下道ができてからは仁川の街を歩くことも少なくなったが、たまには地上から競馬場に向かうのも悪くない。彼方に広がる宝塚の街並みを眺めながら歩くと、突如として巨大な屋外劇場のような阪神競馬場が姿を現す。春なら桜が、秋には紅葉が美しい。

突然だが「宝塚市の花」をご存じだろうか。答えはスミレ(※昨年「2つ目の市の花としてダリアが加わったが)。それが今日のもうひとつのリステッドレース・すみれSにつながる。

Sumire

競馬ファンならこのレースの怖さをご存じであろう。皐月賞よりはダービーや菊花賞で怖さは増す。2017年のこのレースで1着だったのが再度登場のクリンチャー。半年後の菊花賞で10番人気で2着に突っ込むのだから怖い。その菊花賞の1着はすみれSで3着だったキセキ。それも怖い話だ。ポットポレット、レヴァンジル、ヴェローナシチーくらいまでの名前は忘れないでおこう。

 

 

***** 2022/2/26 *****

 

 

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2022年2月25日 (金)

藤沢和雄調教師の功績

今週末を以て定年引退する藤沢和雄調教師のため、柴山雄一騎手が急遽栗東から美浦に駆け付けたそうだ。同厩舎の金曜調教に乗るためだという。

笠松所属だった柴山騎手がJRAに移籍を果たしたのは2005年のこと。地方騎手がJRAに移籍する先駆けとなった同じ笠松のレジェンド・安藤勝己元騎手の名を挙げたうえで、「安藤さんがJRA騎手になる時に、その道筋を作ってくれたのが藤沢先生」と藤沢調教師への恩を語っていた。

笠松のリーディングとしてその地位を既に確立していた安藤勝己騎手がJRA移籍を真剣に考えたきっかけは、落馬事故での入院中に感じた将来への不安だったという。彼は病院のベッドに寝ころび、天井を見上げながら、残された騎手人生について漠然と考えていた。笠松でエースとしてもてはやされる一方、JRAではあくまでビジターでしかなく、JRAが制度を変更すれば騎乗機会が無くなることも十分考えられる。騎手人生も既に半ばを過ぎている。いつまでも今のように、平日は笠松で乗って土日はJRAで騎乗する毎日が続くとは限らないと思うと、自らのあやふやな立場に不安を感じるのも無理はない。

そんな折、安藤勝己騎手のJRA移籍を真剣に考える人物が現れた。それが誰あろう藤沢和雄調教師だったのである。師は、地方騎手がJRA騎手免許試験を受けることに際して、いかなる欠格事項も存在しないことを徹底的に調べ上げ、病床の安藤勝己騎手にJRA騎手免許試験の受験を強く奨めた。この瞬間、地方所属騎手によるJRA挑戦の扉は開かれたのである。その扉を通って、小牧太、岩田康誠、柴山雄一、内田博幸、そして戸崎圭太といった地方の名手たちも次々とJRAに活躍の場を移した。安藤勝己騎手はたしかにパイオニアとなったが、実は藤沢調教師の果たした役割も大きい。

Ankatsu

地方からではなく、オーストラリアからJRAへの移籍を実現した藤井勘一郎騎手も藤沢調教師に背中を押された一人。2018年、ジョアン・モレイラ騎手の不合格で話題になった騎手試験に唯一合格したのが藤井騎手だった。なんと6回目の挑戦での大願成就である。落ちるたびに藤沢和雄厩舎で調教研修に励み、「とにかく受け続けろ」と藤沢師から叱咤激励されていたという。

Fujii

JRA通算1568勝。重賞126勝というとてつもない記録を生み出す一方で、藤沢和雄師は当時では信じられなかった―――しかし今では当たり前となった競馬場の点景を作り出した、その立役者でもあった。

 

 

***** 2022/2/25 *****

 

 

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2022年2月24日 (木)

人間の思惑

北京五輪が閉幕して4日が経つというのに、フィギュアスケート女子で4位に終わったロシアのワリエワ選手のドーピング疑惑騒動は終息の気配すら見えない。そうこうするうちにロシアの問題はドーピングからウクライナ侵攻にフェーズを移した。ドーピングが政治的に行われたのなら、戦争は究極の政治手段である。ロシアの話をするとたいてい政治に行き着く。

スポーツ選手に対する薬物検査は1986年のグルノーブルの冬季五輪から実施されたが、1930年代の米国では既に競走馬に麻薬や覚せい剤を投与されるケースが問題となっていた。そういう意味では、こと薬物問題に関しては競馬の方が歴史が深い。そもそも「ドーピング」という言葉自体が、競走馬への薬物投与を指す言葉がスポーツ界に転用されて広まったもの。その語源はアフリカの原住民が祭りの景気づけに飲んだ酒「ドップ」に由来する。

それにしても、米国における競走馬への薬物投与への感覚は緩いと言わざるを得ない。なにせウマにバイアグラを投与するお国柄である。昨年のケンタッキーダービーで1位入線を果たしたメディーナスピリットの薬物騒動にしても、失格が確定するまでに9か月もかかった。ラシックスを認める認めないの議論も、未だ出口は見えていない。

ラシックスは東海岸の競馬場ではかつて禁止されていた。だが、そのせいでラシックスを認める西海岸から有力馬が参戦してこない。これは困った。どうしよう。それで仕方なく認可に踏み切ったのが1996年。今では全米のほとんどの競馬場でラシックスの使用が認められている。対象が人間であろうが競走馬であろうが、薬物問題を左右するのは人間の思惑である。

断っておくが私はドーピング推進論者ではないし、ロシアの肩を持つものでもない。誤解のなきよう願いつつ、読み進めていただければありがたい。

そもそも、オリンピックで使用される陸上トラックはその素材にも構造にも時代の最先端技術が駆使されており、それが好記録を生む下地となる。競技者が履くシューズも同様であろう。水泳競技ならスピード社の「レーザーレーサー」を思い出してみるといい。スピードスケートのスケート靴、ノルディックスキーのスキー板やワックスもしかり。そこには莫大なコストと科学技術の粋が惜しみもなく投下され、ありとあらゆるものが徹底的に人工化されている。

だけど、人間の身体に対して人工的に手を加えることは許さない。自然のままで置いておけという。それがアンチドーピングの根本である。だが、果たして実際にそんなことが可能だろうか。

それを可能だと主張するのが、米国一流の「人間中心主義」であろう。人間は他の動植物とは違う特別な存在である。だから人間はダメ。でもウマに薬物を投与することは一向に構わない。そんなものは倫理でも論理でもない。

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古くは東欧諸国が、近年ではロシアや中国がオリンピックで好成績を挙げた。それを助けたのがドーピングとされる。そういう意味でドーピング問題は倫理でも論理でもなく、やはり政治の問題であった。もともと自然とドーピングに明確な境界はない。境界がないところに線を引くのが政治である。ラシックスは去年までNGだったが、いろいろあって今年からOKとなりました。これが政治的でなくて何なのか。

気の毒なのはそんな人間の思惑に振り回されたメディーナスピリットである。人間なら多少なりとも自分の意志に基づいて薬物に手を染める。だが、メディーナスピリットにそれを拒む手立てはなかった。ケンタッキーダービー失格の汚名を着せられたメディーナスピリットは、昨年12月6日の調教後に心臓発作を発症。帰らぬウマとなっている。

 

 

***** 2022/2/24 *****

 

 

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2022年2月23日 (水)

姫路競馬クライマックス

開催期間わずか2か月足らず。この時季のワンシーズンだけ行われる姫路競馬は、明日が早くも今年の最終開催日。今日の兵庫ウインターカップで実質的なクライマックスを迎える。北風が容赦なく吹きつける寒さをものともせず、場内は家族連れや若い人のグループでいっぱい。姫路駅と競馬場とを結ぶ送迎バスは乗り切れない人が出るほど混んでいた。聞けば今日の売得金は10億4534万5300円に達し、姫路競馬のレコードを更新したのこと。ダートグレードが行われない姫路で10億超えは初の出来事。馬券売り場の長蛇の列を久しぶりに見た気がする。

