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2017年8月 3日 (木)

【個体識別③】マイクロチップ

実は、10年ほど前に日高で行われた某セールでも「替え馬騒動」が起きている。

その日の1歳セリに出す2頭を連れてきたとある牧場主が、午前の事前展示が終わったところで2頭がそれぞれ入れ替わってしまっていることに気付いた。そこであろうことか、2頭のヒップナンバー(臀部に貼り付けてある上場番号のシール)を貼り替えてしまったのである。

Hipn_no 

騒ぎはその後に起きた。セリが始まってセリ会場に引かれてきた馬を見て、午前の展示でその馬を見ていたバイヤーから「さっきのと違うぞ!」と声があがったのである。当の牧場主にしてみれば「単純な間違い」かもしれないが、市場全体としてみればセールの信頼性を揺るがしかねない大問題であることに違いはない。

そんな中、2007年より競走馬を個体識別するマイクロチップ(以下「MC」)の馬体への埋め込みが義務付けられ、そのための競馬施行規定も改正された。今年は2017年だから、既に10年が経過したことになる。MCが埋め込まれていない競走馬は、JRA所属では11歳のサイモントルナーレ。一頭しかいない。

Mc 

MCの大きさは直径2ミリで長さは15ミリほど。固有番号などが書き込まれた集積回路で、注射器でたてがみの生え際に埋め込み、専用の読み取り機を埋め込まれた部位近くにかざすことで、固有番号を識別することができる。

MCによる個体識別はヨーロッパ、アジア、オセアニアなどの競馬主要国において、移動や種付け、血統登録、セリ等で既に広く活用されていおり、専門知識と熟練が要求されていた個体識別作業はMC導入により飛躍的に省力化される―――はずだった。そんなMCでも導入時には様々な問題を引き起こしたのである。

2008年のセレクションセール1歳は、MCによる個体識別作業が本格的に実施される初めての機会だった。ところが、いざ読み取り機をかざしてみてもウンともスンとも言わない。ごくたまに反応があるのだが、そのコツもはっきりせず、近づけたり、遠ざけたり、角度を変えたりしながら、「手作業の倍かかった」という悪戦苦闘の末にようやく個体識別作業を終えたのである。この一件を受け、その後行われたサマーセールからは従来の目視による確認に戻されたというからよほどキビしかったのだろう。

さらに騒ぎは続く。MCは個体識別の他に体温測定もできるというスグレモノとして導入されたのだが、いざ読み取り機で表示させてみるとほとんどの馬が39度前後の体温を示したのだ。

「セールに集まった馬が大量熱発!」

「こっ…、これは、まさかの馬インフルエンザか!?」

と騒ぎかけたところで、実はこの体温センサーが通常より1度ほど高く検温してしまうという不具合があることが判明。あっさり騒ぎは収まった。

何ごとも最初はドタバタがつきもの。とはいえ、この体温測定機能付きのMCは海外において読み取り率が経年低下することが既に指摘されていたとされ、そういう意味では、認識不足や拙速行動の誹りを受けても仕方あるまい。

ともあれ、その後は体温測定機能がなく、また読み取り率も高い別のタイプのMCを埋め込まれるようになった。ちなみに初期のMCを埋め込まれた馬はそのまま。いちいち体内から古いチップを取り出して、新しいのを埋め直すなんてコトしてらんないから。でも、役に立たない機械を身体に埋め込まれたまま生きてくのって、なんか気の毒ですね。

 

***** 2017/08/03 *****

 

 

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