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2016年11月30日 (水)

降級廃止という名のリストラ

今日付けのスポーツ報知のコラム「こちら日高支局です」の内容が話題になっている。日高で行われた講演会で、とあるオーナーブリーダーが「中央競馬が再来年に降級制度をなくす動きをしている」ことについて意見を述べていたというお話。コラムはネットでも公開されているから誰でも読むことができる。私自身もセリの会場などで噂には聞いていたが、表立った話としてはこれが初めてではないか。

現在のクラス分けのシステムは10年前から実施されている。その原則は、「ひとつの条件を勝った馬は、同じ条件にとどまることなく昇級する」というもの。ただし、4歳6月になると収得賞金が半額に減額され、大くの馬が降級となる。たとえば、その時点で2勝して収得賞金が900万の場合は半分の450万になるから、1000万条件から500万条件へとクラスがひとつ下がるというわけだ。降級制度をなくすということは、この4歳6月の収得賞金の半減措置をなくすということ―――。私はそう理解している。

実は、昔は4歳(当時表記「5歳」)6月だけでなく、5歳(当時表記「6歳」)にも二度目の降級があった。ある程度ベテランの方なら覚えていらっしゃるだろう。当時はレース条件に

 蔵王特別(4歳400万下、5歳800万下、6歳上1200万下)
 新潟日報賞(4歳900万下、5歳1800万下、6歳上2700万下)
 神無月S(4歳1400万、5歳2800万、6歳上4200万下)

などと記載されていたものだ。4000万円の収得賞金を持ちながら「条件馬」というのは、今の感覚からすれば驚かれるかもしれない。でも、当時はこれで普通だった。

ルール改定がなされたのは1988年6月の札幌開催からである。このタイミングで「6歳上」という区分がなくなり、5歳上としてひとくくりになった。もはや6歳馬は降級の恩恵にあずかれない。いやそればかりか、中には強制的に「昇級」を強いられる馬も現れた。

さすがにこれでは6歳馬が気の毒だと思ったのであろう。本来なら降級するはずなのに、そのまま現級にとどまることになった6歳馬には、斤量を2キロ減とする救済措置を施したが、この札幌開催での6歳以上の馬の成績は惨憺たるものだった。900万条件を例に挙げると、5歳馬はのべ31頭が出走して1着6頭、2着6頭(連対率.387)であったのに対し、6歳以上はのべ54頭が出走して1着2頭、2着2頭(連対率.074)という記録が残っている。

6歳馬降級廃止の発端となったのは、同じクラスを何勝もする馬が続出したからだ。この年、ビギンザビギンは900万条件ばかりで5勝目をマーク。1959年にはヒダカスピードが900万条件6勝の怪記録を残した。しかも降級馬が増えれば、高額条件のレースが手薄になってしまうことは必至。降級制度の縮小は、オープンや準オープンの少頭数対策の一面も担っていた。

現在でも5月になると「勝って同条件」とか「降級を待って」などというフレーズが関係者のコメント欄を賑わす。降級馬が馬券の妙味を削ぐこともあろう。降級制度がさまざまな問題を内包していることを否定するつもりはない。ただ、降級制度がなくなれば、そのクラスで頭打ちになった馬の逃げ場はどこにもなくなる。早熟で早いうちに稼いでしまった馬や、たまたま好条件が重なってうっかり勝ってしまう馬だってゼロではあるまい。彼らは身の丈に合わぬクラスで苦戦を強いられ続ける。それが嫌なら速やかに退場願いたい―――。それが降着制度廃止論の本音であろう。そうすれば在厩頭数が減り、除外問題も解決する―――。

Sekiya 

影響を受けるのは条件戦ばかりではない。夏のローカル重賞に高齢馬が活躍するのは、「暑さに強い」とか「平坦が向く」などの理由もあろうが、実は4歳のオープン馬が思うように重賞に出られないという事情が大きいのである。なぜか。夏競馬直前の6月に収得賞金が半額になるので、準オープンに降級になったり、オープンに残っても賞金順で下位に回されて除外対象になってしまうからだ。

「夏のローカルは高齢馬を狙え」というような格言もいずれ消えてしまうのだろうか。いずれにせよ高齢馬には肩身の狭い話。しかも今回は2キロ減のような措置が取られるでもなく、カネで解決するような動きもあるとも聞く。こうなると、なにやら企業のリストラ策にも似やしないか。かつて二度の降級があった当時を知るベテランファンにとっては、あまり心躍る話ではあるまい。むろん私もそのひとりである。

 

***** 2016/11/30 *****

 

 

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