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2021年12月 6日 (月)

大物は暮れの阪神開幕週から

ひと昔前、サンデーサイレンスがクラシックを席捲していた当時のこと。競馬ファンの間には「超大物は暮れの阪神でデビューする」という格言がまことしやかに語られていた。とくに注目すべきは開幕週の新馬戦。1995年から2002年までの間、ここでデビューを果たし、しかも馬券の対象になった馬からのちのGⅠホースを列記するとこのようになる。

1995年 ダンスインザダーク
1996年 キョウエイマーチ、マチカネフクキタル、ステイゴールド
1997年 スペシャルウィーク、ファレノプシス
1998年 ナリタトップロード
1999年 (なし)
2000年 アグネスタキオン
2001年 ファインモーション
2002年 スティルインラブ

理由はもちろんある。クラシックを目指すような素質馬ほど本番までに消耗することは避けたい。無理して早期にデビューさせると心身の成長を阻害することもある。そこで意識的に出走を遅らせる手法が取られた。夏の早い時期は無理をせずにじっくりと成長を促して、12月の新馬を確実に勝ち上がり、ホープフルSやラジオたんぱ杯、あるいは年明けの3歳重賞などで賞金を上乗せするのである。思えば開幕週ではないものの、ディープインパクトも暮れの阪神デビューだった。

しかし昨今は事情が異なる。シャフリヤールは10月、コントレイルは9月、エフフォーリアは8月、ソダシは7月でグランアレグリアに至っては6月のデビューだった。こうして見ると12月のデビューはむしろ遅く感じる。あれほど輝いていた12月阪神開幕週だったのに、この6年間はGⅠホースはおろか重賞ウイナーすら輩出していない。

大物が早期デビューを果たすようになった理由はいくつかある。馴致・育成の技術が向上したこと。2歳重賞が増えたこと。そして2歳戦向き種牡馬が登場してきたこと。これらの要因が重なり、かつてより出走可能な賞金ラインが高くなってトライアルやクラシック本番に出走できない危険が生じた。いくらクラシックに強い血統と言えども、クラシックの出走ゲートに入れないのでは意味はない。

先週土曜の芝1800m戦を勝ったラリュエルは、粗削りなレースぶりながらもダノンプレミアムの弟やジェンティルドンナの娘といった評判馬をまったく寄せ付けなかった。自身の兄ステイフーリッシュにて長く良い脚を使う。父がディープインパクトに替わっているから切れ味勝負にも対応できそうだ。矢作調教師が阪神の芝1800m戦で新馬をおろすのはコントレイル以来のこと。ひとつの伝説が終わった翌週に新たな伝説が始まるかもしれない―――。

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それでも私のようなオールドファンは、12月の阪神開幕週に超大物の出現をどこかで期待してしまうのである。ラリュエルの今後に注目しよう。

 

 

***** 2021/12/6 *****

 

 

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