Himeji

兵庫ウインターカップは昨年から姫路に舞台を移した。地方競馬の根幹距離とも言える1400m。姫路移転と同時に全国交流戦となり、今年は5頭の遠征馬が参戦してきた。中でも南関東の4頭はレベルが高い。川崎のベストマッチョはダートグレードでも勝ち負けしているし、浦和のトーセンレビューは昨年のこのレース2着馬。雪辱に燃えている。

しかし勝ったのは南関東の4頭の中でもっとも人気薄の川崎・インペリシャブルだった。馬場の外目から抜け出したベストマッチョのさらに外。スタンドから手を伸ばせば届きそうな大外から豪快に差し切ってみせたのだからひと言強い。

Wintercup

もともと姫路では多くの馬が内ラチ沿いを避ける傾向にあるが、今開催はそれがとりわけ顕著だった。「内ラチ沿い」どころか馬場の中央よりもさらに外を通る馬ばかり。スタンドの座席から観ていると、立ち見客にゼッケンが隠れてしまうこともあった。ミハルカスを破ったシンザンの有馬記念はこんな感じだったかもしれない。距離のロスを承知でも外に出した方が伸びる。10番人気のインペリシャブルを勝利に導いた殊勲の鴨宮祥行騎手は、7週間の姫路開催でその傾向を掴んでいたに違いない。

そんな騎手の好判断に馬も応えた。もともとデビューから4連勝で鎌倉記念を制した素質馬である。さらに黒潮盃では6馬身差の圧勝劇を演じている。その一方で一度リズムを崩すとなかなか立ち直れない。前走は相手の軽い特別戦ながらしんがり負けを喫していた。10番人気も無理はなかろう。

地元馬ではサンロアノークの3着が最高成績。しかしこの馬にしても、4走前までは大井所属だった。そういう意味では5着に食い込んだハナブサに期待を込めたい。昨年は5連勝で一気にA1まで駆け上がりながら、除外で狙ったレースへの出走が叶わず調子を落としてしまった。さらに輸送が苦手でもともと姫路はよくない。しかし来週から長い長い園田開催がスタートする。JRAのダート路線は世代交代の予感が漂うが、兵庫でも若きスターホースが誕生してくれないものか。来年の兵庫ウインターカップではぜひとも南関東馬に雪辱してほしい。

 

 

***** 2022/2/23 *****

 

 

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2022年2月22日 (火)

号外

最近は号外を出す新聞社が少なくなった。以前に比べて大きなニュースが減ったというわけではあるまい。むしろ増えているはず。つまりは新聞の元気がなくなった証。それでも読売新聞は北京五輪期間中、四度の号外を発行した。金メダル3種目に加え、昨日のカーリングの銀。銀でも敢えて発行したのは、たまたま決勝が日曜の午前中だったので、夕刊の代わりとしたのかもしれない。

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号外は突発的な大ニュースをいち早く伝えるために街頭で配られる速報新聞である。第一報を受けてから、原稿の作成、写真の準備などの編集作業と並行して、印刷工場の手配や街頭に立つ配布要員の確保も行う。まさに時間の勝負。もたもたしていたら速報の価値は落ち、ライバル紙にも負けてしまう。それゆえ号外は新聞社の力量を示すバロメーターとかつては言われた。まあ、いかにも昭和の感覚ではあるけれども。

一方で新聞社側からすれば自社広告の側面があることも否定できない。とくに突発的な事件・事故の場合はTV局はニュース素材の準備が間に合わず、とりあえず街頭で号外に群がる人たちを流しがちだ。そこに新聞社の題字が映り込めば一定の広告効果は見込める。

だからと言ってバンバン号外を出すことはしない。さすがに新聞社としての矜持もある。さらにコロナのご時世になってからは、号外を刷っても街頭で配ることが難しくなった。わざわざ密集を作ることは控えなければならない。そこで昨今の号外は新聞販売店が翌朝の朝刊と一緒に配達される。もはや速報としての役目は無いに等しいが、それを言うならネットニュースに既に完敗の状況だ。

4年前の平昌五輪では羽生結弦選手の連覇を報じる号外に群衆が殺到し、警察が出動する騒ぎが起きた。羽生選手のファンの熱意はけた違い。さらに、それを狙って転売ヤーも現れる。金メダルが確定するやいなや、号外が配られそうな場所に出向いて待ち構えているのだから凄い。東京だと新橋SL広場や数寄屋橋交差点が有力地。事前に発表があるわけではないから、数人のチームで行動することもあるとか。速報ツールとしての役目は終えても、コレクターズアイテムとしての価値は失っていない。速さではネットに敵うはずもないが、やはり大判の紙に印刷されたものを手にするとインパクトが違う。

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北京五輪中には将棋の藤井聡太竜王が王将のタイトルを獲得し、史上最年少で五冠を達成したことで街頭で号外が配られた。それを受け取った人から「なんだ、五輪じゃないのか」という声が聞こえたという。たしかに将棋はニュースヴァリューの割に号外の頻度が多い気がしないでもない。快挙の度合いで見ればラヴズオンリーユーのエクリプス賞受賞の方がはるかに大きなニュースであろう。しかし競馬のニュースで号外というのは聞いたことがない。競馬に関わる一人として忸怩たる思いがする。

 

 

***** 2022/2/22 *****

 

 

 

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2022年2月21日 (月)

ヴィルシーナの日

ヴィクトリアマイル連覇の名牝・ヴィルシーナの産駒が昨日の小倉と阪神で出走していた。武庫川Sのディヴィーナは6着。小倉大賞典に挑んだブラヴァスは14着。もちろん両馬とも佐々木主浩氏の所有馬。昨日はたまたま負けてしまったが、ティヴィーナは3勝。ブラヴァスは5勝だから立派。ヴィルシーナの母としての能力の高さも伺い知れる。

そんなヴィルシーナだが3歳シーズンでは桜花賞、オークス、ローズS、秋華賞、エリザベス女王杯と5戦続けて2着の辛酸を舐めている。しかも秋華賞までの4戦の相手はすべてジェンティルドンナだった。最後の秋華賞は頸の上げ下げ。それでもハナ負けである。スノーボード男子ハーフパイプの平野歩夢選手は、ソチ、平昌と2大会続けて銀メダルに敗れた。しかもその相手はいずれも王者ショーン・ホワイト選手。平野選手の2度目のランが驚くほどの低い得点に留まったとき、私はヴィルシーナを思い出していた。

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ヴィルシーナのオーナーは、横浜ベイスターズやマリナーズで活躍した元プロ野球選手の佐々木主浩氏。日米を通じて愛し続けた背番号「22」は、佐々木氏自身が2月22日午後2時22分生まれであることに由来するといわれる。自主トレの開始日や渡米するにも22日を選ぶなど、「2」という数字に徹底的にこだわることで、彼は数々の栄光を手にしてきた。

「それが、愛馬ヴィルシーナの着順にまで影響を及ぼしている」などと揶揄する声も上がったが、「ヴィルシーナ(Verxina)」とは、ロシア語で「頂点」の意。佐々木氏本人が愛馬の2着を望んでいることなど、あろうはずがない。

秋華賞はクラシックレースではないが、ヴィルシーナのように3歳3冠レースですべて2着に敗れた馬は、過去に2頭いる。一頭は牝馬のタカハタ。1952年の皐月賞、ダービー、そして当時は秋に行われていたオークスで、いずれも2着に敗れた。

そして、もう一頭はよく知られているようにカツラシユウホウ。1958年の牡馬クラシックでは、タイセイホープ、ダイゴホマレ、コマヒカリの順に敗れて無冠に終わった。その着差は、それぞれクビ、ハナ、半馬身でしかない。特にダービーでは、直線でダイゴホマレと壮絶な競り合いを演じ、いったんはクビほど前に出ながら、最後の最後に差し返されれるという歴史に残る惜敗だった。

だが、負けた相手には次のレースで必ず雪辱したことはカツラシユウホウの名誉のために特記しておきたい。それでも、いつも別な馬が前にいた。菊花賞のコマヒカリにも、翌年春の天皇賞で先着してみせたのに、勝ちはクビ差でトサオーに譲っている。

このエントリの公開から1時間後には22年2月22日を迎える。人によっては「スーパー猫の日」。だが、「2」という数字が5つ並べば私はヴィルシーナを思い出す。明日は佐々木オーナーの誕生日をお祝いすると同時に、ほんのわずかの差で栄光を逃していった名馬たちに思いを馳せる日としたい。

