裏有馬
数年に一度という寒波が列島を襲っている。昨夜の予報では大阪市内でも雪が降るということだったが、朝起きてカーテンを開けたら晴天だった。大雪の被害に遭われている方には申し訳ないが、雪中競馬を期待していた身としては残念。しかしおかげで出掛けやすくはなった。寒さも心配したほどではない。意気揚々と有馬記念当日の阪神競馬場に向かう。
有馬記念当日の阪神競馬を一部のファンは「裏有馬」と呼んで特別視しているらしい。有馬記念が行われていなくても、一年の締めくくりであることは同じ。12月28日に「9日目」が追加されてからは、厳密な意味での締めくくりではなくなったが、今日を競馬納めとしているファンは少なくあるまい。大事な一日である。だから重賞も行われないのに、指定席は満席の盛況ぶりだ。
上空は青空。だが向こう正面に見える山には雪が降っているのが見える。7レースの前にその雪が競馬場にも舞った。裏有馬のレースはゆっくりと進んでゆく。
中山ではそうもいかない。競馬場に着いたと思ったらすぐにお昼を食べて、午後の競馬が始まったかと思えばあっという間に有馬記念のパドックに降りてる印象がある。写真を撮っていた時も、そうでない時も同じ。とにかく一日が早い。
中山にいても阪神の馬券は買うし、今日も阪神にいながら中山の馬券を買っていた。ただ有馬当日の中山は何かが決定的に違う。スタンドはどこかザワついているし、装鞍所には重たい空気が漂っているし、パドックは独特の緊張感に支配されている。それが時間を早めているのかもしれない。
かつて中山のターフビジョンに阪神競馬場のスタンドが映し出されるのを見ながら、「阪神にもお客さんが入っているんだなぁ」と不思議に感じたことがある。当たり前の話だし、普段から阪神に足を運んでいらっしゃる方からすれば不快に思われるかもしれない。だが有馬当日の中山にいると他場のことは考えられなくなるのである。
そういう意味で裏有馬の風情は嫌いではない。これほど有馬記念当日に馬券のことを考えたことはなかったように思う。ただ、ターフビジョンに「有馬記念」の文字が映し出された時に、多少の違和感を覚えた。遥か遠く離れた競馬場で有馬記念が行われている。その事実を馴染ませるのに時間がかかるのである。その違和感が臨場感を押し潰したままレースは終了。それでもエフフォーリアの強さは伝わってきた。道中はクロノジェネシスの後ろにいたはずなのに、先に仕掛けて直線入口ではライバルを置き去りにする。天皇賞(秋)でコントレイルを下した戦法が今日も炸裂した。よほど自信がなければできない。
年度代表馬の最有力候補となった3歳馬はデビュー以来6戦がすべて東日本地区での競馬。関西では走ったことがない。普通に考えれば来シーズンの目標は大阪杯と宝塚記念であろうから、ついに関西のファンの前に姿を現すだろうか。裏有馬は楽しい体験だったが、来春はエフフォーリアの競馬も見てみたい。
***** 2021/12/26 *****
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