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2021年9月30日 (木)

タバコの匂いが消えて

コンビニでタバコの大量買いを目撃した。

Tabaco

たばこ税の増税に合わせて明日からタバコが値上げになる。「IQOS(アイコス)」や「Ploom(プルーム)」のような加熱式たばこも増税らしい。

ふーむ。それでいくらになるの? 380円くらい? ひょっとしたら400円台に突入するのかしらん?

―――なんて価格表を覗き込んで、思わず腰を抜かしそうになった。

セブンスター1箱が600円だと?

なんじゃそりゃ! 昼メシ代より高いの? 1本30円もする思えば軽々しく「1本くれ」とも言えない。1日3箱吸う人は月のタバコ代が5万を超える。愛煙家の方々にしてみれば切実な問題であろう。

競馬場やウインズで施設内の禁煙化が進んで久しい。JRAに比べて喫煙率が高い地方競馬では全面的な禁煙は難しいとされてきたが、それでも今ではどの競馬場でも喫煙所以外での喫煙が禁止となっている。

そんなこと(場内禁煙)をして大丈夫だろうか―――?

私のささやかな心配は杞憂に過ぎなかった。それこそ1日3箱は吸ってそうな観客にも、意外にスンナリ受け入れられたフシがある。これも時代の流れか。大事な遊びのために、おとなしくお上に従う競馬ファンの姿は実にいじらしい。

「いいか。競馬場で他人からモノを借りることは御法度。タバコの火もダメだ」

かつて、競馬の先輩からこんな言葉を聞かされた覚えがある。

タバコの火を借りるのは、日常生活の点景としてごく普通に見られたが、競馬場というのは日常の対極にある世界である。そこには日常から遠く離れた異質の緊張感が張り詰めていた。あらゆる「借りる」という行為はタブー。ツキをとられるとか、アヤが悪いと感じる人が結構いたのである。食うか食われるかの世界。そこはまさしく「鉄火場」であった。

かつての競馬場やウインズといえば、喫煙率9割にも届くのではないかと思うほど紫煙が満ちていた印象がある。それを思えば、今の競馬場は隔世の感がありあり。ギャンブル施設にまで健康保全策を強いる昨今の風潮には、タバコを吸わぬ私ですら戸惑いを禁じ得ない。

有馬記念を勝ち、また初めて競馬場で「引退式」を行ったことでも知られるメイヂヒカリは、タバコの匂いが好きだったと聞く。鼻前で人がタバコを吸うと喜んで煙の中に首を伸ばしてきたそうだ。もしメイヂヒカリが現代の競馬場に現れたとしたら、タバコの匂いが消えてしまったことにおそらくガッカリするであろう。

 

 

***** 2021/9/30 *****

 

 

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2021年9月29日 (水)

ぐるぐるグルグル

あろうことか「グルコサミン」の錠剤を1瓶も頂いてしまった。

すっかり中年のオヤジと化した最近では、「脚が痛い」「腰も痛い」「肩も上がらない」「仕事なんてしたくない」「もう東京に帰りたい」などと、自分でも気付かぬうちに身体の不調を周囲に訴えていたのであろう。このようなサプリメントを自ら購入した経験は持たぬが、それなりに高価なものだと思う。

「こういうモノのお世話になるには、ちとまだ早いと思うんですが……」という私の言葉を相手(私より年上。ザ・大阪のおばちゃん)は無碍に遮り、「なに言うてんの。いまのうちからきっちり飲んどき」と言って押しつけるのである。それ以上断るのも面倒くさいので、一応有り難く頂戴したけど、いわゆるサプリメントというものにはあまり興味がないんですよねぇ。肝臓が悪いので毎日ウコンを摂取していた時期もあったけど、最近ではなんとなく止めてしまったし。

だいたいが、十年ほど前からブームを起こしているグルコサミンとかコンドロイチンとかは、もともとは競走馬用に使用されていたフィードサプリメントである。

競走馬にグルコサミンとコンドロイチン硫酸の混合成分を与えると、関節の潤滑がスムーズになり、関節炎や腱・靭帯などの疲労損傷の防止に効果がある。ゆえにずいぶん前から飼い葉に混ぜる形で広く使われてきた。そんなある日、「馬に効くんなら人間にも効くんじゃね?」的な発想が生まれ、昨今の大ブームに至ったのであろうと推測する。

「馬」と聞くと大自然の中で青草だけを噛んでいるイメージを持たれる方も多いと思うが、競走馬はアスリートであるから、実はサプリメントなしに彼らの食生活は語れない。例えば、骨を強化するためにはカルシウム系のサプリは欠かすことができないし、その効果をアップさせるための「BFMP」という牛乳から抽出したサプリメントまで登場している。こうなるとBFMPの効果を上げるためのサプリが開発されるのも、もはや時間の問題という気がしてくる。

Hooffood

主にドーピング防止の観点から、競走馬に対する薬物の投与には様々な制約がある。だが、サプリメントはあくまでも「食品」であるから、ルール上の制約を気にする必要性は(とりあえず)ない。私の所有馬にはなぜか蹄に爆弾を抱えるタイプが多く、しょっちゅう「フーフフード」というサプリの世話になっている。とはいえ、目の前に置かれたグルコサミンの瓶をじいっと眺めれば、知らぬ間にこんなものを、しかも大量に食事に混ぜられる彼ら彼女らには、多少なりとも同情の念を覚えずにはいられない。あぁ、やっぱ飲んだ方が良いのかなあ。

 

 

***** 2021/9/29 *****

 

 

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2021年9月28日 (火)

パソコン記念日

「ピッ!」とパソコンの電源スイッチを押してから、OSが立ち上がってアプリケーションソフトが使用できるようになるまでの時間って結構長くてイライラするものですよね。

画面の推移を見つめながらジッと待っていると恐ろしいほど長く感じるし、だからと言ってちょっとコンビニまて行けるような時間でもない。困ったものである。新しいテクノロジーによって、我々の生活は間違いなく便利になっているはずなのに、一方で新しいテクノロジーは必ずと言っていいほど新たな懸案をもたらす。コンピューターウィルスやフィッシング詐欺、歩きスマホなどもその範疇であろう。そういえば、迷惑メールって最近は見かけませんね。

私の場合、パソコンの電源スイッチを押したらそのまま本棚に向かい、適当な一冊を手に取って、待ち時間をやり過ごすことにしている。「こっちはこっちで適当にやってるから、そっちも適当にやってて」といった具合。お互いおおらかな気持ちになれる。

しかし、実際にやってみるとこれはこれで問題がなくもない。先日もエクリプスに関する本をを読み始めたら止まらなくなってしまい、肝心のパソコンの方がほっぽらかしになってしまった。こうなるともはや仕事どころではない。キッチンでコーヒーを淹れ、ダイニングテーブルに座ってさらにじっくり読み始めてしまったりするから困りものだ。

ところで、さっき「迷惑メールを最近見ない」と書いたけど、ホントに最近見ないですよね。見なけりゃ見ないで、ちょっと寂しいような気もする。

かつては、英字と数字と記号とを複雑に組み合わせた長ったらしいメアドを使うことが半ば常識だった。しかも、数字には自らの生年月日を使ったり、ましてや携帯番号を使うなどはもってのほかで、なるべく無意味な数字が推奨されたものだ。私はエクリプスの産まれた年をメアドの一部に使っていたことがある。一般の人が見れば無意味な数字の羅列に違いない。

エクリプスはというより歴史上もっとも有名な競走馬であり、20戦全勝という生涯成績もさることながら、その勝ち方が極めて圧倒的だったことで現役当時より既に歴史的名馬の評価を得ていた。

エクリプスについては様々な伝説が残されているが、中でも有名なエピソードはデビュー戦でエクリプスが1着でゴールした時に後続馬が「見えなかった」という逸話であろう。

エクリプスの馬主はデニス・オケリーというギャンブラーで、彼はデビュー前からエクリプスが大変な能力の持ち主であることを見抜いていた。そこでデビュー戦前に「このレースの全着順を的中できる。エクリプスが1着で、2着以下は“なし”」と賭け相手に言ったのである。

当時のルールでは1着馬がゴールに入線した瞬間に、残り1ハロンの標識を通過していない馬は「失格」とされたので、2着なしというのは、エクリプスが1ハロン1以上後続を離して勝つという意味だった。実際にそのヒートでは2着に入賞できた馬がなく、オケリーの予想は見事的中。彼は大金を得ることになるのだが、この話が後に「エクリプス1着。2着馬はまだ見えない」という誤った逸話として日本国内で伝わることになった可能性が高い。これは当時の翻訳者がこうしたルールをしらなかったため、2着が「なし」というのは「見えない」ということだろうと考えたためだと思われる。

Race  

しかしこうしたエピソードは、エクリプスの強さをなんら損なうものではない。むしろあまりの強さゆえ生まれた美しい伝説と捉えるべきなのだろう。

なんてすっかり本にハマってしって、何のためにパソコンの電源を投入したのかも忘れてしまった。ちなみに今日は「パソコン記念日」。

 

 

***** 2021/9/28 *****

 

 

 

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2021年9月27日 (月)

ダービー馬が背負うもの

9月に入って毎週のように帰京しているせいで、中京競馬場にも毎週のように足を運ぶことになった。新幹線を名古屋で途中下車しているのである。

そんな中、昨日の中京競馬場は明らかに前2週と雰囲気が異なっていた。9レースぐらいからソワソワし始める客が現れ、10レース前には「終わったらすぐパドックだぞ」という会話が聞こえてくる。そう、観客の大半はダービー馬の登場を今や遅しと待ち焦がれているのである。

その雰囲気はダービー当日とは明らかに違う。ダービーのパドックを覆いつくすのは緊張感。一方、ダービー馬の登場を待つ神戸新聞杯のパドックに漂うのは期待感に他ならない。パドック集会を終えた各場が本馬場に向かう。それに合わせて客も移動。鳴りやまぬシャッター音。ファンファーレに合わせるファンの手拍子がことさら大きい。セントウルSでもローズSでもここまではなかった。ゲートが開いて各馬が1コーナーに向かう。期せずしてスタンドから大きな拍手。思わず場内実況も「大ぉ~きな拍手が上がります」と叫んだ。

2021

そうしたひとつひとつの出来事が新鮮に感じるのはなぜか。2コーナーに向かう馬群を目で追いながら考えた。

そうだ。それは私がダービー馬の秋緒戦を観るのが初めてだからではあるまいか?

