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2017年11月30日 (木)

コロッケを食べながら

先日に続いて野暮用で六本木へ。んで、先日同様にぶらぶらと麻布十番を歩いてみた。かつてJRAに日参していた―――というのは大げさだな。まあ“月参”くらい―――当時はよく歩いた道。あれから10年。さすがに、あちこちの店の看板が変わってしまっている。このコロッケ屋さんも当時はなかった。

Rakuman 

今日は一年に何度もないような「コロッケを囓りながらぶらぶら歩くのにもってこい」日和。せっかくなので、焼きたてのパンにでも挟んで食べてやろうと思ったのだが、『モンタボー』まで歩く途中に我慢できずに食べきってしまった。

Korokke 

のどかに晴れた日の午後に、ふわふわのパンにアツアツのコロッケを挟んでガブりと頬張る―――。

このシチュエーションに勝る幸福など、そうあるものではあるまい。かつて、府中本町にイトーヨーカドーがあった頃は、総菜コーナーで買い求めたコロッケをコッペパンに挟んで、競馬場の芝生に寝ころんで食べたりしたものだが、その美味さも格別だった。

競馬場の売店ではコロッケバーガーを売っているのだから、イトーヨーカドーが無くなった今でもコロッケバーガーを食べることはできる。だが私が求めるのは、それぞれが独立した「コロッケ」と「パン」を一緒にして食べるという行為も含めた美味さであって、「コロッケバーガー」として完成された形で売っているものを食べたいとは思わないのである。

コロッケではないのだが、WINS銀座にほど近い銀座1丁目に『さとう』というメンチカツの有名店がある。人気商品は1日50個限定の「メンチカツバーガー」で、開店から飛ぶように売れるらしいのだが、私はメンチのみを購入することにしている。しかるのちに別のお店でパンを購入して、指でガシガシと隙間を作り、そこにメンチを挟んで食べる方が不思議と美味い。

結局は、揚げたてを何も付けずにそのまま囓るあの美味さを求めているのであろう。ソースもマスタードもいらない。ガブりと頬張ると、不格好なパンの切れ目から肉汁が溢れ出てくる。濃厚な肉の味が染み込んだパンも美味い。本店は吉祥寺にあるらしいのだが、ぜひとも府中にも出店してくれないだろうか。

 

***** 2017/11/30 *****

 

 

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2017年11月29日 (水)

貧乏暇なし

先日行われた浦和記念の売得金が、5億3959万7900円に達したらしい。浦和競馬における1レースでの売得金レコードを更新したという。

Urawa 

最近の地方競馬では重賞のたびにこうした「売得金レコード更新」のニュースが流れる。ちなみに、地方競馬全体における1レースの売得金レコードは、昨年の東京大賞典で記録された37億3269万5200円。今年の東京大賞典でも、この記録が更新されるのだろうか―――?

だが、今年の東京大賞典の前日には、JRAでGⅠ・ホープフルSが行われることになっている。有馬記念から中3日。これだけ続けば、さすがにファンも満腹であろう。その翌日にまたGⅠをやったところで、果たしてどれだけのファンがついて来られるか。今年の大賞典は、そこが試される。

試されるのはファンだけではない。メディア関係者も今から頭を抱えている。

中山大障害、有馬記念は例年通り。だが、有馬翌日の月曜日はホープフルSの追い切りがあり、火曜は出走投票と東京大賞典の追い切りが行われる。水曜は大井で「ヤングジョッキーズシリーズ」のファイナルラウンド。重賞ではないが、藤田菜七子騎手が出場するとなれば、重賞並みかそれ以上の体制を組まねばならない。そこから先はホープフルS、東京大賞典、東京シンデレラマイル、東京2歳優駿牝馬と、大晦日まで4日連続で重賞が続く。

有馬記念が終わっても休む暇がない。いや、休むどころか、多忙の極みが見えているではないか。

これだけ日程を詰めると気になることもある。そも28日に大雪が降ったらどうするのか?

開催中止にしようにも29日以降は地方競馬との申し合わせによりJRAは開催ができない。とはいえ法令により年を跨いでの代替開催も認められていないから、ホープフルSのみを年明けに実施することになろう。取り越し苦労と笑われるかもしれないが、2003年12月27日の中山競馬は降雪のためすべてのレースをダートに変更し、中山大障害は翌年1月10日に延期された。

Snow1 

また、2004年の大晦日も関東は大雪に襲われ、大井競馬は6レースを終えたところで打ち切りとなっている。12月とはいえ、東京に大雪が降らない保証はない。冬場の開催日程には、ある程度のゆとりが欲しい。

なのに発表になったばかりの2018年度の南関東開催日程を見て言葉を失った。なんと年末に浦和&大井のリレー開催を2日間も行うという。「やればやるだけ売れる」。そう思っている主催者が増えたと聞くが、ファンの財布にも限度というものがある。

 

***** 2017/11/29 *****

 

 

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2017年11月28日 (火)

JRA平地重賞史上7頭目の快挙へ

JRA同一平地重賞3連覇となれば、マツリダゴッホ(07~09年産経賞オールカマー)以来、史上5頭目。快挙達成の可能性は極めて高そうだ。(夕刊フジ)

Fuji 

誤字、脱字、事実誤認の類が満載のこのブログが、他人の間違いをアレコレ指摘できる立場ではないことは重々承知の上なんだけど、ステイヤーズSのアルバートに関するこの夕刊フジの記事には間違いがある。過去にJRAの平地同一重賞を3連覇した馬は下記の6頭。仮にアルバートが今週末のステイヤーズSを勝てば「ゴールドシップ以来7頭目」となる。

 セカイオー(鳴尾記念1956-1958)
 シゲルホームラン(セイユウ記念1993-1995)
 タップダンスシチー(金鯱賞2003-2005)
 エリモハリアー(函館記念2005-2007)
 マツリダゴッホ(オールカマー2007-2009)
 ゴールドシップ(阪神大賞典2013-2015)

とはいえ、それが困難を極めるオペレーションであることには違いはない。3連覇を狙って惜しくも2着に敗れたシーイズトウショウやデュランダルのレースを思い出すたび、その難しさを再認識する。

過去に3連覇を達成した6頭のうち、タップダンスシチー、マツリダゴッホ、ゴールドシップはGⅠを勝つほどの実力の持ち主。至難であるはずの3連覇をGⅡで達成しているのは、さすがと言わざるを得ない。

一方で、決してGⅠ級とは言えないエリモハリアーだが、函館競馬場の適性という点では突出した能力を持つ。函館記念3連覇はその適性の結晶であろう。洋芝だけで開催される函館の芝コースは馬によって向き不向きが大きく分かれることで知られるが、同じように3600mという距離も現代では特殊領域。この領域におけるアルバートの適性は、既に二度に渡り証明されている。3連覇への期待は高い。

Albert 

もともとアルバートは、デビュー当初から1600m~2000mばかりを使われていた。思うように結果が出ず、ダート戦に顔を出したこともある。アドマイヤドンの産駒だと思えば、調教師の気持ちは分からないでもない。

転機となったのは4歳夏の札幌。芝2000mの500万下を勝った際、騎乗したモレイラ騎手から「もっと長い距離の方が良い」と進言があった。それで試しに2400mに距離を延ばしてみるとポンポンと連勝。その勢いのまま挑んだステイヤーズSは、5馬身差の圧勝である。秘めたる才能が一気に開花した好例。こういう話を聞くと、外国人ジョッキーを乗せたがる調教師の気持ちも分からないでもない。

ちなみに、アルバートの転機となった札幌の500万条件戦で、2馬身半差の2着に下した相手は、福永騎手が手綱を取るシュヴァルグランだった。

 

***** 2017/11/28 *****

 

 

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2017年11月27日 (月)

記憶と忘却との狭間で

昔のことは鮮明に覚えているのに、つい昨日のことが思い出せない―――。

私と同年輩の方には同意いただけるのではあるないか。たとえば私は、これを書いている今も、今日の昼メシに何を食べたかも思い出せないでいる。先週の浦和記念のバックヤードで、数人の記者とそんな話題で盛り上がった。

「ホスピタリテイのレースぶりも、着順も、配当だってハッキリ思い出せるのに、昨日のレースのことはすっかり忘れてるんだよなぁ」

「調教師と何年か前のレースの話で盛り上がったんだけど、二人とも馬の名前が出てこないわけ。でもレースの映像は覚えているから会話は成り立っちゃうんだよね(笑)」

―――みたいな話である。その場に居合わせた若い記者に、「すぐにこうなるゾ」と脅かして笑ったのだが、笑えるうちが華であろう。さらにこうして筆を進めるうち、その浦和記念で勝った馬の名前が出てこないことに気付いた。もうこうなってしまうと、無邪気に笑ってもいられまい。

トップジョッキーたちの記憶力の素晴らしさには、しばしば驚かされる。武豊騎手は一度乗った馬ならば大抵は覚えているというし、他の騎手に「○○○○という馬を覚えてますか?」と聞けば、多くは「10年前くらい前に新潟で乗った馬かな」みたいな反応が返ってくるもの。むろん百発百中とはいかないが、一度乗った馬でも次回は敵になることもあるのが競馬である。相手の弱点や特徴を熟知していれば、それが戦略として役立つこともあろう。すなわち記憶力の精度は、多かれ少なかれ騎手成績に繋がっていると思われる。

一方で、まるで逆の天才肌も。幸英明騎手などは、前走に乗っていたことさえ覚えていないこともあるとか。それでも現役では二人しかいない牝馬3冠騎手のひとりだ。おそらく感性型の典型であろう。

Miyuki 

天才といえば、かつてアイルランドにエイダン・オブライエン調教師を訪問して度肝を抜かされたことがある。300頭を超える管理馬の、どの馬のことを質問しても瞬時に答えが返って来るのである。彼が調教師として大成功している要因のひとつは、その抜群の記憶力にあると確信した瞬間だった。

いくら私が競馬好きでも、とてもそこまで覚えられない。だいたいが、先週目の前で見たはずの浦和記念優勝馬の名前が、思い出せないのである。もはや話にならない。だからといって、ネットとか新聞で調べたら負け。どうにかして自らの脳細胞を活性化させ、馬の名前を呼び起こさなければ!

