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2015年12月27日 (日)

納めの府中

1984年の有馬記念はシンボリルドルフ、カツラギエース、ミスターシービーのいわゆる三強の激突。勝ったのはシンボリルドルフで、JC馬カツラギエースに2馬身差を着ける圧勝だった。

この日の東京競馬場の入場者数は84,382人との記録が残る。念のため書いておきますが「中山競馬場」の誤記ではないですよ。この秋から東京競馬場に新設された大型映像装置「ターフビジョン」を目当てに、単なる場外発売所に過ぎない府中にこれだけの人数がつめかけた。ちなみに中山競馬場の入場者数はこの年最多となる90,858人。それと大差ないというのだから驚く。

当時の競馬場では、レースを観ようと思っても、大半の客は馬の姿すら拝むことはできなかった。今のようにあちこちにモニタが設置されていたわけでもないし、なにより場内の混雑は絶望的である。だから大半の客は場内実況に耳を傾けてレースの行方を追っていた。実は私もそれを経験した一人。ルドルフを観てみたい。そんな思いだけで、生まれて初めて有馬記念の競馬場に足を踏み入れた私は仰天した。馬など見えない。写真など撮れるはずはない。帰途の足が心配になって、有馬記念が始まる前にそそくさと退散した。そんな苦い思い出だけが残る。

ところが東京競馬場のターフビジョンなら、向こう正面のスタートから逐一馬群の映像を映し出してくれる。これなら現地で観るよりよっぽど見やすい。三強が並んで最終コーナーを回ると、中山競馬場を凌ぐであろう大歓声が府中の杜に轟いたという。

Fuchu1 

前置きが長くなったが、そんな有馬記念当日の東京競馬場にやってきた。シンボリルドルフが三強対決を制した有馬記念から30余年。遅ればせながら、私も初めて府中で有馬記念を観戦してみたいと思った―――わけではない。正直に言うならここで見るしかなかったのである。強がっても馬券は当たらない。実際、サウンズオブアース1着固定の私の馬券はあと一歩が足りなかった。

宝塚記念やマイルチャンピオンシップなど、東京競馬場のターフビジョンで他場のGⅠ映像を見る機会はなくはない。だが、その映像に映し出されているのが、見慣れた中山のコースでありスタンドであることに多少の違和感を覚えた。その違和感が臨場感を押し潰しつつレースは終了。やはり30年前とは事情が異なる。

Fuchu2 

夕闇迫る東京競馬場のスタンドに座ってひとしきり考えた。「見る」と「観る」は同じようで違う。特に後者には「つまびらかに見きわめる」の意味がある。漠然と見るのではなく、気持ちを込めて観なければ、本当の意味での「観戦」とは言えまい。

スポーツは「観る」ことで今日の発展を得た。「観る」というのは単純に眺めることではない。競技者の息遣いを感じ、時に心をも通わせ、その場の熱を感じなければ観たことにはならない。そういう意味では、私が眺めていたのは巨大な液晶装置であり、それは馬でもなければ騎手でもなかった。これでは2015年の有馬記念を観たとは言えぬ。

Fuchu3 

それでもレースは素晴らしかった。その余韻を味わいながら啜った『馬そば深大寺』の鳥そばが、ことさら美味しかったことは特記しておきたい。

それでは府中の皆さん、良いお年を。

 

***** 2015/12/27 *****

 

 

 

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