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2016年12月15日 (木)

天才ジョッキー逝く

英国往年の名騎手ウォルター・スウィンバーン氏が、この月曜日に亡くなったと聞かされた。55歳はまだ若い。なにせ「私よりちょっと上」と思っていた人物である。てんかんを患っていたことは知っているが、それが関係しているのだろうか。

彼が騎乗した名馬を思いつくまま挙げてみる。

シャーガー、オールアロング、シャリーフダンサー、シャーラスタニ、ドユーン、サイエダディ、ホーリング、ロイヤルアプローズ、ラムタラ、アントレプレナー、ピルサドスキー……等々。

年代の古い順に並べたつもりだが、間違っているかもしれない。また、この馬が抜けてるぞ!という指摘もあろう。ともあれ時代を彩った名馬たちばかり。中でも一頭を挙げろといわれれば、やはりシャーガーをおいてほかにあるまい。1981年のエプソムダービーを10馬身差のレコード勝ち。その当時、スウィンバーン騎手は若干19歳だった。

ここで私事を披露することをお許し願いたい。私が初めて英国で訪れた競馬場はチェスター競馬場だった。ロンドンから特急に揺られること2時間あまり。中世の趣を色濃く残すチェスターの、その街はずれを流れるディー川の河川敷に開かれたチェスター競馬場は、現存する世界最古の競馬場でもある。

近代競馬の総本山たる英国の競馬場を巡るにあたり、もっとも歴史のある土地を真っ先に訪問することが、正しい競馬ファンの姿だと思った―――わけではない。訪れた当時はそんな歴史のことなど、これっぽっちも知らなかった。わざわざそこを訪れた理由は、その日たまたま開催していたこと。そしてもうひとつ。その日たまたまスウィンバーン騎手がそこで騎乗していたからだった。

目当てのレースは2歳の新馬戦である。4頭立て。サドラーズウェルズの産駒。ニアルカスファミリーの服色。さらにスウィンバーンの手綱。これだけ条件がそろえば、圧倒的1番人気に支持されたのも頷ける。実際、彼は人気に応えて楽勝した。この馬こそ翌春の英2000ギニーを勝つことになるアントレプレナーなのだが、当時はそんなことまで気にしていた覚えはない。遠路はるばるやってきた英国の競馬場で、スウィンバーンが勝つシーンを見ることができた。それでじゅうぶん。私にとって彼はそんな存在だったのである。

Swinburn 

ただ、この当時から彼は減量でずいぶん苦労していたと聞く。2004年には騎手を引退。調教師に転身したが、2011年には厩舎もたたんでいた。当時まだ50歳。調教師引退の理由を「経済的なもの」と聞いて、私が一抹の寂しさを覚えたことは言うまでもない。レース前半は長手綱でじっくり抑え、勝負どころからびっしり馬を追う。チェスターで見たスウィンバーン騎手は、クラシカルな英国式騎乗方法を体現する、まさに生けるレジェンドだった。合掌。

 

***** 2016/12/15 *****

 

 

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