んーとぉ、なんて馬だったっけかなぁ……、と苦悶しながら、11月の夜長は更けていくのである。

 

***** 2017/11/27 *****

 

 

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2017年11月26日 (日)

頑張れハーツ産駒

秋晴れの日曜日、早朝から車を飛ばしてやってきたのは、千葉県内の馬術競技場。こちらでは「2017チャレンジジャンピングCHIBA」の最終日を迎えている。到着するなり場内の売店で朝食を購入。障害を飛ぶ馬を見ながら食べる生姜焼き丼も悪くない。

Don 

出場馬の中に知っている馬を見つけた。シンワハーツクライは船橋記念を勝ったイセノラヴィソンの半兄で、もちろんお父さんはハーツクライ。たしかハーツクライ産駒の産駒のデビュー第1号ではなかったか。大井では主に的場文男騎手の手綱で活躍した。南関東で勝ち星を挙げることはなかったけど、こうして馬術の世界に身を転じて元気に暮らしていることが分かって何より。なお、今は競技馬なので撮影は控えた。代わりに競走馬時代の写真を掲載しておきます。

Matoba 

帰り道、錦糸町で高速を降りて向かった先はもちろんコチラ。

Wins 

今日は泣く子も黙るジャパンカップデー。競馬場に行けないにしても、馬券だけは仕入れておきたい。

それにしても、場外でジャパンカップを見るのは、ベタールースンアップ以来だから27年ぶり。あの当時のウインズは身動きもできないほど混んでいたけど、さすがに今はゆとりがありますね。

Monitor 

勝ったシュヴァルグランもハーツクライの産駒。12年前の同じ舞台で、日本レコードの快走を披露しながらハナ差に泣いた父の無念を晴らした。

Jc2005 

ハーツクライは先週までサイアーランキング5位だったが、ジャパンカップ賞金3億円を加算したことで、ダイワメジャーを抜いて4位に浮上したはず。さらに来週のステイヤーズSにはフェイムゲーム、有馬記念にはスワーヴリチャードがスタンバイしている。ハーツクライ産駒の逆襲に期待する一方で、馬術競技の世界で頑張るハーツ産駒がいることも忘れないでおきたい。

 

***** 2017/11/26 *****

 

 

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2017年11月25日 (土)

追いかけ続けた4年半

とある日本料理店で新メニューの撮影を依頼されたので、いそいそと出掛けた。

料理写真はチョーひさびさ。話が急だったこともあるけど、10年ぶりくらいに引っ張り出してきたレンズのオートフォーカス機能があからさまに死んでいる上、家の中のどこを探しても三脚が見あたらず、出掛けに真剣に焦った。

ピントは手動で合わせれば済む。が、やはり三脚がないというのは致命的。とりあえず、とある場所から使えそうなやつを適当に1台かすめ取ってきて―――万引きしてきたワケではない。念のため―――急場を凌ぐことに。

営業開始前の僅かな時間を使っての撮影である。常日頃このブログに書き連ねているように、腕の立つプロは動作に無駄がなく、仕事が速い―――。はずなのに、当の本人はモタモタしてしまってまったくダメでしたね。

Tako 

料理は出来た瞬間こそが、見た目も美しく、また美味そうに見えるのである。しかるのちに徐々にその輝きを失っていくものだから、極端な話最初の一コマ目が勝負と言っても過言ではない。それなのに、いつまで経っても「よし!次」という声を上げられなくて、バシャバシャとムダ弾を撃ち続けてしまった。いたく反省。

撮影の合間にお店の人から「イスラボニータもついに引退ですってねぇ…」と声を掛けられる。

Isura 

先日のマイルチャンピオンシップを1番人気で5着に敗れたイスラボニータは、次走の阪神カップを最後に引退することが発表された。生産地ではすでに来年度の種付け申込みがスタートしている。1月生まれが普通のこのご時世、種牡馬入りのアナウンスは早い方が良い。デビューから4年半。もう十分であろう。フジキセキの血を引くクラシックホースとして、彼にはもっと大きな仕事が待っている。

彼はデビューからずっとイスラボニータを追い続けてきたのだというから、結構良い思いをしているのかと思いきや、「あの馬いつも人気するんですよ。だから馬券で良い思いというのはあまり記憶にないですね」とのこと。

そうだったかいな?と調べてみたら、通算24戦のうち21戦で5番人気以内。GⅠタイトルは皐月賞ひとつのみに終わったが、その後のダービーをはじめ天皇賞(秋)や先日のマイルチャンピオンシップなど、GⅠでも5度に渡り1番人気に推されて、ことごとく敗れていた。確かにこれを追い掛けても結果は見えている。しかし、それでも追い掛ける人がいたからこそ毎回高い支持を受けて走り続けたわけだ。生産者たちからも同様の支持を得られれば、と思う。

Isura1 

ところで三脚はどこへ消えてしまったんだろうか?

以前、どこかの競馬場での旅打ちに三脚を持っていった際、酔った勢いとはいえ「邪魔だから」というあまりに理不尽な理由でゴミ箱に捨ててしまった前科があるワタクシだけに、捜索中の三脚君も実は私の知らぬうちにどこかで理不尽な目に遭わせてしまったのかもしれない。

そう思うと少し心が痛むが、ともあれ撮影の方は無事終了。このまま飲んで帰るけど、間違ってもカメラを「邪魔だ」という理由で捨てたりしないよう気を付けねば。

 

***** 2017/11/25 *****

 

 

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2017年11月24日 (金)

ミルコが選んだのは

ジャパンカップが明後日に迫った。

前々日発売の1番人気はもちろんキタサンブラックで2倍ちょうど。2.4倍のレイデオロがそれに続く。3番人気サトノクラウンは9.6倍。意外に「つく」と感じやしないか。なにせ鞍上のミルコ・デムーロは、伏兵の手綱でエリザベス女王杯とマイルチャンピオンシップを連勝したばかり。あるいは、騎手で買うファンは前々日発売に手を出さないのかもしれない。馬にもしものことがあれば馬券は返還されるが、騎手の場合は騎手変更で済まされてしまう。

もしミルコがシュヴァルグランを選んでいたらどうなっていたか―――?

Dem 

つい、そんなことを考えてしまう。エリザベス女王杯のモズカッチャンとクイーンズリング。マイルチャンピオンシップのペルシアンナイトとレッドファルクス。ここ2戦のミルコは、お手馬が重なって、苦しい選択を迫られながらも、自身の相馬眼の鋭さをことごとく証明してみせた。いずれも手放したのは自身の手綱でGⅠを勝った馬で、選んだ方がGⅠ未勝利馬だからなお凄い。とはいえ、こうなったらシュヴァルグランの意地も見てみたい気がする。

一般的には馬のローテーションがまずあって、それに騎手が騎乗予定を合わせるのが普通。だが、ミルコとルメールの2人に限っては多少事情が異なる。この2人の騎乗予定に馬の方がローテーションを合わせなければならない。

ミルコの手綱でアルゼンチン共和国杯を圧勝したスワーブリチャードの調教師は、いったんはJC出走を明言した。得意の左回りであれば、古馬一線級相手でも見劣りすることはあるまい。だが、すぐさまJCでデムーロに騎乗予定馬が集中しそうだということが分かる。

とはいえ、今さら四位騎手に乗ってくれと頭を下げるわけにもいかない。その結果の有馬記念出走。左回りのアドバンテージより、ミルコの手綱の方が大きいという判断であろう。菊花賞馬のキセキもいったんはJCを希望しながら、香港に矛先を向けざるを得なかった。GⅠを勝ったほどの馬なら、ある程度は自由にレースを選べそうなものだが、そうはならないところが今のミルコの凄さを物語っている。

Lume 

ルメール騎手に関しても同様。既に年末のホープフルSまで予約で“満席”だ。

チャンピオンズC カフジテイク
阪神JF ロックディスタウン
朝日杯FS タワーオブロンドン
有馬記念 レイデオロ
ホープフルS タイムフライヤー

サトノダイヤモンドが有馬記念を回避したのは、これだけが理由ではあるまいが、それでもミルコやルメールが活躍すればするほど彼らのお手馬は増えるから、自然と乗り替わるケースも増える。我々はそれに慣れなければならない。

ちなみにミルコはチャンピオンズカップ当日は阪神で騎乗。逆瀬川Sでポルトドートウィユの手綱を取る。GⅠ年間最多勝記録が注目されるミルコだが、あさっての結果次第では、案外ルメールの方にチャンスがあるかもしれない。

 

***** 2017/11/24 *****

 

 

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2017年11月23日 (木)

日なたと日陰の狭間で

昨夜来の雨がようやく上がったと思ったら、今度は一転して澄み切った青空が広がった。東京競馬場でJCの公開調教を撮影してきた連中が、空を見上げて「信じらんねぇ……」とつぶやいている。それほど府中の雨はひどかったようだ。聞けば先日の天皇賞よりも降ってたとのこと。それはひどい。

Blue 

それでも馬場状態は「不良」。コースにはあちこちに水が浮いている。浦和記念でナムラアラシの手綱を取る福永騎手も馬場状態が気になるようで、レース前に自らの足で歩いて馬場をチェック。

Yuichi 

こないだも書いたように、カメラマンは明るく晴れた方が嬉しい―――はずだが、こと浦和に限って言えば、そうとも言い切れない部分がある。

なぜか。浦和のホームストレッチの大部分はスタンドの日陰になるのだが、ゴール寸前の4~5mだけ陽光が差し込むのである。しかも、日なたと日陰の境目が、大事な大事なゴール板とちょうど重なるからさあ大変。カメラマンたちは時速60キロで走る馬を望遠レンズで追いながら、日なたと日陰とで露出を変える操作を強いられる。だが、日なたと日陰の境目では救いようがない。結果、このような悲劇が起きる。

Basara 

それにしてもマイネルバサラは強かった。4番手追走から向こう正面で動いて3角先頭。後続はなし崩しに脚を使わされた感がある。さらに今日の馬場状態もマイネルバサラに味方したか。前走の御陵Sは7番人気ながら2馬身半の圧勝。不良馬場だった。ちなみに、あの天皇賞と同じ日である。つまり不良を超える「極悪」馬場だったことを忘れていた。

それでもGⅠ馬2頭を従えての6馬身差は凄い。前走は条件戦。登録段階では補欠だった一頭である。5番人気は盲点だった。だが、「日刊競馬」の柏木集保氏は「マイネルバサラが勝つ」と宣言していたらしい。さすが編集長。こうなりゃ柏木氏のJC予想に注目せねばなるまい。

 

***** 2017/11/23 *****

 

 

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ハナ差のビリ

ポップレーベルの初めての浦和遠征はハナ差のビリでした。もちろんブービーとの着差です。

Pop 

「こんなに降ると分かっていれば(出馬)投票しなかったんです。予報が悪いんですよ」

敗戦を天気予報のせいにするのは、よくあること。調教師は負けた時の言い訳を百個用意していると言われます。上がりも馬はケロッとしてました。走ってません。船橋に戻って仕切り直しましょう。

 

***** 2017/11/23 *****

 

 

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2017年11月22日 (水)

