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2017年1月15日 (日)

鞭(ムチ)

田辺裕信騎手の勢いが凄い。中山は開催5日目を終えたが、今日の京成杯を含め既に8勝。堂々の全国リーディングトップに立っている。

Tanabe 

その一方で、昨年187勝でリーディングジョッキーに輝いた戸崎圭太騎手は、いまひとつ調子が出てこない。いまだ2勝。昨日と今日の競馬でも1番人気が11回あったが、ひとつも勝てなかった。年が明けてからどうもリズムが悪い。2016年から17年になって何か変化でもあったのか。

実はある。なにか。今年から鞭(ムチ)に関する運用ルールが変わった。国際調和及び動物愛護の観点から、先端部分に緩衝パッドが付いたムチの使用が義務化されたのである。冒頭の写真。田辺騎手が手にしているムチの先端部分を見てほしい。およそ20センチほどの、太くなった部分が緩衝パッドだ。

海外では7、8年前から使われ始め、数年前からはこのタイプが主流になっている。現場の声を聴くと、「馬の反応は変わらない」という騎手がいる一方で、「こんなんで馬が動くのかなぁ……」という声も。効果に違いがあるかどうかは別として、“違い”を気にした時点で騎手にはマイナスかもしれない。ちなみに田辺騎手はもともとムチを多用するタイプではないから、それが結果的にプラスに働いている可能性はある。

英国ジョッキークラブが、世界に先駆けてムチの使用に制限を設けたのは1988年のこと。それまでは「過度の使用を禁止」という曖昧な努力目標に留めていたのを、いきなり「10回以上の使用を禁ずる」と使用回数明示したルールに改正された。違反すれば最高で4日間の騎乗停止を伴うため、当然ながら騎手たちは猛反発したが、そこは動物愛護精神を大事にするお国柄。30年近くが経過した現在も厳格なルールとして存続している。 

翻って我が国はどうか。JRAではその施行規定で「鞭を過度に頻発して使用すること」を長らく禁止してきたが、具体的な回数に関する規定はなかった。そこに「連続する動作で10回を超えて鞭を入れた場合」という一文を加えられたのは2012年のこと。新ルールが適用されて5年目。騎手がムチを使用する回数自体は減少傾向にあるという。

そもそも馬をコントロールするために使うものは、古今東西を問わず「ハミ(手綱)」と「騎座」と「脚」の3つのみで足りるのである。ムチはあくまで補助ツールに過ぎない。ムチを使い過ぎれば馬は斜めに走る。斜行による降着処分の半数以上は、ムチの誤った使用が原因で起きている。

世界基準のルールが日本の競馬に浸透する中で、気になることも。海外では入着の見込みがなければ、その時点でレースを諦めるのが常識。馬に無駄な負担をかける必要はない。だが、日本の競馬にはタイムオーバー制度がある。一定の制限タイムを超過した馬には、出走制限や手当カットのペナルティが課されるのである。だから、バテて勝ち目のなくなった馬でも、騎手はムチを入れなければならない。

果たしてタイムオーバー制度は、動物愛護の精神に沿っているのだろうか。

 

【JRAの鞭に関する通達事項】

1.鞭の規定

・鞭の長さは77センチメートル未満であること。
・馬体の保護のため、鞭の先端から以下に定る部分にわたって衝撃吸収素材を用いたパッド(表面はなめらかで突起物がないもの)装着したものであること。
・パッドの長さは17センチメール以上であること。
・パッドの幅は2センチメートル以上4センチメートル以下であること。

2.鞭の使用に関する禁止事項

騎手は競走において、下記の各項目に該当する方法で鞭を使用してはならない。
・馬が怪我をするほどの過度に強く鞭を使用すること。
・肩より上に腕を上げて鞭を振り下ろすこと。
・反応(脚勢)のない馬に対して過度に鞭を使用すること。
・明らかに着順の大勢が決した後に、過度に鞭を使用すること。
・入線後に鞭を使用すること。
・ひばら(脇腹)へ鞭を使用すること。
・鞭を過度に頻発して使用すること(2完歩あけることなく10回を超えて鞭を連続して使用すること)。
・頭部もしくはその付近に対する鞭を使用すること。
・鞍より前方に逆鞭で鞭を使用すること。

 

***** 2017/01/15 *****

 

 

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