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2016年8月17日 (水)

穴場

「穴場」

むかし馬券発売窓口のことをそう呼んだ。若いファンにはピンとこないかもしれない。馬券売場にズラリと窓口が並んでいるのは同じ。しかし窓口の上には「1-2」とか「1-3」などと書かれた札が掛かっている。これは枠連の目。その窓口ではその目しか買うことができない。「窓口」と言っても実際には大人の拳が入る程度の「穴」で、そこに金を突っ込むと、中のオバちゃんがサッと金を受け取り、代わりに馬券をギュッと握らせてくれた。ゆえに馬券にお金を投じることを、「突っ込む」と言う。

いまでは「穴場」と言えば、混雑必至なのに空いているお店とか海水浴場や花火見物スポットを指すのではないか。実は先週、その穴場探しでちょっとばかり悩んだ。社台会員同士による飲み会を、急遽都内で開くことになったのである。折悪しく巷はお盆の真っ只中。休みの店も少なくないし、逆に開けている店は混んでいて席が取れない。

どこかに穴場はないか……。穴場、穴場、穴場……、穴子!?

本当にそんな連想をしたかどうかはさておき、穴子の美味しい蕎麦店を思い出した。ただちに電話。するとありがたいことに営業していて、席も空いているという。特に秘密のお店というわけではないけど、穴場というテーマなので店の名は秘させていただく。

Anago1 

穴子と言えば関東ならてんぷら、関西なら焼きが定番だろうが、この店では刺身も味わえる。こりこりした食感を楽しみながら酒を飲み、つい先日に穴馬券を演出したという出資馬の話でまずは盛り上がった。7番人気で勝ったその単勝は4210円。馬連10万、馬単20万、3連単は89万である。その会員さんは、毎回必ず出資馬の単勝を1万円購入している。なのに今回に限り買っていなかった。なぜか、それは本人にも分からないという。

「42万損したことより、馬に申し訳なくてさ~」

Anago2 

一同うんうんと頷きながら、今度は穴子のてんぷらを口に運んだ。程よく身の締まった穴子は噛むほどに旨味が広がる。それでまた酒をひと口。それにしても「馬に申し訳ない」というのは泣かせるじゃないか。42万を逃したと思えば、馬のことなどさておき、私なら発狂するに違いない。

もう一人の参加者は最近出資馬が引退したばかり。最後のレースは新潟まで応援に行こうかと思ったが、そうするのではなく、行ったつもりで新潟往復の旅費分を全額愛馬に“突っ込んだ”のだという。成績頭打ちで引退するのだから人気はない。万一的中すれば、何百万という大穴馬券も有り得る。そうなれば、次はディープの牡馬に出資できるかもしれないが……、

「もちろん全額消えました(笑)」

Soba 

それを聞いて我々も笑いながらまた酒を飲む。それにしても出資馬の馬券を買うことができるお二人が羨ましい。私の馬など最近さっぱり競馬場に出てこないし、仮に出てきても私が馬券を買えばそれは単なる足枷。他の馬の単勝を買うことで、間接的に愛馬の応援をするのがせいぜいだが、それはそれで切ないものがある。そんなことを思いながら啜った蕎麦のなんと滋味深かったことか。穴子をつまみつつ、穴馬券の話で盛り上がる。かくして穴場の夜は更けてゆくのである。

 

***** 2016/08/17 *****

 

 

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