みやげ問題の根は深い

お土産を選ぶのが苦手だ―――。

旅に出るたびにそう思う。なぜかその「旅」ばかりが続く最近はなおさら。帰途の駅で、空港の売店で、あれこれ悩んだ挙句に、なぜか的外れな一品を選んでしまう。つまりセンスがない。あとになって「ああ、やっぱりあっちのにしておけば良かった」と思う。このあたりは私の馬券にも通じているような気がしてならない。

旅に出てお土産を買うという行為自体を楽しみにしている人は多いようだ。それを私は日本という共同体のしきたりだと思っている。言い換えれば世間の義理である。楽しく旅をしている間も、あなたのことを考えていました―――という証。麗しい習慣だとは思うが、結局私はそれを放棄してしまった。競馬絡みの旅が多いので毎回期待されても困る。「あれ? 今回は買ってきてくれなかったの?」なんて言われると、かえって義理が悪い。

そも、どこまで行けば「お土産」の対象範囲になるかもはっきりしない。私は神奈川に住んでいるが、1時間半かけて中山競馬場に行ってもお土産を買う気にはならないのに、同じ時間をかけて名古屋に行った昨日は、なぜかお土産のことが気になった。これはいったいなぜか。一概に距離の問題でもないような気がする。

Sirokoi 

地方競馬のジョッキーたちの間には、他地区へ遠征に行く際、所属場の地元のお菓子を持ち寄るという風習がある。道営の騎手は「白い恋人」、岩手なら「カモメの玉子」、名古屋なら「ゆかり」といったところか。交流レース当日に大井や川崎の騎手控え室を覗くと、全国各地のお菓子が並んでいて、ちょっと騎手たちが羨ましくなる。

しかし南関東の騎手たちにとっては、良いことばかりでもないらしい。彼らが他地区に乗りに行くときも、同じように地元のお菓子を持参する。以前、川崎所属のとある騎手が門別に遠征した際に差し入れた地元のお菓子は、道営の騎手あまり人気がなく、余ってしまったのだとか。これはバツが悪い。

本人は「お土産のセンスがなくて……」と反省していた。しかし、これはセンスの問題だけではあるまい。「川崎のお菓子」という時点で、彼はかなりのハンデを背負わされている。川崎市民として彼に同情し、申し訳ない気持ちにもなる。どうせなら横浜・崎陽軒のシューマイでも持って行った方が良いですよ。

 

***** 2017/11/22 *****

 

 

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2017年11月21日 (火)

名古屋のうどん

本日2度目の更新ということは、すなわち本日2杯目のうどんということです。

もちろん園田まで足を延ばすことはできなかったので、ふてくされながら『山本屋本店』へ。名古屋のうどんと言えば、そりゃあ「味噌煮込みうどん」でしょう。園田に行けなかった不満をうどんにぶつけてやる。

Yamamoto1 

ちなみに「鍋焼きうどん」と「煮込みうどん」の違いってご存じですか?

あらかじめ茹で上げた麺を、具材と一緒に鍋に投入して煮るのが「鍋焼き」。生の麺を直接具材と一緒に鍋に投入して煮込むのが「煮込み」。なので煮込みうどんの麺が硬いと感じるのは、その料理手順によるもの。もし「ボソボソでイヤだ」という場合は、フタをしてしばらく蒸してから食べると良い。

Yamamoto2 

ともあれグラグラと煮え立つ鍋を前にすれば、それだけで気持ちが暖まってくるもの。八丁味噌の旨味と甘さが染みたうどんも申し分ない。最後は濃厚なスープをホカホカの白飯にかけて胃袋に流し込んで締めた。それにしても、心残りは園田。ハヤブサマカオーの快走をひと目観たかったなぁ。

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名古屋の「うちゅう」

名古屋にやって来た。

名古屋のうどんと聞けば、きしめんとか味噌煮込みうどんしか思い浮かばぬ無知な私だが、なんでも「うそ」とか「うちゅう」というメニューもあるらしい。「うちゅう」って何だ? 宇宙のごとき広大な丼に無限の麺が漂っているのか? これは食べてみなければなるまい。

こちらがその「うちゅう」。

Uchu 

こちら『長命うどん』は、種類の異なる麺をひとつの器に盛り込むミックスオーダーで人気を博している。写真の「うちゅう」は、うどんとラーメンのミックス。すなわち「うどん・中華ミックス」の略称である。かつて北陸本線の高岡駅でうどんとそばを混ぜた「ちゃんぽん」を食べたことはあるが、うどんとラーメンの融合は初めて。うどん用のツユで食べるラーメンも悪くない。

同様に「うそ」とは「うどん・そばミックス」の略。ミックスできるのは、うどん、そば、ラーメンにくわえてきしめんも可能だから、お好みの組み合わせを楽しみたい。しかも猫舌の方のために「ぬるめ」というオーダーも可能。「ぬるいうそ」なんて注文が聞こえると、驚いて噴き出しそうになってしまう。

それにしても、先週の月曜日は開催中の名古屋をスルーして大阪に行き、今日は兵庫ジュニアグランプリの園田の手前で新幹線を降りての名古屋入りである。人生うまくいかないことばかり。うどんでも食べなければやっていけない。夜もうどん食うぞ!

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2017年11月20日 (月)

消える店

府中駅から競馬場方面へと歩く途中、ふと「うどんでも一杯引っ掛けて行くか」と思い立って『小平うどん』に向かったら、こんなことになっていた。

Buta 

なんと! 武蔵野うどんのお店が、豚丼のお店に変わってしまっているではないか!

『小平うどん』に最後に来たのはいつだ?―――思わず自問してしまう。今年は来てない。去年はどうだ? いや、去年も来てない気がする。このブログによれば一昨年の7月以来。それでは嘆く資格はない。だが、店がないと分かると、あの極太麺が無性に食べたくなるから困ったもの。まあ、今日のところは諦めて豚丼にするか。

Buta2 

帯広豚丼を想像していたら違った。どんぶりに敷き詰められているのは生姜焼き。赤い器とのコントラストが眩しい。

Buta3 

肉を一枚よけるとその下はキャベツ。さらにその下にご飯が敷いてある。生姜焼き定食を丼にした感じ。そう思えば美味しい。ただ、若い人向けな感はある。

そういえば、隣の分倍河原駅前で人気を誇っていた立ち食いソバ店『立来(たっくる)』も、屋号が変わったらしい。せっかくだから確認に行ってみると……、

Yamacho1 

『山長そば』だそうです。なんか以前に比べると普通のネーミングに感じますね。

ただ、看板は変わったが、店内のつくりは前とまったく変わらない。『立来』の当時から人気だった牛スジカレーも健在なようでひと安心。そこでカレーそばを注文してみる。

Yamacho2 

おや、器は黒じゃなかったか? その割にそばの色が以前より白っぽく見える。そういやカレーそばは390円もしなかったゾ。―――という具合に、間違い探しが始まってしまう。正直、味どころではない。そういう意味では、やはり『立来』はなくなってしまったと思うべきなのであろう。

ちなみに『小平うどん』の小平本店と聖蹟桜ヶ丘店は営業中。聖蹟なら行けないことはない。でも、そこだっていつまであるか……。行ける時に億劫がらずに行っておくことの大事さを思う。無くなってからでは遅い。

 

***** 2017/11/20 *****

 

 

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2017年11月19日 (日)

迫りくる暗闇

11月に入ってJRAの番組は「冬時間」が適用されている。普段は関東の最終レースは16時半頃の発走だが、今日の東京12レースの発走時刻は16時05分だった。もちろんこれは日の入り時刻が早まることへの対応。たとえば今日の東京の日の入り時刻は16時34分。雲が太陽光を遮れば、暗くなるのはもっと早い。16時半のレース発走はさすがに無理がある。

Cloud 

「日の入りがもっとも早い」のは冬至だと思いがちだが、東京の場合、もっとも日の入りが早いのは今月末から12月上旬で16時28分。これが冬至だと16時32分だから4分も遅い。

なぜこんなことが起こるのか。それを正確に書くには紙数が足りないが、簡単に言えば地球の公転軌道が楕円形をしていることに起因する。実は一日の長さは厳密には同じではない。季節によって生じる僅かな差を平均し、きっちり24時間で一日の境を刻もうとするからこうしたことが起こるのである。いわば人為的な事象。もっと詳しいことを知りたいからは、「均時差」という言葉でググってみてください。

ともあれ、この時季の競馬は、たとえ快晴であっても5月に比べればやはり暗くなる。曇りや雨となれば絶望的に暗い。カメラマンが憂鬱な季節だ。

この季節、東京競馬場でゴール前を狙うカメラマンたちは、普段にも増して西の空を気にする。西の空に雲が広がっていれば、たとえその雲が競馬場の上空に移動してくることがないとしても、日差しが遮られることは避けられない。雲間から差し込む光にレンズを向けて、「うわー、紅の豚みたいじゃん!」なんて喜んでいるのは、きっと私くらいのものであろう。カメラマンが光に神経質なのは職業柄仕方ない。

Cloud1 

フリートストリートダンサーが接戦の末にアドマイヤドンを競り落としたジャパンカップダートなどは、もはや「夜」といっても良い状況だった。大井のような照明設備があるわけでもなく、スタンドの屋根に設置されたライトも、遠く離れたダートコースにはほとんど効果がない。ただでさえ雨に打たれているのに、加えてこの仕打ち。もう泣きたくなる。

Jcd 

一方で、淡いとはいえ、メインレース後に優勝馬を照らす美しい夕陽はこの時季にしか得られない。芝生が黄金色に輝くのも11月の東京ならでは。こうした光景を見ることができると思えば、日の入りが早いのも決して悪い話ではない。

Moon 

写真をやってらっしゃる方は賛同いただけると思うのだが、「快心の一枚」は好条件が揃ったときよりも、むしろ条件が悪いときの方に生まれやすい。スポーツ写真では「ありのままを撮る」が大原則。その範疇でどう美しさを表現するか。そこが腕の見せどころであろう。そういう意味では、カメラマンたちは日没の早いこの季節を、むしろ歓迎すべきなのかもしれない。

 

***** 2017/11/19 *****

 

 

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2017年11月18日 (土)

3頭立ての万馬券

今日の東京スポーツ杯2歳Sは7頭立ての少頭数で行われた。例年ならここを目指すであろう有力馬たちも、ワグネリアンとの対戦はまだ早いと考えたのか。今日のレースを観れば、あながち的外れとも言えまい。それだけワグネリアンは強かった。

Wagu1 

JRA重賞が7頭以下で行われたのは2012年のラジオNIKKEI杯2歳S(7頭)以来5年ぶり。過去20年を振り返っても2001年京都大賞典(7頭)と1998年京都大賞典(7頭)を加えた3回しか記録されてない。

一方で、東京スポーツ杯の前身である府中3歳Sは少頭数が珍しくなかった。サクラヤマトオーが勝った1990年は7頭立て。サクラロータリーの1986年が6頭立て。マルゼンスキーが勝った1976年に至っては5頭立てである。

