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2021年11月30日 (火)

師走の光景

JRAは開催替わり。今週から中山、中京、阪神の3場開催となる。とくに阪神は10月から続く3連続開催の終盤戦。馬場状態にも注意を払いたい。

JRAの開催日数が年間288日で固定化して久しい。来年も288日とする旨発表があったばかり。この数字は東京、中山、京都、阪神のいわゆる4大競馬場が各5開催、中京、新潟、福島、小倉が各3回、札幌、函館を各2回の開催としていた長年の慣習に基づいている。1開催は8開催が原則だったから36開催×8日=288日というわけ。ちなみにJRA(当時は中央競馬)が初めて通年開催を行った1955年の開催日数は197日だったというから隔世の感がある。

今では1開催8日間の原則は形骸化したが、競馬場ごとの開催回数はさほど変化はない。しかし、競馬場の改修工事が入ったりすれば、その分が他場に振り当てる必要が出てくる。今年は京都競馬が大規模改修工事のため1日も開催されなかった。今週から始まる開催が「6回阪神、6回中京」となっているのはそのせい。中京を2開催、小倉を2開催、阪神を1開催それぞれ増やすことで、京都の5開催分を割り振った結果だが、失礼ながら中京にローカル開催のイメージを抱く身としては「6回」のインパクトは大きい。今年ほど中京競馬を観た年は無かった。

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それでなくても今年は地震被害を受けた春の福島が新潟に振り替えられたり、夏季五輪の都合で北海道シリーズの函館・札幌の開催準が入れ替わったり、暑熱対策で真夏の小倉開催にポッカリ穴が空いたりと、例年とは違う競馬カレンダーを余儀なくされた。新潟で福島牝馬Sが行われ、札幌で函館記念が行われ、小倉で中京記念が行われ、中京で鳴尾記念が行われ、そして阪神で京都大賞典が行われるといった状況に、データ派の面々は阿鼻叫喚の日々を過ごしたに違いない。

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それでもようやく今週からは中山、中京、阪神といつもの師走の光景が戻ってくる。データ派に限らずとも、この開催に安堵を覚えるファンは多いのではないか。競馬に四季の移ろいを感じ、競馬に記憶を重ね合わせることが大好きな日本の競馬ファンは、ことのほか競馬カレンダーに敏感であるような気がしてならない。私もそんなファンの一人。歳の納めはいつもの競馬場でいつもの競馬を楽しみたい。

 

 

***** 2021/11/30 *****

 

 

 

 

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2021年11月29日 (月)

オミクロン株のインパクト

ジャパンカップでブルームに騎乗し、このまま短期免許を取得して日本国内で騎乗を続けると報じられていたライアン・ムーア騎手が、免許申請を取り下げた。理由は裁判出廷のためだという。ともあれチャンピオンズCで騎乗予定だったエアスピネルは他の騎手を探さなければならない。

一方、JCではグランドグローリーに騎乗したクリスチャン・デムーロ騎手も短期免許取得と聞いていたが、彼は大丈夫なのだろうか? 裁判に出廷する予定はなさそうだが、なにせ世界的にオミクロン株の猛威が喧しい。岸田総理は今日、全ての国を対象に新規入国を原則停止すると表明した。入国制限の動きは世界各国に広がり始めている。既に日本入国は果たしている彼ではあるが、いったん出たらもう入れない。果たしてどうするのか。

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思えばコロナ禍以前のJRAは外国人騎手天国だった。2017年9月の神戸新聞杯から12月の中日新聞杯まで、実に12週連続で外国人騎手が重賞を勝利したことはその象徴であろう。当然ワリを喰うのは日本人騎手。とくに若手騎手たち。それでも腐ることなく精進を重ねてきた日本人ジョッキーも確かにいた。

今日時点で騎手リーディングベスト10には横山武史、岩田未望、横山和生の20代3騎手がランクインしている。さらに12位に菅原明良、15位には鮫島克駿と続く。今年ほど若手ジョッキーの台頭が著しい年は久しぶり。その背景にコロナ禍による外国人騎手の不在があったことは間違いないが、そのチャンスを確実につかみ取ることだって簡単ではない。さらに団野大成や坂井瑠星といったあたりも着実に勝ち星を伸ばしてきた。だがそこにクリスチャン・デムーロが来る。勢いづいた若手騎手にとってみれば心中穏やかではあるまい。

政府によれば、オミクロン株が確認された国から帰国する日本人に対しても、指定された施設での隔離を義務づけるという。そうなれば日本馬の香港遠征にも少なからず影響はありそうだ。香港では既にオミクロン株が確認されている。少なくともC・デムーロ騎手が騎乗することは難しい。JRAは香港国際競走の国内での馬券発売を発表したばかり。今年も日本馬の活躍が大いに期待されるラインナップだけに、12月12日の香港が若干心配になってきた。

 

 

***** 2021/11/29 *****

 

 

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2021年11月28日 (日)

特別な三冠馬

多くの競馬関係者そして多くの競馬ファンが、勝負や馬券を離れて期待した通りのレースが繰り広げられたジャパンカップだった。福永騎手の涙に思わずもらい泣きしそうになったのは、ひとり私のみではあるまい。歓喜と消沈。重圧と焦燥。コントレイルの現役生活を支えた人たちの2年2か月間の労は察するに余りある。失敗できない最後の仕上げ。大きな大きな仕事を為し遂げた男の涙に拍手を送りたい。

産駒によるJRA2500勝を史上最速で達成したディープインパクトではあるが、後継種牡馬争いは混沌としている。今年で10年連続のリーディングサイアーは確実。GⅠホースも多数輩出していながら、突出した一頭が現れないでいる。決して産駒のレベルが低いわけではない。逆にレベルが高い産駒が多過ぎるあまり、産駒同士によるGⅠタイトルの奪い合いが起きた結果であろう。

そんな中、コントレイルはディープインパクト産駒の牡馬として初めてGⅠ4勝の壁を打ち破った。しかも2歳、3歳、そして古馬になってからもGⅠタイトルを積み重ねたことには大きな価値がある。過去の3冠馬にこれを為し遂げた例はない。そういう意味で、今日のジャパンカップは「有終の美」という意味合い以上に大きな意義があった。

なんて偉そうなことを言っておきながら、実は私はコントレイルをこの目で見たことがない。関西馬でありながら関西地区で走ったのは3回のみ。むろん新型コロナの影響も大きい。振り返ればこの春の大阪杯が唯一のチャンスだった。だが、大雨に怯んで観戦を見送ってしまったのである。我ながら情けない。それでここに載せる写真を昔の3冠馬にせざるを得なくなった。

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たとえコースから遥か遠く離れた競馬場の片隅からであっても、現場で味わった印象はTVのそれを上回る。ミスターシービーが2着に負けた毎日王冠はピョンピョン飛び跳ねながら、かろうじて吉永正人騎手の姿を観た。シンボリルドルフの国内引退レースとなった有馬記念は背後から圧し潰されそうになりながら中山4コーナーのラチにしがみついて観た。写真は残っていなくても私の中での三冠馬の印象はしっかりと脳裏に刻みついている。コントレイルにそれがないのは残念というほかない。

