史上初の2歳GⅠ完全制覇
あらためて昨日の阪神JFについて書く。
3番人気のサークルオブライフが、直線一気の末脚で2歳女王の座をもぎ取った。スタートを決めて中団に待機。「(末脚を)信じていた」というミルコ・デムーロは直線を迎えると鞍上は迷うことなく大外へ持ち出した。その上がり3ハロンは33秒9。しかも徐々に加速度を増していたから凄い。最後は他馬をねじ伏せるように先頭ゴールを果たした。
同距離の重賞を勝っていながら1番人気をクリスチャン・デムーロのナミュールに譲っていたミルコにしてみれば、兄の貫録を示した格好になる。この勝利によって、朝日杯FS(アドマイヤマーズ)、ホープフルS(サートゥルナーリア)、全日本2歳優駿(ルヴァンスレーブ)と合わせ、国内4つの2歳GⅠレース完全制覇を達成した。
これについて「福永祐一騎手に続く2人目の2歳限定のGⅠ完全制覇」と書かれた記事を見かけたが、これは厳密には正しくない。福永騎手は全日本2歳優駿を勝っていない。つまりミルコは史上初の栄誉に預かるべき。しかもその4頭ともが、デビューから全レースの手綱をミルコが取り続けた上での勝利だったことに大きな価値がある。
一流ジョッキーでも乗り替わりと背中合わせのこのご時世。キャリアの浅い2歳戦ですら馬柱の騎手欄に同じ名前が並ぶ馬を探すことは難しい。昨日の阪神JFでもデビュー以来ずっと同じジョッキーが手綱を取り続けていたのは、18頭中5頭だけだった。その5頭のうちの2頭によるワンツーフィニッシュは何かの示唆ではあるまいか。
「新馬戦から毎回上手に走るようになっています。2戦目は出遅れましたが、それからはスタートが上手くなりました」
「ずっと信じていました」
ミルコのこんなコメントを持ち出すまでもなく、今回の勝利は騎手と馬との絆によってもたらせたように思えてならない。ここ2戦の出遅れを自らの手綱で体感していたミルコと、前走で出遅れたことを知らされていただけのクリスチャンとでは、やはり前者に分があろう。それを承知で多くのファンは後者を支持したわけだが、その明暗はいきなり、そしてあまりにも鮮明に両者を分けた。もちろん偶然の可能性だってある。とはいえ競馬は結果がすべて。近代競馬400年の歴史は偶然と必然とが複雑に絡まりあって紡がれてきた。
しかしその一方で、私が昨日の阪神JFの結果に必然を感じるのは、サークルオブライフが国枝調教師の管理馬であるからだ。アパパネ、アーモンドアイ、そしてアカイトリノムスメの国枝厩舎から、またも牝馬のエース候補が誕生した。こうなるともはや必然としか思えない。冬枯れの仁川に桜の景色が一瞬だけ垣間見えた気がした。
***** 2021/12/13 *****
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