ダービー馬が秋の緒戦にセントライト記念を選ばなくなって久しい。過去30年で関東馬によるダービー制覇が4度しかないのだから仕方ないことではある。だからというわけではないが、私の方から神戸新聞杯に出向いたこともなかったわけではない。ただ、私が阪神に足を運んだ1993年も2001年も神戸新聞杯にダービー馬の姿は無かった。つまり、私は過去にダービー馬の秋緒戦を観戦した経験を持たぬのである。

1993

雨に煙る4コーナーを回って馬群が直線を向いた。思いのほか歓声が上がらないのは、新型コロナによる応援マナーのせいというよりは、シャフリヤールの手応えがあまりに悪かったからに違いない。ここへきて競馬場を覆い尽くす空気は戸惑いに変わる。シャフリヤールは伸びない。そしてゴール。一転、場内は落胆一色に包まれた。

昨日も書いたことだが、敗因があるとすれば想定外の不良馬場にあろう。とはいえモンテディオすら交わせなかった事実は重い。そこは天下の日本ダービー馬。負けるにしても負け方というものがある。昨日の競馬場に立って初めてそれを体感することができた。多くの競馬ファンの期待と、すべてのホースマンが目指す誉れ。それらすべてを背負って走ることこそ、ダービー馬が特別な存在たる所以であろう。巻き返しを期待したい。

 

 

***** 2021/9/27 *****

 

 

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2021年9月26日 (日)

36年ぶりの不良馬場

この1週間、「神戸新聞杯は堅い」というフレーズを何度聞いたことだろうか。

シャフリヤールという大本命馬が出てくる。ステラヴェローチェというしっかりした対抗馬もいる。しかも10頭立て。そりゃ堅そうだ。

そもそも神戸新聞杯というそのものがレースが堅い。それは歴史が証明している。しかし、それは阪神での神戸新聞杯の話。中京での神戸新聞杯と聞けば、センターショウカツ(1990年)とロングタイトル(91年)と2年連続で荒れたイメージがある。さらに予報を裏切る雨が朝から降り止む気配がない。おかげで神戸新聞杯としては36年ぶりの不良馬場。逆にこの10年がパンパンの良馬場だったことの方が奇跡的ではないか。もはやデータはアテにならない。

シャフリヤールの福永騎手は「これまでいろいろ試してきたが、もう試すことはない」と自信を示していたが、極端な道悪は初めて。力のいる馬場でのスタミナ比べをこなすことができるか。そこは未知数だが、もしクリアできれば先々に向けて選択肢が広がる。

しかし、結果は散々だった。道中は外の6番手から競馬を進めたが、直線に向いても伸びてくる気配がない。福永騎手は「ハミに頼った走りだった」と言ってたから、やはりこの馬場が堪えたのであろう。

Kobe

一方、勝ったステラヴェローチェは一気に展望が広がった。不良馬場のサウジアラビアロイヤルCで道悪巧者ぶりを証明済みだったが、それがフロックではなかったことになる。同じバゴを父に持つクロノジェネシスも道悪を苦にしないことで有名。春クラシック2冠をともに3着して秋初戦を快勝したその足跡もクロノジェネシスに重なる。晩成の血を思えば、菊花賞に期待したいのはむしろステラヴェローチェの方か。バゴの産駒ではビッグウィークが既に菊花賞を勝っている。

シャフリヤールは難しい判断を迫られそうだ。もとより天皇賞も視野に入れていたと聞くが、3歳同士で4着に負けたのに古馬トップクラスにぶつけるのか。あるいは、スタミナ面に不安を露呈したまま菊花賞に向かうのか。不良馬場での敗戦は心身にダメージが残るもの。何も焦る必要はない。昨年の神戸新聞杯でシャフリヤールと同じ4着に敗れたディープボンドは、1年後にフォワ賞を勝ち、凱旋門賞の有力候補となった。さあ、来週はクロノジェネシスとディープボンドの凱旋門賞だ。

 

 

***** 2021/9/26 *****

 

 

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2021年9月23日 (木)

道営の日

昨日のフローラルC(門別)、そして今日の金沢プリンセスC(金沢)と園田プリンセスC(園田)と、全国で2歳牝馬重賞が本格化してきた。中でも園田プリンセスCはグランダムジャパン2歳シリーズの開幕戦。大井に2歳牝馬を預ける身として、ライバルたちの走りを見ておかぬわけにはゆくまい。

その前にまずは金沢プリンセスCを観る。逃げたボサノヴァに2番手追走のエムティアンジェが4コーナーで馬体を併せた。直線は2頭のマッチレース。後続から伸びてくる馬はいない。最後はエムティアンジェがボサノヴァに1馬身半の差をつけて快勝した。

出走10頭中2頭の道営デビュー馬によるワンツーフィニッシュ。ボサノヴァは移籍2戦目で、エムティアンジェは移籍緒戦である。どちらも重賞初挑戦だった。エムティアンジェに至っては、未勝利戦ばかり6戦してようやく初勝利を挙げたばかり。それでもこれだけの力の差がある。となれば、これから行われる園田プリンセスCで買うべき馬券はこれしかあるまい。

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そう、園田プリンセスCにも道営馬が2頭だけ出走しているのである。スティールノーヴァとグラーツィア。ほかにも地元兵庫で大物と名高いアンサンや高知で3戦無敗のリュウノアンジェラが出走メンバーに名を連ねてはいるが、金沢の結果を見れば、これ以外に買う馬券があるとは思えない。

ところが発走直前でアクシデントが襲う。隣ゲートで暴れた馬に驚いたグラーツィアが前扉を突き破って放馬。ホームストレッチを1コーナーまで走ったところで口を取られたが、出走取消なってもおかしくなかった。幸いにも競走能力に影響がないとの診断で無事出走。結果、一気呵成の逃げ切りである。

2着には2番手追走のスティールノーヴァがそのままなだれ込んだ。後続は7馬身差だから、まるで金沢と同じ。どちらも3着以下は競馬をさせてもらってない。ここまで力の差を見せられると、普段から園田の2歳を観て「おおこいつは強いぞ」とか「この時計ならJRA相手でもイケるんじゃないか」などと一喜一憂している自分が恥ずかしくなってくる。

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なんて、恥じてみたところで馬券はしっかり的中。私の馬連一点買いが当たるなんて滅多にあることじゃないですよ。エーデルワイス賞、ラブミーチャン記念、ローレル賞、プリンセスカップ、そして大晦日の東京2歳優駿牝馬へと続くグランダムジャパンの道は今年も道営デビュー馬中心に展開するに違いない。そのうちのひとつにでも、私の馬が出走できることを秘かに期待しつつ、可憐な2歳牝馬たちの走りを見届けよう。ともあれ今日は道営の日だった。

 

 

***** 2021/9/23 *****

 

 

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2021年9月22日 (水)

シルバーウィーク

新聞(一般紙)を読んでいたら、「シルバーウィーク」という言葉が普通に使われてた。敬老の日と秋分の日を含む今週のことを指すらしい。

数年に一度、カレンダーの巡り合わせで9月の下旬に5連休が登場することがある。私はその5連休が出現した年のみ「シルバーウィーク」と呼ぶのかと思い込んでいたのだが、どうやら違うらしい。同じ週に2つの祝日が含まれていればシルバーなのだろうか。それとも、秋分の日を含む週は無条件にシルバーなのだろうか。よくわからんが、ともあれシルバーウィークは今日が中日。皆様いかがお過ごしでしょうか。

「シルバーウィーク」は最近生まれた言葉のように聞こえるかもしれない。だが、実は半世紀以上も前に「ゴールデンウィーク」と同時に生まれた用語。1948年の祝日法施行で、天皇誕生日、憲法記念日、こどもの日、文化の日が制定され、春秋のこの時期に話題作をぶつけるようになった映画界が最初に使い始めた。本来は「映画を見るのに最高の1週間」という意味である。結果、5月のゴールデンウィークはすっかり定着したが、11月のシルバーウィークはまったくと言って良いほど普及しなかった。

シルバーよりゴールドが浸透するのは馬の名前も同じ。現在「ゴールド(ゴールデン)」を含む馬は49頭がJRAに登録されている一方で、「シルバー(シルヴァー)」は13頭でしかない。ゴールドドリーム、ゴールドアクター、ゴールドシップ、ゴールドアリュール、ステイゴールド、ゴールドシチーなど「ゴールド」にはGⅠホースも多数出ているが、「シルバー」はシルヴァコクピットとセンゴクシルバーがGⅢを勝った程度。地方に目を移せば2冠牝馬・シルバーアクトや高崎ダービー馬・アイコマシルバーなどもいるにはいるが、両者の差は歴然としている。

Aikoma

銀メダルやお年寄りをイメージする「シルバー」という言葉を、勝負事に使いたくないという気持ちは理解できなくもない。それでも「シルバー」と名前が付いた数少ない馬たちは、父がシルバーホークであるか、あるいは単に芦毛であるか。シルヴァコクピットは前者の、センゴクシルバーは後者の好例であろう。