 

 

***** 2022/2/21 *****

 

 

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2022年2月20日 (日)

スターターの役割

「レェディ……」

スターターの声に合わせて、2人の選手が腰を落としてそれぞれのスタート姿勢に入る。一瞬の静寂。そして号砲。

ちょっと前の話になる。12日に行われた北京五輪スピードスケート男子500mを観ていて、この静寂の“間”がやたらと長く感じられた。それで終盤にフライング判定が続出。実際に動いていたようには見えず、「疑惑の判定」と騒がれているが、“間”が長くなったせいでなんとなく動いているように錯覚することもある。いずれにせよスタートのやり直しを強いられた選手には気の毒だった。

実際には選手がスタートラインで静止したのを確認したのち、1秒から1.5秒の間に引き金を引くという決まりがあるのだそうだ。さらにその僅かな時間の中でも、肉体的・心理的に負担なく滑り出せるタイミングは1.1秒。これは国際スケート連盟が科学的データを基に割り出した値で、「ワンポイントワン」とも呼ばれる理想的な“間”なのだという。

だが、1.1秒を実現するにはあの独特の「レェディ」の声で、2人を速やかに静止させなくてはならない。一方が構えに入るのが遅いと、先に腰を沈めた選手の筋肉に負担が掛かり、集中力は削がれ、結果フライングにも繋がる。

ゆえにスターターには「選手を知ること」が求められる。スタートの姿勢、その前に行う一連の動作、深呼吸の回数など、選手のあらゆる癖を知り、ルーティーンを知り、ベストのタイミングで「レェディ」の声を掛けることが良いスターターの条件ということになる。

これは競馬にも通じる話。競馬のスターターも全頭同時にスタートさせることに全神経を使うが、何せ相手は言葉を解さない馬のこと。口で言って分かってくれる相手ではない。

Starter

したがって、競馬のスターターも一頭一頭の癖を把握し、馬の心理を理解しようと心がけている。レースはそうした不断の努力の集大成。それでも、過剰な手拍子や大歓声がそんな努力を水の泡にしてしまうこともある。スタート直前の一瞬の静寂は、レースの醍醐味のひとつ。そんな刹那を味わうためにも、発走の直前は極力静かに見守りたい。今日のフェブラリーSは各馬横一線。ゲートが心配な人気馬が何頭かいたが、きれいなスタートだった。

 

 

***** 2022/2/20 *****

 

 

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2022年2月19日 (土)

1番人気の呪い

先週行われた共同通信杯でジオクリフが2着に敗れたことで、今年に入ってからJRA重賞での1番人気馬連敗記録は「16」に伸びた。そろそろ勝つ頃合いか。あるいはまだこの流れが続くのか。馬券を買うにあたり、普段はあまり気にしない「人気」が最近は気になって仕方ない。

京都牝馬ステークスは1番人気スカイグルーヴが先に抜け出したロータスランド目掛けて猛然と追い込むも半馬身及ばず、これで連敗記録は「17」に伸びた。

10分後に発走の東京・ダイヤモンドステークスは伏兵グレンガリーの大逃げ。それを離れた4番手から追走したテーオーロイヤルが徐々に差を詰め、直線坂下から満を持して抜け出すと早くも勝負あった。これで4連勝。3分30秒1の勝ち時計は、ダイヤモンドSがこの距離で行われるようになった2004年以降では2番目に早い。負ければ早仕掛けの謗りは免れないタイミングで動きながら、2馬身半の完勝。よほど自信があったのであろう。春天に向けて楽しみな一頭がまた現れたと言って良さそうだ。

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優勝騎手インタビューで菱田騎手は「1番人気のプレッシャーがあった中で馬が良い走りをしてくれてすごくうれしいです」とコメントしたという。

たしかに私が馬券を買った時、1番人気はテーオーロイヤルだった。ついに1番人気の連敗記録はストップである。そう思いつつレース結果を確認したら、なんと2番人気だったはずのレクセランスが票を伸ばし、締切直前で1・2番人気が入れ替わっていた。つまり勝ったテーオーロイヤルは2番人気。1番人気馬の連敗記録は「18」に伸びたことになる。こうなると呪いはなかなか解けない。

こうなると気になるのは明日のフェブラリーSの人気である。前日オッズの単勝1番人気はやはりソダシで4.7倍。だが、馬連のオッズを見ると上位7番目までの組み合わせにソダシは登場しない。ソダシはまず単勝が売れる。チャンピオンズカップもずっと単勝1番人気だったが、直前になってテーオーケインズに譲った。昨今の「1番人気の呪い」も手伝って、明日のフェブラリーSでも同じことが起こる可能性がある。人気で馬券を買う向きには注意された方が良さそうだ。

 

 

***** 2022/2/19 *****

 

 

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2022年2月18日 (金)

あったかいんだからぁ♪

ドクター・コパさんの話題で思い出したことがある。以前、どこかのスポーツ紙でコパさんが「競馬占い」のようなコーナーを執筆されていたのだが、いつだったか「10月生まれ:音楽を聴きながら馬券を買うのが吉」と書かれたことがあった。

私は10月生まれである。とはいえ音楽を聴きながらどうやって馬券を買えば良いのだろう。競馬場の音楽と言えばファンファーレが真っ先に思い浮かぶ。しかし、ファンファーレを聴きながらマークカードを塗っているようでは締切に間に合わない。ひとしきり悩んだ記憶がある。

外ラチの下でカメラを構える日々が過ぎ去り、スタンドから競馬を観るようになってから、競馬場にはBGMが流れていることを知った。京都記念の阪神競馬場でもそう。レースとレースの合間の静寂の中に、天井のスピーカーから音楽が流れていることに気づいた。歌詞のないフルートとピアノのアンサンブル。ほどよく抑制された音量は、馬券検討で疲れた頭に心地良い。それにしてもこの曲名はなんだっけ? 絶対に知っている。えーっと、何か温まる曲だ。この季節にピッタリの。スープがどうしたとかいう……思い出した!

「あったかいんだからぁ♪」

いや、なんでココで?(笑)

その歌詞に「府中本町」が登場することは知っているが、残念ながらここは仁川。この曲を唄うクマムシさんが競馬好きだという話も聞いたことがない。競馬との関わりを敢えて探せば、ここにいる皆が「瞳の奥に大きな野望」を秘めていることくらいか。ともあれその音楽を聴きながら購入した馬券は当然ながらハズレ。まあ、あの占いにしても昔の話だ。

角居元調教師は自厩舎内に歌謡曲を流していたと聞く。馬は突発的な音には驚くが、連続性のある穏やかな音にはむしろ安心してリラックスできる。業界ではクラシック音楽が効果的とされているが、そこは角居センセイ。業界の常識などに捉われることはない。

Kopa

ちなみに、ドクター・コパ氏はあるとき所有馬にラテン系の音楽を聴かせるよう調教師にオーダーしたことがある。もちろん風水的なものだろう。その直後にコパノリッキーが16番人気でフェブラリーSを勝ち、翌月にはコパノリチャードが高松宮記念を制するのだから驚くしかない。コパさんが音楽の効能を持ち出してきたら、素直に従っておいた方がよさそうだ。

 

 

***** 2022/2/18 *****

 

 

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2022年2月17日 (木)

人知を超えて

昨日に続き「運」というものについて考えている。

フェブラリーSを週末に控えて思い出すのは、コパノリッキーが勝った2014年である。驚くことに最低人気だった。直前に除外馬が出て出走が叶ったのが運なら、田辺騎手が空いていたのも運であろう。

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「ドクター・コパ」こと小林祥晃オーナーは言わずと知れた風水の第一人者。人知の及ばざる処にある「運」を、それでも環境や行動を通してコントロールしようという試みこそが風水であろう。そんな試みの可否はさておき、コパさんの勝負服を目にするたび、日常の生活では思いの至らぬ「運」というものの深層領域に思いを寄せてしまうのは仕方あるまい。

ギャンブルとしての競馬がファンの心を捉えてやまないのは、人知の及ぶ処と及ばざる処の割合が絶妙だからではあるまいか。人知の及ぶところはいわゆる「技量」や「知識」であり、及ばざる処はすなわち「運」である。

