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2017年1月29日 (日)

ドンブリの“イ”

諸事情これありで、一年ほど前から土日にクルマで出かけることが増えた。今日も今日とて千葉までドライブ。となれば、自然と競馬はラジオ日本の「日曜競馬実況中継」に頼るようになる。

Radio 

それで気づいたことがある。むかしのラジオ日本の実況アナは馬番号や払戻金額を読み上げる際、2は「ふた」、9を「ここのつ」、10なら「とお」などと読んでいたはず。たとえば「馬連9-12。2210円」であれば、「うまれん、ここのつばん、じゅうふたばん。ふたせんふたひゃくとおえん」という具合。それが、最近は「うまれん、きゅうばん、じゅうにばん、にせんにひゃくじゅうえん」と、普通の言葉遣いになってしまっているのだ。

なぜ、9を「きゅう」ではなく「ここのつ」と読むのか。それは聞き間違い防止のために他ならない。特に的中馬番や配当金は大事な情報だから、伝える方も気を遣わざるを得なかった。が、そんな気遣いも不要な時代になったということか。

アナウンサーでなくても、顔の見えない相手に情報を伝える時にはいろいろと気を遣うことがある。特に人の名前。

学生時代だから、もう30年近くも昔の話になる。某新聞社でアルバイトをしていた私は、「井川」という名前を電話の相手に伝える際、「井戸の井に三本川です」と言った。すると間髪入れずに隣の記者から怒号が飛んで来たのである。

バカ! そういう時は「ドンブリの井」って言うんだ!

「いど」を「井戸」と聞き取ってくれれば問題は起きない。だが中には「緯度」だと思う人もいるだろう。イントネーションや聞く側の思い込み次第では、「江戸」と聞き取られてしまう可能性だってある。「井川」が「江川」になってしまえば、阪神タイガースファンでなくとも大きな間違いだ。「ドンブリの井」は、漢字の説明として正しくないかもしれないが、少なくとも聞き間違いは起きない。

その記者は、かつて電話での伝え間違いで大きなミスを犯したという。まだFAXもなかった当時、出張先の競馬場から「アサ」という2文字の馬名を電話で本社に伝えなければならなかった。先方が聞き間違えぬよう、わざわざ「朝晩の“アサ”」と念を入れて伝えてあげたら、翌朝の新聞にはしっかりと「アサバンノアサ」と掲載されていたそうだ。

たまたま今現在も「アサ」という名前の馬が岩手に在籍している。だが、水沢にいようが、盛岡にいようが、記事も写真もインターネットでほいほい送れてしまう時代。アサバンノアサ号が新聞に載るチャンスは皆無に等しい。同様に「ここのつばん、じゅうふたばん」という声がラジオから聞こえてくることもないのだろう。根岸Sの実況に耳を傾けながら、どことなく寂しい思いがした。

 

***** 2017/01/29 *****

 

 

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