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2017年1月 5日 (木)

1分32秒台の代償

昨日、メジャーエンブレムの引退が発表された。ある程度覚悟はしていたことだが、いざ正式発表を耳にすると、やはり残念でならない。

Mejar1 

異変が彼女を襲ったのは昨年7月4日のことだった。どうも左トモに痛みを感じているように見える。厳密にはハムストリングの一部をなす半腱半膜様筋の痛み。当初は軽症と思われ、放牧を控えていたが一向に良くなる気配がない。むしろ悪化の兆しさえ漂う。念のためにレントゲンを撮ってみたが、骨にはなんら異常が見られない。

秋の緒戦に予定していた紫苑Sは回避。走るどころか、乗り運動さえできないのだから仕方ない。数分の引き馬がやっと。それでも関係者は一縷の望みにかけてきた。しかし、圧倒的スピードを生み出したあの美しい筋肉が戻る気配はない。NHKマイルカップから8ヶ月。ついに「原因不明」のまま、若き名マイラーの引退が決まった。

昨年の桜花賞で「3強」と呼ばれていたことが、早くも懐かしく思えてくる。チューリップ賞でハナ差の接線を演じたシンハライトとジュエラーに、クイーンCで後続を5馬身千切ってきたメジャーエンブレム。レースぶりもさることながら、なにより注目されたのはその勝ち時計であろう。チューリップ賞が1分32秒8。クイーンCに至っては1分32秒5である。どちらも例年の桜花賞の勝ち時計よりもはるかに速いのである。

この3頭がぶつかる桜花賞は、歴史に残るハイレベルの一戦になるのではないか―――。

そんな期待が浮かぶと同時に、

3歳春の牝馬が、こんな猛時計で走って大丈夫なのだろうか―――?

という一抹の不安を覚えたのも仕方あるまい。

2002年のニュージーランドトロフィーを1分32秒1というJRA3歳史上最速タイムで勝ったタイキリオンは、その後は(0,0,0,9)の大不振に陥った。また、その前まで芝マイルのJRA3歳レコードホルダーだったタイキフォーチュンは、1分32秒4でNHKマイルカップを勝ったあとは、まるで燃え尽きたかのように8連敗で現役を退いている。スタミナもスピードも、全能力を出し切らないと快走できないマイル戦を猛時計で走ったその代償は、我々の想像以上に大きいのであろう。この両者の後、NHKマイルで驚異のレコードを叩き出したダノンシャンティの例を持ち出すまでもない。

昨年の桜花賞の「3強」のうち、シンハライトは屈腱炎を発症して既に引退し、メジャーエンブレムもついに引退へと追い込まれた。残るジュエラーにしても、桜花賞直後に骨折が判明してオークスを棒に振っただけでなく、秋以降も重度の筋肉痛に悩まされて不振に喘いでいる。春の3歳馬が1分32秒台でマイルを乗り切ることが、いかに酷であるか。彼女たちのそんな姿を見るまでもない。それは歴史も証明している。

 

***** 2017/01/05 *****

 

 

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