「運」がすべてを支配する賭の代表格は宝くじだが、競馬ほど病的かつ慢性的かつ執着的なファンは少ない。逆に「技量」がすべてを決める将棋やチェスで、賭ける行為は原則として行われない。熱心なファンが多い麻雀や競馬は、勝てば自分の選択が正しかった信じ、負ければツキがなかったと諦めがつく点が優れている。まさに「技量」と「運」のバランスの妙である。

この両者のバランスは、実は我々の人生にも通じ合っている。人間が生きていくには「技量」や「知識」が欠かせないが、それでもしばしば「運」という名の天使に翻弄される。いかに高度な分析や確率論上の担保を伴っていたとしても、それで予知不能なリスクをすべて避けられるわけでもない。戦績、時計、展開、血統をどれだけ分析したところで、想定外の出遅れや他馬による妨害に見舞われることだってある。人生は競馬なのだ。

果たして「技量」が「運」を完全に支配することなど可能なのだろうか? もし、それが可能ならば、馬券などというものは消えてなくなってしまうかもしれない。

パスカルやフェルマーといった大数学者は、すべての「運」を解明せしめ、あらゆる偶然を人知の及ぶ処にしようと確率論を発展させたが、そこに秘められた大きな謎を手中に収めることはついにできなかった。

我々は馬券が外れると「ツキがなかった」と思う一方で、「なぜこれを見落としてたんだろう?」と原因を探ることも実は忘れない。それで多少の「技量」や「知識」を習得し、同じ過ちを繰り返さぬようわずかばかりでも進歩はしているはずなのだが、それでも「運」という魔女の前では100%の解決などあり得るはずもない。

結局のところ、生きる上では「運」と上手く付き合っていく他ないのであろう。「上手く生きるための技量」とは、実は「上手く運と付き合うための技量」に過ぎないという気もしてくる。

パスカルもフェルマーも晩年はギャンブルに溺れた。希代の大数学者たちも、最終的には「運」には逆らえぬと悟ったのかもしれない。

 

 

***** 2022/2/17 *****

 

 

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2022年2月16日 (水)

不運の穴

昨日の北京五輪、カーリング女子・日本対英国戦の第6エンドにアクシデントは起きた。

藤沢五月選手のラストショットはハウスの中心に置けばいいイージーショット。のはずだったが、投じた石はみるみる失速し、ハウスにほど遠い位置で止まった。TV画面には茫然とするロコ・ソラーレのメンバーが映し出されている。このショットで流れは大きく英国に傾き、日本は4ー10で敗れた。

原因は氷上のゴミだという。髪の毛がいちばん多いだそうだ。藤沢選手は「バッドラック」と表現した。運が悪かったというわけだ。

彼女の口から「運」と聞いて半年前を思い出した。五輪代表チームを争う全日本選手権で初戦から2連敗すると、彼女たちはチーム全員で思いをぶつけ合い「自分たちは運がない。じゃ、運命変えてやろう」と吹っ切れたという。ネットを検索して運を変える方法を探したりもした。サードの吉田知那美選手は「運がないことを受け止めたら気が楽になった」と振り返る。

今大会は「運」について考えさせられるシーンが多い。昨日のスピードスケート女子パシュートの転倒しかり。微妙なフライング判定でリズムを崩されたスピードスケート男子500mの新濱立也選手しかり。高梨沙羅選手の失格などは運に踊らされた好例であろう。

勝負事に運が介在することは仕方ない。それは競馬も同じことだ。しかもそれは色々な形になって現れる。

例えばマルゼンスキーは「時期」に泣いた。政治上の理由からたまたま持込馬のクラシック出走が規制された時期に生まれたに過ぎない。実際、マルゼンスキーよりも前の1957年には、同じ持込馬のヒカルメイジがダービーを、ミスオンワードが桜花賞・オークスの2冠を制している。

1999年の日本ダービーの発送直前。人気を集めていたシルクライトニングは、自分の蹄鉄のクギを踏んで取消の憂き目を見た。サッカーボーイは皐月賞を発熱、菊花賞を脚部不安でいずれも断念。両馬とも高い能力は疑いようがなかっただけに「悲運」の2文字が脳裏から離れない。

1973年の宝塚記念を制したハマノパレードは、次走の高松宮杯でレース中に転倒して再起不能となった。原因はモグラの穴に脚を取られたせいとされる。競馬に穴はつきものだが、この手の穴はいただけない。

Turf

羽生結弦選手も穴に泣かされた。北京五輪フィギュアスケート男子SP。前人未踏の3連覇を目指した羽生結弦選手が演技冒頭は4回転サルコウのはずがなぜか1回転に。演技後に踏み切り位置まで戻り、じっと氷上の穴を覗き込むシーンが忘れられない。「まじか…」「はまった」。そんな声が漏れてくる。「何か僕、悪いことをしたかな」。悲しそうに笑うその姿を見れば、「運、不運」について深く考えずにはいられない。そんな北京五輪も13日目が終わった。残すは4日間だ。

 

 

***** 2022/2/16 *****

 

 

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2022年2月15日 (火)

二刀流の女王

今日も北京五輪の話。だがその前に話は4年前の平昌に遡る。

それが起きたのはスキーアルペンの女子スーパー大回転だった。伏兵中の伏兵に過ぎなかったチェコのエステル・レデツカ選手が、ソチ五輪優勝で連覇を目指していたオーストリアのアナ・ファイト選手を破る大金星を挙げたのである。その差はわずか0.01秒。大本命シンボリルドルフをわずかの差で差し切った条件馬ギャロップダイナの1985年の天皇賞・秋を思い出していただければわかりやすい―――って、相変わらず喩えが古い(笑)

ここで注目すべきはエステル・レデツカ選手のキャリアだ。実は彼女は平昌五輪前年の「スノーボード・パラレル大回転」の世界チャンピオン。スノーボードの世界チャンピオンが、五輪のスキー競技で金メダルを獲得したのだから、ざわついたのも無理はない。実際、その後に行われた平昌五輪スノーボード女子パラレル大回転も制して2冠を制し、冬季五輪の同一大会において2競技で金メダルを獲得した初の選手となった。まさにアルペン界の二刀流というわけ。

レデツカ選手のような馬をフェブラリーSの出走メンバーに探そうとすれば、やはりソダシをおいてほかにいない。芝ではすでに桜花賞を勝っている。ダートのここも勝てば立派な芝・ダートの二刀流女王。レデツカ選手ばりにハナ差で前回チャンピオンのカフェファラオを抑えるシーンが目に浮かぶ。

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北京五輪に話を戻すと、レデツカ選手はスノーボード女子パラレル大回転で連覇を達成。これだけでも大偉業だが、さらにその上をゆく「2大会連続2競技制覇」の超大偉業に片手をかけた。

しかし、8日目に行われたスキーアルペン女子スーパー大回転は5位。そして今日のスキーアルペン女子滑降は27位に終わった。やはり超大偉業となると簡単には達成できるものではない。だがレデツカ選手にはスキーアルペン女子複合が残されている。アルペン界の二刀流の女王を応援しつつ、競馬界にも二刀流の女王誕生を期待しよう。

 

 

***** 2022/2/15 *****

 

 

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2022年2月14日 (月)

「妖精の女王」の息子なのに

北京五輪のTV中継を観ていて、スキーアルペンの「回転」という種目について話題となった。

クルクル回るわけでもないのに、なんで「回転」って言うんだ?

