粉もんの街で
先週金曜日に偉い人を交えて忘年会が行われることになっていた。しかし同じ日に東京から知人が来阪。日帰りだという彼をそのまま帰すわけにもいかないから、忘年会の始まる時間まで軽く飲みに行こうと誘うと、「粉もんが食べたい」と言う。
それで天三の「ゆかり」を訪れた。私自身、大阪に来てまる一年が経つけれど、お好み焼き屋さんに入る機会はそれほど多くはない。なぜか。おひとり様だと1種類を食べただけでお腹いっぱいになってしまうのである。できることなら2種類くらい味わいたい。ピザみたいに「ハーフ&ハーフ」を作ってくれないものか。
しかし二人で入店すれば話は別。めでたく3種類のお好み焼きを完食した。ひとり1.5枚ならどうということはない。満足して忘年会の会場へ。歩くこと3分。指定された「オセロ」という店に入ってみれば、なんとお好み焼き屋さんではないか。えっ? まじか……。
なるほど。焼くときにパタンパタンとひっくり返すから「オセロ」なのか。そんな店名のカラクリに気付いた時はもう遅かった。お好み焼き屋さんのハシゴは正直きつい。粉もんは腹が膨れるのである。とはいえそこは偉い人の集まりだから、「実はたったいまお好み焼きを食べてきたばかりで……」なんて口が裂けても言えない。聞けば関東人の私のためにわざわざお好み焼き屋さんをチョイスしたのだという。うう…(涙)それは嬉しいです。……頂きます。
なんて言いつつ、終わってみればここでも3種類のお好み焼きをペロリとたいらげてしまった。こちらのお店のお好み焼きは腹にもたれることもなく、サクッと軽い。食べようと思えばいくらでも食べられそうだ。
そして翌土曜も東京からの来客をもてなすというので、指定された店に行ってみれば、案の定お好み焼き屋さんである。もう驚かない。
東梅田の「つる家」さんは創業70年の老舗。こちらのソースはピリリと辛い。これには地元大阪在住の若い奴も驚いていたが、ベテランの大阪人に言わせると「昔はこのソースが普通だった」という。
彼に言わせればマヨネーズの方が邪道らしい。たしかにタコ焼であれ、お好み焼きであれ、「マヨネーズかけますか?」と聞かれるのは日常茶飯事。嫌う人が多いことの裏返しであろう。粉もんの美味しさはソースの香ばしさがあってこそ。マヨネーズはそれを台無しにしてしまうとベテラン氏は力説する。マヨネーズが当たり前と思っていた私は、やはり粉もん素人に違いない。
そもそもこの「粉もん」という言葉自体が間違っているそうだ。「本当の大阪人はそんな言葉使わへん」とベテラン氏は言い切る。「タコ焼き食べに行こか」とか「お好み行こか」と言うことはあっても、「粉もん食べに行こか」とは言わない。でも便利な言葉なのでタイトルに使わせてもらいました。とにかく大阪のお好み焼きはどのお店で食べても美味しい。ただ、それを言うとたいてい「ウチの家で焼いたやつがいちばん美味いけどな」と言われる。なるほど。知らないことはまだたくさんある。
***** 2021/12/22 *****
| 固定リンク
「競馬」カテゴリの記事
- 【訃報】スティンガー(2023.09.21)
- オールカマー、いまむかし(2023.09.22)
- クラブ興隆の果てに(2023.09.20)
- 阪神パンステークス(2023.09.19)
- 甦る血(2023.09.18)
コメント