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2016年7月22日 (金)

避けられぬ誤訳

あらゆる翻訳本に言えることだけど、特に競馬に関する書物では、その訳語に驚かされることが少なくない。

ブックメーカーが「ノミ屋」と訳されたり、ピンフッカーが「馬喰」と訳されるのはザラ。アメリカの歴史的名馬・マンノウォーが「戦士」と訳されただけでなく、さらに彼のニックネーム「ビッグレッド」を「大赤」と訳されてしまってひっくり返ったことは先日も書いた(※7月16日付「夏の一冊」)。

「ブックメーカー(bookmaker)=ノミ屋」や「ピンフッカー(pinhooker)=馬喰」の訳例は厳密には正しくない。でも、あまりに繰り返し使われると、いつの間にかそれが正解になってしまう危惧もある。事実そのようにして「デッドヒート(dead heat)=死闘」の誤訳は、すっかり日本語に定着してしまった。

翻訳のテクニックには、

①既存の日本語を当てはめる
②適切な日本語を新たに作る
③原語の音をそのままカタカナ表記する

の3つがあり、固有名詞以外はなるべく①を目指すのが翻訳者の目指すべき道だとされるのだけど、それが「こんな言い方しねぇよ!」と読者にツッコまれるような訳文に繋がっている部分も否定できない。

英語(特に米語)の語彙には人を罵倒する言葉が潤沢である一方、日本語にはそのような表現は少ない。だから、人を罵倒する言葉の米語→日本語の変換は困難を極める。ゆえに「この噸痴気!」とか「薄らトンカチ野郎!」みたいなセリフが平然と登場してしまうのだけど、私の半世紀近い人生の中で「トンチキ」も「うすらトンカチ」も、使ったこともなければ、聞いたこともない。

Nomiya 

ちょっと競馬を知っている翻訳者なら、「ブックメーカー」を「公認賭け屋」と、「ピンフッカー」を「中間育成業者」と訳しているが、それでも「誰に公認されるんだ?」とか、「何と何の中間なんだ?」というような新たな疑問が生まれる隙もある。なかなか100点にたどり着かない。

これだけ世間にカナカナ職業が溢れる時代である。そろそろ「ブックメーカー」も「ピンフッカー」も、そのまま日本語としてしまっても良いのではなかろうか。もちろん説明は必要となるだろうが、少なくとも「ノミ屋」とか「馬喰」などと訳されるよりは、はるかにマシだと思うのである。

 

***** 2016/07/22 *****

 

 

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競馬」カテゴリの記事

コメント

「クレーミングレース」なんてのも絶望的です(笑)
でも、そういう言葉こそ、それに近いと思える日本語を無理やり当て嵌める習慣を戒めたいものです。

投稿: 店主 | 2016年7月23日 (土) 21時31分

ブックメーカーは、他のスポーツでも使うから市民権を得ているかもしれませんが、
ピンフッカーは難しいですね〜。

投稿: tsuyoshi | 2016年7月23日 (土) 09時17分

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