狐と狸の化かし合い
急な休みが転がり込んだ。
嬉しくはない。なぜか。明日以降11月3日まで休みがない。それに備えて休めるときに休んでおけ、ということ。ならば名古屋にでも行ってやれ。うまい具合に重賞・ゴールド争覇が行われる。えいやとばかりに新快速に飛び乗ったら、ほどなくしてメールの着信音が鳴った。
仕事場でトラブルが起きているという。「ならば上がろうか」と送ったら「そこまでではない」と返ってきた。「なら、このあとも上がる必要はないのか?」と聞くと「それは分からない」という。ふんじゃ、どうすりゃ良いのか。ラチが開かないので、結局京都で電車を降りた。とりあえず京都駅近辺をぶらぶらしていよう。いざとなれば新大阪までたったの15分だ。
東寺は「新幹線の駅にもっとも近い世界遺産」ではなかろうか。いつも車窓から五重塔を眺めるだけで、境内に足を踏み入れたことはない。それでいざ行ってみたら、なんと縁日が行われていた。コロナ禍以降、こういう雰囲気を味わうのは久しぶり。だが油断は禁物だ。新型コロナは1週間もあれば我々の生活の様相を一変させてしまう。
1週間で一変したのは陽気も同じ。先週貴船神社を訪れた日の京都の最高気温は28.2度の夏日。私の服装はデニムにTシャツ1枚で、日向に立つとくらくらするほど暑かった。あれから1週間も経たずして、今日の京都は17.3度だったという。夏から秋を飛ばして一気に冬に突入。年を追うごとに秋が短くなっている気がしてならない。競馬だけは「秋」を守ってくれるだろうか。
九条界隈を歩くうち「うどん」の暖簾を見つけた。
いわゆる「昭和の食堂」の風貌。京都駅近くの路地裏で営業を続けているということは、味の裏打ちがあればこそであろう。席に着くなり、変わったメニューを見つけた。
「たぬきうどん」はうどんにたっぷりの天かす。東京で生まれ育った私とってはそれが常識だ。しかし大阪で「たぬき」と言えば、それは暖かいそばにお揚げが乗った一杯を指す。東京の「きつねそば」が大阪では「たぬき」。つまり大阪に「たぬきうどん」は存在しない。
しかしここ京都には「たぬきうどん」というメニューがある。ためしに頼んでみたら。こんな一杯が運ばれてきた。
うどんに刻みの油揚げの甘煮、そして九条ネギの斜め切りを散らした上からトロリとしたあんをかけてある。麺は柔らかく細めの京風。大阪の「たぬき」とも、東京の「たぬき」とも違う。しかし、今日のような陽気の日に食べるにはもってこいであろう。
「たぬき」の名の由来は「きつねがドロンと化けた」から。つまり、揚げを載せたきつねうどんにドロンとしたあんをかけたからだという。祇園のお茶屋に夜食を運ぶ出前の習慣がこの「たぬき」を生んだという説もあるらしい。あんをかけることで底冷えする京都の冬でも冷めにくい。たかだかうどん一杯でも、京都にはいろいろな風説がはびこる。1200年の歴史の為せる業であろう。
結局、名古屋行きは諦めた。行けずじまいのゴールド争覇は高知のダノングッドが3馬身差の快勝。地元にはスペルマロンという目の上のたんこぶがいるだけに、遠征に対する力の入れ方も他の遠征馬とは違っていたか。そういう意味では私自身も名古屋遠征に対してあまり力を入れていなかったかもしれない。反省しよう。
***** 2021/10/21 *****
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