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2016年6月 2日 (木)

海を見ていた午後

5月21日付「中央フリーウェイ」に続き、再びユーミンの曲からひとネタ。

Dol 

「海を見ていた午後」の歌詞に登場するレストラン「山手のドルフィン」は、実際には根岸の旭台という場所に店を構えている。そこから見えると歌われる「三浦岬」が、実際には見えないこともファンの間では語り草だが、昔はそれを知らずに訪れてガッカリするファンも少なくなかったそうだ。実際に店内から見えるのは房総半島。「半島というより、岬という小ぢんまりした響きが歌に合っていたから」と、のちに松任谷由実さんは明かしている。

Dolphine 

『ドルフィン』を出て坂を上がり、T字路を右に折れると、左側に緑濃い森が現れる。そこは根岸森林公園。我が国最初の洋式競馬が行われた根岸競馬場の跡地としても知られる。今年は根岸競馬場開設150周年の節目の年だ。

敷地に入ると左手に「馬の博物館」。右手の馬坂(うまざか)を下ればパドックと厩舎が視界に飛び込んでくる。運良くマイネルキッツが放牧中であった。人懐っこい性格のようで、見物客の前から離れようとしない。よしよしと顔を撫でると、気持ちよさそうにぶーぶーと鼻を鳴らす。先客の御婦人3人組はこの馬が天皇賞馬だと知る由もあるまい。まあ、そんなことに興味もなさそうだけど。

Kits 

広大な緑の芝生が広がるかつての内馬場を歩いて向こう正面へ渡ると、3本の塔を持つ重厚な建築物が目の前に姿を現した。根岸競馬場一等馬見所の遺構。米国人J・H・モーガンの設計で、1930年に建てられたものだ。遠く東京湾と房総半島までも一望できるその眺望は、「日本一見やすいスタンド」との名声を獲得。その後は全国各地の競馬場スタンドのお手本となったという。

Stand1 

しかし、その見晴らしの良さが裏目に出てしまった。戦時色が強まると、「スタンドから横須賀の軍港が丸見え」という理由から、競馬場は海軍に接収されてしまう。『ドルフィン』から三浦岬が見えなくてガッカリする人もいる一方で、すぐそばの根岸競馬場は見えすぎて歴史の憂き目を見た。

Stand2 

スタンドは戦後米軍に一時的に接収され、その後は横浜市が管理している。優れた意匠の近代化遺産として文化財の指定を受けても良さそうな気がするが、今のところその気配すらない。廃虚同然のまま、ツタに覆われた壁面を晒す姿は見るにしのびないものがある。周囲は公園になっているが、そこに立っているのはなぜか私だけ。ほかに誰ひとりいない。遠くで犬が鳴いた。静寂があたりを包んでいる。まるで、このスタンドの周囲だけ時が止まっているようだ。

 

***** 2016/06/02 *****

 

 

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