マラソン界に新星現る
昨日、大阪中心部では大阪マラソンが行われた。新型コロナの影響で2年ぶりの開催。記念すべき第10大会。しかも世界陸上マラソンの代表選考レース。そこに設楽悠太や川内優輝といったメジャー選手が参加する。たまたま我が家の前の通りがコースになっているのだが、きっと沿道は応援の人垣で埋め尽くされるに違いない。外出は控えた方が良いだろうか。
―――と身構えながら朝食に出たのだが、沿道で選手の到着を待つ人は誰ひとりとしていない。左右を見渡しても私だけ。あとはジョギングをする人。犬の散歩をする人。自転車に乗りどこかへ急ぐ人。私にしたところで朝食を済ませての帰途である。時間を間違えたのかと思ったがそうではない。観客より警備・ボランティアの人数が圧倒的に多いという異様な雰囲気の中を、先頭集団が風のように駆け抜けていった。
昨日は競馬でもマラソンが行われている。阪神9レースの松籟Sは3勝クラスの芝3200m戦。条件戦とはいえ菊花賞3着馬に万葉S好走馬も加わり興味深い一戦となった。勝ったベスビアナイトは前走のオリオンSで5着に敗れている。レース後、騎乗したルメール騎手から「2200mは忙しすぎる」と異例のコメントが出ていた。断っておくが「1200」の誤記ではない。ともかく追走が楽になった今回は3コーナーから内ラチ沿いを縫うように進出。直線でもしっかり伸びて完勝だった。このような長距離の条件戦がなければ、ベスビアナイトはひたすら追走に苦労していたに違いない。
一時期は絶滅の危機に瀕した長距離戦だが、最近は増加に転じている。頭数も菊花賞がフルゲートの18頭だったことはともかく、その後も古都S11頭、ステイヤーズS13頭、万葉S13頭、ダイヤモンドS14頭、そして昨日の松籟Sが10頭と、以前のようにレース成立を心配することもなくなった。長距離戦に対する関係者の考えにも変化が見られる。一昨日のサウジアラビア国際競走「レッドシーターフH」におけるステイフーリッシュの勝利などはその象徴であろう。
もともと2000~2400mを主戦場としていたステイフーリッシュだが、矢作調教師は昨年の香港遠征をきっかけに今年は長丁場で勝負することを決めていたという。実際、サウジに選出されなければダイヤモンドSに出走することになっていた。年齢とともに元来のワンペースな脚質がより顕著になったことがその理由だというが、これも父ステイゴールドの良さのひとつ。7歳にして異国の重賞を圧勝したことも含め、ますます父の軌跡をたどっているように思えてならない。
ステイゴールドの母であるゴールデンサッシュの全兄サッカーボーイは、種牡馬としてナリタトップロード、ヒシミラクル、アイポッパーなど長距離得意の産駒を多く輩出した。そんな一族の出自であるステイゴールド自身も天皇賞・春に3回挑戦して②⑤④着の成績を残している。
ステイゴールド最大の長所は、タフなスタミナとベテランになってから発揮される勝負根性。これを受け継いだステイフーリッシュの充実期は、実はこれからなのかもしれない。その答えは次走3月26日のドバイ・ゴールドカップ(3200m)で明らかになる。そしてその先には父が勝てなかった天皇賞・春も見えてきた。競馬のマラソン界にもニューヒーロー誕生の予感が漂っている。
***** 2022/2/28 *****
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