« 羽田に降り立って | トップページ | ハードスパンの季節 »

2017年11月15日 (水)

変え股馬

愛馬ポップレーベルの次走が浦和になりそうだと聞かされた。前走船橋のマイル戦で大敗し、ジョッキーに「1200mの方が良い」と言われたにもかかわらず、なぜ1200mの距離設定がない浦和なのか。甚だ理解に苦しむが、ともあれ自分の馬が浦和で走るのは初めてのこと。楽しみな部分がないわけでもない。なにせ大敗続きの彼のこと。何か新しいことをしなければ光は見えない。

前々走の大井での大敗については8月14日付の本稿「難しい馬」に書いた通り。かえし馬で馬場を2周して、レース前にレースを終えてしまった。3200mを全力で走った直後に、さらに1400mを走る力など残っていまい。

だが、昔は地方競馬のかえし馬でこのような光景は珍しくなかった。

私も驚いた人間のひとり。もう30年近く前のことになるが、そのときのことはよく覚えている。レースが始まる前だというのに、躊躇なく猛スピードのまま馬場を何周もするする人馬を見た時、まず真っ先に脳裏をかすめたのは「事故」の二文字だった。なにか間違いが起こって、馬が暴走をはじめたのだと勘違いしたのである。

JRAの場合は、馬場入場後多くの出走馬はキャンターか軽めのギャロップで発走地点近くの待避所に向かう。実際に走る距離は3~4ハロン(600~800m)程度だ。

一方の地方ではコースをまるまる1周、場合によっては2~3周することもあり、ほとんどの馬がギャロップで観客の前をビュンビュン駆け抜けていた。なかにはレースさながらの強い返し馬をする馬もいて、それを調子の良さと捉えることもできなくはないが、レース前に馬が疲れてしまわぬかと心配するのが普通のファン心理であろう。もちろん馬によって異なるが、多くは1マイル前後を走っているように見えた。

調教用語に「15-15(じゅうごじゅうご)」という言葉がある。1ハロンを15秒で走るペースのことを指す。現役競走馬であれば、11秒前後で走るのが普通であるのに、なぜ「15秒」がことさら強調されるのか。

人間であれ競走馬であれ、ある一定の速度以上で走ると、筋繊維内で乳酸が生成される。言うまでもなく乳酸は疲労物質で、この乳酸が溜まった状態がいわゆる「バテた」状態ということになる。

競走馬の場合、その一定の速度というのがハロン15秒なのである。15-15より速いスピードで走ると競走馬はバテるのだ。

ちなみに競走馬が13秒/ハロンで3ハロンを走った直後、血中の乳酸値は安静時の6~7倍に達するが、その後10分間じっとしていたとしても乳酸値に大きな変化はない。従って、かえし馬を13秒で3ハロンを行った馬は、かなりの疲労を抱えたままゲートインを迎えることになってしまう。

実はこうしたことが分かってきたのは、20年ほど前のこと。最近の地方競馬を見ていると、以前に比べて返し馬がおとなしくなった印象を受けるが、こういうこともJRAとの交流の賜物なのかもしれない。

ところで、競走馬は常歩(ウォーク)で本場馬に入場したあと、速歩(ダク)から、駆歩(キャンター)、そして襲歩(ギャロップ)へと歩法を変えてスタート地点へと向かう。レース前のウォーミングアップとして、走って筋肉に適度な刺激を与えて、なおかつ体温を上げておくことが目的だが、この歩法のスムースな切り替えも重要なウォーミングアップなのである。こうして歩法を切り替えながら走ることを「変え股馬(かえしうま)」と呼び、いつの日か「返し馬」という当て字が用いられるようになった―――。そんな話を聞いたこともある。

Pop1 

なので、かえし馬を見るときは、ぜひとも歩法がスムースに切り替わるかどうかについても注目してあげてください。ちなみに、あの日のポップレーベルは馬場入りと同時に飛び跳ねるようにいきなりギャロップを繰り出していた。初めての浦和で、どう変わるか。そも変わってくれるのか。その瞬間に注目したい。

 

***** 2017/11/15 *****

 

 

|

« 羽田に降り立って | トップページ | ハードスパンの季節 »

競馬」カテゴリの記事

コメント

先週土曜日の船橋競馬場ふれあい広場に行き、ポップレーベルに会ってきました。ここ数日、馬に活気が出てよくなり、前日に行われた中間追いの動きもこれまでになく良いものだったということでした。

画像投稿できないようですので、上記のアドレスにご連絡いただければ、その際の画像と浦和出走の経緯などについてお送りします。

投稿: RYU | 2017年11月16日 (木) 04時41分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« 羽田に降り立って | トップページ | ハードスパンの季節 »