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「見る」と「観る」は同じようで違う。特に後者には「つまびらかに見きわめる」の意味がある。漠然と見るのではなく、気持ちを込めて観なければ、本当の意味での「観戦」とは言えまい。

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スポーツは「観る」ことで今日の発展を得た。「観る」というのは単純に眺めることではない。競技者の息遣いを感じ、時に心をも通わせ、その場の熱を感じなければ観たことにはならない。新型コロナの世の中に希望を与えるかのように走り続けたコントレイルのレースは、そのほとんどが無観客と観客制限の繰り返しだった。彼のレースをひとつでもナマで観ることができた人は自慢して良い。特別な三冠馬の稀少な目撃者だ。

 

 

***** 2021/11/28 *****

 

 

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2021年11月27日 (土)

見る目

今日の東京5レースで行われた新馬戦は芝のマイル戦に16頭。好発から内目の3番手でレースを進めた柴田大知騎乗の3番人気コウキが、直線坂下でラチ沿いから先頭に踊り出ると、デコラシオンに半馬身差をつけて優勝した。良馬場の勝ち時計は1分36秒5。

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私にとっての今年の東京競馬はこれにて終了。このあとは眼科を受診して、明日の朝には大阪に戻る。この馬を見るためにわざわざ東京に足を運んだと言っても過言ではない。だから喜びもひとしお。それというともコウキの母・ナリタシルエットにも、その母・ナリタレインボウにもひとかたならぬ縁があればこそ。そういう馬の産駒がJRAの新馬戦で勝つシーンに立ち会えるなんて、なかなかない。そもそも新馬を勝つこと自体が難しい。

コウキの父はエピファネイア。先日発表された社台スタリオンの種付け料は1800万円で来年度の国内最高額となる見込みだが、コウキ自身は昨年夏のセレクションセールで1100万円で落札されている。購買側としてはお買い得。それを「見る目がある」とするのも間違っていないが、セールという枠組全体を考えれば正当な値付けができていないのだから見る目がない。

今日の新馬戦で1番人気2着のデコラシオンは社台ファーム生産で4000万円。2番人気3着のヴィアルネッサンスはノーザンファーム生産で5000万円。それを1100万円の日高生産馬が負かした。もちろん、社台もノーザンも見据える先は来年のクラシックであろうから、今日のレース結果ひとつで結論が出るものではない。だから1000万円の馬が5000万円の馬を負かしたと、面白がるつもりもない。

馬の価格は馬の強さではなく、その馬を手に入れたいという欲求の強さによって決まる。そういう意味では「見る目がない」のではなく「見てもいない」のであろう。少なくとも馬券予想の役に立つ要素ではない。それでもメディアは価格を書き立てる。キャリアの浅い2歳馬には、それくらいしかネタがないのであろう。

コウキの生産牧場にお祝いの電話を入れると、コウキの母・ナリタシルエットはこの春に亡くなってしまったという。それは知らなかった。なにせ牧場には2年以上も顔を出していない。つくづくコロナのご時世を実感する。ほかにもいろいろと変わってしまったとのこと。期せずして長電話になった。切り際はちと早いが「よいお年を」。師走も近い。

 

 

***** 2021/11/27 *****

 

 

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2021年11月23日 (火)

神様に会いに

午前中にポッカリ時間が空いたので、今日も今日とて京都を歩いてきた。目指すは上賀茂神社。9月にも訪れたが、そのときは神馬「神山(こうやま)号」がお休みしていた。仕方なく鳥居脇に店を構える「神馬堂」のお餅を食べて引き揚げた覚えがある。

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今回はそのリベンジ。この秋いちばんの冷え込みをものともせず鴨川沿いを歩き続けると、鮮やかな朱色の鳥居が見えてきた。

祝日ではあるが人出は土曜ほどではない。寒さの影響もあろう。それでも、神馬舎の前には人だかりができていた。今日、勤労感謝の日は新嘗祭が行われるので神山号も出勤しなければならない。お疲れ様です。

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神山号は御覧の芦毛馬。秋の日差しを浴びて白く輝く馬体と紅葉のコントラストが実に美しい。

芦毛馬を見て血統を気にするのは競馬ファンの性(さが)であろう。一方で神馬は神の遣いであり信仰の対象でもある。神馬は神馬。血統を気にすることは神への冒頭かもしれない。

だが、既にニュースにもなっているのでバチが当たることもなかろう。実はこの神山号は「マンインザムーン」の名前で競走生活を送っていた。しかも母はダンスインザムードという良血である。父チチカステナンゴの初年度産駒として牧場の期待も高く、社台レースホースでは1億円の募集価格が設定されて話題にもなった。しかし2年半の現役生活で挙げた勝利は2勝のみ。もちろん種牡馬になることはできなかったが、こういう仕事に就けたことは幸運と言って良かろう。引退馬の幸せは種牡馬や繁殖牝馬になることだけはない。

神山号は神様であるからお参りするとご利益がある。ただし参拝の方法はちょっと変わっている。賽銭箱にお金を入れて二礼、二拍手、一礼するのではない。いくばくかのお賽銭を支払うとニンジンがもらえるので、それを食べさせてあげるのが参拝の作法である。

普段はお賽銭の額を十円と決めている私だが、さすがにここは百円を奮発。それを見ていたのかニンジンを口元に持っていくともぐもぐと勢いよく食べてくれた。これは好感触。もはやジャパンカップの馬券は的中したも同然だ。

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念ために書いておくが手は出さない方がよい。マンインザムーンが2勝に留まったのは、その気性の荒さのせい。私はそれを知っているが、それを知らない参拝客が顔を撫でようとして手を出したその瞬間、ブン!と頚で跳ねのけられて驚いていた。まるで「軽々しく触るな!」と言わんばかり。さすが神様ですね。現役時代を彷彿させる仕草に嬉しくなる。11歳はまだまだ若い。

 

 

***** 2021/11/23 *****

 

 

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2021年11月22日 (月)

難題山積

先週あたりからちと忙しい。いや、それまでもやれ東京だ鳥取だと忙しかったがブログはどうにか書けていた。どれだけ身体が忙しくても頭に余裕があればブログはどうにかなる。移動しながらでもネタは考えられますからね。

ところが、ここのところ身体よりも頭の方が忙しくて困っている。つまり四六時中競馬以外のことを考えてなきゃなない。それほど難題山積なわけですな。アレコレ考えている間に日が暮れる。難解さはマイルチャンピオンシップの馬券検討の比ではない。勢いブログも滞る。

