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2017年5月 1日 (月)

まるで魔法のような

キタサンブラックの大レコード勝利に沸いた天皇賞から2時間足らず。息つく間もなく、今度は香港から快挙の一報が届いた。シャテイン競馬場で行われたクイーンエリザベスⅡ世カップ。ここに日本からただ一頭参戦したネオリアリズムが、地元の強豪を退け見事GⅠ初制覇を海外の地で達成したのである。

特筆すべきはその大胆な手綱さばきだ。まさかと思える3角からの捲り一閃。あまりにリスクが大きいその戦法は、海外遠征馬が繰り出す作戦とはとても言い難い。しかしそこは“マジックマン”の異名をとるジョアン・モレイラ騎手である。「ペースが遅かったので自分から動いた。長い脚を使えると思っていたので勝負に出た」と涼しい顔。突如繰り出された魔法に、地元の最強馬ワーザーも為す術がなかった。

日本調教馬による海外GⅠ制覇は3月のドバイターフを勝ったヴィブロス以来。直近2年間だけでも12勝だから凄い。初めてのGⅠタイトルを海外で勝ち取るというケースも、最近では珍しい出来事ではなくなった。海外遠征はチャンピオンホースだけに与えられた特権ではない。……と同時に海外との間の垣根が低くなったことを実感する。

【過去2年間の日本調教馬による海外GⅠ勝利】

■オールエイジドS(豪)
 ハナズゴール/N.ローウィラー

■コーフィールドC(豪)
 アドマイヤラクティ/Z.パートン

■ジョージライダーS(豪)
 リアルインパクト/J.マクドナルド

■香港マイル(香)
 モーリス/R.ムーア

■香港カップ(香)
 エイシンヒカリ/武豊

■ドバイターフ(ドバイ)
 リアルスティール/R.ムーア

■チャンピオンズマイル(香)
 モーリス/J.モレイラ

■イスパーン賞(仏)
 エイシンヒカリ/武豊

■香港ヴァーズ(香)
 サトノクラウン/J.モレイラ

■香港カップ(香)
 モーリス/R.ムーア

■ドバイターフ(ドバイ)
 ヴィブロス/J.モレイラ

■クイーンエリザベスⅡ世C(香)
 ネオリアリズム/J.モレイラ

日本調教馬の活躍は喜ばしい限りだが、こうして並べてみると、別のことが気にならないか。12勝中10勝が外国人ジョッキーの手綱によるもの。さらにそのうち7勝までが、モレイラ騎手とムーア騎手の二人によってもたらされている。逆に、そんな中にあって2度に渡って顔を出す武豊騎手も、また素晴らしい。

Moreira 

モレイラ騎手は1983年生まれの33歳。ブラジル出身で2009年4月にシンガポールに移籍し、翌年から4シーズン連続リーディングを獲得すると、13年10月に香港に移籍した。今シーズンもリーディングトップを独走中。香港での3シーズン連続リーディングも間違いない。15年にはJRAのワールドオールスタージョッキーズで総合優勝も果たしている。

まあ、とにかく凄い騎手なのである。R.ムーアやC.スミヨンも同様。そんな騎手が海外遠征の日本馬に乗るようになってくれたことが、日本馬が普通に海外で勝つようになった一因かもしれない。ひと昔前であれば、たとえ日本の年度代表馬が乗り込んでも、現地のトップジョッキーが乗ってくれることなどあり得なかった。つまり、それくらい下に見られていたのである。だが、外国人騎手への短期免許がそんな状況を一変させた。

日本馬のレベルは高い。自国の馬に乗るより勝負になる―――。

結果、日本からわざわざ騎手を帯同させなくても、騎手は現地でいくらでも調達できるようになった。日本人騎手にしてみればあまり心温まる推論ではあるまいが、結果が出てしまっているのだから仕方ない。

モレイラ騎手は昨年の札幌記念でモーリスの手綱を任されたが、人気を裏切る形で2着に敗れた。逃げ切りを許したその相手こそ、誰あろうネオリアリズムである。モーリスの背中からネオリアリズムの走りを見て、長い脚を使えることを見抜いていたのであろう。それが今回の勝利に繋がった。ひとつの敗戦をより大きな勝利に結びつける。ここ一番で頼られるプロの姿を、今回の香港に見たような気がする。

 

***** 2017/05/01 *****

 

 

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