スキーで「回転」と言えばむしろエアリアル種目のイメージだよなぁ。

「回転」の英語表記は「slalom」である。とあるサイトによれば、「slalom」を邦訳しようにも適当な日本語が無いことからこの種目の重要なポイントである「turn」を日本語に訳して「回転」としたそうだ。これが悲劇が始まり。その後「giant slalom」「super giant slalom」と種目が増えるたび、「大回転」とか「スーパー大回転」などと混迷の度合いは増している。

今ならそのまま「スラローム」でも良かろう。スキーノルディックのジャンプも「70m級」とか「90m級」という言葉は使わずに「ノーマルヒル」「ラージヒル」で浸透している。もし「スノーボード半筒」なんて種目名にされたら、競技をやめちゃう選手も出てきそうだ。

1995年のディアヌ賞とヴェルメイユ賞を勝ち、ローエングリンの母としても知られる名牝カーリング(Carling)は、五輪競技の「カーリング」からネーミングされたと思われがちだが、競技のカーリングの綴りは「curling」。石をコントロールするために回転(curl)をかけることから「curling」と呼ばれるようになった。

一方、馬名の「Carling」は「妖精の女王」の意。まるで違う。なのにCarlingの息子であるエキストラエンド(父ディープインパクト)の馬名は、競技のcurlingに由来するのだから面白い。

Extra

昨日行われた北京五輪のカーリング女子・韓国対中国の一戦は、最終10エンドを終えて5-5の同点。エキストラエンド(extra end)に突入する大激戦の末、中国が韓国を破った。今日の夜に行われた試合で、ロコ・ソラーレは韓国に敗れてはしまったものの、この中国の勝利があとになって日本の決勝トーナメント進出の行方を左右することになるかもしれない。最後までいつもの笑顔で戦ってほしい。我々もTVの前で応援します。

 

 

***** 2022/2/14 *****

 

 

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2022年2月13日 (日)

7歳の初重賞制覇

一昨年の優勝馬がクロノジェネシスで、昨年はラヴズオンリーユー。令和を代表する2頭の女傑が歴史的快挙への出発点に選んだ京都記念にユーバーレーベンが満を持して登場してきた。

一時代を築いたクロネジェネシスとラヴズオンリーユーが引退したのはつい先日のこと。ラヴズオンリーユーに至ってはエクリプス賞受賞の快挙も伝わってきた。ユーバーレーベンの単勝1番人気は、京都記念から世界に羽ばたいた2頭の女傑に続く新たなスーパーヒロイン誕生を願うファンの思いの結晶であろう。2番人気も4歳馬レッドジェネシス、さらに重賞未勝利ながら4歳牝馬のジェラルディーナとマリアエレーナがそれぞれ4番人気と5番人気に推されている。皆、若い馬の飛躍に期待している。

しかし勝ったは7歳馬アフリカンゴールド。今年まだ勝ち星のない国分恭介騎手に導かれて序盤からマイペースの逃げに持ち込むと、開幕週の馬場を味方にまんまと逃げ切った。7歳にしてこれが初重賞勝利だという。

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7歳馬による京都記念制覇は1997年のユウトウセイ以来四半世紀ぶりの出来事。しかも2着が6歳馬、3着は7歳馬で4着馬は揃って沈黙した。競馬は時として切ない結末をもたらす。しかし勝負事である以上結果がすべて。アフリカンゴールドは強かった。ユーバーレーベンは負けてしまったけどドバイには向かうと聞く。この敗戦を糧に頑張ってほしい。

騎手だけでなく種牡馬ステイゴールドもこれが今年の初勝利。ステイゴールドが亡くなってから7年になるが、オジュウチョウサンが暮れの中山大障害を勝ちマイネルファンロンは先月のAJCCを11番人気で2着するなど、産駒の活躍はまだまだ続いている。そういう意味では、ユーバーレーベンの父ゴールドシップや、タガノディアマンテやラーゴムの父オルフェーヴルに対し、その父ステイゴールドが存在感を示した京都記念となった。

ステイゴールド自身、7歳の春に日経新春杯とドバイシーマクラシックを連勝すると、その年の暮れに香港ヴァーズを勝ってついにGⅠタイトルを手に入れた経歴の持ち主。通算50戦目の悲願達成に涙したファンも多かった。その子であるアフリカンゴールドが7歳のここから急に強くなったとしても何ら不思議はない。次走大阪杯に注目だ。

 

 

***** 2022/2/13 *****

 

 

 

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2022年2月12日 (土)

うどんニックスは成立するか

明日の京都記念で重賞初制覇を目指すジェラルディーナ(牝4)は生まれた当時から「13冠ベビー」と呼ばれて注目を集めていた。父がGⅠ5勝のモーリス。母ジェンティルドンナに至ってはGⅠを7勝もした名牝。両親の獲得したGⅠタイトル数は合計13にも及ぶ
一流の競走成績と血統の繁殖牝馬に、一流の競走成績と血統の種牡馬を配合する―――。

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これこそが配合論の基本であり、名馬誕生の近道であることは間違いない。ただ、それにも「確率的に言えば」というエクスキューズが付く。

実際にこのやり方で次々と名馬が生まれてきたかと言えば、実はそうではない。配合の成否は神のみぞ知る。「1+1=2」という式が決して成り立たないのが、この世界の常であり、それが先人たちの悩みの種であった。

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この手のジレンマは競馬の世界だけに留まらない。あらためてそう思わせるのは、他でもないうどんの話である。

難波に店を構える「き田たけうどん」の店主は、関西うどん界の雄・木田武史氏。もともとは単なるうどん好きのサラリーマンだった木田氏だが、好きが高じて自らうどん屋を開業。ひたすら美味いうどんを追い求めてたどり着いた先は、讃岐うどんと関西うどんが融合した「関西讃岐うどん」という新たなジャンルだった。

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ひと口食べれば、その独特の食感の虜になる。とにかくふんわり柔らかい。それでいて、箸で持ち上げても切れたりはせず、むにょ~んと伸びてくる。これこそ本物のコシであろう。口当たりはとことん優しく、喉越しは痛快至極。この食感はもはや官能的でさえある。麺至上主義の讃岐ならこれに醤油をかけるだけもじゅうぶんであろう。

しかしこの店ではこの麺に昆布とかつお中心の関西流のだしを合わせる。讃岐では当たり前のいりこだしは使わない。特に昆布にはこだわり、半日以上かけて旨味を抽出する。麺抜きの「肉吸い」に代表されるように、関西のうどんは麺よりもだしが肝心だ。

讃岐の麺×関西のだし。いつも満席の店内を見ればこの配合は正しいと思う一方、「うどんにコシはいらん」という浪速っこがいれば、「やはり讃岐にはいりこだしが合う」という讃岐ファンの声も根強い。木田氏の探求は続いている。

配合論の世界では相性の良い配合パターンを「ニックス」と呼ぶ。最近ではキズナやエイシンヒカリで成功した「ストームキャット×ディープインパクト」がニックスの好例。明日の京都記念に出走するレッドジェネシスも同じニックスで生まれた。果たして「讃岐×関西」という“うどんニックス”は成立するのか。私はこの一杯だけでもニックスを叫びたい。

 

 

***** 2022/2/12 *****

 

 

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2022年2月11日 (金)

五輪競技に馬名を探せ

昨日の北京五輪7日目、フィギュアスケート男子フリーで羽生結弦選手が演技冒頭で「クワッドアクセル」に挑んだことが話題となった。その後の転倒はたいした問題ではない。チャンピオンでありながら、さらに高みを目指すのそのチャレンジングスピリットに感銘を受けた。次回ミラノ・コルティナ五輪はクワッドアクセルを取り入れないと勝てない大会になる。今後「クワッドアクセル」という名前の馬が登場することも時間の問題であろう。

―――そう思ったら、ずいぶん前に登録されていた。2012年生まれの牡馬。JRAで3勝もしている。知らなかった。いや、馬自体は知っていたかもしれないが、それが4回転半ジャンプの呼び名だとは知らなかった。マーベラスサンデー産駒クワッドアクセルの誕生から、国際スケート連盟公認大会で初めてクワッドアクセルが認定されるまで、まさか10年もの歳月を要するとは名付け親の方も思っていなかったかもしれない。

外国語が氾濫する五輪を観ていると、競走馬名を連想することが少なくない。

カーリング中継を見ていればダブルテイクアウト(父ワークフォース)やエキストラエンド(父ディープインパクト)が登場する。アイスダンス(父ジェイドロバリー)は、あのラムタラの近親という良血。モーグル(父シェイディハイツ)にはテレマーク(父パルナシャン)という近親がいる。トリプルアクセルに至っては現役中のロージズインメイ産駒を含めて4頭が登録された。明日の洛陽Sに出走するザイツィンガー(父ドリームジャーニー)の名は、リレハンメルや長野で金メダルを獲得したアルペンスキー選手に由来する。ラージヒルジャンプ(父バブルガムフェロー)は障害4勝の名ジャンパー。名前の持つ不思議な力が働いたのかもしれない。

