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2016年8月26日 (金)

朱鷺色

今週日曜の新潟メインは古馬オープンの朱鷺ステークス。

トキは「朱鷺」以外にも「桃花鳥」という当て字を持つ。トキは全身を白い羽で覆われているが、翼の裏側は独特の淡い桃色をしている。単なる薄い桃色ではない。少しくすんだ、しかし見方によってはなんとも鮮やかなその桃色は、「朱鷺色」という呼び名で一般的に使われていた。ということは、かつては日本のどこにでもいる、ごくありふれた鳥だったのである。江戸時代の風俗画に、空を飛ぶトキの姿が頻繁に登場するのがその証だ。

私自身は実物のトキを見た経験を持たない。が、親戚に友禅の職人がいるおかげで、幼いころから朱鷺色には馴染みがあった。だから、「トキは赤い鷺だから朱鷺ステークスは3枠で勝負」という寺山修司の一文をどこかで読んだ時に、強烈な違和感を覚えた記憶がある。それならせめて8枠であろう。だいたいが、寺山にしても実物のトキを見ていた可能性は低い。現在の新潟県佐渡市にトキ保護センターが開設されたのは、1967年のこと。そのとき既に日本国内のトキは絶滅寸前だった。

朱鷺Sはこの当時から行われている。当時は芝2000mの条件戦だったが、1989年にオープン特別に格上げとなった。一方、佐渡島のトキは、この時点で高齢の雄雌1羽ずつが残るのみ。こうなってしまっては絶滅を食い止める術はない。日本中の注目を集つつ、絶滅へのカウントダウンが始まる。

最後のトキが死んだのが2003年。すると間もなく朱鷺Sも実施されなくなった。トキと共に、このまま朱鷺Sも消えてしまうのだろうか。まあ、それも仕方あるまい。新潟にトキがいてこその朱鷺Sである。

だが、関係者は諦めていなかった。トキの野生復帰を目指し、中国から借り受けたトキを人工繁殖させることに成功。そしてついに2008年、佐渡の空に再びトキが帰ってきたのである。

すると、その翌年には朱鷺Sも新潟競馬場に戻ってきた。おかえりなさい。別の生き物の生息状況によってその名称が変動するレースなど、朱鷺Sをおいてほかになかろう。こういうレースを関係者とファンは大事にしたい。

条件戦だったころの朱鷺Sは、減りゆくトキの命運を象徴してか、5頭立てとか6頭立てという少頭数のレースばかりだった。当然8枠桃帽を見る機会も限られる。ひょっとしたら、寺山修司も「朱鷺色」を知っていながら、敢えて「赤」と書いたのかもしれない。そうしなければ予想が成り立たなかった―――そう思うことにしよう。

佐渡のトキはその後も順調にその数を増やしている。ちなみに今年は人工繁殖開始以来最多となる39羽のヒナが巣立った。そんなトキの生息状況と歩調を合わせるかのように、朱鷺Sの出走頭数もここ数年は毎年2桁をキープしている。今年は10頭と少ないが、それでも8枠には2頭が揃った。朱鷺色に思いを寄せるなら桃帽2頭は買っておきたい。オセアニアボスが勝った2011年のレースは、枠連8-8で万馬券の決着だった。

Toki 

 

***** 2016/08/26 *****

 

 

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