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2016年4月 3日 (日)

スクラッチ

以前このブログでも紹介したカタルーニャの会員さんが肩を落としていた。どうしたと聞けば左前トウ骨の骨片が飛んだという。全治6か月は痛い。他人の馬ながら、私が淡い期待を抱いていた菊花賞挑戦も、これで絶望的となった。

どうやらレース中に発症したらしい。同馬は先週日曜中京の大寒桜賞に出走していた。その前の週までの中京の芝コースはほどよく時計がかかり、メイショウサムソン産駒のカタルーニャに合うはず。そんな調教師の読みは見事に裏切られた。ご存じの通り、わずか1週間で中京の芝コースはレコード連発。鉄板の如き超高速馬場に変貌を遂げていたのである。その鉄板の前にカタルーニャの左膝は悲鳴を上げてしまった。

Turf 

中京の馬場問題については、調教師、騎手、オーナー、メディア、そしてファンからも批判の声が高まってなお止まない。そもそも、2012年にリニューアルオープンしてからの中京では、スピードだけでなくパワーも求められる芝コースが一種のウリとなっていた。エアロヴェロシティのように海外からの参戦馬があるのも、この芝コンディションのおかげと言っても良い。ロードカナロアの走破時計にそれが端的に表れている。中山のスプリンターズSを1分06秒7で勝った馬が、中京の高松宮記念では1分08秒1を要した。それでもその時計がコースレコードになるのである。

だが先週は、土曜の時点で芝コースの異常にみんな気付いていた。1000万条件の岡崎特別を勝ったシゲルチャグチャグは、それまで1分08秒4が精一杯だったのに、いきなり1分07秒4である。この時点でロードカナロアのレコードをコンマ7秒も更新してしまった。これを受けて高松宮記念の前売りオッズも大きく動く。エイシンブルズアイやスノードラゴンといった、タフな馬場を得意とする馬の人気が落ち、1分06秒7というメンバー中もっとも速い時計を持つビッグアーサーに票が集まり始めた。

前の週は1200mに1分12秒を要した馬場が、たった一週間でこうも変わるのか? そもそもなぜ敢えてこんな馬場を仕立てたのか? エイシンブルズアイやスノードラゴンの各陣営は、さぞ困惑したことであろう。もちろんカタルーニャの陣営とて例外ではない。

来日直後のセン痛で回避が決まっていたエアロヴェロシティが、仮に無事に出走にこぎつけていたら、この馬場状態を見て何と言っただろうか。「こんな固い馬場で馬を走らせるわけにいかない。スクラッチさせろ」。そう言ったかもしれない。だが、日本の競馬では馬場状態を理由にした当日の出走取消は認められないことになっている。

ならば、もしスクラッチが制度として認められていたら―――。

高松宮記念後に私が考えたのはそんなことだ。急変した馬場状態のせいで狙った本命馬が負けたというファンは、その怒りの矛先をJRAや馬場造園課に向けたがる。だが、スクラッチが可能ならば、馬場が合わないと判断した陣営はスクラッチを選べばよい。それなら馬券も返還される。仮に陣営が出走に踏み切り、それで敗れたとしても、馬場状態はもはや勝ち負けの理由にはできない。スクラッチが増えてもっとも困るのはJRA。それならば、レコード狙いとしか思えない極端な馬場コンディションを造作するような真似はしないだろう。なんとなく三方丸く収まるような気がしてならない。

ただし、実際にスクラッチを決断するには相応の勇気がいるのではないか。それが数か月も前から目標としてきたレースならなおさら。また、それがいわゆる一口馬主の馬だと、会員から文句も出かねない。

高松宮記念発走の十数時間前。ドバイシーマクラシックの返し馬に入ろうとしたドゥラメンテに落鉄が確認された。だが、彼の地では馬場入り後に蹄鉄を打ち直す習慣がない。そのまま走るか、あるいはスクラッチか。その場で二者択一を迫られた堀調教師は、「スクラッチ」の5文字が頭をよぎったという。

結局はデムーロ騎手と協議した上で出走。結果は堂々の2着である。だが、もし出走に踏み切ったことで、馬に万一のことがあったら……。そう考えたら背筋が寒くなった。なにせ陣営にはスクラッチというカードも手渡されていたのである。そういう意味では、難しいことを考えなくて良いルールを日本の競馬は採用しているのかもしれない。だが、秋には海外のレースの馬券発売が開始される。海外のルールや習慣が、馬券に大きな影響を与える可能性は否定できない。それを理解して買う人は、どれほどいるのだろうか?

 

***** 2016/04/03 *****

 

 

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