競馬と値上げ
値上げの話の続き。
今日から小麦、コーヒー、牛丼も値上げになった。小麦については、もはや半期ごとの恒例行事と化した感もあるが、うどんとコーヒーと牛丼で生活している私のような人間にはまさしく痛手。仮にお店の努力で値上げ分を吸収してくれたとしても、心が痛むという点では「痛手」であることに違いない。
そう考えれば競馬絡みに「値上げ」を聞くことは少ない気がする。今どき「入場料100円」を謳う施設など珍しい。東京、中山、京都、阪神、中京の五大競馬場の入場料が100円から200円に、地方競馬を含めたその他の競馬場が50円から100円に倍増されたは1975年9月のこと。以来半世紀近くも料金据え置きなのだからありがたい。
1975年当時の後楽園球場の最低料金は外野スタンド(自由席)の100円だったと思う。私は子供料金の50円で入場していた。それが今では1200円。東京ドームに変わったとはいえ、12倍ものの値上げを横目に競馬場のなんと良心的なことか。まあ、そのぶん馬券で吸い取られていることの裏返しでもある。
そうえいばクラシックレースの特別登録料がいきなり前年の40倍の40万円にハネ上がったことがあった。1992年のことだ。
戦前の日本ダービーの1着賞金は1万円。登録料はその2%に当たる200円と規定された。その慣習はクラシック全レースに適用されて1991年まで続く。同年のダービー1着賞金は1億2000万円だから、1万円の登録料は0.008%でしかない。そこで遅まきながら値上げになったというワケ。しかし、それ以降登録料の変動はない。一方、ダービーの1着賞金は2倍近くにまで高騰している。
追加登録制度が開始されたのもこの年から。未登録の馬でも一定の資格を得て200万円を払えば、クラシックに出られることになった。今年、スプリングSで2着したアサマノイタズラが、追加登録料を支払って皐月賞に出走したことは記憶に新しい。セントライト記念を制し、有力馬として菊花賞に臨むことができるのも、この制度のおかげと言える。1991年以前は未登録馬に対する救済制度はなかった。
レースに出るために「200万」と聞くと高いと思われるかもしれない。しかし、たとえ10着でも菊花賞ならば284万円が手に入る計算。そういう意味では欧米の追加登録料はよりシビアだ。1998年のBCクラシックに挑戦したジェントルメンの馬主は、賞金総額の5分の1に相当する80万ドル(約9600万円)を払った。結果、鼻出血による競走中止である。私が馬主なら正気を失うに違いない。
ともあれ、何かと割安感が漂うのが日本の競馬である。ただ、それが配当にまで及ぶことはぜひとも避けてもらいたい。
***** 2021/10/1 *****
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