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件のクワッドアクセルは現役生活の晩年を佐賀競馬で過ごしたが、彼の地ではダブルコークという馬と二度の直接対決が実現している。ダブルコークはスノーボードやスキーの回転技。今日の北京五輪8日目、スノーボード男子ハーフパイプで平野歩夢選手はダブルコークを難易度で上回るトリプルコークを成功させて金メダルを獲得した。五輪でのトリプルコーク成功も今回が初めてだという。ちなみに「トリプルコーク」という馬名は、現時点では登録されていないようだ。

 

 

***** 2022/2/11 *****

 

 

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2022年2月10日 (木)

【訃報】タイムパラドックス

2004年のジャパンカップダートを筆頭にJBCクラシック連覇などダートGⅠを5勝したタイムパラドックスが亡くなった。24歳。3年前に種牡馬を引退してからは、功労馬として「うらかわ優駿ビレッジAERU」で余生を過ごしていたという。

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2004年のJCダートは同じ勝負服のローエングリンも横山典弘騎手で出走を目指していたが、収得賞金は出走ボーダーラインにギリギリ達していなかった。仮にローエングリンが除外になれば、タイムパラドックスには横山典弘騎手が乗ることになっていたというから運命のいたずらを感じずにはいられない。

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結果、ローエングリンはめでたく出走を果たし、横山典騎手を背に3番人気に押されるも13着に敗退。一方のタイムパラドックスは、4番人気ながら武豊騎手の手綱で優勝を果たした。その後も武豊騎手とのコンビで、川崎記念、帝王賞、JBCクラシックを制している。

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引退後は北海道新冠町のビッグレッドファームで種牡馬入り。産駒は2016年NARグランプリホース・ソルテを筆頭に、2013年東京ダービー馬・インサイドザパーク、2017年かきつばた記念勝馬・トウケイタイガーなど主に地方を舞台に活躍した。

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タイムパラドックス自身、2005年にNAR特別表彰馬に選定されている。所属こそ「栗東・松田博資厩舎」だったかもしれないが、彼の活躍の場は間違いなく地方だった。地方で実績を残した馬の産駒が地方で活躍するのは、ある意味では歓迎すべきこと。地方競馬を根城にしていた人間としては、感謝の念に堪えない。

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通算16勝は、JRA所属馬としてはホクトベガとサウスヴィグラスに並ぶ当時の最多勝記録だった。引退レースとなった2006年JBCクラシックでの勝利は、史上初の8歳馬によるGⅠ勝利でもある。競走馬としても、もちろん種牡馬としても、彼の評価はもっと上がっても良かった。訃報に触れたこの機に改めて考え直してみよう。

 

 

***** 2022/2/10 *****

 

 

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2022年2月 9日 (水)

コントレイルにも会いたいが

新型コロナやら大雪やら五輪やら仕事のトラブルやらに追い回される日々を過ごすうちに種牡馬展示会のシーズンを迎えていることをすっかり忘れていた。

ここ数日はロクに睡眠もとれぬほどの忙しさ。だが、このコロナ禍では仮にヒマであったとしても北海道に飛ぶことは許されまい。どう転んでも現地には行けないワケだが、そんな私の心中を慮ってか、日高の牧場から種牡馬展示会の様子を伝えるメールが届いた。コントレイルの写真も沿えてある。ありがたいですね。

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札幌は記録的大雪に見舞われて交通機関の混乱が報じられているが、安平はそれほどでもないようだ。厩舎の屋根に積もった雪も思ったより少ない。

三輪先生(←と私はお呼びしている)の解説によれば、コントレイルは忍者走りのようなタタタッという動きができるところがセールスポイントなんだそうだ。「なかなかそういう馬はいない」とのことらしいが、こうした独特の表現ができるあたりが三輪先生の先生たる所以ですな。社台スタリオンの皆さんにも久しくお会いしていない。コントレイルにも会いたいが、恋しいのは人の方。そう思うのはトシのせいもあろうが、おそらくこの長く続くコロナ禍のせいに違いない。コロナが完全に収束するまで牧場には行かぬと決めている。今年こそは北海道に行けるのだろうか。

 

 

***** 2022/2/9 *****

 

 

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2022年2月 8日 (火)

失格はほどほどに

おとといの日曜はこのブログにも書いたように新幹線に乗って新大阪に到着したのち梅田で味噌煮込みうどんを食べて帰宅。23時頃に床に着いた。

激しい電話の着信音で起こされたのは、眠りについて10分も経たぬ頃である。仕事場でトラブルが発生した。ただちに来いという。「ハイ、わかりました」と言ったところで、こちらはまだ布団の中にいる。どうにかこのまま眠りにつく方法はないかと考えを巡らせたが、寝呆けた頭で考えたところで何も思いつくはずもない。仕方なしに仕事場に出向き、そのまま貫徹して帰宅したのは昨夜の21時頃だった。

布団は前夜出かけた形のまま残されている。ひょっとしたら長い夢でも見ていたかもしれない。しかしまごうことなき身体の疲労は、それが夢ではなかったことの証。53歳にもなって仕事で貫徹するとは思わなかった。とても身体がもたない。食事をする気力もなく、なんとなくTVをつけたら北京五輪中継をやっている。スキージャンプの混合団体。たまたま高梨沙羅選手が飛んだ。大ジャンプだ。すごい。首位に立ったという。そのまま寝落ちした。

翌朝も早い。起きることはできたが、疲労感は昨日より増している。トシをとると疲れも遅くなりがち。高梨選手の失格を知ったのは仕事場に着いてからである。最初は何がなんだかわからなかった。

聞けばひどい話である。薬物検査とかならまだしも、の感はぬぐえない。競馬でも後検量で失格となるケースはあるにはある。1999年5月16日の緑風Sでのこと、断然の一番人気馬に推されたシンコウシングラーが、決められた負担重量より1.7キロ不足していたことがレース後の検量で判明。2着に入線したものの、規定により失格とされた。このケースでは、着順および払戻金確定前の発覚だったことにより、着順変更(3位入線馬が2着に繰り上がり)の上での確定となっている。

「審議ランプが灯らない着順変更」という珍しいケースだったため、一部のファンが暴れる騒ぎとなったが、「確定まで馬券は捨てるな!」とあれほどくどくどとアナウンスを流しているのはダテではないということを思い知らされる貴重なケーススタディになったとも言える。

以後、JRAで後検量違反による失格劇は起きてない。競技のルールとしてはこれくらいが妥当ではないか。10頭立てのGⅠで、4頭がレース後に失格となればファンもマスコミも黙ってはいまい。今回の件で経緯を知り得る立場ではないから一般論に留めておくが、最高峰の舞台で競技を終えたあとの選手を次々に失格させる競技は、ルールか、施行体制か、あるいはその両方に欠陥があると感じてしまうもの。批判も当然であろう。

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***** 2022/2/8 *****

 

 

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2022年2月 7日 (月)

メイショウドトウの境地

北京五輪は4日目。日本選手団の主将も務める高木美帆選手がスピードスケート女子1500mに出場し、五輪レコードをマークしたイレイン・ブスト選手に次ぐ1分53秒72で2着となり銀メダルを獲得した。レースを終えた高木選手に笑顔はない。むしろ呆然としたその表情に、見ているこちらが辛くなった。

もちろん銀メダルという成績に一点たりとも恥じる要素はない。なにせ五輪の舞台である。ひと言で現せば「素晴らしい」。それに尽きる。

だが、やはり選手にとっては嬉しさと悔しさが同居するようだ。その割合は選手それぞれ違うだろうが、そうした微妙なバランスは競技直後のインタビューで見て取ることができる。高木選手は4年前の平昌でも銀メダルを獲得したが、その時は金が獲れなかった悔しさと、メダルが獲れたことの嬉しさが入り混じっていた。だが、今回のインタビューからは圧倒的な悔しさが伝わってくる。なにせ平昌で負けた相手もブスト選手。同じ舞台で同じ相手に続けて負けたとなれば、笑顔を見せるわけにもいくまい。

競馬だって2着は悔しい。

たとえハナ差でも、たとえレコードタイムの快走であっても、2着では口取り撮影はできないし、優勝メダル(競馬でも優勝馬には金メダルが贈られる)はもらえないし、シャンパンも飲めないし、肩掛けだってもらえない。昨年の有馬記念でエフフォーリアの2着馬を覚えておいでだろうか。私はすっかり忘れてしまった。五輪なら2位でも「メダリスト」だが、競馬の2着にはそんな称号すら与えられない。

