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2016年8月 4日 (木)

雨を待ちわびて

馬服を着込んで馬房に佇んでいるのは、今年産駒がデビューした種牡馬スマートファルコン。

Smart

夏とはいえ、そこは北海道。夏風邪などを引かぬように厚着をしている……、ワケではありません。

なにせ、ここ数日の北海道はうんざりするほどの猛暑。内陸のあちこちで真夏日を記録する一方、千歳から日高にかけては朝から晩まで深い霧が立ち込めて門別競馬の開催を飛ばし、山沿いでは時間雨量100ミリを超える豪雨が降って農作物に甚大な被害を与えた。「東京から暑さを連れてきたな」。何度そう言われたことか。そりゃあ私だって北海道のカラッとした爽やかな夏を味わいたかったですよ。

まあ、ともあれ北海道とはいえど暑いのである。ふんじゃあ、なぜスマートファルコンはあんな厚着をしているのか。ひょっとしたら我慢大会か? いやいやそうではない。これは虫よけ。本格的な夏の到来と共に、馬たちが大嫌いなアブたちも活動を開始した。皮膚が弱かったり、あるいは極端に虫嫌いで暴れちゃうような馬は、こんな防護服を着て馬房で大人しくしているしかない。せっかくの夏なのに……。なんか切ないですね。

馬は暑さも嫌いだが、それ以上にアブが嫌いだ。おそらく馬にとっていちばんの苦痛であろう。アブに噛まれることを思えば、デムーロ騎手の連打ムチなど屁でもない……と思う。

安平の社台スタリオンを出るとポツポツと雨が降り出した。胆振日高界隈はすっきりしない天候が続く。雨は厚真で本降りとなり、むかわで豪雨となった。目的地の牧場での天候が気になる。雨は勘弁してほしい。

しかし、やがて富川で小雨に変わり、門別本町で日高道を降りると雨は完全に上がっていた。さらに牧場に到着すると雲の合間から陽射しが差しこんできたではないか。やった。これはツイてる。そこで牧場主に伝えた。来る途中は大雨だったのに、ここまで来たらピタリとやんだんですよ、と。

そしたら、牧場主の表情は暗くなった。加えて「あっちはそんなに良い天気なのか」とおっしゃる。

なぜ雨が「良い天気」か。答えはアブにある。雨が降ればアブは出てこない。だから、馬たちは雨に打たれながらも嬉々として放牧地を駆け回る。一方で雨が上がり、陽が差して気温が上がれば、アブたちの出番。待ってましたとばかりに放牧地を飛びまわって馬の血を吸う。アブに苦しむ馬の姿は正視に耐えない。普段なら私に噛みついたり、体当たりしてくる嫌~な繁殖牝馬も、この時ばかりは懇願するような表情で近寄り、「お願い、アブ払って」と訴えかけてくる。私は背中や腹回りに止まったアブをちから一杯ひっぱたいて潰してやった。普段の仕返しとばかりに。

幸か不幸か、これだけ天候不順の北海道にいながら、今回は一度も傘を使うことはなかった。でも、それは馬にとっては辛い時間だったのであろう。いま思えばスマートファルコンも、ああして雨を待ちわびていたのかもしれない。

 

***** 2016/08/04 *****

 

 

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コメント

店主様
おはようございます。馬産地通信に感謝でございます。。。猛暑&濃霧とは。一昨日は門別競馬のメインレースが濃霧で中止になったのは承知しておりましたが。来週は台風も爪痕を残さず通過して、北海道らしい気候になって欲しい私です。

投稿: すかどん | 2016年8月 5日 (金) 04時28分

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