競走馬のおなまえ
NHK総合の番組「日本のおなまえ」をご覧になっただろうか。今日のテーマは「珍名馬!難読馬!ビックリ競走馬ネームSP」。すなわちビックリシタナモーであり、スモモモモモモモモであり、「モチが粘る~」である。小田切有一オーナーへのインタビューや馬名審査会の潜入取材など、ゴールデンタイムのNHKとしてはかなり攻めた内容だった。スタジオゲストの杉本清さんの声を久しぶりに聞けたのも嬉しい。難読馬の1頭として紹介されたシンボリルドルフの映像には思わず観入った。
馬名は競走馬に対するイメージを大きく左右する。それを思うと「ディープインパクト」や「アーモンドアイ」という馬名はつくづく素晴らしい。2歳戦が佳境を迎えるこの時期、血統でも馬体でもなく、その馬名に感心させられる機会も増える。
最近ではペットにも様々な名前を付けるが、ちょっと前までは犬や猫の名前には「シロ」「ポチ」「ブチ」「トラ」「ミケ」などと、毛色をそのまま使っていた。馬も同じで、昔はよほどの名馬でなければ馬に名を付けることはせず、たいていの馬は「アオ」や「クロ」など毛色で呼ばれていたのである。
平家物語「宇治川の先陣争い」のシーンでは、「池月」と「磨墨」という2頭の名馬が登場する。「磨墨」は墨のごとき黒毛馬であるわけだが、「池月」は人でも馬でも誰彼となく噛みつく凶暴な性格から「生食(いけじき)」の名が付き、のちにそれが「いけづき」へと変わったとされる。当時としては例外的な命名からは、その性格の荒さが相当なものであったことが伺い知れる。
近大競馬の祖国イギリスにおいても、馬名はさほど重要視されていなかったようだ。1797年のダービー馬の名前「Colt by Fidget」からもそれは伺える。すなわち「種牡馬フィジェットを父に持つ3歳牡馬」。馬名欄に残るのはそれだけである。イギリスにおいても、よほどの馬でなければ馬に名前を付けるということはしなかったのであろう。
我が国で馬に名前を付けるようになったのは、幕末に洋式競馬が導入されてから。外国人が競走馬に毛色ではない名前を付けているのを見て、それに倣ったようだ。最初は、漢字とカタカナが入り乱れて、字数にも制約はなかったのだが、時代を経て「2文字以上9文字以下のカタカナ」という大原則に辿り着いた。
「日本人のおなまえ」でも紹介されていたが、かつては1文字の名前を持つ馬もいた。1934年4月14日の京都でデビューしたアラブの「ヤ」である。杉本清さんがおっしゃるように「矢」にちなむ命名であろう。だが、残念ながらその後ヤ号が活躍した形跡はない。
ちなみに「日本人のおなまえ」は土曜朝10時05分からNHK総合で再放送される。当日の競馬と重なる時間帯だが、今日の放送を見逃したという方はチェックしておこう。
***** 2021/12/16 *****
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