Sengoku

1993年から94年にかけて重賞戦線で活躍したセンゴクシルバーだが、重賞タイトルはダイヤモンドSのひとつしかない。その一方で重賞での2着は4度を数えた。やはり「シルバー」の名がいけなかったのか。それでも芦毛を生かして誘導馬になれたのだから、サラブレッドの人生としては悪くない。古き良き時代の名ステイヤーは、いぶし銀の名脇役でもあった。

 

 

***** 2021/9/22 *****

 

 

 

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2021年9月21日 (火)

ダンゴの味

今宵は十五夜。月見の風習は奈良時代ごろに中国から伝わり、平安時代には貴族の遊びとして流行、鎌倉時代には武士や庶民にも広がった。その後は豊作への感謝祭として日本人の生活にすっかり定着し、稲穂に見立てたススキと、満月のように丸い団子や里芋を供える風習が各地に残っている。

実は昨日、父親宅のある埼玉から品川に向かう道中、日暮里に立ち寄って大好物を仕入れていたのである。江戸っ子には馴染み深いお団子屋さん。その名も「羽二重団子」。創業は文政二年(1819年)だから、その歴史は200年を超える。夏目漱石の「吾輩は猫である」や正岡子規の俳句などに登場することでも知られる老舗だ。驚くことに、ひと晩経ってもキメの細かさと柔らかさを失っていない。

Habutae

競馬予想に使われる◎○▲×△の印を「ダンゴ」と呼ぶのをご存じだろうか。由来はもちろん、予想欄に並んだその形状が串に刺した団子の形に似ているから。ゆえに競馬記者は「ダンゴ打ち」とも呼ばれる。

Dango

競馬専門紙に予想の印があるのは日本独自とされる。欧米の競馬新聞では馬ごとの単勝配当が記載されている程度。だが、この日本が世界に誇る文化も、考案者や始まりの時期はよく分かっていない。JRAの物知りに聞けば、こうした記号は学校の通信簿をヒントにしたという説があるそうだ。もしそうだとすれば予想欄の印を見る目も変わってくる。己の通信簿を客に曝される馬たちは、なんとも気の毒でならない。

◎が本命、○が対抗、▲か×が単穴(1着か着外)、△が複穴(2、3着候補)とするのが、おおまかな約束事。だが、馬券の種類が増えた昨今では△が4~5個に★とか△を二つ重ねたような(二重△)記号も増えた。なにせ3着まで予想しなければならないご時世である。予想欄に印が増えた現状をほくそ笑んでいるのは、間違いなく主催者であろう。どうしたって買い目は増える。

昼間は青空も覗いていた大阪の空だが、夜にはすっかり雲に覆われてしまった。残念ながら月無しのお月見。しかし、それではただ団子を食べるだけになってしまうので、この3日間の競馬予想紙のダンゴを見ながら団子を食べた。予想紙のダンゴは十個十色の味わい。特に「外れダンゴ」は苦味の奥に複雑な思いが絡み合う。それらもひとつひとつ味わいつつ、秋の夜は更けてゆくのである。

 

 

***** 2021/9/21 *****

 

 

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2021年9月20日 (月)

対面

台風を追いかけて東京にやってきたのは父親に関するアレコレのため。緊急事態宣言中ではあるが、父親の方も「緊急事態」と言って聞かない。「お互い顔を見る最後の機会かもしれないんだぞ」などと言われると、行かぬわけにもいかないのである。幸い本人の健康状態にさほどの問題はない。聞けばお金のこととか、近所づきあいのこととか、自宅の修繕のこととか問題はいくつも。なかには確かに急を要する事案もある。こうなるとコロナとも言ってられない。

そしたらなんと、9月8日初勝利を挙げたばかりの愛馬ブランディングが、今日の大井に出走するという。中11日だから実質的には連闘。そもそも当初の予定では、勝ったご褒美に遅めの夏休みに入る予定だった。デビューから使い詰めだったわけだし、私も休養には賛成。ところが、いざ蓋を開けたら真逆の話になっている。どうなってんの?。実際、牧場の人間にそう言った。「どうなってんの?」と。

相手は色々しゃべったが、要は休むにはもったいないほど調子が良いということらしい。そうですか。それならば、みたいな感じでモヤモヤしていたのだが、そのあとに急遽私の帰京が決まったので秘かに楽しみにしていた。

馬を持つにあたっては、普通なら購入前に実馬を見て、入厩前にもう一回くらい見て、入厩直後に厩舎に見に行って、能験を見て、もちろんデビュー戦にも駆け付けるわけだが、この子に関しては一度も会ったことがない。これもコロナの世ならではと言えばそれまで。様々な逡巡の末に縁あって購入したわけだから、やはり一度は会ってみたい。そのチャンスは意外に早くやってきた。

ところが、昼過ぎに電話が不吉な音で鳴るのである。あまりに不吉なので、出ることをためらったが、画面に表示された相手の名前を見るとそうもいかない。仕方なく出る。やはり不吉な話。すぐ来いという。「来い」というのは、むろん「大阪に」である。いや、すぐ言うても3時間はかかるし、大井にも行かなあかんし……。

などという私の都合を斟酌するような相手でもない。品川駅から京急の予定が、後ろ髪を引かれる思いで新幹線のホームに向かう。やがて車窓からLウイングがちらりと見えた時は泣きそうになった。生き別れた娘との初対面を果たせぬまま、その場を離れざるを得なくなった父親の心境。大袈裟と笑われるかもしれない。トシのせいか。あるいは自分の置かれた境遇のせいか。最近どうも弱気でいけない。

肝心のレース結果は7頭立ての5着。ギリギリとはいえ賞金を稼いだのは大きい。この28万円が彼女の運命を左右することだってあり得るのである。ただ心配なのは連闘の反動。これには2、3日様子を見る必要がある。どうか何事もありませんように。逃したのが初対面のチャンスではなく、実は最後のチャンスだったなんてことは意外によくある話。「無事是名馬」の格言は、一部のトップホースだけに向けられたものでは決してない。

Kuchitori

へとへとになって帰宅したら、社台ファームから一枚の写真が届いていた。ブランディングが9月8日に初勝利を挙げた時の口取り写真。なんというタイミングの良さか。もともと小柄だと聞いてはいたが、厩務員さんが大きいことを踏まえてもなるほど小さい。それを見てまた泣きそうになった。

 

 

***** 2021/9/20 *****

 

 

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2021年9月19日 (日)

控除率

土日の競馬は終わったが、3連休の今週は明日月曜もJRA開催が用意されている。嬉しい反面、3日連続ともなるとさすがに食傷気味というファンも少なくあるまい。そこで、JRAは「JRAスーパープレミアム」と銘打って、通常の払戻率を引き上げ、全賭式の払戻率を一律80%に引き上げる。つまり日頃のご愛顧に対する感謝セール。具体的にどういうことか。例えば昨日土曜よ中山1レースの三連単の払戻金は48010円だった。三連単の払戻率は72.5%である。これが80%に引き上げられると、払戻金も52980円にはね上がるというワケ。これは太い。

日本の競馬の払戻率は75%の時代が長らく続いた。つまり控除率としては25%である。その後、馬券の種類が増えたこともあり、現在は以下の通り。ただ、いずれも海外に比べて高いことが問題視されてきた。

80.0%:単勝・複勝

77.5%:枠連・馬連・ワイド

75.0%:馬単・3連複

72.5%:3連単

70.0%:WIN5

実際には、宝くじやサッカーくじの控除率は50%を超えている。しかし、これらはあくまで「くじ」のくくり。競馬の控除率としては世界的に見てもべらぼうに高い。一時期話題となった闇カジノや野球賭博でもテラ銭は5~10%。違法とはいえ客にはずいぶんと優しい。そこは客商売たる所以であろう。

なぜ日本の競馬の控除率はこうも高いのか。その歴史は戦時中まで遡る。25%もの高い控除率は、かさむ一方の戦費捻出に協力するための窮余の策だった。しかし戦争が終わっても、復興のための費用が必要だからおいそれと下げるわけにもいかない。そのままズルズルと今日に至った。年間売上が数十億円だった当時はまだしも、2兆円産業となった現在でも同率のままとは、お上もちゃっかりしている。

もっとも、その使い道が納得ができるものなら、私だって文句はない。競馬の収益金のうち4分の3は畜産振興費。なのに牛肉の値段が世界一とはどういうことか。

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江戸時代もバクチは御法度だったが、それでもバクチを打ちたい面々はお寺の中に賭場を開帳したという。なぜか。寺の中なら、町奉行といえど易々と捜査に踏み込めない。そこで賭場を開帳させてくれたお礼にと、博徒はお寺にいくばくかの寄進をした。だから「テラ銭」であり、だから「坊主丸儲け」なのである。JRAは現代の坊主になってやいないか。「JRAスーパープレミアム」は毎月あっても良い。

 

 

***** 2021/9/19 *****

 

 

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2021年9月18日 (土)

嵐を追って

未明の大阪は台風14号の影響で大雨。雨音がひどかった。朝6時に起きて、台風の位置と鉄道の運行状況を確認。台風は和歌山県有田市付近に再々上陸したらしい。これは昨夜の予報通り。新幹線を含め近畿圏の電車は概ね平常通り動いている。窓から西の空を見ると、雲の合間から青空も見えてきた。

京阪電車に揺られて京都へ。途中、京都競馬場の工事の進捗状況を車窓から確認する。3コーナーの山が姿を消しているのが寂しい。この辺りで雨が降り始めた。

京都は小雨。ただ気になるほどではない。それよりも酷いのは湿気。台風が運んだ暖かく湿った空気は、いったん京都の盆地に入ると、多少の風では外に流れ出ることなく、留まり続けるのであろう。雨に濡れることが回避できても、汗でずぶ濡れでは結果同じ。京都での用事を済ませて、慌ただしく上りの新幹線に乗り込むと、服の乾く間もなく名古屋に到着した。