極端な例を挙げれば、我が国でも単走レースが行われたことはある。だが、それは国営競馬当時の話。中央競馬としては、1970年8月9日の小倉2Rで「2頭立て」が記録されている。障害で無敗の8連勝を続けていたキングスピードが出てくるとあって、休み明けを叩きに出てきたブゼンエイト一頭以外に相手が揃わなかったのである。

結果はキングスピードのレコード勝ち。のちに連勝を「10」にまで伸ばし、今も破られぬ障害での連勝記録を打ち立てる馬となれば、楽勝も当然か。それでも単勝は120円もついた。案外ついた感があるのは、そこは障害ゆえ何が起こるか分からないと踏んだファンが多かったのであろう。2頭立てだったので複勝と枠連は発売されていない。

現在のJRAでは、単勝、複勝、枠連、馬連、馬単、ワイド、3連複、3連単の8種類の馬券が通常発売されているが、それも出走頭数が少なくなると発売され
ない券種があったり、的中対象が変更になったりもする。

 8頭以下:枠連発売せず
 7頭以下:複勝は2着までを的中とする
 4頭以下:複勝発売せず
 3頭以下:ワイド、3連複、3連単発売せず
 2頭以下:馬連、馬単発売せず
 1頭:すべて発売せず

連勝馬券は戦後しばらくして札幌で発売されたのが始まり。当時は戦後の馬不足時代である。出走頭数が4頭以下の場合、馬券は単勝の一種類しか売ることができない。すなわち連勝馬券は少頭数対策の一環だった。

それが効力を発揮したのが、1953年7月22の福島9レース。4歳未勝利戦は3頭立てである。

 ①枠 ワカミドリ 54 梶
 ②枠 フジタカ 54 本郷
 ③枠 オトワメイヂ 52 蛯名

人気はオトワメイヂ、ワカミドリ、フジタカの順。ところが結果は人気とは真逆のフジタカ、ワカミドリ、オトワメイヂの順に入線した。それで枠番連勝単式②→①の配当は10030円である。「3頭立ての万馬券」は空前にして絶後であろう。

誰もが驚いた配当の原因は、当時は事前のオッズ発表がなかったため。リアルタイムのオッズが発表される今なら、こんな美味しい配当をファンが見逃すはずがない。

Wagu2 

ともあれ、現時点ではワグネリアンがクラシックの最有力候補と言って良かろう。少頭数であったことから、今日のレースレベルそのものを疑問視する声もあるようだが、私はそうは思わない。7頭立てで行われた2012年ラジオNIKKEI杯の優勝馬は、なんとエピファネイア。同じレースで3着に敗れたのは、そのエピファネイアを破ってダービーを勝つことになるキズナだった。

 

***** 2017/11/18 *****

 

 

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2017年11月17日 (金)

幻のうどん

昨日の話。所用で飯田橋を訪れたついでに、前々から気になっていた店の暖簾をくぐってみた。

Miiraku 

『味井楽』は都内でも珍しい五島うどんを出す一軒。五島うどんは、我々が慣れ親しんだうどんに比べれば細打ちの丸麺で、強いコシとつるっとした喉越しが特徴だ。その起源は平安時代に遡り、遣唐使により中国から五島に伝わったとされる。

さらに珍しいことに、こちらのお店では生麺を使っているとのこと。生の五島うどんは「幻」と言っても過言ではない。これは期待が膨らむ。待つこと10分。茹で揚げの一杯が目の前に運ばれてくると、芳しい香りが立ち込めた。

Udon 

香りの正体はアゴダシ。焼いたアゴ(飛び魚)を一晩かけて水で戻し、そこからゆっくり火を入れて取ったダシは、さっぱりとした後味でいくらでも飲める気がする。

麺をひと口。すると、もっちりとした食感にまず驚く。これが生麺の為せる業か。むろん麺に練り込まれた椿油が生み出すコシと爽快な喉越しも申し分ない。

満足して店を出て小石川界隈をぶらぶら歩く。11月の風は冷たさを増しているが、熱いうどんを食べた直後ゆえ、ちょっと肌寒いくらいがちょうど良い。

すると5分ほど歩いたところで、こんなところに出たではないか。なんと奇遇な!

Offt 

この日は名古屋で東海菊花賞が行われる。果たしてカツゲキキトキトの連覇は為るか。白山大賞典2着の実績。とはいえ負けた相手はインカンテーションである。ここでは負けられまい。それは分かっていても、最近は勝ち身に遅いようところも見受けられるので馬券はマルチで。

Baken 

―――なんていう浅はかな見立てを嘲笑うかのような圧勝劇に言葉を失った。次走は名古屋グランプリだろうか。念願のダートグレード奪取の時は近い。

馬券は外れたが、ちょっと前の私なら「五島うどんを食べたあとだから5-10」なんてバカな馬券を買って徒に財布の金を溶かしていたはず。それではレースの印象も頭に残らない。やはりちゃんと考えるのが大事ということです。

 

***** 2017/11/17 *****

 

 

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2017年11月16日 (木)

ハードスパンの季節

先週土曜、東京9レースのオキザリス賞は2歳1勝馬によるダート1400mの一戦。過去の優勝馬にはアジアエクスプレスやブルドッグボスといった名前が並ぶ。今年人気を集めたのは新種牡馬ハードスパン産駒のアントーニオ。ルメールの手綱で、最内枠を引き、前走6馬身差圧勝なのだから1番人気も頷ける。

しかし、あろうことかゲートで遅れてしまった。こうなると最内枠はマイナスでしかない。あとは揉まれるだけ揉まれて7着大敗。2歳馬には、こういう落とし穴もある。

レースは直線で3番人気クレヴァーパッチが抜け出して先頭。この馬もハードスパン産駒である。そのまま先頭ゴールかと思われたが、馬群をこじあけて伸びてきた2番人気ダークリパルサーが1完歩ずつ差を詰め、ようやく捉えたところがゴールだった。良い根性をしているなと出馬表を見れば、なんとこの馬もハードスパン産駒ではないか。つまりこのレース、ハードスパン産駒が人気上位を占めただけに留まらず、しっかりワン・ツーフィニッシュを決めて見せたのである。

Dark 

「ダンチヒ最後の大物」とも評されるハードスパンは、2007年のケンタッキーダービーとBCクラシックの2着馬。1400mのキングズビショップS(米GⅠ)を勝っていることから、2000mは若干距離が長かったのかもしれない。だが、ストリートセンス、カーリンと並んで、この年の全米3歳路線で「3強」の一角を担った。ベルモントSの直前にダーレーにトレードされたという経歴の持ち主でもある。

種牡馬としては、外国産サマリーズの父として知る人も多かろう。基本的にはダートのマイル前後を得意とする産駒が多い。そんな彼女の活躍もあってか、2014年の1シーズンに限って日本で共用され、119頭と交配し、現2歳馬は82頭が血統登録されている。

Samaries 

今年5月に札幌で行われたHBAトレーニングセールでは、オス、牝とも最高価格はハードスパン産駒が記録した。仕上がり早で2歳戦から動ける―――。そのときは、そんな印象をますます強くした。なにせサマリーズである。ところが、現2歳世代の勝ちあがりは現時点で7頭のみ。期待が高過ぎたせいもあろうが、やや物足りない。

しかし、これは番組の問題もある。夏から秋にかけてのJRAの2歳番組は芝が中心になりがち。ダートの番組が増えるこれからが、ハードスパンの季節かもしれない。今週のJRAでは4頭のハードスパン産駒が新馬デビューする。

 

***** 2017/11/16 *****

 

 

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2017年11月15日 (水)

変え股馬

愛馬ポップレーベルの次走が浦和になりそうだと聞かされた。前走船橋のマイル戦で大敗し、ジョッキーに「1200mの方が良い」と言われたにもかかわらず、なぜ1200mの距離設定がない浦和なのか。甚だ理解に苦しむが、ともあれ自分の馬が浦和で走るのは初めてのこと。楽しみな部分がないわけでもない。なにせ大敗続きの彼のこと。何か新しいことをしなければ光は見えない。

前々走の大井での大敗については8月14日付の本稿「難しい馬」に書いた通り。かえし馬で馬場を2周して、レース前にレースを終えてしまった。3200mを全力で走った直後に、さらに1400mを走る力など残っていまい。

だが、昔は地方競馬のかえし馬でこのような光景は珍しくなかった。

私も驚いた人間のひとり。もう30年近く前のことになるが、そのときのことはよく覚えている。レースが始まる前だというのに、躊躇なく猛スピードのまま馬場を何周もするする人馬を見た時、まず真っ先に脳裏をかすめたのは「事故」の二文字だった。なにか間違いが起こって、馬が暴走をはじめたのだと勘違いしたのである。

JRAの場合は、馬場入場後多くの出走馬はキャンターか軽めのギャロップで発走地点近くの待避所に向かう。実際に走る距離は3~4ハロン(600~800m)程度だ。

一方の地方ではコースをまるまる1周、場合によっては2~3周することもあり、ほとんどの馬がギャロップで観客の前をビュンビュン駆け抜けていた。なかにはレースさながらの強い返し馬をする馬もいて、それを調子の良さと捉えることもできなくはないが、レース前に馬が疲れてしまわぬかと心配するのが普通のファン心理であろう。もちろん馬によって異なるが、多くは1マイル前後を走っているように見えた。

調教用語に「15-15(じゅうごじゅうご)」という言葉がある。1ハロンを15秒で走るペースのことを指す。現役競走馬であれば、11秒前後で走るのが普通であるのに、なぜ「15秒」がことさら強調されるのか。

人間であれ競走馬であれ、ある一定の速度以上で走ると、筋繊維内で乳酸が生成される。言うまでもなく乳酸は疲労物質で、この乳酸が溜まった状態がいわゆる「バテた」状態ということになる。

競走馬の場合、その一定の速度というのがハロン15秒なのである。15-15より速いスピードで走ると競走馬はバテるのだ。

ちなみに競走馬が13秒/ハロンで3ハロンを走った直後、血中の乳酸値は安静時の6~7倍に達するが、その後10分間じっとしていたとしても乳酸値に大きな変化はない。従って、かえし馬を13秒で3ハロンを行った馬は、かなりの疲労を抱えたままゲートインを迎えることになってしまう。

実はこうしたことが分かってきたのは、20年ほど前のこと。最近の地方競馬を見ていると、以前に比べて返し馬がおとなしくなった印象を受けるが、こういうこともJRAとの交流の賜物なのかもしれない。

