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2017年6月20日 (火)

果てしない大空と

例年、社台さんの牧場ツアーがハネたあとは、千歳か札幌に一泊することにしているのだけど、今回はそのまま帰京。空港内で土産店を物色して時間を潰し、頃合いを見て手荷物検査所を潜り抜けようと思ったら、搭乗便遅延のアナウンスが聞こえてきた。

45分の遅れだそうである。ならば実際には1時間といったところか。まあ、それはいい。問題は続けてアナウンスされた遅延の原因である。

「カムチャッカ半島における火山噴火の影響で、使用機材の到着が遅れております」

カムチャッカ半島……?

ロシアの噴火が羽田-新千歳間の航路に影響を与えるものなのか?

ともあれ踵を返してターミナル内のレストランへ。ビールを注文して窓際の席に座り、彼方にそびえる樽前山を眺めながらひとしきり考えた。そういえば樽前山も活火山。今は噴火しないで欲しい。

北海道の牧場に通うようになって30年。いつの頃からか、行き帰りの新千歳空港(かつては千歳空港)で樽前山を眺めるのが、私の中での決まり事になった。千歳に降り立って樽前山が見えれば好天が期待できるし、帰途には旅の名残とばかりに目に焼き付けることにしている。千歳から眺める樽前山の姿は、私にとって北海道の象徴のひとつだ。

樽前山の南麓にあたる白老界隈の土壌が酸性なのは、長年の火山活動で降り積もった火山灰が原因。ためにその地のサラブレッド生産者たちは土壌改良に苦労してきた。むろん当時の社台ファーム(現・白老ファーム)とて例外ではいられない。だが、その努力がダイナガリバーを生み、サッカーボーイを生み、そしてオルフェーヴルを生んだ。人はもちろん、そこで生まれ育った馬たちも、日々樽前山を見ていたことだろう。

空港に勤める知人から連絡が入った。

国際便がカムチャッカ上空を迂回するあおりを受けて、北海道上空の航路が混雑して離陸許可が遅れるのだそうだ。それでなくても、最近の千歳上空はLCCや国際便の増加で混雑が激しいとのこと。ふーむ。これだけ広い空のどこが「混む」のかとても理解できないが、ともかくそういうことらしい。

北海道の空は広い。山際が迫る日高と違って、平野部にある社台グループの各牧場では特にそれを感じる。ビル群で空が覆い隠されている都会の人にしてみれば、そこは非日常の極み。彼らが北海道を実感するのは、広大な緑の大地だけでなく、この果てしなく続く青い空であろう。牧場ツアー参加者は馬だけはなく、実は無意識のうちに空も見ている。それが心身に与える効果は計り知れない。

Sky 

牧場ツアーに一度でも参加した人は、年老いて死ぬ間際に牧場の風景を思い出すのだそうだ。今回のツアーではそんな話題も聞こえてきた。多少の唐突感はあったが、それに私は深く頷く。

帰りの便は1時間遅れで離陸。1時間半に及ぶフライトの果てに見えてきた景色は、雨に煙るビル群の明かりである。そこには樽前山のような印象的な山も、果てしなく広がる済んだ空もない。それを見て、大井の馬たちが多少気の毒に思えてきた。たまの放牧くらい理解してあげよう。それは人間にだって必要なものなのだ。

 

***** 2017/06/20 *****

 

 

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