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2017年7月24日 (月)

人類の歴史は賭けの歴史

先日、マリアム・ミルザハニさん死去のニュースが伝えられた。2014年に女性として初めてとなるフィールズ賞を受賞した天才数学者。悲しむべきは40歳という若さである。エヴァリスト・ガロア(満20歳没)やニールス・ヘンリック・アーベル(満26歳没)といった過去の天才数学者の生涯に比べれば……と言う声もあるかもしれないが、大学で数学を専攻した身としては、もっと研究を続けて欲しかったという思いが募る。

数学とギャンブルに密接な関わりがあることは言うまでもない。ギャンブルが数学を生んだ、とまでは言わないが、ギャンブルが数学のいち学問の「確率論」を生んだことは、まず間違いないだろう。

「一つのサイコロを続けて4回投げ、『六の目が少なくとも一度は出る』という結果に賭ける行為は、果たしてどれくらい有利なのか?」

これは賭け事が大好きなフランスの貴族メレが、数学者パスカルに問うた有名な問題である。

「サイコロを1回投げて六の目の出る確率は1/6。だから、これを4回くり返せば、確率は4/6(=0.67)になる」

当時の人たちは、このように考えていたらしい。

だが、この“少なくとも”の部分がくせ者。「少なくとも一度は六の目が出る」というのは、実は「4回とも六の目が出ない」の反対であり、そのように計算すれば、真の確率は0.52という案外拮抗した数値に収まる。

パスカルは、同じ数学者のフェルマーと手紙をやりとりしながら、この問題に対する解法を探った。やがてその考え方はギャンブルのみならず、保険や気象、さらには量子力学のような物理学にも必要とされ、今日の確率論にまで発展を遂げる。

Saicoro 

昔の人はリスクを最小限にしようと頭を凝らし、様々な思考を戦わせた末に確率論という類い希な学問を生み出した。逆に、確率論は敢えてリスクを引き受けるという人間の冒険心を燃え上がらせ、結果それが社会経済の発展を生みだすことになる。そういう意味では人類史とはすなわち賭けの歴史だったのである。

パスカルは、すべての運・不運にまつわる謎を解明せしめ、あらゆる偶然を人知の及ぶ処にしようと確率論を発展させたが、そこに秘められた大きな謎を手中に収めることはついにできなかった。それどころか、晩年はギャンブルに溺れる生活を送ったのち、やはり39歳の若さでこの世を去っている。稀代の大数学者を以てしても、最終的には運には逆らえなかったということだろうか。

 

***** 2017/07/24 *****

 

 

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