Smart

おとといは娘がやって来たので京都を案内した。錦市場から寺町通りに抜けて「スマート珈琲」でお昼を食べ、八坂神社、知恩院、南禅寺、永観堂とハシゴ。その間も頭の中は仕事の難題ばかりである。紅葉は素晴らしいが、さすがに人も多い。人込みに揉まれながら「さて、どないしたもんか……」と自問を繰り返す。この日は東スポ杯が行われていたはずだが、それについて考えた覚えはない。祇園をぶらぶらしてから馴染みの店に入ると店内はほぼ満席。ギリギリで席にありつけた。

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女将によれば今年いちばんの賑わいとのこと。そんな日を選んで訪問してしまったのは申し訳ないが、これは娘の都合なので仕方がない。しかしそれでもコロナ前に比べれば空いている。2年前、京都2歳Sを観た夜に河原町に繰り出したら、あまりの人込みで歩道が埋まって身動きが取れなくなり、溢れた人が車道を歩く光景にドン引きした覚えがある。

「そこまでいかないにしても、お客さんが戻ってきて良かったですね」

女将にそう伝えると微妙な表情になった。お客は嬉しいが、人が増えるのはちょっと怖い。そのぶん第6波が大きくなるのではないか―――。

これを杞憂に過ぎぬと笑うことはできない。これまで舐めた数々の辛酸を思えばむしろ当然であろう。飲食店ばかりではあるまい。京都に住まれる多くの方が不安を抱いているとしたら、我々もわずかばかり心が痛む。

JRAは12月も入場制限を継続すると発表した。ジャパンカップ金曜発売の発表に際しても「分散来場にご協力ください」の一文を忘れていない。新型コロナ対策は変わらず続けられている。

今日の全国の新型コロナ新規感染者は50人。陽性者が低い月曜日ではあるがこの1年間で最少となった。とはいえ新型コロナが消滅したわけではない。そして私が抱える難題が解決する見通しも立っていない。まったくもって困ったことだが、あらゆる困難は必ず乗り越えられると信じて日々を過ごすしかない。それが大人というものであろう。

 

 

***** 2021/11/22 *****

 

 

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2021年11月17日 (水)

藤井聡太四冠に思う

今日11月17日は「将棋の日」らしい。将棋界は竜王のタイトルを獲得した藤井聡太さんの話題でもちきり。将棋の八大タイトルのうち王位、叡王、棋聖、そして竜王のタイトルを獲得し、史上最年少での四冠を達成したという。すごい19歳ですね。私が19歳の時分を思うと恥ずかしくなる。

競馬ではナリタブライアンが1994年の皐月賞、日本ダービー、菊花賞、有馬記念を制して「四冠馬」と呼ばれた。また、2001年には南関東のクラシック三冠(羽田盃、東京王冠賞、東京ダービー)とジャパンダートダービーを制したトーシンブリザードが「四冠」の称号を得たこともある。

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南関東はともかく、本来「冠馬」の称号はクラシックレースに対して与えられるべきもの。細かいことを言うようだが、国際的に通用する称号でもある以上、けじめはつけておきたい。

しかし日本ではシンザン以後、天皇賞、有馬記念を含めて「四冠馬」「五冠馬」と冠対象レースが拡大され、ついにシンボリルドルフやディープインパクトなどは「七冠馬」と呼ばれるようになってしまった。

一生に一度しか出られない3歳クラシックレースと、現役を続ける限り何度でも出走できる古馬GⅠレースとでは、たとえ格付けは同じGⅠであったとしても、その価値は明らかに異なるはず。しかも最近では男女平等の視点からか、牝馬限定のGⅠレースも均等視する風潮もあり、デアリングタクトを「三冠馬」と呼んだり、グランアレグリアに「五冠」を使うメディアも現れた。その一方で桜花賞、オークス、ダービーを勝ったクリフジが「三冠馬」の称号を得ぬのは明らかに矛盾であろう。そもそも秋華賞はクラシックレースではない。

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かつてナリタブライアンの引退を報じる記事に「4冠馬 GⅠ5勝」と書かれたことがあった。それなら「三冠馬 GⅠ5勝」と書いた方が分かりやすいし、むしろ正しい。混乱の要因となり得るような称号の濫用は避けるべきだ。

障害やダートグレードを含めれば年間33ものGⅠレースが行われ、しかも競走馬の現役期間は伸びる傾向にある。今週のマイルチャンピオンシップでグランアレグリアが連覇を果たしたら、果たして「六冠馬」と呼ばれるのだろうか?

無用な混乱を避けるためにも「冠馬」の称号はあくまでもクラシック5レースのみと既定し、GⅠのタイトル数については別の名称を考える時期にきているような気がする。そういう意味では将棋の「冠」の方がすっきりして馴染みやすい。

 

 

***** 2021/11/17 *****

 

 

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2021年11月16日 (火)

ジャガイモは美味しい

現在活躍しているほとんどの競走馬の血統表を遡れば、その父系(一番上のライン)に「Pot-8-O's」という馬名を見つけることができる。その父親・エクリプスは競馬ファンなら誰もが知る名馬。だが、実質的にその血を伝える役割を果たした Pot-8-O's については、意外なほどあまり知られていない。

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そもそも、これをなんと読めば良いのか?

正解は「ポテイトーズ」。この馬、もともと「Potato」という名前だった。ポテト。つまりジャガイモである。だが、馬丁が「Potato」の綴りを知らず、「Potoooooooo」と書いたところ、面白がった馬主がそれを正式馬名にしてしまったという。一説には、この馬丁が前夜に食べた料理がたいそう美味く、その料理の材料を人から聞いて厩舎の壁にメモしていただけとも。まあ、たしかにジャガイモは美味い。馬丁さんの気持ちはよく分かる。

何を隠そう私はジャガイモが大好き。居酒屋に行けば、間違いなくポテトフライを注文するし、馬見で北海道に行くときも、牧場に向かうよりもまずジャガイモを箱買いして自宅に送ることを優先している。好みは「インカのめざめ」。東銀座『いろりや』で出される「インカのめざめ」のポテトフライは、イモの甘み、皮目のほのかな苦み、そして歯応え。まさにパーフェクトで、いつも一人で二皿を食べ切っていた。大阪に居ながら思い出すと、なおさらその味が懐かしい。

大阪に来てまもなく1年、野菜を購入したことなどなかったが、今日近所のスーパーで「インカのめざめ」を見つけて思わず買ってしまった。さっそく茹でてじゃがバターで頂く。そのほっこりとした絶妙な食感がなんとも言えず美味い。誰もいない部屋で思わず「あー、これこれ!」と叫んでしまった。

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ちなみにエリザベス女王杯でアッと言わせたアカイイトのお父さんはキズナで、そのお父さんはディープインパクト。そのまたお父さんはサンデーサイレンス。そのようにして、ずーっと父系を辿っていくと、22代目に Pot-8-O's の名前が登場する。

Pot-8-O's は4歳から10歳まで走って通算34勝(諸説あり)。名馬エクリプスの代表産駒として、生誕から248年を経た現代においても、ほとんどの競走馬の血統表にその不思議な名を残している。これも、件の馬丁が食べたジャガイモが美味しかったおかげ。食べ物の味が競馬史を彩ることもある。

