バゴの不思議
かつては事あるごとに「菊花賞不要論」みたいなことを書き連ねていたけど、最近は考えが変わってきた気がする。騎手の技量にも注目できるし、ゆったり流れる3000mは風情があるし、何より真剣に血統を考える稀少な一戦である。距離実績が白紙の状態で3000mを予想するとなれば、どうしても血統に頼らざるを得ない。そういうGⅠが年に一回くらいはあっても良いじゃないか。トシのせいか私も丸くなった。
今年で言えば、やはりバゴについて考えることになる。言わずと知れた2004年の凱旋門賞馬。日本で種牡馬入りしていきなり菊花賞馬ビッグウィークを出すと、グランプリ3連覇クロノジェネシスの父にもなった。そのせいかバゴ自身も長距離や力のいる馬場を得意にしていたかのような印象を持たれるかもしれないが、実はそうでもない。
全8勝中4勝までが1600m。あとは1800m、2000m、2100m,2400mが1勝ずつ。1800mのジャンプラ賞は稍重ながら1分46秒6の好時計で3馬身差の独走だった。成績だけ見れば「ある程度距離をこなすマイラー」という見方もできる。私としては凱旋門賞馬というより「凱旋門賞も勝った馬」という印象が強い。
その母系を見れば、母の父はスピード系のヌレイエフ。祖母クードジェニは種牡馬マキアヴェリアン(その父ミスタープロスペクター)の全妹になる。レコードで函館2歳Sを制したクリスマスや、ファルコンSを勝ったタガノアザガルに伝わったスピードの源はここにあろう。
しかし父系を見ればまた違った印象が沸いてくるから不思議だ。
父ナシュワンは1989年の英ダービー馬であり、さらにその父ブラッシンググルームは1985年の凱旋門賞馬レインボウクエストの父でもある。初めての3000mで覚醒したビッグウィークのスタミナも、稍重の宝塚記念を6馬身差で圧勝したクロノジェネシスの力強さも、こうした欧州父系の影響が強く出ているように思えてならない。おそらくステラヴェローチェもこちらの部類であろう。
ビッグウィークにせよクロノジェネシスにせよ、大成したのは3歳の秋。バゴ自身も3歳秋に凱旋門賞を制した。ステラヴェローチェも同じであると信じたい。戴冠への障壁があるとすれば私が本命に推すこと。それだけだ。
***** 2021/10/23 *****
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