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2017年7月17日 (月)

夏の勝負服

いつのことだったか、何気なく朝の情報番組を見ていたら、「この夏の勝負服」とかいうコーナーがあった。

その内容自体は特筆すべきものではなかったのだけど、コーナーの最後に司会者が「勝負服というのはもともと競馬の騎手が着る服のことを指すのですよ」と言ったら、他の出演者たちが「えっ!?」とか「へぇ~!」とかいう具合にリアルに驚いていたのである。結果、一番驚いたのはそれを見ていた私であろう。

Yu 

「勝負服」というのは、騎手がレースに騎乗する際に着用する服のことである。その起源は古く、18世紀半ばに創立されたジョッキークラブによる第2番目の命令が、「馬主は配下の騎手が着用する服色をあらかじめ登録しておくこと」というものであった。ちなみに第1番目の命令は、「騎手はレース前と後に検量を受けること」であり、当時は斤量をごまかしたり、レース中に馬や騎手が入れ替わるという不正が、いかに日常的に行われていたかを雄弁に物語る史実でもある。

ともあれ、昨今ではメジャーな辞書でも「勝負服=俗に、大切な仕事やデートなどで特に女性が着用する」などと書かれるようにもなった。この用法を最初に世間に広めたのは、外務大臣当時の川口順子氏であろう。会見で「赤は私の勝負服」と語ったのがその嚆矢ではないか。

Sunday 

一方で、「一張羅(いっちょうら)」という言葉は最近ではほとんど聞かなくなった。自分のワードロープの中で、たった一着しかない上等な服。あるいは、かけがえのない大切な服を指す。

この言葉の語源は「一丁ロウソク」にあるとされる。大昔、ロウソクはたいへん高価なものであった。そのロウソクを一本だけ持っていて、予備などない状態が「一丁ロウソク」である。これそれが「一丁ろう」「いっちょうら」となり、転じて「掛け替えのない一着」という意味でも使われるようになったという。実はこのエピソードを紹介していたのも、冒頭と同じTV番組だ。

Yutaka 

「一張羅」という言葉には古臭い響きがあり、「ここ一番という場面で気合を入れる勝負服」の方が、たしかに世間的には受け入れられ易いだろう。しかも最近では、野球やサッカーのユニフォームまで「勝負服」と呼ばれるようになった。競馬の勝負服は馬主(地方では騎手)によりデザインが細かく決められているが、世間一般の勝負服は好み次第で好きなように替えることができる。そんなラディカルな面も、広く浸透する一因になっているのかもしれない。

Silk 

ちなみに勝負服は英語で「racing colors」あるいは単に「colors」と表現されるが、米国ではたまに「silk」とも呼ばれる。これは英国から伝わった勝負服が絹製だったため。決してシルクレーシングの馬が現地で大活躍したからではありませんよ。念のため。

 

***** 2017/07/17 *****

 

 

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