名古屋は大雨。東進する台風14号に追い付いてしまったか。風も京都に比べれば強い東風。それでも中京競馬場は最寄り駅から競馬場正門まで、1キロ近くにわたって屋根を設置してくれているから助かる。雨に濡れる心配はない。

Chukyo

天候は徐々に回復。阪神ジャンプSの発走時刻には風向きも東から北に変わり、西側の空からは陽射しも差し込み始めだ。直後のレースで差し込んだのは3番人気トゥルボー。前走の新潟ジャンプSに続いての重賞連勝である。これで障害成績は(4,0,0,2)と強さと難しさが同居しているタイプだが、オルフェーヴルの産駒とあればやむを得まい。ちなみに「トゥルボー」の意味は「竜巻」。そこに気づいていれば買えたかもしれない。

Jumps

名古屋に戻り、再び新幹線に乗って新横浜を目指す。途中静岡辺りで激しい雨。それが徐々に収まり、新横浜では小雨になっていた。ただし風は強い東風である。どうやら台風を追い越してしまったようだ。朝から台風を追いかけて、その差が開いたり縮んだりしながら、ゴール前でようやく差し切った感触。それに近いものがあった。

 

 

***** 2021/9/18 *****

 

 

 

 

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2021年9月17日 (金)

本命不在

菅総理の後継を決める自民党総裁選は今日立候補の届け出が締め切られた。出馬は4人。先行した高市・岸田・河野の3氏が激しく先頭を争う展開だが、出遅れた野田氏にしても、もとよりじっくり進める作戦だったに違いない。いずれにせよ本命不在の混戦という見方が主流。見る側にすれば楽しい展開になりそうだ。

今後しばらくは一般紙の紙面に競馬絡みの用語が登場することになる。立候補を「出馬」と呼ぶのは当然。当選が有力視される候補者は「本命」で、本命を脅かす存在は「対抗」である。とかく選挙は競馬に喩えられがちだ。

「下馬評」では現職と新人の「一騎打ち」が予想され、「勝ち馬に乗りたい」と願う面々がギリギリまで態度を決めかねる光景は、さながら発売締切直前の馬券売り場のよう。1回目の投票での「逃げ切り」を図りたい陣営がいれば、決選投票での「差し切り」を狙う陣営もいる。

ただし「出馬」という用語の出自は、厳密には競馬ではない。手元の辞書を紐解けば「(本来は自陣内で指揮すべき大将が)馬に乗って戦場に出ること(幹部が自分から現場に出かける意にも用いられる)」とあり、すなわち軍事用語だった。転じて「立候補すること」に繋がっていく。

Keiba

かつての自民党の重鎮・椎名悦三郎氏は「総裁選は田舎の草競馬」と評した。一国の宰相が、その人物の見識や力量によってではなく、派閥の多数派工作の結果選ばれることを自ら揶揄した言葉である。田中角栄の後継に三木武夫を推薦した「椎名裁定」で歴史に名を残した人物の言葉だと思うと、字面の割に重く聞こえやしないか。

ただ、今回の総裁選に限っていれば各派閥とも多数派工作には苦心している。なにせ自民党7派閥のうち、投票先を一本化できたのは岸田派のみ。あとは皆さんお好きにどうぞ。それゆえの「本命不在」だ。我々は草競馬の見物人。そういう意味では今回の競馬は面白くなりそうだ。

 

 

***** 2021/9/17 *****

 

 

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2021年9月16日 (木)

「競馬の日」に相応しいのは

トレンドワードをチェックしていたら「競馬の日」という言葉が上位に来ていた。

たしかに一部では今日9月16日を「競馬の日」と呼ぶ向きもあるが、厳密にはJRAがそう呼んでいるに過ぎない。なぜか。それは9月16日がJRAの創立記念日だから。JRAの手帳にもそう書いてある。ならば「競馬の日」というよりは「JRAの日」であろう。

Techo

競馬絡みの記念日は意外に少ない。7月31日の「トゥインクルレースの日」は大井のローカル記念日だし、9月23日の「愛馬の日」にしても競馬というよりは馬事振興である。

ちなみに戦前の「愛馬の日」は4月7日だった。明治天皇が「馬事勅諚」を発して馬匹改良を命じた1904年4月7日を記念してのもの。戦後いったん廃止されるが、1968年、動物愛護週間に合わせた秋分の日にJRA馬事公苑が「愛馬の日」を復活させた。ただ、東京五輪・パラリンピックの開催に伴い、馬事公苑版「愛馬の日」も事実上消滅してしまっている。

ではあらためて「競馬の日」や「競馬記念日」を敢えて制定するとすれば何月何日が相応しいのか? そういうことを考え始めると時が経つのを忘れるますね。

本命は4月24日。1932年のこの日、我が国初のダービー競走が開催された。日本競馬の実質的な出発点。先人の苦労を忘れてはならない。

そのダービー創設に奔走し、「日本競馬の父」とも呼ばれる安田伊左衛門の誕生日である8月31日も候補のひとつになろうか。ただ、ローカル開催期間中では記念日を認知しにくいかもしれない。

もし「競馬の日」ではなく「馬券の日」をつくるなら、11月4日が相応しいのではないかと秘かに考えている。実は1935年のこの日、根岸競馬6レースで、馬券を買った人全員が的中という慶事が起きているのだ。

3600mの障害コースを走り抜けた1番人気メイラン(木戸騎手)と2番人気プランプトン(梶騎手)の接戦は、ついに決着がつかなった。すなわち同着である。しかもこのレースは2頭立て。発売された馬券は単勝だけだから、外れ馬券は無かった。

配当は「特払い」。当時は1枚20円の馬券に対して17円だから、当たっても赤字だ。観客は苦笑いであろう。しかし、やはりめでたい。それを祝しての「馬券の日」というわけ。むろん現代の競馬において、全員的中が再現される可能性は限りなくゼロに近い。

 

 

***** 2021/9/16 *****

 

 

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2021年9月15日 (水)

花鳥風月ニッポン競馬

朝方の雨も上がり、日差しの戻った大阪は日中の最高気温が28度。ずいぶんと過ごしやすくなってきた。朝晩はむしろ肌寒いと感じることも。JRAのサマーシリーズも終わり秋競馬が始まればそれも当然。今週は菊花賞トライアル。静かに、しかし確実に秋はやってきている。

競馬に携わっているといないとでは四季の移ろいを感じる度合いがまるで違う。日本の競馬が海外のそれと決定的に異なる点を挙げるならば、春夏秋冬四季折々の競馬が楽しめることではないかとさえ思う。

もちろんこれは競馬に限ったことではなく、我が国固有の風土の話に帰結することも事実。だが、一年を通して行われる競馬の中にあっては、どこかで区切りが求められるもの。それが日本の四季にピタリと当て嵌まっている事実は見逃せない。そして、その季節感をより一層掻き立ててくれるのが、レース名である。

Spring

季節感溢れるレース名の代表格は「桜花賞」と「菊花賞」のクラシック2レースあろう。英国に範を取っておきながら「1000ギニー」や「セントレジャー」ではなく、「桜花賞」「菊花賞」という美しい名前を付けた先人のネーミングセンスには、ただ敬服するばかりだ。

Ouka

季節感を演出するレース名はなにも重賞レースに限った話ではない。サイドメニュー的存在の特別競走は、中身だけを見ればほぼ同じようなレースの繰り返しであり、ややもすると無味乾燥なものに陥りかねない。だが、そこにレース名が加れば、そうはならずに済む。

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総じてJRAのレース名のネーミングセンスは素晴らしいと思う。ある程度年期の入った競馬ファンならば、『つばき賞』と聞けば「あぁ、冬の京都の3歳戦だな」と分かるだろうし、『青嵐賞』と聞けば「ダービー当日の2400m戦か」と思うだろう。先週の中京で行われた『ムーンライトハンデ』も秋を思わせる名物レースだ。

競馬ファンは毎週末の特別競走名から、知らず知らずのうちに四季の移ろいを肌で感じ、来るべき先の季節にも思いを馳せながら日々の競馬に接している。それは日本の競馬ファンだけが味わうことのできる、ある種の特権なのかも知れない。

 

 

***** 2021/9/15 *****

 

 

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2021年9月14日 (火)

奇跡の血

日曜中京9Rの長久手特別は2勝クラスによる芝2000mのハンデ戦。単勝1番人気のロバートソンキー(57キロ)が、道中4~5番手追走から直線外目を豪快に駆け抜けて3勝目を挙げた。2着のノースザワールド(53キロ)に付けた着差は2馬身。4キロの斤量差を思えば圧勝と言ってよかろう。

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昨年の神戸新聞杯で14番人気ながら3着に食い込んだ、あの馬である。直前に出走した新潟の1勝クラスでは敗れていたことを思えば、14番人気も無理はない。200万円の追加登録料を支払って出走した菊花賞も6着なら健闘の部類だ。

その後3か月の休養を経て出走した1月中京の1勝クラス。GⅡでコントレイルの3着に入り、今をときめくディープボンドに先着した実績からすれば1.6倍の単勝支持も頷ける。ところが意外にもクビ差の辛勝だった。原因は不良馬場か、あるいは16キロ増の馬体重か。いずれにせよ、レース後に陣営は再休養を選んだ。

迎えた長久手特別。調教師は「きっちり立て直した」と胸を張る。それならばと単勝オッズは一時1.5倍あたりまで下がった。しかし、発表された馬体重はなんとマイナス20キロ。それをどうとらえるか。そもそもハンデ戦でもある。ファンの逡巡がオッズを1.8倍にまで押し上げたのかもしれない。

