父子4代の奇跡
スプリンターズSの優勝馬ピクシーナイトが12月の香港スプリントに登録すると音無秀孝調教師から発表があった。晴れて出走の暁となれば香港のファンはどのように迎え入れてくれるのだろうか。生産を伴わず、ほとんどの出走馬がセン馬で占められる香港競馬に馴染んだファンであったとしても、彼の地でGⅠを3勝したモーリスの初年度産駒となればさすがに興味を抱かずにはいられまい。競馬の本質でもある「血」の部分にも注目が集まりそうだ。
その「血」には私も一目置いている。グラスワンダー、スクリーンヒーロー、モーリスの父系は必ずしも日本の主流血脈ではない。それが4代続けてGⅠ制覇の偉業を成し遂げたのだから凄い。
長い歴史の中でも父系血脈の持続が至難であることに説明の必要はなかろう。一時代を築いた人気の主流父系も、長くて3代ぐらい経つと活力を失い、勢いを得た別のラインに屈し姿を消していく。ヒンドスタン、ネヴァービート、パーソロン、ノーザンテースト。天下無双に思えたサンデーサイレンスから続く父系とて例外ではいられない。
中でもテスコボーイからサクラユタカオー、サクラバクシンオーと続いて、ショウナンカンプやグランプリボスへと流れゆく父系は貴重だ。1972年の皐月賞馬ランドプリンスに始まり、この夏の小倉記念を勝ったモズナガレボシまでなんと40年間も重賞勝ち馬を送り続けているのである。日本が誇るこのサイアーラインは、ある意味で奇跡的。大事にしたい。
同じことがグラスワンダー、スクリーンヒーロー、モーリスへと続くサイアーラインにも言えるかもしれない。グラスワンダーは有馬記念連覇のイメージが強いが、実は1400mのGⅡを2勝し朝日杯3歳Sをレコードで優勝したスピード馬。その豊かなスピード能力はスクリーンヒーローを経てマイルGⅠ4勝のモーリスへと受け継がれ、ピクシーナイトに余すところなく伝えられたのであろう。
香港スプリントは2002年にGⅠに昇格してから今年で19回目となるが、これまで3歳馬の優勝はゼロ。そもそも3歳馬の出走自体が少ない。それも香港競馬の特色のひとつ。ピクシーナイトの挑戦は、そういう意味でも香港のファンに大きな興味の的となるに違いない。
***** 2021/10/6 *****
| 固定リンク
「競馬」カテゴリの記事
- 【訃報】スティンガー(2023.09.21)
- オールカマー、いまむかし(2023.09.22)
- クラブ興隆の果てに(2023.09.20)
- 阪神パンステークス(2023.09.19)
- 甦る血(2023.09.18)
コメント