ところで、競走馬は常歩(ウォーク)で本場馬に入場したあと、速歩(ダク)から、駆歩(キャンター)、そして襲歩(ギャロップ)へと歩法を変えてスタート地点へと向かう。レース前のウォーミングアップとして、走って筋肉に適度な刺激を与えて、なおかつ体温を上げておくことが目的だが、この歩法のスムースな切り替えも重要なウォーミングアップなのである。こうして歩法を切り替えながら走ることを「変え股馬(かえしうま)」と呼び、いつの日か「返し馬」という当て字が用いられるようになった―――。そんな話を聞いたこともある。

Pop1 

なので、かえし馬を見るときは、ぜひとも歩法がスムースに切り替わるかどうかについても注目してあげてください。ちなみに、あの日のポップレーベルは馬場入りと同時に飛び跳ねるようにいきなりギャロップを繰り出していた。初めての浦和で、どう変わるか。そも変わってくれるのか。その瞬間に注目したい。

 

***** 2017/11/15 *****

 

 

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2017年11月14日 (火)

羽田に降り立って

羽田空港に降り立つたび、いつも同じことで悩む。

さあ、ここ(空港)からどうやって帰ろうか―――。

往路は大井町駅からリムジンバスに乗ることがほとんど。だが、そんなに本数が出ているわけではないから、帰りはバスの発車時刻まで延々待たされることも珍しくない。仮にドンピシャのタイミングで着陸しても、混んでて乗れないこともあるし、夕方は絶望的な渋滞に巻き込まれて、大井町まで1時間近くかかることもある。大人580円という料金も微妙に高い。

だからといって、京急で品川に出てJRに乗り換えるルートは面倒な上にやたらと混んでるし、タクシーに乗ったところで渋滞のリスクは同じ。かくして、羽田に着くなりウダウダ悩むことになる。

しかし、今日はひとつアイデアがあった。まず、普段は利用しないモノレールに乗る。夕方でもガラガラ。長旅で疲れた身体にはこれがなにより嬉しい。

Mono 

やがて車窓にまばゆいばかりのカクテル光線が見えてくるので、そこでモノレールを降り、

Light 

向かった先は、我らがTCK東門。

Tck1 

そして今度は正門から出て、

Tck2 

その先に待っているのは、

Bus 

なんと、大井町駅行きの無料連絡バスなんですな。こちらもメイン前だからガラガラでラクちん。あっという間に大井町駅に到着した。

Station 

所要時間は40分だからリムジンバスを待つよりは全然早い。しかも、料金も411円と、リムジンより169円安いのである。我ながら素晴らしいルートを開拓した。思わず自画自賛してしまう。

もちろん注意事項はある。まず、大井競馬場入場に際しては100円の入場料がかかる。たが、地方馬主はこれが無料になるので、その恩恵を受けさせてもらった。さらに付け加えれば、せっかく競馬場に立ち寄ったのなら、馬券の一枚は買っておかねばならない。これは無料バスを利用する以上、最低限のマナーでもある。1番人気馬の複勝でいい。さしたる手間ではないはず。私も浮いたお金は馬券に回した。むろん外れたけど……。

Baken 

一方で、夕食がまだであれば、競馬場で済ますことも可能だ。私も今夜は競馬場内の『つるまるうどん』にした。季節限定メニューの「甘辛肉玉うどん」(500円)。

Udon1 

「またうどん食ってんのか!」という指摘は甘んじて受ける。ともあれ、この甘辛は美味しい。混ぜて食べることで、なんとも言えぬまろやかな味わいが増して、あっという間に食べ終えてしまった。

Udon2 

このルートの難点を挙げれば大井開催日でなければ使えぬということか。場外開催日は無料バスの本数が減って利便性が下がるし、非開催日なら東門の前で立ち尽くすことになる。注意しよう。

 

***** 2017/11/14 *****

 

 

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2017年11月13日 (月)

博多のうどん

本日3度目の更新は、本日3杯目のうどん。

博多駅に到着するなり、脇目もふらずに向かった先は博多バスターミナル。とはいえバスに乗るのではない。目当てはターミナルビル地下で営業するこちらのお店。

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『牧のうどん』は、ウエストチェーンと並ぶ博多っ子のソウルうどん。釜揚げならではの“ふわもにょ”うどんが味わえる。

食券を買って店員さんに手渡す。そのとき麺の固さの好みも伝えよう。今回は「ヤワめ」でオーダー。席に座って待つこと5分。洗面器のごとき巨大な器でうどんが運ばれてきた。

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わずか70円で大盛にできるからと、あまり考えずに「大盛」ボタンを押してしまったことを今になって後悔する。しかも、せっかく博多に来たのだから、かしわご飯を食べぬわけにもいかない。これはやってしまったか……。

しかし躊躇している暇はない。釜揚げのうどんはダシを吸いやすいので、みるみるツユが減ってゆくではないか。そんな時は、この小さなヤカンの出番。中には美味しいダシが入っていて、食べている最中に自分で追加ができる。もしヤカンが空になっても心配ない。店員さんにお願いすれば継ぎ足してもらえる。

まあ、なんだかんだ言いながら完食。博多のうどんも美味いですね。昨日は立て続けにそばを食べ、今日は3食うどんだった。こういうのは身体に良くないんでしょうね。明日はバランス良く食べなきゃ。

 

***** 2017/11/13 *****

 

 

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関西のうどん

本日2度目の更新は、本日2杯目のうどん。

大阪駅前第3ビルの地下街は知る人ぞ知るうどん激戦区。関東にまでその名を轟かせる名店が軒を連ねる中、今回は『踊るうどん』を訪れた。

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「肉まいたけ天温玉かけうどん」を注文。ぶっかけも美味そうなのだが、ここはやはり関西のダシを味わいたい。

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ひと口目は「あれ? 薄いか?」と思う。だが、食べ進めるうちに「いや、ちょうど良い塩梅だなぁ」と感じ、いつしかその味の虜となって、気が付けばツユを全部飲み干していた。

恐るべし関西うどん。次も「かけ」にすべきか。あるいは今度こそ「ぶっかけ」にすべきか。そんな悩みを抱えつつ、これより博多に向かう。

 

***** 2017/11/13 *****

 

 

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関東のうどん

早朝の新横浜駅で、立ち食いそば・うどんのお店『矢萩』に立ち寄る。暖簾には「うどん」しか書いてないのに、全体的には「そば」が前面に推されているのが、ちょっと悲しい。

Yahagi 

昨日に引き続き「立ち食い」ネタ。しかし今日はそばではない。いつものようにうどんを啜る。醤油ベースの鰹ダシは、関東の私には慣れきった味だが、西日本の方には違和感たっぷりであろう。関東では真っ黒なツユに白いうどんが浮かんでいるのである。

Yahagi2 

むしろ私の違和感は店名の「矢萩」にある。競馬関係者が「やはぎ」と聞けばどうしても「矢作」を思い浮かべてしまうもの。土曜の東京10レースを勝ったモズアスコットは矢作調教師の管理馬。これで未勝利、500万、1000万と3連勝だが、昇級するにつれ強さが増している印象がある。次走はもっと強い競馬を見せてくれるに違いない。

Mozu 

というわけで、これから新幹線に乗り大阪に向かう。昼メシは透明なおダシの関西うどんだ!

 

***** 2017/11/13 *****

 

 

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2017年11月12日 (日)

たまには蕎麦も

巷の立ち食いそばのレベルがすこぶる上がっているらしい。

私の若い頃の立ち食いそばといえば、「安い、早い、味は気にしない」が当然だった。ところが最近では生麺を使い、ダシにもこだわり、椅子に座って食べられるという。それじゃ立ち食いじゃねぇだろ!という指摘はごもっとも。もはや「立ち食い」の定義さえ、変わりつつある。

そんな話題をリードする『嵯峨谷』の水道橋店に入ってみた。ご覧の通り、店の前に立てば、ウインズ後楽園の黄色いビルが見える。

Saga1 

もりと鶏天を注文。店内はカウンター10席で、立ち食いではない。店主らしき人物が茹で釜の前に仁王立ちして、次々と入る注文をこなしているが、やはりちょいと時間がかかっている御様子。茹でているのだから、これは仕方ない。待つ間、エリザベス女王杯の馬券をじっくり予想する。今日は普段通りに買ってみようか。もうそろそろ治療を終えてもよかろう。

Saga2 

出てきたそばをさっそく手繰る。だが、茹で立ての割にはそばに香りが足りない印象。待たされた分だけハードルが上がってしまったのかもしれない。そばを食べ終えてから鶏天が出てきたのも、なかなか衝撃的だった。

店を出てウインズ後楽園へ。歩いて1分とかからない。これはこれで便利。

2レースほどレースを見たのち、エリザベス女王杯の馬券を仕込む。しかるのちに東京ドームを周り込むように歩いて、春日の交差点へ。たしかこの辺に生そばがウリの立ち食いそば屋さんがあったはず。正直、さっきのもりそば1枚では足りん。

そしたら……、

Kame 

かびーん!coldsweats02

あれぇ? 昔は日曜もやってたはずなんだけどなぁ。といっても最後に来たのは10年前。よくよく見れば屋号も変わってるような気が……。

―――その時である。

シャッターの前で呆然と立ち尽くす私の視界に「そば」の2文字が過った。それは5軒隣の店。暖簾には『源太郎そば』とある。

Gen1 

比較的新しい店らしい。店内は明るくスタイリッシュ。もちろん椅子が用意されている。これも何かの縁であろうから、とにかく入ってみよう。もりと天ぷらの食券を買ってカウンターの女性に渡し、椅子に座ってしばらく待つ。こちらの店も注文を受けてから生そばを茹でるスタイルらしい。待つ間、さっき買った馬券を確認する。

Baken 

こんな感じ。ボックスだけど一応の本命は1頭決めてある。2週間にも及んだ治療の効果は果たしてあるだろうか。

Gen2 

そばは自家製の細麺。やや緑色かかった色合いに、この香り。新そばを使っているのだろう。のど越しも抜群。これで390円は素晴らしい。

Gen3 

揚げたての天ぷらは、サクっと軽い仕上がり。天つゆが別皿で出てくるのも嬉しい。なりゆきで入った割には“当たり”だった。ついでに馬券まで当たったのは、私の予想云々ではなくこのお店のおかげであろう。うどんばかりでなく、たまにはそばも良い。ゲンを担いで来週も食べに来ようかな。

 

***** 2017/11/12 *****

 

 

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2017年11月11日 (土)

復活の日

レンズの修理が完了したという連絡を受けた。

急ぎ使う予定はない。しかも最近は中野への外出もままならぬほどの多忙ぶりで疲れ果てているのである。できれば今日は寝て過ごしたい。ただ、あまり待たせるとまたレンズのヤツがぶつぶつ文句を言い出して、スタッフさんを困らせかねない。なので再び中野へ。しかし、その前に中野のうどん屋さんに立ち寄るくらいは許してもらおう。

中野駅から中野通りを南へ。10分ほど歩いた通り沿いに、行列のできるうどん店が暖簾を掲げている。その名も『讃岐のおうどん花は咲く』。

11時45分の入店でほぼ満席。カウンターにひとつだけ空いていた席に腰をおろし、天ぷらぶっかけうどんを注文した。

Udon 

柔らかく伸びのあるうどん。甘味と辛味がせめぎ合う深い味わいのダシ。そして油から揚げたばかりの天ぷらたち。ひと口食べれば分かる。これで美味くないわけがない。個人的にはひどい一週間だったが、この一杯で復活だ。

しかるのちにレンズと10日ぶりの対面。

「ダンナぁ。修理完了の連絡が行ったはずなのに、3日も待たせるとは、どういうことですかい?」

案の定、ヤツは引き取りが遅れたことを怒っていた。しかし、きちんと元通りに治っている。こちらも復活。さっそく東京競馬場へ行って使ってみよう。

例によって馬券は1頭の単複のみ。なにせまだ「治療中」の身である。武蔵野ステークスは3歳が強い。ならサンライズノヴァの単複で仕方ないか。―――そんな思いはパドックで覆された。目を引いた一頭がいたのである。それがこちら。

Inkan 

んで、レース結果は皆さんご存じの通り。レンズもちゃんと動いてくれたし、私の馬券もこれで復活だろうか?