ロバートソンキーが注目を集めるのは、その強さからだけではない。祖母トウカイテネシーの全兄は奇跡の名馬トウカイテイオー。もはやその走りをライブで観ていた人は少数派だろうか。父シンボリルドルフに続き無敗で2冠を制したのは1991年。30年前となれば昔話に近い。

トウカイテネシーの7代母は伝説の牝馬ヒサトモ。1937年の日本ダービーを制し、古馬になってからも天皇賞の前身にあたる帝室御賞典を勝った女傑だが、15歳の時に繁殖生活に別れを告げ、浦和競馬場に戻って現役復帰を強いられた。そのまま浦和で非業の死を遂げたため、その血を伝える牝馬の産駒はたった1頭しかいない。それが平成の世に甦り、トウカイテイオーやロバートソンキーを送り出した。そう思えば、ロバートソンキーの走りを見ることができること自体がもはや奇跡のように思えてならない。

ロバートソンキーを管理する林徹調教師は、中学生当時に観たトウカイテイオーの有馬記念の興奮が今も忘れられないと言う。晴れて調教師となり、その血統を預かることになったのも何かの縁。ぜひこの馬で初GⅠタイトルを狙ってほしい。

 

 

***** 2021/9/14 *****

 

 

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2021年9月13日 (月)

スプリント戦未勝利馬のワンツーで

セントウルSが毎年のようにハイレベルとの評価を受けるのは、直後に行なわれるスプリンターズSとの結び付きが強いから。つまり強い馬が下馬評通りの結果を残してきたことに尽きる。とくにチャンピオン級の馬が1番人気に推されると、まず崩れない。今年も多士済々のメンバーが揃ったが、終わってみればレシステンシアの完勝だった。これで6年連続で1番人気が優勝。穴党は手を出しにくい。

レシステンシアはスプリント戦を勝った経験がない。僅差2着の高松宮記念にしても道悪。圧倒的支持を集めたレシステンシアにとって仮に死角があるとすれば、良馬場のスプリント戦への対応という一点であろうと思われた。しかし実際にゲートが開くや、いちばんのスタートを決めるとシャンデリアムーンを敢えて行かせての2番手追走。鞍上に押したり促したりする気配は微塵もない。持ったまま直線に向くと、満を持して抜け出した。

惜しかったのはピクシーナイトである。直線半ばまでは着争いの一角に思えた。だが、ラスト50mの爆発的な脚に、極めて高いスプリント能力の片鱗を見た思いがする。内容的には勝ったレシステンシアと互角かそれ以上であろう。レイハリア、ヨカヨカ、そしてオールアットワンスと、今年の3歳馬はスプリンターの当たり年。福永騎手は「来年はすごい馬になる」と予言したそうだが、その予言は案外早めに現実のものになるかもしれない。

そのピクシーナイトの猛追を凌いだレシステンシアの勝因は競走馬としての総合能力。すなわち「底力」であろう。最後の数メートル。「ピクシーナイトが届いた!」と思った瞬間は確かにあった。結果的にクビ差もありながら、ルメール騎手は「ぎりぎりセーフ」と振り返り、場内実況も「ゴール前は接戦。これはどうか?」と言ったのはそのせいに違いない。

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実際には、ピクシーナイトに迫られたレシステンシアが最後の1完歩で自らグイっと前に出たようにも見えた。そこが底力。しかし次はスプリント能力が極限まで試される舞台である。モズスーパーフレアの登場で流れはさらに速くなる。

3着馬を1馬身以上突き離した上に、勝ち時計も優秀。1、2番人気のワンツーで堅く収まったセントウルSは、今年もハイレベルの評価を受け、1、2着馬は本番でも人気を集めるに違いない。その一方で、スプリント戦未勝利馬同士によるワンツーであったことも事実。今年のスプリンターズSは簡単そうに見えて案外難しいレースになるのかもしれない。

 

 

***** 2021/9/13 *****

 

 

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2021年9月12日 (日)

壁奉納の壁

3か月ぶりの中京開催に合わせて熱田神宮を訪問してみた。

Kabe

言わずと知れた勝負事の神様。1560年には織田信長が桶狭間への出陣前に必勝祈願したことでも知られる。見事今川義元を討ち果たしたのちにお礼として奉納したという「信長壁」などを眺めつつ、私も必勝を祈願した。セントウルSで大儲けした暁には、私も壁を奉納します。まず2礼。そして2拍手。どうにかカレンモエを勝たせてください。そして1礼。これでよし。これでセントウルSの馬券は取ったも同然。ならば、名物も味わっておこう。神宮の正面に店を構える「あつた辨天」の暖簾をくぐった。

昭和4年創業の老舗だそうだ。なのに客は私ひとり。コロナ以前なら心配になった。だが、今のご時世ならむしろありがたい。周囲を気にする必要がない。

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ひつまぶしの正しい食べ方をご存知だろうか。

最初におひつの中身を3等分して、1杯目はそのまま、2杯目はこの薬味をたっぷりかけて、そして最後の3杯目はダシをかけてお茶漬けにして食べる。―――というのは間違い。まずおひつの中身を4等分する。そして最初の1杯はそのまま、2杯目は薬味、3杯目はお茶漬け、そして4杯目は、いちばん好きな食べ方で食べるというのが正解。まあ、食べ方に正解も不正解もないわけだが、3等分よりは4等分の方が簡単であろう。

いずれにせよ、昨日付けをご覧になった方は呆れているかもしれない。昨日の昼食が鰻、そして今日も鰻。嫌にならないのか。しかし、それがそうでもないのである。それは私が鰻屋の孫だからではない。パリッと香ばしく焼かれた外目は香ばしく関西風、しかしタレは昨日よりも濃く、こってりした鰻の脂に負けていない。そのまま食べてもヨシ、薬味で食べてもまたヨシ。しかし、私としてはやはりお茶漬けを推したい。タレと脂の旨みを吸い込んだお茶の旨いこと。2日連続の鰻であることを忘れる。料理としては全くの別物だ。

私くらいのトシになると鰻重を食べきるのが辛くなってくるという声も聞く。かの平賀源内は「鰻を食べれば元気になる」と言って土用の丑に鰻を結びつけたが、実際には「元気ならば鰻を食べられる」という見方もできるのではあるまいか。すなわち、炎天下でも鰻を食べられるくらいの食欲があれば、それは元気であることの証ですよ、ということである。つまり私はまだまだ大丈夫というわけ。

Moe

それにしてもカレンモエは残念だった。なんの不利もなく、思うような競馬が出来た結果だから、素直にGⅡの壁と認めるしかない。GⅠの壁はさらに高いと思えばため息が出る。熱田神宮に壁を奉納するのは、またの機会にさせてもらおう。

 

 

***** 2021/9/12 *****

 

 

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2021年9月11日 (土)

2代目うなぎ登り

大阪に来たら、一度きちんとした鰻屋さんに行かねばと思っていた。

何を隠そう私の母の実家は目黒で鰻屋を営んでいた。ゆえに私は幼少の頃から日々三度の食事に鰻重を食べて育ってきた……というのは真っ赤な嘘だが、母の実家が鰻屋なのはホントです。毎日とは言わないけど、鰻が珍しいメニューではなかったのもたしか。自宅にはあの鰻のタレビンがたくさんあったし、学生時代の弁当も週イチでウナ弁だった。いま思えば贅沢な話だが、当時は「また鰻かよ~」と文句ばかり言っていた気がする。

ともあれ、関西の鰻はパリっと歯応えがあるらしい。関東の柔らかい鰻に慣れ切った私が、その違いを身をもって味わってみたいと思うのは自然の成り行きであろう。

鰻職人の世界には「割き三年、串打ち七年、焼き一生」の言葉がある。

まずは「裂き」。関西では腹から包丁を入れるが関東では背からが常識。「武士の町、江戸では切腹を嫌った」という説が有名だが、どうやらそれは俗説らしく、単なる見栄えの問題だと聞いたことがある。関西風に裂くと身の薄い腹が両端になり、焼いた際に丸まりやすい。端に分厚い背中の身がくる関東風は逆に丸まりにくい。実質の関西に対し見た目を尊ぶ江戸気質ということか。

「串打ち」も東西で異なる。関西では頭を付けたまま5~6尾をまとめて金串に刺す。関東は頭を除き二つに切り分け竹串に刺す。

風味に影響するのが「焼き」の違いだ。どちらも最初に素焼きをしてから、たれをかけて焼くが、関東風は焼く前に蒸すので脂が抜け、ほろほろと柔らかい。関西風は蒸さない「地焼き」が主流。だから皮がパリッとする。

近年は関西でも、関東風の柔らかいかば焼きを出す店が増えたらしいが、今日訪れた「高良」は、関西伝統の地焼きにこだわっているという。タレも控えめでこの色合い。味付けは「関西はあっさり、関東はこってり」の印象があるが、こと鰻に関しては逆なのが面白い。

Unagi

この鰻にありつけたのは今日の中京5Rが当たったおかげ。4番人気で勝ってくれた馬には感謝せねばなるまい。その名も「ウナギノボリ」だからよくできてる。

ドレフォン産駒の2歳牡馬。そのユニークな馬名から察しがつく通り小田切有一オーナーの所有馬である。直線で馬群を割る勝負根性には目を見張るものがあった。

実はこのウナギノボリは2代目。先代はキングカメハメハ産駒の牡馬で、やはり小田切オーナーの所有馬だった。しかし、デビュー4戦目の新潟で競走中止。予後不良の憂き目に遭う。同じ名前を託した2代目の新馬勝ちはオーナーにとっても格別の思いがあろう。鰻重をご馳走してくれた一頭だから、私も個人的に応援する。今後の成績も鰻登りになることを願おう。

 

 

***** 2021/9/11 *****

 

 

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2021年9月10日 (金)