来週のフェブラリーSに出走するエアスピネルは重賞で2着7度の善戦マン。2走前の武蔵野Sでもソリストサンダーの2着に敗れている。GⅠでの2着も3回。そこに昨年のフェブラリーSも含まれることを思えば、今回は何としても勝って、悲願とリベンジをいっぺんに果たしたい。むろんフェブラリーSにはソリストサンダーも出走予定。最高の舞台で続けて負けるのは悔しい。それが同じ相手ならなおさら。高木選手の表情がそれを物語っている。GⅠの舞台でテイエムオペラオーの2着に敗れ続けたメイショウドトウの陣営も、きっと同じ思いを抱いていたことだろう。

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***** 2022/2/7 *****

 

 

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2022年2月 6日 (日)

大阪の名古屋

う~、さぶさぶ。2月だから当然とはいえ今日も寒いですね。中京競馬は雪の影響で1レースの発走が遅れ、東海道本線も大垣~米原間が運休となった。新横浜から大阪に向かう新幹線は名古屋を出た途端にスローダウン。車窓から見える雪景色がエグい。「一面の銀世界」を通り越して、すべてが雪に多い尽くされている。

先週の中京ではご時世に配慮して飲食店に立ち寄ることを控えた。今日も名古屋は通過。でもこの季節、できることなら名古屋名物の味噌煮込みうどんで温まりたい。そこで新幹線を降りてから大阪梅田の人気店「あまの」の暖簾をくぐった。

店主は名古屋出身だという。名古屋から取り寄せた八丁味噌で仕上げる味噌煮込みうどんは本場顔負けで。ちょいと硬めに感じる麺も名古屋の多くの店で食べる味噌煮込みうどんと変わらない。

ちなみに「鍋焼きうどん」と「煮込みうどん」の違いってご存じですか?

あらかじめ茹で上げた麺を、具材と一緒に鍋に投入して煮るのが「鍋焼き」。生の麺を直接具材と一緒に鍋に投入して煮込むのが「煮込み」。なので、「煮込みうどん」の麺が「硬い」と感じるのは、その料理手順によるもの。もし「ボソボソでイヤだ」という場合は、フタをしてしばらく蒸してから食べると良い。

Miso

ともあれグラグラと煮え立つ鍋を前にすれば、それだけで気持ちが暖まってくるもの。八丁味噌の旨味と甘さが染みたうどんも申し分ない。最後は濃厚なスープをホカホカの白飯にかけて胃袋に流し込んで締めた。冬の中京開催は今日でおしまい。来週は久々に「フランケル」の鶏天ぶっかけうどんだ。

 

 

***** 2022/2/6 *****

 

 

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2022年2月 5日 (土)

奇跡の邂逅

諸事情これありクルマで小田原へ向かった。

運転するのは下の娘である。ついに我が家では家族全員が運転免許証を手にしるに至ったわけだが、悲しいことに我が家には自家用車というものがない。数十年前、ウマを購入するにあたりクルマは手放した。クルマを必要としない生活をしていたせいもある。今日のように急に必要となれば借りれば良い。今日借りたのは白のプリウスだった。

小田原での所用がつつがなく終わり、せっかくここまで来たのだからと、かまぼこと箱根駅伝で有名人な「鈴廣」へと向かうことに。免許取りたての娘に代わって駐車場にクルマを納めるのは私の役目である。娘の手前、あたふたした駐車は見せられない。手頃な場所に1台分のスペースを見つけるや、スイッ!スパン!と鮮やか一発で決めてみせた。

するとたまたま目の前を通り掛かった駐車場の誘導員が、私のクルマをジロジロ覗き込むのである。気のせいか他のお客さんの視線も感じる。まさか気付かぬうちにどこかをぶつけたのか?  レンタカーでそれはまずい。

慌てて小雪が舞う車外に飛び出したがキズや凹みは見当たらない。ひとまず安堵。じゃあ皆ひ何をジロジロ見ているんだ?

ふと隣の車を見ると、こちらも同じ白のプリウスであることに気付いた。だが、プリウスなんて珍しくもない。隣同士になることもあろう。でもまさか……と思いナンバープレートを覗き込んでみると―――。

Car

なんと同じ「湘南・わ」。しかも下一桁が2つ違うちがうだけの「ほぼ連番」だったのである。

同じ白のプリウス同士でナンバーもほぼ連番の2台が、「鈴廣」の広い駐車場で隣同士になるなんてそりゃたしかに珍しい。おそらくこの2台は兄弟のような関係と見てよかろう。北海道で産まれた一頭のサラブレッドが流転の果てに高知競馬に移籍したら同じ厩舎の隣の馬房が兄弟馬だったみたいな話にも……。いや、これは結構ありそうだな。まあ、ともかく珍しくことが起きた一日。ならば馬券を買えば大きいところが取れるかと、あわててアルデバランSの穴馬券をベタベタと買ってはみたが、かすりもしなかった。残念。

 

 

***** 2022/2/5 *****

 

 

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2022年2月 4日 (金)

熊本産の呪縛

熊本産アサリの産地偽装に関するニュースが喧しい。

Asari

かつての熊本はアサリの一大産地だった。しかしピーク時に数千トンを誇った漁獲高はここ数年で激減。昨年はわずか21トンに留まっている。にも関わらずこの3か月間に熊本県産として販売されたアサリを調査したら、全国で2485トンにも及んだ。さすがにそれはおかしい。それで「熊本産」として販売されているアサリのDNA分析を行なったら、97%が外国産だったという。まあ、よくある話ではあるが、さすがに度が過ぎた。だから騒ぎになっている。

蒲島・熊本県知事は「緊急出荷停止宣言」を発表。偽装根絶への決意を示すと同時に、食品表示法の例外規定が偽装の温床になっているとし、国に見直しを求める考えも示した。

ちなみに97%の外国産アサリがすべて「偽装」にあたるわけではない。それがこの問題をややこしくしている。食品表示法では海外で養殖されたアサリを輸入し、出荷する前に国内で一時的に再養殖した場合、養殖期間が長い方を「産地」とするよう求めている。これが知事が指摘した例外規定。通称「長いところルール」である。

外国で1年ほど生育したアサリを輸入し、熊本県内で1年半畜養して販売すれば「熊本県産」を名乗って構わない。しかし、実際には輸入してから一度も熊本県を経ずに出荷されているのが8割だという。残る2割にしても熊本で蓄養していたのは半年から10日程度と報じられているが、いずれにしてもすべて外国産として扱われるべき。それでも「熊本県産」を名乗っていたとすれば、そりゃあ問題になるわ。

個人的には熊本の産地偽装といえば馬肉のイメージが強い。2008年までの旧・食品表示法では、生きたまま輸入したウマを3か月間国内で飼育したのちに食肉処理されれば「国産」として販売することができた。そのため食用馬の輸入が年々増加。熊本県内向けだけで、年間5千頭を超えるウマが生きたままカナダから輸入され、それらがすべて合法的に「熊本産」として流通していたのである。

競馬ファンが聞けば「そんなに多くの“マルガイ”が!?」と驚くに違いない。もちろん現行の食品表示法では、これを「熊本産」と呼ぶことは不可。窮余の策として「熊本馬肉」などというブランドネームで流通させているわけだが、これがわずかに流通する本物の「熊本産馬肉」のプレミア感をかえって煽ることになり、結果的に偽装が絶えないという状況を生み出している。

2011年には中国産のゴボウを熊本産として出荷していた業者が逮捕されたこともあった。輸入される中国産ゴボウはきれいに洗浄されているため、わざわざ一本一本泥を塗ってから段ボール箱に詰めていたというから相当な手間をかけていたことになる。そこまでしてでも「熊本産」を名乗るからには、やはりそれなりのメリットがあるからだ。

象徴的な話を紹介する。秋に旬を迎える上海蟹は江蘇省の各地で養殖されているが、中でも陽澄湖産は最高級品として高値で取引される。蟹に括りつけられた「陽澄湖産」を示すタグが最高級品の証。だが、このタグが上海の街中では1個10円程度で堂々と販売されているのである。店主によれば、上海蟹にこれを付けるだけで日本人が高く買ってくれると笑う。お国柄と言えばそれまでだが、このエピソードはむしろ我々消費者の問題を示唆している。