Goal 

スローな流れに助けられたせいもあろうが、あの位置でレースを進めること自体が、そんなに簡単なことではない。そういう意味では、逃げずに番手で折り合った三浦皇成騎手の手腕が光った。落馬による大怪我から復帰して以来、これが初めての重賞勝ち。「ひと安心です」のひと言に実感がこもる。彼もこれで完全復活であろう。

 

***** 2017/11/11 *****

 

 

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2017年11月10日 (金)

麻布ライス

突然だが「麻布ライス」と聞いてどんな料理を想像されるだろうか?

「麻布」というのは、六本木の隣のあの「麻布」のことである。となれば、高級セレブリティが集まるイタリアンのお店がカジュアルに食べられるように創作したランチプレートとか、あるいは某有名焼き肉店が提案する韓国王宮料理をアレンジした丼とか―――。さしずめそんなところをイメージされるのではないか。

先日、ちょっとした用事があって久しぶりに六本木に出かけ、そのまま麻布十番商店街をぶらぶら歩いていたら、突然その「麻布ライス」が食べたくなって店に飛び込んだ。「店」とは、焼き鳥で有名なあの『あべちゃん』。実は昭和8年創業の大老舗だ。

で、こちらその「麻布ライス」。

Azabu_2 

そう! モツ煮丼なのです。いや~ぁ、セレブ感ゼロ!(笑)

とはいえ、その味は決してバカにできるものではない。濃い目で甘味の強いタレが丼飯にほどよく浸み込んで、思わず掻き込んでしまう絶妙な味。なにせ昭和8年の創業。80余年も守り続けられた伝統には、やはりそれなりの重みがある。

今も昔もモツ煮が牛丼にも匹敵する競馬ファンのソウルフードであることに変わりはない。大井では『ふか河』が人気だが、ここ川崎には『志ら井』がある。1950年の川崎競馬場開設と同時にオープンした老舗だ。

そんなわけで、今日は開催最終日の川崎でモツ煮丼。

Shirai 

こちでは牛モツとコンニャクのみで、野菜は加えないのが特徴。シンプルといえばシンプル。だが脂身豊富なモツの、そのトロけるような旨さを味わえば、「これでいいじゃん!」と大きく頷いてしまう。もちろん臭みなどあるはずもない。私はひそかに「川崎ライス」と呼んでいる。

Shirai2 

創業以来継ぎ足してきた煮汁に3種の味噌をブレンドしたその味わいは、川崎競馬の歴史そのもの。一口食べるごとに、キヨフジやロジータといった川崎の名馬たちが、頭の中を駆け巡る……

―――かどうかは食べる人次第だろうが、私は昔ここでモツ煮丼を食べるたびに、「ホレ、祝儀だ!」といって店員に札束を渡したオジサンがいたことを思い出す。おそらく2、30万はあったのではないか。むろん最近はそんな人を見かけることはない。昭和のまま時計が止まったような競馬場ではあるが、やはりそれなりに時代は移り変わっているんですね。

 

***** 2017/11/10 *****

 

 

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2017年11月 9日 (木)

魅惑の稲庭つけ麺

新橋駅前の年代物のビルの2階に『七蔵』という稲庭うどんを食わせる店がある。ただ、ちょいと変わり種で、「えっ? あそこはつけ麺屋だろ」とか「いやいや、ローストビーフ専門店だって」とか人によって捕らえ方が異なるのも事実なのである。

ともあれ、私としても丸5年以上のご無沙汰であり、いつも讃岐ばかりでも芸がないので、久しぶりに訪れてみた。

ビルに入るとこんな看板が立っている。やはり稲庭うどんの店なんですよ。なめこトッピングはこの時季の風物詩。

Kanban 

昼の営業では、先に会計を済ませるシステム。注文は概ね「稲庭うどん(大・中・小)」か、それに日替わりの丼がついた「うどん丼セット(大・中・小)」に集約される。私は「稲庭うどん(大)」を注文。さらに「スープ多めでね」と付け加える。こちらのウリはなんといってもその独創的なスープにあるのだが、「ネギ抜き」、「ネギ多め」、「スープ多め」といったオーダーもここで済ませておこう。ちなみに、スープが足りなくなれば、あとから追加も可能である。

13時半の入店だが店内はほぼ満席。一人客は相席となり、お茶を飲みながらうどんの茹で上がりを待つことになる。ちなみにテーブルにはこんなポットが置かれているのだが、これはお茶ではない。あとでスープを割るためのただのお湯。注意されたい。

Pot 

待つこと10分。直径40センチはあろうかという巨大ザルに盛られたうどんが運ばれてきた。看板にあったように、スープにはなめこが浮かんでいる。

Udon 

これだけデカいと、ついついうどんに目が行きがちだが、なんといっても眼目はスープ。鰹節、セロリ、鴨肉などをベースに出汁を取り、鴨肉をペースト状にしたものとゴマペーストを加えて、醤油、みりんなどで味を整えているとのこと。一見普通のなめこ汁のようにも見えるのだが、実際にはドロッと濃厚で、絶妙ののど越しの稲庭うどんにも実に良く絡まる。他では体験できない絶妙な味わいだ。

ずるずるずるーっと、あっと言う間に食べ終えると、残ったスープに先ほどのお湯を差してスープ自体も最後まで味わえる。旨さが体内に染み渡るのが分かる。……と同時に、つけ麺を食べ終えたあとの余韻と似ているものも確かに感じた。

これで1100円。高いと言えば高い。だけど、もともと稲庭うどんは藩主への献納品で、庶民が口にすることなどできなかったいわばぜいたく品。東京競馬場内ホテルオークラレストランの「稲庭うどん」は、上品な味に上品な分量で1200円もする。それを思えば「高い!」と言って眉をひそめるほどでもない。

ちなみに、夜の看板メニューは特製のローストビーフ。しかも昔は昼のみだった稲庭うどんが最近では夜のメニューにも載っているらしい。久しぶりに夜も行ってみるか。

 

***** 2017/11/09 *****

 

 

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2017年11月 8日 (水)

豆腐の味、馬券の味

俗に通ぶる人ほど講釈を垂れたがる傾向が強い。競馬場においても、パドックの踏み込みがどうとか、血統がこうとか、聞かれもしないのにアレコレ薀蓄を並べたがる手合いの筋がいるが、本当の通はそういうことを他人にひけらかしたりはしないものである。

食事においても然り。特に歳を重ねてから食道楽にハマるのはタチが悪く、ワインの年代やらマグロの産地やら、どうでも良いことをベラベラと喋りたがる。まあ、若干自戒の念も込めつつ筆を進めるが、こういう人物にカウンターの隣に座られたりしたら、もう最悪だ。

つい先日も近所の鮨屋のカウンターで(幸い隣ではなかった)、店主に向かってこんな話をしている客に出くわした。

「実は豆腐というのは昔は“納豆”と呼ばれていて、納豆が“豆腐”って呼ばれてたんだよ。だって、豆を腐らせたら納豆になるし、豆を型に納めたら豆腐になるじゃない。だから、歴史のどこかで言葉そのものが入れ替わったんだよ」 

若い店主は「へぇ、そうなんですか」などと相槌を打っていたのだが、その客が帰ってから「さっきの豆腐の話なんだけどさぁ……」と私が水を向けると、「はい、出鱈目です。同じような話をかれこれ五回くらい聞かされましたけど」と笑った。いわゆる都市伝説。魯山人の弟子を名乗る人物が書いた書物にもそのように書かれているので、食通を自認する人ほど真に受ける人が多いのだそうだ。

Yudofu 

なぜ豆腐に「腐」という字をあてて、納豆に「納」という字をあてるのかについての解説は、ここでは謹んで控えさせていただくが、納豆の名誉のために「腐敗」と「発酵」が明確に異なることだけは強調しておきたい。それにしても、料理のプロに対面して臆面もなく講釈を垂れる勇気には、ただ敬服するばかりだ。

そもそも、豆腐の文字の由来を知っているかどうかではなく、豆腐の味が分かるかどうかが食通の本分であろう。私が子供の当時は、世の中から美味い豆腐が消えかけた時期もあったが、志ある職人のおかげで昨今はまともな豆腐を味わうことができるようになった。

豆腐の味は微妙で繊細だ。某グルメ漫画の第1話に登場するのはダテではない。ただ、そうは言っても、昔は誰でもその味を分かって食べていた。日本人の食生活が欧米化されるにつれ、我々はソースやスパイスといった味付けのハーモニーを楽しむことができるようになった一方、それと引き替えに素材そのものの味の奥行きを堪能する感覚が失われてしまったように思える。

対策として、“調味料断ち”をしてみるのが面白い。化学調味料はもちろん、醤油も味噌もスパイスもソース・ドレッシングの類も一切使わず、味付けは塩のみの食事を続けるのである。

すると、徐々に「日本人の舌」を取り戻せるようになってくる。豆腐の豆の香りや、米の銘柄の違いなどが、薄々ながらも感じ取れるようになって、食事の楽しみもグッと広がる。もともと日本人にはそういう舌が備わっているのだから。

競馬においても然り。3連単ばかりに目を奪われていると、「勝ち馬を探す」という競馬本来の目的を見失ってしまうことに繋がりかねない。そういうときは、1日ずっと単勝だけを買って過ごしてみるというのも良策。先日も書いたように、最近の私はこれを実践している。忘れかけていた競馬本来の味を、思い出すことができるかもしれない。

 

***** 2017/11/08 *****

 

 

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2017年11月 7日 (火)