神様の記憶

JRAのオフィシャルサイトで今井壽惠さんのWeb写真展「名馬の記憶」が開催されていて思わず見入ってしまった。JRAアニバーサリーの企画の一環とのこと。CMやポスターにも使われた名作ばかりだから、まさに記憶に残っている一枚もあるかもしれない。小さなパソコンの画面ではあるが、一枚一枚を噛みしめるように見ていたら、重い機材を抱えて競馬場に通い詰めていた若き日の自分を思い出した。

今井寿恵さんは、我々のような立場の人間にしてみれば「神様」とは言わないまでも、ちょっと恐れ多い人物であった。いや、この際「神様」とお呼びしてもかまわないと思うんだけど、以前ご本人にそう申し上げたら「いやぁだぁ。神様は大川(慶次郎)先生でしょ」とたしなめられた。上手い形容の言葉が見つからないというのは困る。

ともあれ「馬を撮る」という行為を芸術の域まで高め、今日の日本の競馬の繁栄をグラフィカルに支えた第一の功労者である。その今井さんがお亡くなりになったのは2009年の2月。サクセスブロッケンの勝ったフェブラリーSの週だ。レースのあとにカメラマン同士で「今井さん見てたかなぁ」と話した。今井さんがシンボリクリスエスを好んで撮っていらしたことを知っていたから。今回のWeb写真展にもシンボリクリスエスの素晴らしいショット(#33)が展示されているので、ぜひ見てほしい。

若くして広いスタジオを持ち、助手や運転手を従えて活躍したファッションフォトグラファーとしての華やかな生活は、ある日突然の暗転を迎える。乗っていたタクシーが事故を起こしたのだ。後部座席からフロントガラスに突っ込んだ今井さんは生死の境を彷徨ったばかりか、フォトグラファーとしては死刑宣告にも匹敵する「失明」の瀬戸際にもあった。

「生きるか死ぬかという時になって、もっと生命感のあるものを撮りたいと思った」と、それまで積み重ねたものすべてををかなぐり捨てて、彼女はヨーロッパへと旅立つ。彼の地でのニジンスキーとの出会いが全てを決定した。今回のWeb写真展のトップを飾る作品がその一枚だ。

海外での知名度は今も群を抜く。

1997年の凱旋門賞のパドックでのこと。「その撮影パスではパドックでの撮影はできない」と言う(多分。フランス語なので)警備員と私とが小競り合いをしていると、パドックの中からゆっくりと今井さんが現れ、警備員に一言二言話しかけると、一瞬にして警備員の態度が変わってパドックの中に通してくれたことがある。

特に親しかったわけでもない私をパドックに招き入れてくれたのは、単に私が日本人だったからなのか、あるいは野平邸で何度か顔を合わせていたことを覚えていたからなのか―――。今となっては確認のしようがない。

Longchamp

今井さんは撮影技法に対する関心がことのほか高かったように思う。時には「トリック」と言っても差し支えないような表現方法を取り入れることもあり、それを嫌うカメラマンもいたことは事実。だが、写真というメディアの可能性を信じていたことの表れでもあろう。晩年には「誰でも写真を写せる時代。だからこそ自分なりの個性的な表現が重要」とおっしゃっていたことを思い出した。けだし金言であろう。 

 

 

***** 2021/9/10 *****

 

 

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2021年9月 9日 (木)

頭を下げてばかりの日

9月に入ってずっと忙しい。朝7時に仕事場に着いて、途中のコンビニで買ったおにぎりを食べ、そのまま夜8時、9時まで働き通し。しかもその仕事内容が謝罪ばかりというのだから救いがない。

今日もそうだった。朝食はファミマのおにぎり2個。それを腹に入れてから昨日の件についての報告書を書き、それが終わると今日の謝罪行脚が始まる。相手がまだ来てない場合もあるが、待ち構えている場合もある。どちらも面倒臭い。いなきゃいないであらためて行かなきゃいけませんからね。後者の説明は不要であろう。そのうちに新しい情報が東京から届く。それを受けてまたイチから説明に回ることに。情報に振り回されて午後に予定していた会合はすべてキャンセル。今度はその相手に謝らなければならない。えーと、この相手はどっちを謝るんだっけ?―――なんてことになる。

私が悪いことをしたわけでもないし、ミスを犯したわけでもない。やらかしたのは東京。私は単なる大阪の窓口である。とはいえ怒っている相手にそんなことを言ったところで余計に怒るだけ。だから言わない。今日も昼メシを食べ損ねて、ため息を付きながら帰宅すると時計は夜10時を回っていた。

大阪に来てからずっとこんな調子。それにも慣れたつもりだったが、昨日今日は本当にロクなことが無い。心は既に折れた。普段なら美味いものを食べて酒を飲んで憂さを晴らすところだが、それもできない。緊急事態宣言は継続が決定。大阪府の新規感染者は相変わらず千人を超えている。巨人は1週間以上勝ちが無い。ようやくありつけた夕食のサラダに箸を付けた瞬間、箸が真っ二つに折れた。なんて日だ!

Hashi

そんな調子だから、スマホにメールが届いていることにすぐに気づかなかった。

差出人はこのブログでもお馴染みの釧路馬主。文面には「おめでとうございます」とある。

???

ああっ!💡

昨日の大井4Rに社台オーナーズにかかる所有馬が出走することをすっかり忘れていた。どうやらそれが勝ったらしい。慌ててネットで確認するとホントに勝っていた。9番人気で馬連万馬券を演出している。むろん馬券は買ってない。だが、ここは勝ったことを素直に喜ぼう。

ちろん期待していなかったわけではない。デビュー以来3戦して、4着、4着、5着。地方の番組編成からして「そろそろ順番」とは思っていた。馬主である以上、愛馬のレースは―――ナマで観れないのは仕方ないにせよ―――常に気に掛けているべき。いくら仕事が忙しかったとはいえ私は失格である。お詫びに次走は現地応援することを心に決めた。馬は勝ったご褒美にちょっと遅い夏休み入る。リフレッシュが完了した頃には、コロナの状況も改善していると信じたい。先々の楽しみは暗闇の彼方に光る希望の灯だ。コロナ対策にも同じことが言えよう。なんだかんだで馬に助けられてばかりの人生。頭を下げてばかりの一日だったが、馬には本当に頭が上がらない。

 

 

***** 2021/9/9 *****

 

 

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2021年9月 8日 (水)

夏と秋のはざまに

夏競馬も終わり、今週の中山メインは関東の競馬ファンに秋の到来を告げる京成杯「オータム」ハンディキャップ。なのに「サマー」マイルシリーズでもある。

実際、夏競馬と秋競馬が混ざり合うメンバーになることが多い。ローカルを使われ続けてきた馬たちと、夏場を休みに充てた実績馬たちの激突。しかもハンデ戦。力の比較は難しい。だから波乱になることも。2003年のこの一戦でも、勝ったブレイクタイムは前年の覇者であったにもかかわらず6番人気の穴評価。連覇でありながら波乱でもあった。

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このレースを未だに「京王杯」と間違う人はもう少数派であろうか。実は私はその一人。こうして書いていながら間違えやしないかとビクビクしている。

もともとは春秋の東京開催のオープニングを飾るレースが京王杯だった。それが「スプリングカップ」と「オータムハンディキャップ」である。1974年の京王杯オータムハンデが行われたのは9月東京の芝1800m。名手・野平祐二が手綱を取ったスガノホマレがスタートからぐんぐん飛ばして、イチフジイサミら有力馬を突き放して一人旅のゴールを果たした。その勝ち時計は1分46秒5。日本競馬史上、1800mで初めて47秒の壁を破る驚異の日本レコードに「場内騒然ですよ」と生前の野平氏から聞かされたことがある。氏が追い求めた「魅せる競馬」の一端であろう。

中山のマイルに移ったあとも、オータムハンデと言えば速い時計の出るレースとしてそのイメージが定着している。87年ダイナアクトレス(1分32秒2)、94年サクラチトセオー(1分32秒1)、01年ゼンノエルシド(1分31秒5)、12年レオアクティブ(1分30秒7)、そして19年トロワゼトワル(1分30秒3)。幾度となく日本レコード更新の舞台となった。

ただ、このレースでレコードが更新されるたびに「1マイルの世界レコード」と騒ぎ立てるのはいかがなものか。タイムに現れるのは馬の能力だけではない。多分に馬場の状態が影響するのは誰もが知るところ。そもそも1マイルは1609.3mではないか。

それでもこのレースを迎えると時計が気になるのも事実。果たして今年の勝ちタイムはどんなもんだろうか。快速バスラットレオンに加え、ベステンダンクとマイスタイルのハナ争いが激化すればハイペースは避けられまい。そこに昨年の朝日杯を2歳コースレコードで駆けたグレナディアガーズが参戦する。時計的にも注目の一戦となりそうだ。

 

 

***** 2021/9/8 *****

 

 

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2021年9月 7日 (火)

追想

紫苑Sがオープン特別から重賞に昇格して今年で6年。ヴィブロス、ディアドラ、ノームコア、カレンブーケドールらがここをステップにGⅠ戦線で活躍したおかげで、秋の中山開幕を飾るレースとしてすっかり定着した感がある。

だが、「紫苑」そのものをきちんとイメージできる方が果たしてどれほどいらっしゃるだろうか。初秋に花を咲かす菊の仲間で、涼やかな青紫が美しい。原産地は北東アジアとされるが、万葉集や源氏物語にも登場するところを見ると、日本への渡来はかなり古いのであろう。

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紫苑の学名は「アスター・タタリクス」。だから紫苑Sが行われる日の9Rに行われるアスター賞は姉妹レースみたいなのもの。アスター賞と紫苑Sの両方を勝ったのはノームコアただ一頭。それにどれほどの価値があるのかと問われると正直答えに窮するが、こういう細かなことを気にするのが競馬ファンでもある。