 

 

***** 2021/11/16 *****

 

 

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2021年11月14日 (日)

赤は赤でも

エリザベス女王杯の歴史は波乱の歴史。古馬2200mになった1996年以降でもメジロドーベルやアドマイヤグルーヴ、ダイワスカーレットといった名牝が結果を出す一方で、クィーンスプマンテやレインボーダリアといった伏兵の勝利に驚かされてきた。

3歳限定だった頃はもっと凄い。サクラキャンドル10番人気、タケノベルベット17番人気、1989年サンドピアリスに至っては空前絶後の20番人気での勝利である。

だから今日のエリザベス女王杯にしてもアカイイトが勝ったこと自体に驚くことはない。言っても10番人気である。ただ、その勝ちっぷりには正直驚かされた。3コーナーから自ら仕掛けて1番人気レイパパレを負かしに行っての勝利は中身が濃い。しかも、それを見ながら動いたライバルたちを寄せつけぬどころか、逆に2馬身も突き放してゴールした。GⅠでの2馬身差は紛れではない。こんなにも強い馬がなぜ最近まで条件戦をウロウロしていたのか、それに驚いたのである。

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気になるのはアカイイトの今後である。いきなりスターダムにのし上がったシンデレラはどこを目指すのだろうか。クロノジェネシスが有馬記念で引退を表明し、ラヴズオンリーユーも3月までの引退が濃厚。「強い牝馬」の時代にあっても世代交代は避けられない。まずは同期の3冠牝馬デアリングタクトとの初対戦が実現することを期待しよう。キズナとエピファネイアの娘同士の対決となれば血統的興味もいや増す。

それにしても、である。今日は大阪在住のベテラン馬券師と同行したのだが、その人物は「赤は赤でも…みたいなことになるんちゃうか?」とずっとアカイイトを気にしていた。それでも実際に買うとなると難しい。人気馬3頭に死角が多かった分、それに続く伏兵の層が厚くなったせい。レース後の反省会では「赤は赤でもなぁ……」とため息の連続。その瞬間強烈なデジャヴューに襲われた。

「ベガはベガでもホクトベガ」

そんなフレーズが話題になったのは28年前のエリザベス女王杯。歴史的名牝ホクトベガの伝説は、あそこから始まったと言っても良い。アカイイトにもそれに負けないくらいの活躍を期待しよう。

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***** 2021/11/14 *****

 

 

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2021年11月13日 (土)

前哨戦

土曜日ながら東西で重賞が3鞍行われる。いずれも年末の大一番を見据えた前哨戦。本番に繋がるヒントを見逃してはならない。

京都ジャンプ(JGⅡ)を勝ったのは2番人気ケンホファヴァルト。JGⅠを連続2着しているので、格上的存在なのかと思いきや、意外なことにこれが重賞初勝利であった。

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ケンホファバルトは8歳馬。1番人気ながら3/4差及ばなかった2着のタガノエスプレッソは9歳馬。ついでに激しい叩き合いを制した熊沢騎手は再来月に54歳を迎える。いやはや皆さんお元気ですね。53歳の私は東京2往復の間に鳥取往復を挟む1週間を過ごしたせいで、競馬場内を歩くのもしんどい。「ヒントを見逃すな」とか言っておきながら、今日は一度もパドックに足を運ばなかった。馬券を買うために立ち上がるたびに「よっこらしょ」などと言ってしまう始末。つくづく熊沢騎手は凄い。

自席に座ったままモニターで武蔵野S(GⅢ)を観る。勝ったのは3番人気ソリストサンダー。こちらも6歳にして初重賞制覇であった。勝ち時計は1分35秒0.2着エアスピネルに1馬身1/4差なら完勝であろう。だが、ソリストサンダーは昨年の武蔵野Sにも出走してサンライズノヴァの2着だった。タイムは1分35秒1だから今年とほぼ変わらない。しかも3着はエアスピネルでソリストサンダーとの着差も1馬身1/4だったのである。つまり、今年の武蔵野Sの1・2着馬の走りは去年のほぼ再現で、サンライズノヴァがいなかっただけ、という見方もできなくない。

最後はデイリー杯2歳S。7頭という頭数の割には迫力のある好だった。今年が56回目という歴史と数少ない2歳GⅡの格式はダテではない。

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1分35秒1の勝ち時計は平凡だが、これはペースの問題。そのせいで上がりが極端に早くなったが、それを差し切ったところに価値がある。これで3戦3勝。すべてマイル戦。そしてダイワメジャー産駒となれば、2018年のこのレースの覇者アドマイヤマーズを連想せずにはいられない。

思えばアドマイヤマーズの勝ったデイリー杯も時計は1分35秒4と平凡だった。それが原因で朝日杯では牝馬のグランアレグリアに1番人気を譲っている。しかしレースでは圧勝。2歳馬の評価を時計だけに頼ってはいけない。セリフォスについても同じ。前哨戦をしっかり見届け、その走りっぷりから溢れるスケール感、すなわちフィーリングを大事にした上で、我々も本番を迎えよう。

 

 

***** 2021/11/13 *****

 

 

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2021年11月10日 (水)

砂場にて

ヤボ用で鳥取を訪れた。

むろん競馬絡みではない。鳥取駅から徒歩数分の会社を訪れて1時間ほど会議をしてすぐに帰った。それだけ。そのために往復6時間をかけるのだから時代に逆行していると言われても仕方ない。とはいえ、今日に限ればわざわざ行く理由もあった。

ともあれトンボ帰りでは砂丘に行く暇もない。とはいえコーヒー程度なら飲んでも良かろう。そこで「鳥取のスタバ」こと「すなば珈琲」を訪れてみた。熱く濃い一杯をすすりつつ、昨日付けに書いたコーヒーの原理について思いを巡らせてみるも、何ひとつ思い当たるものはない。

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なので「コーヒー」ではなく「砂場」の方について考えてみた。

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ソダシの次走がチャンピオンズカップと報じられて話題になっている。クロフネ産駒にもダート巧者は多い。母系にもダートの活躍馬を多数輩出している。ソダシの秘めたる本領が発揮される舞台は、実は「砂場」である可能性は極めて高い。

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まだ時間があるので駅構内の「砂丘そば」の暖簾をくぐってみた。

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「砂丘うどん」というメニューがあったので注文。当たり前だが砂は入っていない。代わりにアゴ竹輪の輪切りが二切れ。麺は駅そばにありがちなごく普通の茹で麺だが、ダシは美味い。

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しかし頭の中はダシよりもソダシである。ソダシの父クロフネは3歳春までは芝路線を歩み、レコードを連発。秋になって活躍の場をダートに求めると、さらに圧倒的なパフォーマンスで世界の競馬関係者の度肝を抜いた。ソダシも父の後を追いかけ、そして追い付きたい。世界が衝撃を受けたあのJCダートから20年。今年のチャンピオンズカップは伝説の一戦になるかもしれない。

 

 

***** 2021/11/10 *****

 