攻めよ若人

来年のカレンダーの注文用紙が回ってきた。年賀状の発売も既に始まっている。南関東の来年度の日程発表も近い。どうやら、来年はあーいうことになったり、こーいうことにもなるらしい。発表前だからここには書けないけど、関係者には負担が増すことになりそう。ともあれ、歳を重ねるごとに一年が早くなる。なんと今日は今年最初の忘年会に顔を出すことになった。

忘年会であれ新年会であれ10人を超えるような宴席に自ら進んで足を運ぶことはほとんどない私だが、河豚だと聞いて、その信念をあっさりと曲げた。河豚は機会を逃すと食べる機会に恵まれぬもの。向かった先は銀座の『北大路』である。 

河豚は美味い。テトロドトキシンとかいう猛毒を体内に有していながら、その美味さを諦め切れずに身体を張ってトライアンドエラーを繰り返してくれた先人に感謝しながら有り難く味わう。

Fugu 

リスクのあるものほど美味であり、人はその美味さから逃れられぬものだ―――と、誰かから聞いたことがある。

河豚や牡蠣がその代表例だが、競馬や不倫なんかもそこに含まれるらしい。有難いことに不倫の味は知らぬが、競馬、すなわちギャンブルの味わいを支えているのは、何よりそこに潜む避け難いリスクである。

しかし、その一方で最近の若い世代は「どんな小さなことでも負けるのは嫌」という傾向がことのほか強いという。

だから、彼らは10回に1回の大勝利ではなく、10回中8~9回の小さな勝利を目指す。競馬においてもそれは同じこと。最近のファンは、下位人気馬を進んで買うような真似はしない。勝負の場にいながら、勝負をしないのである。

近年の競馬で、1番人気馬のオッズがやたらと低くなるのはそのせいではあるまいか。かつて競馬場を席巻したディープインパクト・フリークに代表されるように、勝つと分かり切っている馬をみんなで応援し、みんなで勝利の気分を味わいたいのである。

だが、ギャンブルという一皿からリスクという調味料を取り除けば、その味わいはひどく薄っぺらいものになる。もし「河豚なんか食べる必要はない。鱈で十分」という人ばかりだったら、我々はこのような味を知ることはできなかった。若者が本命にすがりつく姿は、傍から見てて切なささえ覚える。もっと攻めて欲しい。

 

***** 2017/11/07 *****

 

 

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2017年11月 6日 (月)

硫黄島に散った英雄

昨日の続き。

太平洋戦争末期の1944年6月。中将に昇格した栗林忠道は、硫黄島守備隊総司令官に就任。騎兵一筋の軍歴をかなぐり捨てて硫黄島に向かった。

迫りくる米軍に対し、従来の島嶼防衛戦のように水際で敵を迎え撃つやり方では、徒に兵力を失うだけの戦いになりかねない。それでは敵の思うつぼ。そう考えた栗林司令は、島全体を塹壕とトンネルで埋め尽くし、自ら先頭に立って全将兵を硫気が立ち込める地下に潜ませた。敵艦の砲撃を避け、持久戦に持ち込む作戦を打ち立てたのである。彼は、バンザイ突撃や勝手な玉砕を厳しく禁じ、なんとしても生き抜いて1人が相手兵士10人を殺すことを目標とした。

先日も書いたとおり、このとき硫黄島に馬は一頭も居なかったとされる。騎兵出身の栗林に与えられた武器は、「馬」ではなく「戦車」だった。硫黄島守備隊の援軍として戦車第26連隊が配属されることになるのだが、その戦車隊の指揮官こそ、当時中佐にまで昇進していたロス五輪・大障害飛越種目金メダリストの「バロン西」だったのである。

西中佐は硫黄島行きの命令を受けて東京を発つ際、愛馬・ウラヌスに別れを告げて、たて髪を切り取り、そっとポケットにしまった。そのたて髪はウラヌスとの写真とともに死ぬまで肌身離さず持っていたという。

オリンピックの英雄でありながら軍内部では冷遇され、よりによって最前線の激戦地に送られた西中佐であったが、騎兵出身の栗林司令とは“ウマ”が合ったらしい。硫黄島には馬はいなかったが、それでも二人は、馬について、馬術について、時間の許す限り語り合ったことだろう。しかし、米軍の上陸はすぐそこまで迫っていた。

1945年2月16日、空母12隻からなる米第52機動部隊と、戦艦6隻、巡洋艦5隻からなる第54機動艦隊が硫黄島沖に出現。3日後の19日には、大挙して上陸を開始した。「硫黄島の戦い」の幕開けである。日本軍2万に対し、米軍は7万5千。補給も絶たれた日本軍の劣勢は火を見るより明らかであった。

だから、「5日間で硫黄島を占領する」とした米軍の作戦計画は、特に驚くべきものではない。しかし、圧倒的不利の日本軍は36日間も持ち堪え、米軍側の死傷者は2万6千人にも及んだことから、「実質的には米国側の敗戦」と捉える歴史家もいる。ちなみに硫黄島の戦いは、ミッドウェー海戦後に米軍の戦傷者が日本軍の戦傷者を上回った唯一の戦闘とされ、米軍の硫黄島攻略司令ホーランド中将は「太平洋で戦った相手指揮官の中で、もっとも勇敢だったのは栗林」と述懐している。

この戦いの様子を知っていただくには、やはり映画「硫黄島からの手紙」をご覧いただくしかない。地下トンネルに潜みつつ、見えない敵を相手に戦う日本兵たちの恐怖と狂気。それを的確に表現するのは、私の文章力ではとても無理だ。

ところで、この映画の中では、負傷して洞窟に潜む西中佐に対して、「オリンピックの英雄・バロン西。我々は君を知っている。君を殺してしまうのは世界の損失だ。お願いだから降伏して欲しい」と米軍が呼びかけたという、あの有名なシーンは描かれていない。

これについては、西中佐が硫黄島にいたことを米国側が知るはずもなく、米国によって造られた美談、とする歴史的見解もある。一方で、いったん日本軍に捕らえられた米国人捕虜が、その後の米軍の攻勢で解放された際に、バロン西の存在を知らせたという話も伝わっている。気さくな人柄とされ、米国在住経験もある西中佐だけに、米国人捕虜と会話を交わしていたとしても不思議ではない。

しかし、いずれにせよ西は洞窟の中で自決。東京の馬事公苑に残してきたウラヌスも、西の後を追うように、翌年4月に老衰でこの世を去った。

米軍の攻撃が開始されてから36日目となる3月26日未明。弾薬と飲み水が尽き果てた栗林司令他400名の将兵は、最後の攻撃に撃って出る。司令はその攻撃の途中で負傷し、歩けなくなったところで部下に介錯を命じ、自らの遺体は絶対に米軍に見つからぬようにと念を押して埋めさせたという。

馬を愛し、馬と共に生きた二人が出会い、そして散った硫黄島。しかし、悲しいことにそこには一頭の馬もいなかった。

(この項終わり)

 

***** 2017/11/06 *****

 

 

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2017年11月 5日 (日)

国民に愛馬の精神を

映画の話を続ける。

1941年に公開された「馬」という作品をご存知だろうか。監督は「ヤマカジ」こと山本嘉次郎。助監督として撮影を手がけたのは、若き日の黒澤明である。主人公の高峰英子さんが手塩にかけて育てた仔馬が、軍用馬として徴用されてゆく。その別れをテーマに、東北の農村の美しい四季の移り変わりや風俗、その純朴な人柄が描写された写実的作品でありながら、当時の軍用馬の生産・育成・流通についての貴重なドキュメンタリーフィルムでもある。

当時、映画の制作には政府の意向を酌む必要があった。完成してから上映禁止を命じられてはたまったものではない。そこで山本監督自らが陸軍省馬政課に出向き、まずはシナリオを見せて相談してみることにした。すると応対した馬政課長は、あっさりGOサインを出しただけでなく、陸軍大臣名の推薦文まで取り付けてくれたという。ちなみにこの時の陸軍大臣は東条英機。そしてこの馬政課長こそ、映画「硫黄島からの手紙」で渡辺謙さんが演じた栗林忠道騎兵大佐(当時)その人である。

1890年、長野県に生まれた栗林は陸軍騎兵学校、陸軍大学校を優秀な成績で卒業し、恩賜のサーベルを受けている。駐米武官勤務の経験を持つなど、陸軍では珍しい米国通の軍人でもあった。

当然のことながら馬術にも長けており、1937年に大佐に昇格すると当時の日本馬政の責任者である陸軍省馬政課長(のちに馬政局長)に就任。「国民に愛馬の精神を」のスローガンのもと、精力的に馬政施策を実行した。その成果のひとつに「愛馬の日」がある。

「愛馬の日」は戦後も長く続いたが、その主たる目的は「国民の愛馬精神の啓発」ではなく、靖国神社に眠る軍用馬の霊を弔うものに姿を変えてしまった。

しかし1968年にJRA馬事公苑が、

 ・馬への感謝
 ・馬や競馬を愛する人への感謝

という、かつて栗林大佐が抱いた理想に近い精神に基づいて「愛馬の日」というイベントを実施するようになったのである。馬事公苑の年間行事の中では春の「ホースショー」とならぶビッグイベントで、当日は全国各地の伝統馬事芸能の他に、アンダルシアンやポニーの演技、横鞍演技、軽乗演技、各馬術の供覧、ポニー競馬など様々なイベントが目白押しなり、大勢の入苑者で賑わいを見せている。

栗林大佐が目指した「国民に愛馬の精神を」の志は、今も間違いなく受け継がれていることを、我々は忘れないでおきたい。

(明日付に続く)

 

***** 2017/11/05 *****

 

 

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2017年11月 4日 (土)

硫黄島からの手紙

先日、「嵐」の二宮和也さんが出演されたNHKの番組「あさイチ」をなんとなく眺めていたら、どうしようもなく映画「硫黄島からの手紙」を観たくなってTSUTAYAへと走った。

第2次世界大戦時の最も悲劇的な戦いと言われる“硫黄島の戦い”を、日本側の視点から描いた戦争映画。監督は言わずとしれたクリント・イーストウッド。硫黄島で米軍を悩ませた伝説の陸軍指揮官・栗林忠道中将と、彼の部下たちによる死闘を描いた2時間21分である。映画の題材としては地味にも映る硫黄島の戦いを、このスケールの映画に仕立て上げることができたのはイーストウッド監督の手腕であろう。だが、私がこの映画に惹かれるのは、馬にまつわるエピソードがたくさん隠されているからにほかならない。

渡辺謙さん演じる栗林中将は、そもそも陸軍騎兵隊の出身で、のちに陸軍省馬政課長を務められた人物である。映画の中では「緻密かつ勇敢な指揮官」というイメージがクローズアップされているが、私の中の栗林中将と言えば、我が国の馬政の総責任者にして馬事文化の大いなる貢献者というイメージが強い。何よりも馬を愛し、国民に対して馬に対する理解を深めてもらおうと尽力された功績は、もっと広く知られて良いと思う。

この作品には馬にまつわる有名な人物がもうひとり登場する。1932年の第10回ロサンゼルスオリンピック、馬術競技・グランプリ大障害飛越種目の金メダリスト「バロン西」こと西竹一中佐。当時、日本のみならず米国内でも”ロサンゼルスの英雄”と評され、米軍の硫黄島攻略部隊の指揮官が、「君を失うのは世界の損失だ」とひたすら投降を呼びかけたというエピソードを知る人も多かろう。映画の中では伊原剛志さんが好演している。

冒頭のシーンで、ひとりで砂浜を視察する栗林中将のもとに西中佐が馬に乗って現れるのだが、実際には硫黄島には馬は一頭もいなかった。だが、そんなことをいちいち責めるつもりはない。せめて映画の中だけでも硫黄島のバロン西に馬を用意しあげたい―――そんな製作者側の意図であると信じよう。塹壕の中で自決するまで拍車の付いた長靴を履き続けるという設定も然り。バロン西に対するイーストウッド監督の敬意と優しさが感じられる。

それにしても、日本語を解さぬはずのイーストウッド監督が、なぜここまで自然な日本人を描くことができたのか?