残念ながら昨年のアスター賞は牡馬のドゥラモンドが勝ったから、今年の紫苑Sでノームコア以来の「連覇」が達成される可能性はない。ならばプレミアエンブレムに注目してみる手はある。お母さんのメジャーエンブレムは阪神JFとNHKマイルCを勝った快速牝馬だが、実は2015年のアスター賞の勝ち馬。紫苑に縁がないとは言えない。

Sweep

ただ、私が注目するのはクリーンスイープだ。父が先日急逝したドゥラメンテであるばかりか、母のスイープトウショウも昨年暮れに亡くなったばかり。初勝利を挙げた昨年12月の未勝利戦では、4角手前で前が詰まり、直線でも他馬に挟まれて弾かれる致命的な不利がありながら、ひるむことなく突き抜けて見せた。その勝負根性は父譲り。鋭い末脚は母譲りであろう。2000mの距離が合わないとは思えぬ。

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紫苑の花言葉は「追想」だそうだ。娘の走りに亡きスイープトウショウの姿を重ね、在りし日のドゥラメンテに思いを馳せる。秋の初めにそういうレースがあっても良いかろう。その上で勝ってくれれば言うことはないのだが。

 

 

***** 2021/9/7 *****

 

 

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2021年9月 6日 (月)

馬肥ゆる季節

昨日あたりから、昼間は夏の暑さが残りつつも朝夕は過ごしやすくなってきた。ふと空を見上げれば雲が高い。天高く馬肥ゆる秋。食べ物が美味しくなる季節だ。

昨日の新潟9R・飯豊特別に出走してきたアヴェラーレの馬体重は、前走ニュージーランドTからプラス22キロ。母アルビアーノが好きな一頭だったことに加え、知人が1口出資しているという事情もあってデビューからずっと注目してきたが、春に比べてまるで別馬のようになっていた。人気薄馬の出し抜けを食らってクビ差2着に敗れたが、馬体増が敗因だったとは思えない。その証拠に後続はしっかり千切っている。

アヴェラーレ以外にも、昨日は小倉7Rのスーパーウーパーがプラス16キロで優勝、8Rのムジックがプラス10キロで2着、12Rのコートダルジャンもプラス12キロで2着した。札幌8Rは1着ペドラフォルカ(14キロ増)、2着ミツルハピネス(20キロ増)、3着タウゼントシェーン(14キロ増)と2桁体重増が表彰台を独占。続く9Rも12キロ増のスカーレットスカイが4馬身差独走である。ここまでに名前を挙げた8頭はすべて3歳馬。馬体増は成長力の証であろう。「天高く馬肥ゆる秋」の故事は現代にも生きている。

馬が家畜化される以前、雪が解け、草木が芽吹く春が過ぎ、青草をお腹一杯食べられる夏がやってきても、夏の暑さに弱い馬はすぐに太ることはない。ようやく過ごしやすい秋を迎えると、草木が実を付け栄養価を増えることも手伝って馬はみるみる太り、再び訪れる冬に備えるのである。

Aki

家畜化され、食べ物の心配をする必要のなくなった今も、その習性はDNAに刻み込まれたままだ。馬は秋になると当然のごとく食べ、筋肉は盛り上がり、毛艶はいちだんと美しくなる。俗に言う「夏の上がり馬」も、晩夏から初秋にかけて馬の体調がアップし、春とはまるで別馬のような活躍を見せる馬が現れるからこその表現である。

競馬においては、日本のみならず世界でも秋に重要なレースが数多く開催される。人間のカレンダーに合わせて、年末にクライマックスを迎えたいという興業的な思惑もあるだろうが、もとはといえば競馬が馬の能力検定であった時代の名残である。能力検定だから、馬の体調がベストの時期に行う、というのがその理由だ。

「天高く馬肥ゆる秋」というフレーズは、もともとは中国の言葉。「秋になると辺境から異民族が馬で襲来するぞ」と警戒を呼びかける、まあ一種のスローガンである。それがいつしか日本では「食欲の秋」を現す言葉に変貌したわけだが、そういうことは他の言葉でも間々あること。だが、さらに飛躍させて、「天高く馬肥ゆる秋。お馬さんはグルメなんですね」なんて発言をするTVキャスターもいたりして、これには閉口してしまう。

馬に関する故事やことわざが他の動物に比べて圧倒的に多いのは、馬が人間にとって身近な存在であったことの証である。一方で、その誤用が蔓延るのは、それだけ日本人の生活から馬が遠ざかったことの現れなのかもしれない。残念なことではある。

 

 

***** 2021/9/6 *****

 

 

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2021年9月 5日 (日)

散歩日和

京都での早朝仕事がめでたく昼前に終わった。よし、上賀茂神社まで歩こう。ちと遠いが時間はたっぷりある。

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上賀茂神社には本物の神馬(しんめ)が繋養されている。それがこの6月に代替わりしたと聞いた。それが桜花賞馬ダンスインザムードの子だという。神馬に選ばれる馬は、白い毛並みで気性が穏やかなことが条件。ダンスインザムードの子で芦毛と言えば、チチカステナンゴとの間に生まれたマンインザムーンの可能性が高い。夏の間は近隣の大学馬術部の厩舎で休養をしていたが、9月最初の日曜となる今日、久しぶりに境内に登場すると聞いた。直接この目でマンインザムーンの姿を拝みたい。

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そんな思いを抱きつつ、鴨川べりを歩いて歩いてやっとたどり着いた上賀茂神社の厩舎に神馬はいなかった。理由はここでもコロナである。なんでも緊急事態宣言中は登場を控えるらしい。貼り紙には「9月12日まで」とあるが、実際には9月中も不在が濃厚。政府は緊急事態宣言の2週間延長を決めている。

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仕方がないので神社沸きの「神馬堂」の暖簾をくぐる。映画「男はつらいよ」にも登場した焼き餅は、どことなく神馬の芦毛を思わせる白いお餅の中に控えめな甘さの粒あんが詰まっている。歴史を感じさせる店内には白馬の像も。食べながら思った。これは白馬を買えという上賀茂神社の御祭神・賀茂別雷大神のお告げではあるまいか。そうと決まったら向かう先はひとつ。

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むろんウインズ京都ですな。新潟記念に芦毛馬がいないが小倉2歳Sには2頭出る。となれば答えは簡単。

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はっはっは。もう当たったも同然だからメシでも食いに行こう。ウインズ前の建仁寺の境内を抜けて、祇園の住宅街を歩くこと10分。五条通りに出たところにある「讃式」の暖簾をくぐる。

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こちらは京風ではなく屋号の通り讃岐うどんのお店。麺のコシ、小麦の風味を存分に楽しめる。分量も申し分ない。高松での仕事以来2週間ぶりの讃岐うどんに心が躍る。懐には当たる(はずの)馬券。純白に輝く麺を啜る音は芦毛への応援歌だ。

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五条通りから東大路通りを下って「馬町」と書かれた交差点を左折。とうがらしおじゃこで有名な「かむら」さんに立ち寄る。京都では「ちりめん山椒」が有名だが、こちらのおじゃこは一度食べると癖になる。その昔は京都競馬場に来なければ買うことができなかったが、今は気軽に買えるからありがたい。

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「おかげさんで少しは涼しくなりましたなぁ」

「これでコロナもなくなれば良いんですけど」

「ほんま。いつになったら収まるんやろか」

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女将さんとの会話中、ふらりと登場した看板猫の毛色まで芦毛に見えた。だが、こんなこじつけで楽しんでいたのもここまで。インプロバイザー5着、ブレスレスリーは6着に敗れた。そんないい加減な買い方で当たるほど馬券は簡単ではない。それは分かっている。そもそもマンインザムーンに会えていれば、こんな出鱈目な買い方をすることもなかったはず。でも、そのおかげで楽しく歩くことができたのだからヨシとしよう。散歩には良い季節になってきた。

 

 

***** 2021/9/5 *****

 

 

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2021年9月 4日 (土)

疑似札幌遠征

札幌2歳ステークス撮影のために、毎年秋になると札幌に足を運んでいた時期がある。秋の札幌開催が行われていた当時、札幌2歳Sは9月末か10月初めの実施だった。メインたる中山、阪神に加え、日本馬の凱旋門賞遠征が重なれば、カメラマン不足は避けられない。そこでヒマそうな私に声が掛かったのだと推察する。

Admire

秋の札幌はパラダイスである。

観光客は減り、飛行機代は割安となり、しかも食べ物は日を追うごとに美味くなる。寒さに震えるにはまだ早く、まだ暑さの残る東京から一気に秋のど真ん中に飛び込む爽快さは、この季節限定のちょっとした贅沢でもあった。

ところが今ではそんな声がかかることもないし、そもそも秋の札幌開催自体がない。秋の札幌を満喫する機会は完全に失われてしまった。

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大阪の残暑から逃れるように飛び込んだ梅田のビルの地下街に看板を掲げるのは老舗の洋食店「グリル北斗星」。ハンバーグやオムライスが美味しい地元の人気店だが、実は大阪で最初にスープカレーを出した店でもある。札幌に行けないのなら、せめて食事だけでも札幌に行った気分で楽しみたい。なにより「北斗星」の屋号が札幌感をより引き立ててくれる。

そんな控え目な思いが功を奏したのかスープカレーは望外の旨さであった。洋食店ならではのどっしりしたスープに様々なスパイスが見事に調和したカレーに、ゴロゴロと投入された素材の味が溶け込んで、何とも言えぬまろやかなコクを生み出している。一気に私の心は秋の札幌に飛んだ。

