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2016年9月15日 (木)

「宮内庁御用達」の謎

オーバルスプリントを見に行ったついでに、浦和駅近くに昨年オープンしたうどん店に立ち寄ってみた。

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駅を出て競馬場とは逆の方向に歩くこと3、4分。「うどん」と大書きされた看板が目に飛び込んできた。屋号は『澤村』。多少コントロールに難のありそうなイメージを受けるが、そんなことはさておき暖簾をくぐると、広くて清潔な店内には、ほのか小麦の甘い香りが漂っている。

券売機に「鴨汁うどん」の文字を見つけたので、他のメニューなどには目もくれずにそれを注文。席に座り、お冷やを一口。しかるのち、あらためて品書きを眺める。するとこんな記載を見つけた。

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宮内庁御用達の『越谷鴨』を使った逸品―――。そう明記されている。

「御用達」制度は、1891年に宮内省(当時)が「宮内省用達称標出願人取扱順序」という内規を定めたことに端を発する。その背景には日本の伝統文化や伝統技術の水準を維持という目的があった。商品の品質が優れていることはもちろん、宮内省への納入実績が一年以上あり、なおかつ勤勉、実直で、相応の資本力があることなど、それは厳しい審査基準があったとされる。もちろん一度認められても、納期遅延や不良品の発覚によって取り消される例もしばしばあった。

だが、戦後になるとこの御用達制度自体が自然消滅。したがって、現在において「宮内庁御用達」は存在しないのである。

それでも街を歩いていると、たまにこの6文字を見つけることはある。その理由は大きく分けて

①かつて正式に宮内庁御用達を認めらた老舗の名残り
②近年になって宮内庁と取引のあった業者が勝手に名乗っている
③宮内庁とはまったく関係ないのに名乗っている

のいずれかだ。①は仕方ない。②は店側の誤解の可能性もあるが、「御用達」目当てに一方的に品物を提供してくる業者もいるというからやっかいだ。③が論外なのは言うまでもない。

それにしてもこの「越谷鴨」に関しては分らないことが多過ぎる。そもそも「越谷鴨」というブランドの存在自体が怪しい。ブランドにしているなら越谷市や市の商工会が大々的にその名をアピールしているはず。宮内庁御用達ならなおさらであろう。しかし、手元のスマホでサッと検索してみたところ、それらしき情報はどこにも存在しない。よもや③ではあるまいな。

唯一思いつくのは、越谷市内の「宮内庁埼玉鴨場」の存在だ。鴨場は元荒川沿いに広がる総面積約11万㎡の広大な猟場で、皇族が海外からの賓客などを招いて接遇に使われる宮内庁の施設。普段からアヒルと合鴨が飼育されており、冬場には野生のマガモも飛来する。しかし、その肉は晩餐会などに供されることはあっても、市中のうどん屋に流通するものではない。百歩譲って、仮にそんなことがあったとしても、それを言うなら「宮内庁御用達」ではなく「宮内庁から調達」であろう。だが、いずれにせよ店側の勘違いという可能性は残る。野暮は言うまい。

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出てきた鴨汁は、ちょっと変わった一杯であった。鴨の脂が浮くほどの、濃厚かつしょっぱいツユを想像していたのだが、白く濁ったそれはまるで水炊きのスープのよう。鴨にしてはあっさりし過ぎているから、鴨らしさを期待する向きにはもの足りない恐れがある。ただし、全粒粉で打たれたうどんの風味は申し分ない。このうどんを出せるのなら、わざわざ宮内庁の助けなど借りる必要もあるまいに。店の雰囲気、およびスタッフの応対も素晴らしいの一言。こうなったら再訪して別のメニューを試さねばなるまい。次回は埼玉新聞杯栄冠賞だ。

 

***** 2016/09/15 *****

 

 

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