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2021年9月20日 (月)

対面

台風を追いかけて東京にやってきたのは父親に関するアレコレのため。緊急事態宣言中ではあるが、父親の方も「緊急事態」と言って聞かない。「お互い顔を見る最後の機会かもしれないんだぞ」などと言われると、行かぬわけにもいかないのである。幸い本人の健康状態にさほどの問題はない。聞けばお金のこととか、近所づきあいのこととか、自宅の修繕のこととか問題はいくつも。なかには確かに急を要する事案もある。こうなるとコロナとも言ってられない。

そしたらなんと、9月8日初勝利を挙げたばかりの愛馬ブランディングが、今日の大井に出走するという。中11日だから実質的には連闘。そもそも当初の予定では、勝ったご褒美に遅めの夏休みに入る予定だった。デビューから使い詰めだったわけだし、私も休養には賛成。ところが、いざ蓋を開けたら真逆の話になっている。どうなってんの?。実際、牧場の人間にそう言った。「どうなってんの?」と。

相手は色々しゃべったが、要は休むにはもったいないほど調子が良いということらしい。そうですか。それならば、みたいな感じでモヤモヤしていたのだが、そのあとに急遽私の帰京が決まったので秘かに楽しみにしていた。

馬を持つにあたっては、普通なら購入前に実馬を見て、入厩前にもう一回くらい見て、入厩直後に厩舎に見に行って、能験を見て、もちろんデビュー戦にも駆け付けるわけだが、この子に関しては一度も会ったことがない。これもコロナの世ならではと言えばそれまで。様々な逡巡の末に縁あって購入したわけだから、やはり一度は会ってみたい。そのチャンスは意外に早くやってきた。

ところが、昼過ぎに電話が不吉な音で鳴るのである。あまりに不吉なので、出ることをためらったが、画面に表示された相手の名前を見るとそうもいかない。仕方なく出る。やはり不吉な話。すぐ来いという。「来い」というのは、むろん「大阪に」である。いや、すぐ言うても3時間はかかるし、大井にも行かなあかんし……。

などという私の都合を斟酌するような相手でもない。品川駅から京急の予定が、後ろ髪を引かれる思いで新幹線のホームに向かう。やがて車窓からLウイングがちらりと見えた時は泣きそうになった。生き別れた娘との初対面を果たせぬまま、その場を離れざるを得なくなった父親の心境。大袈裟と笑われるかもしれない。トシのせいか。あるいは自分の置かれた境遇のせいか。最近どうも弱気でいけない。

肝心のレース結果は7頭立ての5着。ギリギリとはいえ賞金を稼いだのは大きい。この28万円が彼女の運命を左右することだってあり得るのである。ただ心配なのは連闘の反動。これには2、3日様子を見る必要がある。どうか何事もありませんように。逃したのが初対面のチャンスではなく、実は最後のチャンスだったなんてことは意外によくある話。「無事是名馬」の格言は、一部のトップホースだけに向けられたものでは決してない。

Kuchitori

へとへとになって帰宅したら、社台ファームから一枚の写真が届いていた。ブランディングが9月8日に初勝利を挙げた時の口取り写真。なんというタイミングの良さか。もともと小柄だと聞いてはいたが、厩務員さんが大きいことを踏まえてもなるほど小さい。それを見てまた泣きそうになった。

 

 

***** 2021/9/20 *****

 

 

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