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2016年9月14日 (水)

競馬場の雌鹿

直線の急坂を迎えると、420キロの小柄な馬体が待ってましたとばかりに小気味よく弾んだ。

先週土曜に行われた中山の紫苑S。後方から徐々にポジションを上げた1番人気のビッシュは、絶好の手応えのまま直線先頭に立つと、瞬く間に2着ヴィブロスに2馬身半の差をつけた。弾むような高いフットワークは、まさに「Biches(=雌鹿)」の名にふさわしい。

Shikajump 

ただ、TVでそのレースを見ていた私が思ったのは、北海道で増殖を続けるエゾシカたちのことである。ここ数年は、北海道を訪れてシカを見ぬことはない。つい先日などは、新千歳空港のすぐ隣、国道38号線の路肩で草を食むシカの一団を見つけて、思わずハンドルを切り損ねそうになった。いずれ滑走路がシカだらけにならないかと余計な心配をしてしまう。「昔はこうではなかった」。北海道で生まれ育った牧場の人たちがそう言うのだから、私の感覚もあながち間違いではあるまい。

「学校の帰りに遠くの山の斜面にシカを見つけたことがあんのさ。近くで見たくてソーッと近づこうとするっしょ。したっけ、すぐに気付かれて、ピョーンって逃げてったんだわ」

それが今では、住宅の庭や学校の校庭にシカが堂々と出没しては黙々と草を食べ続けている。民家や校庭ならば怖い怖いハンターに狙われることもない。牧場の放牧地においても同様。シカたちは放牧開始と共に山から降りてきて、馬たちと一緒に牧草を食べる。しかも、放牧地の中でも良い草を選んで食べ漁るのだから腹立たしい。その光景は、一見すると大量の仔馬が放牧地に放たれているようだ。もとよりサラブレッドの毛色の50%は「鹿毛」。事実、シカと間違えて競走馬を誤射する事故も後を絶たない。

Shika1 

撃っても撃ってもキリがないから山から降りて来ないようにしてしまえ―――。シカ対策に頭を悩ますむかわ町は、町内全域で山ごとぐるりと柵で囲ってしまった。なんと全長400キロ。総事業費7億円の大事業と聞けば、たかがシカ対策にと驚くかもしれない。しかし現場はそこまで追い詰められている。シカを捕まえると貰える数千円の奨励金も増額される傾向にあるが、それでもシカの増加のペースには追い付かない。

Biches 

最近では「これ以上の増加を食い止めるには雌鹿を捕まえなければダメ」という声を聞くようになった。雌が減れば個体数は増えないという論理である。だが、紫苑Sではその“雌鹿”を誰も捕まえることができなかった。ちょいとばかり皮肉にも思えた決着は、その馬がまごうことなき「鹿毛」であり、しかも管理するのが「鹿戸」調教師だったせいもある。むろん、こちらの“雌鹿”はあくまでもウマ。その活躍は大目に見てやってほしい。

 

***** 2016/09/14 *****

 

 

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