« アップトゥデイトへの期待 | トップページ | 笑えぬ失敗 »

2018年7月13日 (金)

【訃報】スカーレットブーケ

重賞4勝の名牝で1991年のクラシック戦線で活躍したスカーレットブーケの訃報が届いた。30歳。老衰。そう聞いて己の歳を実感してしまったのは不謹慎だろうか。ともあれ、シスタートウショウやイソノルーブルらと繰り広げたあの牝馬クラシックから四半世紀あまりが過ぎてしまったことになる。だが、当時の興奮はひとつも色褪せることなく脳裏に焼きついたまま。あの年の競馬はそれほどに美しかった。

名馬の訃報に触れたらその血統表を見直すことにしている。「これが供養だね」。そう言ったのは、他でもないスカーレットブーケの生産者・吉田善哉氏だ

ノーザンテースト、Crimson Satan、Beau Max、Royal Charger、Alibhai、―――。

母系に配合された種牡馬たちの中には、あまり聞き慣れない名前も並んでいる。だが、これらの血統が米国競馬の深く広い歴史を支えてきたと言っても過言ではない。たとえばクリムゾンサタンは58戦18勝。ピムリコフューチュリティー(GⅠ)を勝ち、伝説のセン馬・ケルソも対戦している。大種牡馬ストームキャットの祖母の父がクリムゾンサタン。すなわちキズナやサクソンウォリアーの血統にもその名前は登場するわけだ。

4台母のユアホステス(Your Hostess)にも注目しておきたい。吉田善哉氏はこの血統を手に入れることに執念を燃やした。

ユアホステスの娘・ゲイホステスからは、1969年米2冠馬・マジェスティックプリンス、1971年英2歳チャンピオン・クラウンドプリンスと、立て続けに世界的名馬が誕生していたのである。だが、ゲイホステスの牝馬は高くてとてもセリでは買えない。現在の社台グループのイメージからは想像もできないかもしれないが、当時の社台ファームの経営は決して安泰とは言えなかった。しかも1ドル300円の時代のこと。それでも熱心に米国のセリに足を運ぶうち、3代母にユアホステスを持つ当歳牝馬を見つけた。それがスカーレットブーケの母・スカーレットインク。脚が曲がっていたこともあって、わずか1万3000ドルという価格で、ついに善哉さんは念願の血を手に入れた。

しかし、スカーレットインクはなかなか期待に応えてくれない。産駒は走らず、不受胎の年もあった。そんな窮地を救ったのがスカーレットブーケの父でもあるノーザンテースト。その産駒は総じて仕上がりが早く、2歳から3歳の成長力に長け、古馬になってさらにもうひと回り成長することから、「ノーザンテーストは3度変わる」という格言も生まれた。

実際、スカーレットブーケはノーザンテースト産駒の典型とも言われる。2歳の札幌で世代最初の重賞を勝ち、桜花賞、オークス、エリザベス女王杯にすべて出走して掲示板を確保。さらに古馬となってからは56キロで京都牝馬特別を制し、57キロで中山牝馬Sを勝ち、引退レースとなったターコイズSを58キロを背負いながら圧勝してみせた。ユアホステスから続く米国血統の底力とノーザンテースの成長力。その両者が絶妙なバランスで融合した結果、稀代の名牝が誕生したのである。吉田善哉氏の執念は、ここでようやく実を結んだ。

Scaret 

私より若いファンの方には、競走馬というよりダイワメジャーとダイワスカーレットの母という印象の方が強かろう。確かに産駒2頭合わせてGⅠ9勝は凄い。自身はGⅠを勝つことができなかったが、繁殖牝馬としてはシスタートウショウやイソノルーブル、リンデンリリーらを凌ぐ成功を収めた。これは自慢して良い。きっと今頃は天国で彼女らと再会を果たし、昔話に花が咲いていることだろう。合掌。

 

***** 2018/07/13 *****

 

 

|

« アップトゥデイトへの期待 | トップページ | 笑えぬ失敗 »

競馬」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« アップトゥデイトへの期待 | トップページ | 笑えぬ失敗 »