 

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2021年11月 9日 (火)

記憶の彼方のJC

先日訪れた「ジャパンカップとその時代」の会場でもらったパンフレットをパラパラとめくってみた。ジャパンカップも迎えて今年が41回目だという。競馬中心の生活を送っていると、月日の経つのがことのほか早い。

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第1回ジャパンカップの1着賞金は6500万円。当時の東京芝2400mのレコードタイムは、その4年ほど前のAJCCでグリーグラスが記録した2分26秒3だった。それがいまや1着賞金3億円。レコードタイムもジャパンカップの舞台で繰り返し更新され、今では2分20秒6まで縮まっている。次の40年先は果たしてどうなっているだろうか。なんて、2分半先も見通せないのに、そんな先のことが分かるはずもない。

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いや、先のことはまだしも、覚えているはずの昨日のことすら怪しいのである。今日も地方競馬に詳しい新聞記者とロッキータイガーがシンボリルドルフの2着した1985年の思い出話に花が咲いた。「パドックにロッキータイガーの横断幕が3枚も出ていた」。「桑島騎手の風車ムチは凄かった」。……等々。なのに、去年のジャパンカップに話題が移った時に、その勝ち馬がこない。あれ? 去年勝ったのは……?? 誰だっけ???

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昔のレースは覚えていても、最近のレースが思い出せない。私と同年代の方々なら思い当たるフシもあろう。競馬は記憶のゲームであるから、記憶力の衰退は競馬をつまらなくしかねない。でも、トシには勝てないから、最近ではメモを残すようになった。このブログもそのひとつかもしれない。

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だけど大事なことはどんどん忘れていく。寝しなに大事なことを思い出すことが多いので、枕元にメモとエンピツを常備してあるのだが、そのメモが中途半端だったりして朝になって首をかしげることもしばしば。つい先日も、朝目覚めたら枕元のメモ用紙に、

「コーヒーの原理」

と書いてあった。

「コーヒーの原理」っていったい何だ?

このメモを書いた時の私は、これだけ書いておけば思い出すはずと思ったに違いない。だが、朝起きた私はその時とは違う自分である。とりあえずコーヒーを飲めば何か思い出すかもしれないと思い、慌てて飲んでみたが、何も出てこなかった。かようにひとたび眠ってしまえば、私の記憶は掟上今日子さんの如く忘却の彼方に飛んでいってしまう。しかも忘れたいような嫌なことはしっかり覚えているから始末に困る。嗚呼、眠るのが怖い。

 

 

***** 2021/11/9 *****

 

 

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2021年11月 8日 (月)

メディア業界の未来を憂う

とある業界団体のシンポジウムに出席するため、会場である東京の内幸町に足を運んだ。

この「業界」というのは「競馬業界」ではなく「マスコミ・メディア業界」を指す。インターネットの普及に伴い、ドラスティックな変貌を遂げつつあるメディア産業が生き延びていくためには、果たして何が必要なのか? そしてその中で働く我々が為すべきことは何なのか?

いや実はそんなたいそうなテーマではなくて、今日のところは「失敗学」のお話がメイン。だが、馬券で日々失敗を重ねている身としては、決して他人ごとではない。

それにしても、この手のイベントには毎年参加しているのだが、新型コロナの影響を加味しても年々縮小傾向にあるように思えてならない。休憩時間に供される飲み物を見ていると一目瞭然である。3年前はソーサ付のコーヒーカップに一杯一杯丁寧にコーヒーが注がれていたのが、翌年にはポットと紙コップのセルフサービスとなった。さらに昨年はコーヒーが緑茶に変貌を遂げ、ついに今年は水にまで成り下がってしまったのである。このままでは来年は会場も変更になっちまうんじゃなかろうか。この業界の置かれた現状を暗示しているようで、紙コップの水を飲みながら暗鬱な気持ちになる。

実際「失敗学」に続くセッションでは、この業界の先行きを不安視する発言ばかりが目立った。まあ、当然と言えば当然なんだけど。

ラジオ・出版の惨状は言うに及ばず、TVや新聞さえもがネットに圧される格好で縮小均衡スパイラルに陥っている。意外なのは独り勝ちにも思えたネット分野の伸び悩みで、「あっという間に浸透したのは良いが、著しく収益性に欠ける」という問題に直面しているのだそうだ。すなわちメディア業界全体が、かつてないほどの地盤沈下に襲われているのである。これからメディア産業への就職を希望するような方がこのブログを読んでいらっしゃるとは思わないが、もしいらしたら一考されることをオススメする。

南関東の競馬場で馬を撮っているカメラマンの中にも、写真稼業だけでは飽き足らず競馬場内で飲食店を始めようかと模索している方がいらっしゃる。いや、厳密には「いらした」だな。私自身が南関東競馬場と疎遠になって久しい。まだカメラマンを続けているのかどうかは分からぬが、続けているという前提で話を進める。

「以前は中華料理店で働いていた」とおっしゃっていたくらいだから、多少の心得はあるのだろう。手に職があるというのは何にも増して羨ましい。「場所はどこにしようか」とか「コロッケとラーメンはどちらが収益率が高いか」とか、いろいろ悩まれているようではあるが、私としては是非とも競馬場内に餃子専門店を開業していただきたい。そしたら必ず食べに行くんだけどなぁ。

Utsuke

ともあれ、そんな話が頭にあったから、今日のシンポジウムの内容は余計我が身にしみた。業界の片隅にしがみついてる身としては、やはり他人ごとではないのである。とはいも、気持ちの半分は会場近くのうどん店 だがに向いていたのも事実。内幸町の「うつけ」は霞ヶ関のエリート官僚たちも通うという人気店。肉つけうどんが人気だが、今日は温かい鶏天うどんの気分だった。気づけば昨日は立冬。短い秋が終わりつつある。

 

 

***** 2021/11/8 *****

  

 

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2021年11月 7日 (日)

4日間でBC3勝の快挙

先日行われたばかりのJBCの正式名称は「ジャパン・ブリーディングファームズ・カップ」だが、もともとは米国のブリーダーズカップに倣って創設されたレース。よって当初は「ジャパン・ブリーダーズ・カップ」を謡っていた。名称使用に関して本家米国のブリーダーズカップ協会とひと悶着あったが、「生産者が主体となって運営するレース」というコンセプトは同じ。「1日に複数カテゴリのGⅠレース実施」や「開催場は持ち替わり」という特徴も日米で変わりはない。

Ladies

金沢で行われた今年のJBCではオープニングカードのJBCレディスクラシックをテオレーマが、続くJBCスプリントをレッドルゼルが勝ったが、その手綱を取ったのはいずれも川田将雅騎手だった。

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「川田祭りやな」

「次(クラシック)も勝つんちゃうか?」

「いや、次は乗らへんわ:

「ほなら次はアメリカのBCを勝つんちゃう?」

地方競馬の中でも屈指の難コースと言われる金沢で繰り出した見事な手綱さばきに、目の肥えた地元ファンもお手上げといった表情。しかもその予言は4日後に現実のものとなった。日本時間の早朝、「本場」のブリーダーズカップ・フィリー&メアターフを川田将雅騎手とラヴズオンリーユーが制したのである。日本調教馬によるブリーダーズカップ制覇は初めて。1996年タイキブリザードがクラシックに挑戦(13着)して以来延べ17頭目、四半世紀に及ぶ挑戦がついに結実した。

日本競馬にとって歴史的快挙であることは間違いない。だが、ラヴズオンリーユーの祖父サンデーサイレンスは1989年BCクラシックの覇者であり、母方を遡ればBCマイル連覇の名牝ミエスクが曾祖母に登場することを考えれば、米国競馬にとっても意味のある勝利であろう。

その後に行われたBCディスタフも日本のマルシュロレーヌが勝って、まさかのBC2勝まで達成された。JBCクラシックを勝った吉原寛人騎手の「こんな日がくるとは」というセリフを思い出す。まるで競馬にならずに遥か後方を追走するだけだったタイキブリザードの初挑戦を知る身としては隔世の感を禁じ得ない。

ただ、欧州、香港、ドバイでの日本馬の成績を思えば、日本馬がBCを勝つのは時間の問題だったように思う。今回も勝った2頭はノーザンファームの2頭だったわけだが、多数のオープン馬を抱えるノーザンファームは本格的に海外に狙いを定めている。競馬というスポーツがそもそも世界規模の競争であり、ちょっと油断しただけで国際的な地位を失うことを理解していることがその大きな理由。だが、溢れるオープン馬を効果的に活躍できる舞台が日本国内に整備されていないという切実な事情も無視できない。インディチャンプやサリオスのように、海外遠征をしているわけでもないのに年間3~4走しかしないGⅠ馬もいる。

私としては日本調教馬による初めてのBC制覇が日本人ジョッキーの手綱で達成されたことが嬉しくてならない。海外遠征では外国人のトップジョッキーを乗せるのが当然の時代。嬉し涙にむせぶ川田騎手を観て純粋な感動を覚えたのは、彼が日本人だからである。日米を股にかけて4日間でBC3勝は空前の記録。しかし絶後にはならぬよう祈る。

 

 

***** 2021/11/6 *****

 

 

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2021年11月 6日 (土)

レース選択の謎を解け

明日のみやこSの出馬表を見て驚いた方は多いのではあるまいか。そう、ダート未経験のダンビュライトの出走である。知人が同馬に出資していることから、その動向をつぶさにチェックしてきた筆者としても「意外」の思いを禁じ得ない。

Ajcc

みやこSは今年で11回目と比較的歴史の浅い重賞だが、トランセンド、エスポワールシチー、ローマンレジェンドと、いきなり3年連続してチャンピオン級の優勝馬を輩出し、その立場を確固たるものとした。

一方で、過去にはブライトラインやクリンチャーといった芝の重賞ウイナーがダートでの重賞初勝利を果たした舞台でもある。とくにクリンチャーは2018年の京都記念を勝って昨年のみやこSを制した。2019年の京都記念を勝っているダンビュライトにとっては心強い前例であろう。

今週の重賞には、他にも気になる出走馬が2頭いる。まずは今日の京王杯2歳Sでブービーに敗れたファンデル。馬名の響きからして牡馬かと思えばそうではない。立派な牝馬。しかも関西馬である。そこが分からない。芝1400mの重賞なら今日の阪神でファンタジーSが行われるではないか。なぜわざわざ輸送をしてまで牡馬相手の一戦を選んだのか。来春のNHK杯を意識してのことかもしれないし、敢えて厳しいレースを経験させたいのかもしれないし、ただ単にGⅡの方が賞金が高いからかもしれない。

気になるもう一頭はファンデルとは逆のパターン。ファンタジーSに出走したオルコス。関東所属の牝馬であり、9月の中山でマイルの新馬戦を勝ったことから、同じマイルのアルテミスSあたりを使うのかと思っていたら、わざわざ関西に遠征して6着と敗れた。

関東所属の牝馬がファンタジーSを使うケースは少ない。なぜか。ファンタジーSを使う馬の大半は阪神JFを目標に据えているのだから、短期間の間に2度の長距離輸送を強いられる。そもそもアルテミスSが創設されたのは、そんな経緯もあってのこと。430キロ台のオルコスには酷なシチュエーションに思えなくもない。あるいは、そのまま栗東に入って阪神JFに備えるのだろうか。

馬の調子、相手関係、コース、賞金、騎手の都合に馬主の都合……等々。競馬におけるレース選択は、私よりも競馬に詳しいプロたちが様々な要素を考慮した上で決定する。もちろん外野がとやかく言う問題ではない。だが、それを探ることはファンの楽しみのひとつ。それが馬券に繋がることもある。

みやこSのダンビュライトはAJC杯と京都記念の2つのGⅡを勝っているが、GⅠの舞台ではもうひとつ足りない競馬が続いていた。その理由のひとつに「ダート嫌い」があげられる。そう分析するのは他ならぬ音無調教師である。GⅡまでのレースなら地下馬道から直接本馬場に入ることができるが、GⅠではダートコースを横切って馬場入りしなければならない。そこで馬がやる気を無くしてしまうと言うのだ。

だとすれば、みやこSでは「やる気をなくす」どころで済むはずがない。なにせどこまで行ってもダートである。そういえば追い切りもダートコースは使わず、坂路一辺倒だった。とはいえ、天皇賞やアルゼンチン共和国杯を捨てて、敢えてダートを選んだ理由も必ずあるはず。出てくる以上は、GⅡ・2勝馬の能力全開を期待したい。

 

 

***** 2021/11/06 *****

 

 

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2021年11月 5日 (金)

忘却の彼方へ

歳を重ねるごとに記憶力は総じて低下するものなのだが、忘れてはならないものほど良く忘れ、どうでも良いことは案外ちゃんと覚えていたりするような気がしてならない。

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過去のレースの結果や馬の血統なんかはわりと覚えているくせに、会ったばかりのヒトの顔をすぐに忘れてしまったり、ちょいと先のスケジュールとか約束を完全に失念するようになってしまった。仕事どころか社会生活そのものへの影響をマジで心配しなきゃならん事態である。

スケジュールの話で言えば、具体的に日にちが決まっている予定なら手帳に書いてあるので問題ないのだが、「来月あたり●●さんと打ち合わせ」とか「月末あたりに▲▲たちと飲み会を企画」とか「今度名古屋に行った時に■■厩舎で馬を見せてもらう」みたいな日付を伴わない予定はことごとく忘れてしまう。手帳にもそれらしいことを書き留めてあるはずなのだが、「その日に何をやるか」という見方をしているせいか、そこに書いてあるのに目に入ってこないのである。

今これを書きながら、そういや知り合いの料理人から京都に店を出したと連絡を受けて、「緊急事態が明けたら顔を出します」と返事をしておきながら、すっかり忘れていたことに気づいた。これはすぐに行かねば……と誓ったところで、明日にはそれも忘れてしまいそうだ。

忘れていたことに気付くうちはまだ良い。そのうちに忘れたことさえも忘れてしまうんだろうか……。

こんなにも忘れ癖がひどくなったのは、ここ1~2年の出来事である。思うに、コロナ禍で競馬場に行く機会が激減したことが影響しているのではなかろうか?

