1億円ホース誕生
まさかの屈辱である。
高知に向かうため岡山駅で新幹線から在来線に乗り換えた。特急「南風3号」。土曜の朝なので混んでいるかもしれない。その程度の心配はしていた。だからしっかりと指定席を確保。高知までの2時間半は爆睡してやろう。そんな目論見はこの車両を目にした途端、脆くも崩れた。
なぬ? コレに乗れと?
どうかホームで戸惑う52歳の姿を想像して欲しい。スーツにネクタイの出張スタイルの中年オヤジが今からコレに乗るのである。周りは家族連れだらけ。車内アナウンスはもちろんアンパンマンの声。駅に近づく度に戸田恵子さんの声に起こされ、駅に止まる度にホームからカメラを向けられる始末。とても寝られる状況ではない。しかしそのおかげで、土讃線の美しい車窓の景色をしっかりと目に焼き付けることができた。
高知でスペルマロンが出走する。重賞11勝で6連勝中の高知最強馬。それが1着賞金たかだか400万の重賞でもないレースに出てくる。なぜそれが注目なのか?
スペルマロンは高知移籍後前走まで高知ばかりで28戦。その獲得賞金は96,345,000円に達した。あと3,655,000円で高知での獲得賞金が1億円の大台に達する。高知だけでの1億円ホース誕生となれば初の快挙。400万の1着賞金は絶妙なのである。
裏を返せば、高知競馬の賞金がそれだけ増額されているということ。大晦日に行われる高知県知事賞で言えば2019年800万→20年1200万→21年1600万。その他の重賞レースの賞金も軒並み倍増している。スペルマロンはその流れに乗っかったに過ぎない。それでも勝つのは立派。賞金がアップすれば、そのぶんJRAや他場からの移籍馬のレベルは上がるからだ。
今日のレースに限れば見所はもうひとつある。今年のクラシック2冠を制したハルノインパクトが初めて古馬に挑戦する。今年の3歳馬のレベルはどうか? ひょっとしたらスペルマロンより強いのかもしれない。どうしてもお金の話に目が向きがちだが、実はもっと大事なテーマが隠れていたりする。
しかし終わってみれば力の差は歴然としていた。敢然とハナを奪ってペースを握ったハルノインパクトに3コーナーでスペルマロンが並びかけると、直線では突き放す一方。5馬身差で1億円の大台到達に華を添えた。
賞金増額のペースに歩調を合わせるかなように、スペルマロン自身も強くなってやいないか。かつてはゆったり流れるマイル以上を得意としていたのに、最近では1300m~1400mのスピード勝負にも対応できるようになってきた。7歳にしては珍しいが、高知の環境が彼の新たな能力を引き出したのかもしれない。そう考えれば獲得賞金1億円は誇るべき大記録であろう。この勢いでもっともっと稼いでもらいたい。
***** 2021/10/9 *****
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