劇場で初めてこの映画を観たときは、それが不思議でななかった。「まさにイーストウッドマジック!」―――なんて絶賛したりもしたが、「あさイチ」での二宮さんが語った裏話でタネが分かった。日本人出演者の努力の賜物だったのですね。納得。

(明日付に続く)

 

***** 2017/11/04 *****

 

 

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2017年11月 3日 (金)

真島大輔騎手がJBC制覇

JRAのGⅠシリーズは雨に祟られっぱなしだけど、今日のJBCデーは見事な秋晴れ。大井関係者の日頃の行いの良さが実を結んだに違いない。ラチ沿いには名前の分からぬ、しかし可憐な一輪が祭典に華を添えている。

Sky 

レンズが壊れていてもそこは「地方競馬の祭典」。しかも、この天気では行かぬ言い訳もできない。出走馬主さんにお誘いをいただいたこともあって、昼前からいそいそと大井へと出かけた。

しかし「地方競馬の祭典」と言ってみたところで、どうせ主役はJRA所属馬だろ、というやっかみにも似た思いはぬぐい切れない。今年はスプリントで浦和のブルドッグボスと船橋のキタサンミカヅキが人気を集めているが、彼らにしてもこの春まではJRA所属だった。地方生え抜きの馬が勝たないで、「地方競馬の祭典」と言えるのか?

―――なんてぶつぶつ言いながら見ていたら、なんとなんと大井生え抜きのララベルがレディスクラシックを勝ってしまった。真島大輔騎手はダートグレード初制覇がJpnⅠだから凄い。アウスレーゼのトゥインクルレディー賞で重賞初勝利を挙げ、ショウリダバンザイの桜花賞でクラシック初制覇を飾った「牝馬の真島」なら、JpnⅠ初勝利がJBCレディスクラシックになったのも自然の成り行きであろう。

Majima 

だが、その記念すべきシーンは、見慣れた「胴紫・黄山形一本輪、袖黄」ではなく吉田照哉オーナーの馬主服で達成されてしまった。そんな細かいことを気にしているのは私ひとりだろうから、これについてはもう触れない。ともあれ快挙である。なにせJBCは内田博幸騎手も戸崎圭太騎手も手にしていないタイトル。その晴れの表彰式は、大井を根城にする人間としてぜひ間近で見届けなければならない。それでカメラマンたちの背後で見ていたら、最初は十数人はいたはずのカメラマンが表彰式の途中にポツポツとその場を離れていくではないか。ついに私を除けば競馬場の広報担当者2~3人だけになってしまった。もちろんまだ表彰式は続いている。

「地方馬が勝ったからか? 地方の祭典だろ!?」

私が怒りを漲らせていると、表彰台の後ろを駆けて行く馬の姿が見えた。表彰式の真っ最中だというのに、JBCスプリントの出走馬たちの本馬場入場が始まってしまったのである。カメラマンたちはこれを撮りに行ったのであろう。

今年のJBCはレース間隔が短かった。京都のファンタジーSの発走が15時35分。IPATの発売終了時刻が17時11分。その間に3つのレースを埋め込むには、レディスクラシック15時45分、スプリント16時25分、クラシック17時10分。このパターンしかない。レディスクラシックからスプリントの間は40分。普段と変わらぬこのレース間隔で、口取り、表彰式、馬場入りを済ませなければならない。わずかなアクシデントが命取りになる―――。

誰もがそれを心配していたのに、よりによってレディスクラシックが審議になってしまった。しかも審議対象馬が1位入線のララベルで、被害馬が2位入線のプリンシアコメータだから当然長くなる。結果、到達順通りの確定だから真島騎手もホッと胸を撫で下ろしただろうが、これが原因で口取りと表彰式が押しまくった。カメラマンが消えてしまったのは、自業自得だったということになる(笑)

Hyosho 

それにても、次の快挙は大輔のいつもの勝負服で達成して欲しいなぁ。あ……、言っちゃったcoldsweats01

 

***** 2017/11/03 *****

 

 

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2017年11月 2日 (木)

中野にて

久しぶりに中野駅に降り立った。

競馬ファンが「中野」と聞けば、アイネスフウジンとのコンビでお馴染みの中野栄治調教師を思い浮かべるに違いない。いや、中にはナカノファームを連想する人もいるだろうか。明日のJBCレディスクラシックに出走するプリンセスバリューは、ナカノファームの生産馬だ。

Princess 

実は、いつも使っているレンズが突然故障してしまった。

数年前に撮影の仕事はやめているので、とりたてて困ることはない。修理に出せば数万はかかるし、部屋に置いておくにも場所を取る。ならば、いっそ棄ててしまおうか―――。

そんなことを考えていたら、夜な夜なレンズの声が聞こえてくるようになったのである。

「ダンナぁ。そりゃあ、使いもしないレンズを何万もかけて修理するのはバカらしいでしょうけど、棄てちまおうってぇのは、ちと酷じゃねぇですかい? あっしだって20年間ダンナのために働いてきたんですから」

そう言われるとこちらとしても弱い。彼にはたしかに世話になってきた。毎週のJRAのレースはもちろん。一緒に旅した海外の競馬場も数知れず。雨の日も風の日も、彼は黙って馬の姿を捉えてくれてきた。それを思い出すと、レンズの主張はもっともに聞こえる。

中野にやってきたのは、そんなレンズを修理に出すため。使い道がなくても、直して使える状態にしておくのが人の道であろう。こう毎晩話かけられては、熟睡もできない。

せっかく中野に来たのだから、中野のうどんを食べて帰りたい。そこで中野の知人に紹介された『和香』の暖簾をくぐった。

Waka 

本業は和食屋さんらしい。だからであろう。ダシが違う。器も立派。もちろん、うどんも旨い。だが、メニューに書かれたほかの一品料理がどうしても気になってしまう。次回は夜に来よう。

Udon 

中野駅から総武線に乗って今度は降り馴れた水道橋で降りる。向かうはオフト後楽園。思うところがあって、こんな馬券を買ってみた。

今日の大井5Rは偶然にも中野区特別。いや、それだけではない。中野区特別は昔からずっと行われているレースだが、実は今年ついに中野省吾騎手が初騎乗を果たすのである。その記念すべき一戦で馬券を買わぬ手はあるまい。

Baken 

しかし、中野騎手のロングバージョンは2着に終わった。競馬はそんな単純なゲームではない。―――と言うか、2着ということは私が単勝買ったせいでしょうね。だとしたら、歴史的快挙(なのか?)の達成を邪魔てしまったことをお詫びいたします。

 

***** 2017/11/02 *****

 

 

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2017年11月 1日 (水)

挑戦の父系

先日、ロゴタイプの引退が発表された。社台スタリオンで種牡馬入りするという。獲得したGⅠタイトルは朝日杯、皐月賞、そして安田記念の3つ。GⅠ3勝は近年では珍しくもないが、2歳チャンピオン決定戦を勝ち、3歳クラシックを手に入れ、そして古馬になってからもGⅠを勝った馬となると実は意外に少ない。それが競走馬の理想とされるにも関わらず、である。そういう意味ではロゴタイプの種牡馬入りは当然と思える。

Logo2 

ロゴタイプを語る際、父のローエングリンを避けて通るわけにはいかない。

Loen 

ローエングリンは2歳秋から8歳秋までに48戦10勝。とことんタフに走り続けた。そのせいか最後は燃え尽きたようにターフを去っている。これは種牡馬として成功しないパターンの典型。だから―――と言っては失礼だが―――それほど期待もしていなかった。ところが早々にロゴタイプが朝日杯を勝ってみせたから凄い。ハナ差でコディーノを競り落としたその勝負強さは、父のローエングリンとは正反対に見える。だが、優れた種牡馬は自身の失敗を息子に繰り返させないもの。その最たる例がステイゴールドであろう。

思えばローエングリンは運にも恵まれなかった。皐月賞は2/7の抽選に外れて除外。代わりに出走したオープン特別を勝ち、賞金を加算して向かった日本ダービーでも、3/4の抽選に漏れてしまう。息子のロゴタイプが、抽選で出走権を得た朝日杯をきっちりと勝ってスターダムにのし上がったのとはエラい違いだ。

ローエングリンの父は1996年のジャパンカップを勝ったシングスピール。

Singspeal 

その父はブリーダーズカップ・ターフの覇者インザウイングス。

Wings 

さらにその父は、欧州の至宝サドラーズウェルズ。

Sdller_2 

ロゴタイプの種牡馬入りは、日本には不向きと言われるサドラーズウェルズの父系が、意外にも日本でも繋がることを意味する。

その特徴をひと言で表すならば「挑戦」の父系だ。芝、ダートを問わず全世界の競馬場で走り続けたシングスピール。その子・ローエングリンは、3歳にして宝塚記念に挑戦して3着と好走したかと思えば、菊花賞にもスプリンターズSにも出走し、適鞍があると思えばフランスや香港にも遠征した。その血を受け継いだロゴタイプも、やはりダートの根岸Sや香港遠征に挑み、ついに種牡馬へのパスポートを掴んだのである。

Logo 

挑戦者の立場に失うものはない。それが馬を強くする。今にして思えば、モーリスを破った昨年の安田記念などは、その真骨頂のようなレースだった。挑戦者の遺伝子を受け継ぐ産駒がターフに戻ってくるその日を、今から楽しみに待ちたい。

 

***** 2017/11/01 *****

 

 

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