最近こそ再び競馬場に行けるようになったが、縁のある馬だったりパドックで良く見えた馬をちょいちょい買う程度。予想紙を睨みながら展開に頭を凝らし、その馬の過去のレースぶりを膨大な記憶の中から甦らせ、己の脳内でありとあらゆるシミュレーションを繰り広げていたかつての馬券とは大きく異なる。まるで頭を使わぬ馬券なのである。

頭のリハビリだと思って、すこしは考えて馬券を買った方が良いのかもしれない。ただ、考えて買ったところで、当たらないことは変わらないのだけど。

 

 

***** 2021/11/5 *****

 

 

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2021年11月 4日 (木)

千人の祭り

昨日の金沢競馬場の入場者数は1023人だった。ちなみに前回のJBC金沢開催では12569人だったから、10分の1以下ということになる。

一般入場が許されたのは事前の抽選で当選した本人のみ。金沢駅のファンバス乗り場でも、競馬場の駐車場でも「当選はがきが無いと競馬場には入場できません」と繰り返し注意喚起されていたが、それでも競馬場で入場を断られている人を見かけた。それも一人や二人ではない。

押し問答になっているのはことごとく年配の男性である。毎日のように競馬場に来ているファンにしてみれば、「昨日が良くてで今日がダメとはどういうことだ?」と言いたくもなろう。競馬場は「すみません。今日はJBCなので」と言うが、正確にはJBCのせいではない。新型コロナのせいだ。

Kanazawa

ともあれ、人もまばらなJBCである。この日曜には2734人が入っていた。昨日はその半分も入ってない。2734人がOKなら、昨日にしてももっと入れても良かったんじゃないか? そんなことを思ったりもする。

しかし、こと新型コロナ対策という視点に立てば、地元客だけの2700人と全国から集まる1000人とは全く異なる。実際、東京で馴染みだった馬主やカメラマンとも遭遇したし、北海道の牧場関係者も大勢来ていた。私だって大阪から来ている。それがJBCのコンセプトのひとつなのだから、やはり新型コロナのせいにするしかない。

Chikin

混雑を避けようと1レース終了後に訪れた食堂もガラガラだった。この店の名物はジャンボチキンフライ。大ぶりのチキンが3個串に刺さっている。今日はJBC仕様で普段よりもさらに大きくしてあるとのことだ。「お祭りだからね」と店主は胸を張る。一本300円。安い。安いが、残念ながら今日の場内はお祭り感には欠ける。

Baum1

入場の際には、ひとりひとりにお土産が手渡された。これもお祭り演出のひとつ。ペットボトルのお茶が2本。レーシングプログラム。JBCのタオル。それに「ぶどうの木」のバウムクーヘン。その名も「ケイバウム」。

Baum2 

金沢市内の有名洋菓子店「ぶどうの木」では「型抜きバウム」という人気商品が販売されている。「パンダバウム」や「にゃんこのバウム」がSNSで取り上げられ全国的に大ヒット。東京・銀座に「カタヌキヤ」という型抜きバウムの専門店があるが、本店はここ金沢である。その競馬版というわけ。これは凄い。さすがJBC。バウムクーヘンに「お寿司ではありません」の注意書きも初めてみた。さすが金沢。

Box

6レースの直前にひと雨あった。逃げるように飛び込んだ「金澤玉寿司」も空いている。普段なら地元の常連で満席だが、今日は初めてのお客さんばかり。注文に四苦八苦しながら、それでもおかみさんが親切に応対しているのがどこか微笑ましい。GⅠ当日とは思えぬ長閑さ。場内実況はレースが進むたびに「緊張感が高まってきました」と言うが、そんなことはないですよ。

Sushi

「金沢の馬に頑張ってもらいたいですねぇ」と私。「そりゃあ無理だろうけど、騎手なら勝てるかも知れんな」と大将。いま思えば、ここに大きなヒントが隠されていた。

Yoshihara

大将の言葉通りにメインのクラシックを制したのは地元金沢の吉原寛人騎手。ゴールの瞬間に沸き起こった拍手の嵐に観衆千人をしばし忘れる。近くに座るファンは「一矢報いた!」と興奮を隠そうとしない。ここに及んでお祭りムードは一気に最高潮に到達した。金沢のファンにすればこれほどの痛快事はあるまい。入場を門前払いされていたあの年配ファンにも、このお祭り騒ぎに参加してもらいたかった。バウムクーヘンはいらないというかもしれないが。

 

 

***** 2021/11/4 *****

 

 

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2021年11月 3日 (水)

8年ぶりのJBC

8年ぶりに金沢でJBCが開催される。前回の覇者はメーディア、エスポワールシチー、 ホッコータルマエの3頭だった。果たして今回はどうか。前回同様、1周1200mの小回りコースへの対応が勝負の鍵を握る。

「まるでショートトラックだ」

前回の金沢JBCではそんな敗戦コメントもあったが、今回も新聞紙上には「コースへの対応がカギ」「これからビデオを見て研究する」「内が不利なんですよね?」など、コースに対する不安が並ぶ。逆に言えば、騎手にとっては腕の見せ所であろう。そういうJBCが8年に一度くらいあっても良い。

Jbc

「内が不利」と聞けば意外に思われるかもしれないが、地方競馬では珍しくない。内側に向かって路盤が低く傾斜しているので、そのぶん砂が深くなっている。内側を走るには余計に力を使わなくてはならない。だから逃げ馬は内ラチから4~5頭分を空けて進路を取る。佐賀競馬場などでもよくみられる光景だ。

水捌け対策の一環ではあるが、外枠救済策と見る向きは少なくない。何もしなければ、小回りコースでは内枠が圧倒的に有利。しかしそれではレースがつまらない。距離の有利不利を砂の深さで帳消しにして公平性を担保しようというのである。

つまり砂の厚さによる不利と距離のロスを最小に抑える最適解を探すことが金沢コース攻略の糸口だ。だが、それは簡単な作業ではない。そもそもコーナーがタイトでうまくコーナリングできない馬もいるほど。馬群も常に密集しており、コース取りはより過酷さを増す。

そんな中、レディスクラシックとスプリントを連勝した川田騎手は凄い。特にスプリントで見せた「イン突き」は見事。逃げるモズスーパーフレアのコース取りがベストより若干外目だったことを見逃さなかった。勝負どころで一瞬だけ内を使うのは地元金沢リーディング達の常套手段。それを大外枠からやってのけるから恐れいる。レコードタイム連発の立役者は川田騎手だ。

