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2017年8月 1日 (火)

【個体識別①】替え馬

先週木曜、27日の英国ヤーマス競馬場の第1レースは、2歳未勝利馬7頭による直線6ハロン3ヤードの一戦。前走クビ差2着で初勝利を逃したフィアキャイ(Fyre Cay)が、単勝1.6倍の圧倒的1番人気に押されている。ところが、そのフィアキャイに1/4馬身差をつけて勝ったのはブービー人気の伏兵・マンダリンプリンセス(Mandarin Princess)。当然のように場内は騒然となった。

マンダリンプリンセスはここがデビュー戦。特筆すべき血統の持ち主でもない。単勝51倍の評価も仕方なかろう。なのに、堂々の先行抜け出し。見事なまでの完勝である。2歳馬離れしたその走りに人々が驚いたのも無理からぬ話だ。

だが、事態は思わぬ展開を見せる。

勝ったマンダリンプリンセスが、実は同じチャーリー・マクブライド厩舎に所属する3歳馬・ミリーズキス(Millie's Kiss)であることが判明したのだ。

ミリーズキスの成績は10戦して(1,1,4,4)。この時季の2歳未勝利馬相手に3歳1勝馬が勝ったところで、不思議でもなんでもない。むしろ不思議なのは、なぜそのような取り違いが起きたのか。外見的特徴だけで馬を識別する時代でもない。今ではすべての馬にマイクロチップが埋め込まれおり、個別識別はさほど難しくはないはずだ。

たしかにマイクロチップ導入以前の英国では、故意による「替え馬事件」もなくはなかった。

最近では1982年にレスター競馬場で行われた3歳限定戦を大差で勝ったフロックトングレイが、実はまるで別の4歳馬であることが判明して事件となっている。一介の人気薄馬に過ぎなかったフロックトングレイがあまりに強い勝ち方をしたことが捜査のきっかけになったというから、騎手が上手くやれば隠し通せたかもしれない。直前にフロックトングレイに大量の賭けが行われていたことも不自然と言えば不自然だった。ともあれ、「誰も気付かないまま」というケースがおそらく存在するのであろうということを強く印象づける一件でもある。

伝統と威厳を誇る英ダービーも替え馬とは無縁でいられない。いやむしろ、ダービーという舞台であるからこそ替え馬というリスクを冒す必要性があったのかもしれない。

19世紀前半のイギリス競馬は不正の温床であった。不正薬物の投与や、騎手の買収などがはびこる中であったから、替え馬も決して珍しい出来事ではなかったはずである。

1844年の英ダービーでは、優勝馬ランニングレインが実は「マカベウス」という4歳馬であることが判明。オーランドが繰り上がりでタービー馬となっている。

しかもこのダービーでハナを切って逃げたリアンダーは、実は5歳馬であったことが後に判明。さらに1番人気で敗れたジアグリーバックに騎乗していた騎手は何者かに買収されており、さらにさらに2番人気の馬にも薬物が投与されていたことが明るみに出るなど、まさに当時のイギリス競馬界を象徴するようなダービーとして語り継がれている。

Race_2 

こんな話を延々と書いていると、今回のマンダリンプリンセスとミリーズキスの一件も単なる「取り違え」ではなく、故意の「入れ替え」の可能性を疑いたくなる。馬運車が競馬場に到着した際、2頭ともマイクロチップによる確認は受けたそうだ。だが、その後、「スタッフの手違いで」両馬が入れ替わったという。どれだけテクノロジーが進化しても、運用するのはあくまで人間―――。今回の出来事は、それを教訓として我々に教えてくれている。

 

***** 2017/08/01 *****

 

 

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