Gobou

私は馬肉はいっさい口にしないが、アサリもゴボウも大好物なので考えさせられることは多い。産地偽装問題の根っこには、我々消費者の産地信仰が少なからず存在している。

 

 

***** 2022/2/4 *****

 

 

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2022年2月 3日 (木)

福は外にも

今日は節分。せっかく恵方巻き文化の中心地たる関西にやって来たのだからと、朝から巻き寿司にかぶりついた。今年の恵方は「北北西のやや北」。その微妙な匙加減を都度気にしつつも、がぶりと食らいつけばバリエーション豊かな具在の味わいが口いっぱいに広がる。なるほど、この風習があっと言う間に全国に広がったのも無理はない。煎り豆より美味しいもんね。

Maki1

実際、豆撒き派は肩身の狭い思いをしているようだ。巣ごもり需要も手伝って一本数千円もする「豪華恵方巻き」が飛ぶように売れる一方で、神社やお寺が有名人を招いて盛大に行う豆撒きは、新型コロナの余波で今年も中止が相次いでいる。博報堂生活総合研究所が3大都市圏で節分行事を調べたところでは、「恵方巻きを食べた」が半数を超えている一方、「豆まきをした」は4割程度に留まった。

Maki2

私が子供のころは家じゅうの窓を開け放ち、「鬼は外!」「福は内!」と大声を発しながら豆を撒き、散らかった豆を拾ってはトシの数だけ食べた覚えがある。余談だが、それをして節分特別や節分ステークスでは「内が福」とばかりに内枠の2頭を買うことにしているものの、それがこれまでに的中したことはなく、むしろ2005年などは枠連8-8で36倍を超える決着となり、「福は外じゃねぇか!」などとワケの分からない叫び声を挙げたことも今となっては懐かしい。

Maki3

閑話休題。豆撒きの話に戻る。ともあれ、窓を開け放って豆を投げるなどという行為は、今をときめくタワマンはもちろん、ほとんどの集合住宅では難しいだろうし、落ちた豆をわざわざ食べるという風習にも抵抗があるようだ。あの豆にしても正直言ってそこまで食べたい味ではない。チョコボールとかにすれば子供たちは喜びそうだが、それを撒き散らかすとなればそれはそれで多少のためらいを感じる。

Maki4

その点、恵方巻きはスマートで良い。起源は諸説あるが、江戸末期から明治にかけて大阪・船場の商家で盛んになったことは分かっている。巻き寿司を使うのは「福を巻き込む」「鬼の金棒がわりに食べて鬼退治」とされ、切らずに丸かぶりするのは「縁を切らない」ためとも。節分に家族で恵方を向き、無言で願い事を念じながら丸かぶりするのが正しいスタイルだそうだ。

個食の時代にありながら、たまには家族一緒に何かを食べるという連帯感を味わえることも、この風習の浸透を後押ししているように思えてなならない。そもそも多くの風習や年中行事は、そうやって広まってきた。それでもハーフサイズとはいえ1日5本(プラス3切れ)も食べればさすがに飽きる。しばらく巻き寿司は見たくないぞ。

 

 

***** 2022/2/3 *****

 

 

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2022年2月 2日 (水)

鍋は料理だ

大阪天神橋には明け方雪が舞った。強い北風に乗って日本海の雪雲が流れ込んでくる。この季節は珍しいものではないらしい。こんな寒い日はやはり鍋料理に限る。よし、今夜は鴨鍋だ。

昔、ワールドスーパージョッキーズシリーズに来日したフランス人カメラマンを誘ってカニ鍋を食べに行ったことがある。そしたらそいつが、「日本の鍋料理というのは“料理”と言えるのか?」みたいなことを言い出した。

外国人(特にフランス人)は結構こう思っているフシがあって、刺身にしても「美味いけど、魚を切っただけだろう?」と言い出したりする。そのとき彼は「鍋だって、料理人は具材を切ってるだけじゃないか」と主張した。

具材の下ごしらえとか、出汁の取り方には料理人の技術が凝縮されていて、それが味を大きく左右すんだよと説明しても、「それなら厨房で最後まで煮込んで、出来上がりを出せばイイ」と反論してくる始末。

元来日本の家屋には囲炉裏があり、冬場はそこに鍋を吊して煮炊きすることで暖房効果も得られた。その吊された鍋から直接食事をすることが、鍋料理の原点と言われる。そしてその習慣は、囲炉裏をガスコンロに変えて現在も生き続けているのだ。

ともあれ私は鍋料理は立派な料理だと考えているので、専門店に足を運ぶことも多い。調理の過程を客自身が実践できるから、他の料理に比べてプロのワザを盗むという楽しみもある。具材の切り方や出汁の味、あるいは鍋に入れる順番などに「これは!」というモノがあれば、忘れぬうちに自宅で再現に挑むことにしている。

例えば鶏の水炊きであれば、濃厚なスープを張っただけの鍋に、まずはハツ、砂肝、レバー、つくねを投入。それらを一通り食してから、続いてジューシーなモモ肉や濃厚な味わいのムネ肉をしゃぶしゃぶのようにしていただく。それが済んでからようやく野菜。最初に野菜を入れがちだが、それではスープが薄くなってしまう。そして最後はチャンポン麺で締めよう。これを食べれば、「鍋」が立派な料理だと実感できるに違いない。

Kamonegi

ともあれ今日は自宅で一人鴨鍋に興じた。鴨が主役なのは当然だが、鴨鍋は葱が大事。関西では下仁田葱も千住葱も手に入らないが、それでもスーパーに行けば立派な葱が並んでいる。本来「鴨葱」はギャンブラーには禁忌の食い物。とはいえ、この季節の葱の美味さに抗うことはできない。むろん風邪予防に効果があることも知られた話。どうか新型コロナにも効き目があってほしい。

 

 

***** 2022/2/2 *****

 

 

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2022年2月 1日 (火)

はざまの距離で

JRAで行われる平地競走のなかで、もっともメジャーな距離は果たして何メートルかご存知だろうか。昨年の実績で調べてみた。昨年JRAで行われた平地レースは全3329鞍。それを距離ごとにカウントしたら上位はこのようになった。

距離 鞍数 割合
1800 802 24.1%
1200 679 20.4%
1400 425 12.8%
1600 391 11.7%
2000 369 11.1%
1700 203 6.1%
1000 102 3.2%
2400 73 2.2%
2200 72 2.2%

京都が開催されず、阪神、中京、小倉に振り分けられていることを加味しても、やはり1800mがトップ。次いで1200m。この2つの距離だけで全体の半数に近い。ただ、毎週の競馬をきちんと観ている人には実感できる数字であろう。ダートが主体のこの季節、中山の競馬は1200と1800の繰り返しの印象が強い。

むしろ3位が1400mというのは意外な気もする。札幌、函館、福島、中山、小倉。JRA10場のうち半数でコース設定がない距離であるにも関わらず3位に顔を出すということは、それだけ需要があることの裏返しかもしれない。続いて4位が1600m、5位が2000m。以下離れて1700m、1000mと続く。

建前上、出走馬をファン投票で選ぶことになっている有馬記念と宝塚記念を除けば、古馬GⅠは代表的な距離におけるチャンピオン決定戦という位置付けになっている。しかし、合わせればレース数全体の3分の1以上を占める1800mと1400mにはGⅠレースが1つしか存在しない。実質的に日本の古馬競馬は、特殊領域で覇を競っていることになる。

先日の根岸Sを勝ったテイエムサウスダンは全8勝のうち7勝が1400mという7ハロン巧者。フェブラリーSが1400mなら強気になれるが、どういうわけか本番では200m距離が伸びる。逆に1800mの東海Sからだと200mの距離短縮。メジャーな距離で前哨戦を行っておきながら、わざわざマイナーな距離に変えてチャンピオンシップを競う。馬券的な面白さが増すことは否定しないが、前哨戦の在り方を思うと若干の違和感が募る。

Roen

阪神カップや中山記念でリピーターの活躍が目立つのは、ひょっとしたらそうした事情のせいではあるまいか。7ハロンや9ハロンを得意とする馬は多いのに、その距離のチャンピオンを決定する仕組みがない。彼らにしてみれば、得意距離で行われる数少ないGⅡこそが、目標とすべき晴れの舞台なのであろう。

 

 

***** 2022/2/1 *****

 

 

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