Sprint

ただ、そんな「川田祭り」も、この日のプロローグに過ぎなかったのかもしれない。メインのクラシック、地元吉原騎手のミューチャリーが1着ゴールを果たすと、抽選入場で人もまばらなスタンドから、それでも割れんばかりの拍手が沸き起こった。

地方所属馬によるJBCクラシック初制覇である。JBCが創設されて21年。アジュディミツオーでも、フリオーソでも為し得なかった快挙。殊勲の吉原騎手は「こんな日がくるとは」とコメントしたが、20年間の辛酸を間近で見続けてきた私としてもまったく同じ思いがこみ上げた。

Classic

ミューチャリーの頑張りも素晴らしかったが、やはり吉原騎手の好騎乗が光った。3~4コーナーからミューチャリーが選択した進路は、優勝へと続く唯一無二のヴィクトリーロード。吉原騎手にはそのラインがはっきり見えていたに違いない。その進路に沿って巧みに馬を誘導する技術も卓越していた。この舞台を見据えて前走から吉原騎手を配した陣営のファインプレイも賞賛されよう。逃げて7着に敗れたダノンファラオの横山武史騎手が「コーナーが難しい」と言い残したのとは対照的。絶好調の波に乗るJRA騎手をもってしても越えられない壁。「ザ・カナザワ競馬」だった。

 

 

***** 2021/11/3 *****

 

 

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2021年11月 2日 (火)

疲れは見えない

疲労と睡魔と筋肉痛と二日酔いに苦しめられた一日だった。

昨夜は22時頃に就寝。仕事場以外には出かけておらず、走ったり重いものを運んだりもしなかった。酒も飲んでいない。

いったいどういうことか。先週末からのオノレの行動を振り返ってみる。金曜日に大阪の自宅を出て歩いて仕事場へ。昼過ぎに新幹線で東京へ行き、清澄白河で社台の会員さんたちと酒を飲んだ。同じ時間帯に大阪での私の上司にあたる人間が偶然にも同じ清澄白河で飲んでいたらしいが、その奇跡を掘り下げることは控える。

この日は神奈川の自宅に泊まって翌土曜は東京競馬場へ。新馬戦3鞍を見届けたのち、新横浜から新幹線に飛び乗った。新大阪から直接仕事場へ向かってこの日は仕事場に宿泊。翌日曜は仕事場から阪神競馬場である。仁川駅前の「フランケル」で鶏天おろしぶっかけをすすり、カシオペアSを観てから仕事場へ戻り、この日は貫徹。久しぶりに天神橋の自宅に戻ったのは昨日の夕方。倒れるようにベッドに潜り込み、今朝を迎えた。

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昨夜の睡眠時間は13時間ほど。寝過ぎはかえって疲れるとも聞くが、たしかに倦怠感がひどい。仕事場に着くと、その倦怠感は睡魔と筋肉痛に加えて、軽い二日酔いのような症状を伴うようになってきた。

この年齢になると、夜更かしのツケが翌日の朝ではなく夕方にやってくることはある。それが度を越して翌日にまで持ち越されたのかもしれない。筋肉痛も翌日ではなく翌々日に襲ってくることがあるが、今回の筋肉痛が土曜の東京競馬場で散々歩き回った影響だとすれば「3日後」である。そうなると二日酔いは「4日後」に来たということか。よもやとは思うが、昨今の私の身体を思えばあながちないとも言い切れぬ。自分の身体のことなら何でも分かると思ったら大きな間違いだ。競馬では主に敗因として「目に見えぬ疲労」という言葉が使われるが、実は「目に見える疲労」の方が少ないはずだと私はひそかに確信している。

ぼんやりした頭で新聞を開いていたら、エフフォーリアの次走はどうやら有馬記念らしい。昨日ここで「ジャパンカップ」を推した直後だけに残念至極。気のせいか疲れが増した気がした。

一瞬「また使い分けか……」と思う。しかし、もともと間隔を空けて使われて実績を残してきた同馬だけに、中3週を避けたかっただけかもしれない。これまでもっとも短い出走間隔だったのは皐月賞~日本ダービーの中5週。そこで生涯唯一の敗戦を喫していることを思えば、その選択も理解できる。自分の疲労の原因も分からぬ今なら、馬の疲労をコントロールすることの難しさも理解できる。「目に見えぬ疲労」を侮ってはいけない。

 

 

***** 2021/11/2 *****

 

 

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2021年11月 1日 (月)

そしてジャパンカップへ

この土日はリオンディーズ産駒の活躍が目に留まった。

最後方から豪快に追い込んで勝ったインダストリアも、古馬並みのレースセンスを見せたアインシュペンナーも、11番人気ながら後続を4馬身千切ったジャマンも、とにかくインパクトが強い内容。JRA重要勝利も近いのではないか。

ただ、この土日でリオンディーズをしのぐインパクトを残した種牡馬といえば、やはりエピファネイアをおいて他にあるまい。アルテミスSと天皇賞(秋)を相次いで優勝。勝ちっぷりからして鮮烈だった。サークルオブライフもエフフォーリアもこれからますます活躍する。さらにサートゥルナーリアの産駒もいずれここに加わってくるのだと思えば、今年3月に亡くなったばかりの名牝シーザリオがつくづく惜しい。

ところで先週土曜、東京競馬場を訪れたついでに競馬博物館で開催中の「ジャパンカップとその時代」を観た。

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ジャパンカップ40年の歴史を振り返る特別展示である。ゴール写真、優勝馬の勝負服、優勝ジョッキーが使った鞭、蹄鉄などが展示されており、当時を思い出しながら食入るように覗き込んだ。ホーリックスとオグリキャップの激走に酔いしれた1989年。メジロマックイーンを子ども扱いした外国馬に衝撃を受けた1991年。薄暗い検量室でデットーリと再会を果たした1996年、等々。ジャパンカップは初回から観ているが(第1回~6回はTV観戦)、やはり私自身が海外の競馬に憧れを抱いていた頃のレースが特に印象深い。

1999

同行した娘は1999年の第19回が気になるようだ。勝ったのはスペシャルウィーク。凱旋門賞馬モンジューらを下しての完勝である。なぜこのレースが気になるかと言えば、レース当日の1999年11月28日が彼女自身の誕生日だから。それゆえ本人はスペシャルウィークのみならず、スペシャルウィークが血統表に顔を出す馬たちを愛してやまない。シーザリオ、エピファネイア、エフフォーリアと続く親子もしかり。昨日の天皇賞も単勝1点で的中させた。あれもこれもとベタベタ買い漁り、結果外した父親の面目は、もはや欠片もない。

2014

エピファネイアがジャパンカップを勝ったのは2014年。道中掛かり通しながら、世界ランキングトップのジャスタウェイに4馬身差を付けた。エフフォーリアの血統構成に2400mへの不安はない。敗れたダービーにしても、むしろ強さが際立つレース内容だった。さあ、シャフリヤールにリベンジを果たそう。今年のジャパンカップも11月28日に行われる。

 

 

***** 2021/11/1 *****

 

 

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