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スープカレーが北海道で人気となった理由については諸説あるが、スープカレーの魅力の一つである丸ごと入っているジャガイモ、タマネギ、ニンジンは、北海道の代表的な農産物であり、それら新鮮な食材を美味しく食べようとした当然の帰結であるとする説が有力である。さらに、札幌には元々普通のカレー店が少なく、スープカレーをきっかけにカレー店が急増したとも言われる。

腹ごなしにWINS梅田まで歩いて札幌2歳Sの馬券を買う。これで疑似札幌遠征はコンプリート。コロナの世では精いっぱいの楽しみ方だが、やはり私の知る「秋の札幌」の神髄には程遠い。名物食って馬券を買うだけでは飽きたらぬ何かに触れるために出かける。それこそが旅打ちなのであろう。スタートの不利をものともしないジオグリフの圧倒的な勝ちっぷりを、ぜひともナマで観たかった。

 

 

***** 2021/9/4 *****

 

 

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2021年9月 3日 (金)

河野家の悲願

「菅義偉首相が辞任の意向」

昼前に突然飛び込んできたニュースに驚かされた。NHKは昼のニュースを延長。新聞は号外。ネットも騒ぎになっている。そのせいか知らんが、日経平均株価は一時600円も値を上げた。昨日から今日にかけていったい何があったのか? 後継は誰か? 様々な憶測が飛び交っている。

秋田の高校を卒業して集団就職で上京した叩き上げの苦労人。そんなエピソードをメディアが好意的に取り上げてから、まだ1年しか経っていない。あの時も既にコロナ禍であったはず。人心の変わりようには怖ささえ感じる。集団就職先の段ボール工場での勤務を経て法政大学に進学。在学時には報知新聞社で、いわゆる「坊や」としてアルバイトをしていたことも話題になった。1970年頃だというから、巨人V9の時期とちょうど重なる。若き日の菅青年は、熱狂の最中に大志を抱いたのかもしれない。

下衆の勘繰りは承知の上だが、下々としてはやはり次の上様が気になる。名前が上がっているのは岸田文雄氏、高市早苗氏、河野太郎氏、野田聖子氏、そして石破茂氏といったあたりか。岸田氏はカジノを含む統合型リゾート(IR)の実施法案を検討するワーキングチームの座長を務められた経験を持つ。野田氏、石破氏と並んでIR推進派だ。ただ、今回の政局の起点のひとつは横浜のIR誘致問題でもある。気になるところではあるが、IR議論が表に出ることはまずなかろう。

競馬ファンなら河野氏が気になるはず。「行政改革担当大臣」などというちっぽけな(?)肩書より、セレクトセールを主催する「日本競走馬協会会長」の方が通りがよかろう(現在は吉田照哉氏が代行中)。さらに弟の二郎氏は名門・那須野牧場のオーナーであり、一口馬主グリーンファームの代表も務められている。つまり華麗なる競馬一族というわけ。

Nasuno

太郎氏、二郎氏の父・洋平氏も日本競走馬協会会長を務めた政治家だが、「総理になれなかった自民党総裁」のイメージが強い。自民党でトップに立ちながら、当時は細川護熙氏率いる非自民内閣だった。

さらにその父・河野一郎氏も農相や建設相などを歴任し、日ソ国交回復にも尽力した有力政治家。亡くなった際、当時の日本医師会長・武見太郎氏が「おかくれになった」と発表したほどの超大物だったが、なぜか総理の椅子には届かなかった。志を得ることのないまま急逝。直後にデビューした生産馬ナスノコトブキが、翌年の菊花賞を快勝の皮肉である。悲運の政治家も悲運のホースマンも少なくないが、両方となると珍しい。

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果たして河野家三代の悲願為るか。いや、そもそも河野家の悲願は総理の座などではなく、やはりダービーなのだろうか。なにせダービーを勝つのは一国の宰相となるより難しいのである。国家の一大事に競馬のたとえは不謹慎かもしれないが、下々にもそれくらいのことを考える楽しみがあってもよかろう。

 

 

***** 2021/9/3 *****

 

 

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2021年9月 2日 (木)

【訃報】ドゥラメンテ

ドゥラメンテが8月31日に亡くなった。先週から右前肢の蹄冠部を治療中で順調に回復していたそうだが、今週になって腸炎の兆候が出て急激に悪化したという。

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凱旋門賞への壮行レースとなるはずの宝塚記念でレース中に故障。そして突然の引退。その故障が思いのほか重いと聞いて急遽北海道に飛んだ。左前に巻かれた包帯を見て、せめて命だけは…と祈った。あれから5年しかたっていないというのに。9歳は若すぎる。

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2015年の皐月賞と日本ダービーを圧勝し、史上23頭目の春クラシック2冠馬に輝いた。だが、皐月賞は賞金不足から除外される公算が高く、当初は青葉賞からダービーへという青写真が描かれていたことはあまり知られていない。皐月賞登録時点ではジョッキーも決まっていなかった。2冠馬には珍しいエピソードも、デビュー以来の事情を鑑みれば致し方あるまい。

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グァンチャーレやシャイニングレイといった重賞ウイナーが次々と皐月賞回避を表明。16年ぶりにフルゲート割れとなったことで、皐月賞への出走が叶った。競馬に“たら・れば”は禁句だが、もし皐月賞に出走できていなければ、当然ながら春2冠は達成されていなかったのだし、ダービーの行方もどうなっていたか分からない。

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これほどの能力を持ちながら、思うように獲得賞金を積み上げることができなかった原因のひとつがゲートだった。2歳10月のデビュー戦は、ゲート内で暴れて2着。2戦目の未勝利で勝利を挙げたものの、やはりゲート難を露呈し、ゲート再審査の憂き目に遭う。

クラシックを展望するには大事な時期である。だが、陣営は気性の改善を図るべく放牧を決断。同期のエリートが朝日杯やホープフルSで賞金を稼ぎまくるのを横目に、のちの2冠馬はゲート内に縛られる日々を過ごした。その華やかな血統を思えば、関係者にとっては歯がゆい冬だったに違いない。

Dura

2月のセントポーリア賞は自身の復帰戦でもあると当時に、間近に迫ったクラシックを考えれば背水の一戦でもあった。そこで5馬身差圧勝の一発回答。折り合いを気にするあまり後方まで下げてしまった共同通信杯の取りこぼしは、ゲート練習に貢献してくれた石橋脩騎手ゆえに、声高に責めるのも憚られるが、結果的にデムーロへの乗り替わりを推し進めた側面も否定できない。

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ゲートに縛られる日々、皐月賞の奇跡的なフルゲート割れ、そして名手への乗り替わり。そも、デムーロ騎手が前年のJRA免許試験に合格したことも、ドゥラメンテ物語の始まりのひとつだった。歴史的名馬にはエピソードのひとつやふたつはあるもの。ただ、早逝のエピソードは欲しくはなかった。名手ミルコ・デムーロをして「ボクが乗った中で一番強い」と言わしめた名馬の冥福を祈る。合掌。

 

 

***** 2021/9/2 *****

 

 

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2021年9月 1日 (水)

我慢の結実

8月が終わり、カレンダーをめくれば一気に秋の雰囲気が漂う。競馬のカレンダーも夏競馬は今週まで。札幌2歳S、小倉2歳S、新潟記念でフィナーレを迎える。

今から四半世紀前。1996年の新潟記念は、32回目にして初めて新潟競馬場以外で実施された。

新潟競馬場の改修工事に伴い、中山の2000mに移して行われた新潟記念に臨むのは、3歳から8歳まで6世代の11頭。その中には前年のエリザベス女王杯の覇者サクラキャンドルの名前もあった。GⅠホースの新潟記念参戦は珍しい。「中山の新潟記念」ならではの光景であろう。ところが、そんなサクラキャンドルを尻目にまんまと逃げ切ったのは、6歳にして初めての重賞に挑んだトウカイタローだった。

「6歳夏にして初めての重賞挑戦」と聞けば、キャリア豊富な叩き上げのベテランが歴戦の末にようやく掴んだタイトル―――というイメージを抱くかもしれない。

だが、意外にも彼にとってはこれがまだ通算10戦目の競馬だった。2歳11月にデビューを果たしながら、三度に及ぶ骨折で計3年5か月を棒に振っている。それでも重賞タイトルを獲得するまで大成したその背景には、管理する松元省一調教師の我慢強さがあったことは想像に難しくない。そういう意味では、この勝利は我慢の結実だった。

なにせ、有馬記念で1年ぶりの実戦となるトウカイテイオーを見事復活させたばかりでなく、3歳秋まで未出走だったフラワーパークを、諦めて繁殖に上げずにGⅠ2勝の名牝に仕立ててみせた名トレーナーである。トウカイタローにしても然り。相次ぐ骨折に見舞われながらも、その素質を信じていた調教師の信念は決して折れることはなかった。

実際、新潟記念のトウカイタローは、サクラキャンドルらを押さえて1番人気に推された。内村オーナー、松元省師、田原騎手、そして舞台は中山競馬場。誰もがトウカイテイオーの有馬記念を思わせるシチュエーションではある。だが、それだけではあるまい。多くのファンは関係者が味わった我慢を知っていた。だからこそ、一介の条件馬に過ぎないトウカイタローを1番人気に押し上げたのであろう。つくづく日本の競馬ファンの慧眼は素晴らしい。

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この翌年から新潟記念はワンターンの左回りコースへと大きく変貌を遂げる。以来25年、逃げ切り勝ちの記録はトウカイタロー以来記録されていない。どれだけ楽なペースで逃げても、658mの直線が逃げ切りを阻むのであろう。57回目を迎える今年の新潟記念を引っ張る一頭(ショウナンバルディ? ギベオン? ラインベック?)は果たして直線でどこまで粘るだろうか。いずれにせよここでも我慢がモノを言う。天災と逃げ馬は、忘れた頃にやって来るものだ。今日は防災の日。

 

 

***** 2021/9/1 *****

 

 

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