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2015年11月30日 (月)

強い牝馬、負けられぬ牡馬

「負けると種牡馬の価値が下がるんですよ」

先週月曜の東京競馬場。東京スポーツ杯2歳S当日の最終レース終了後に、吉田照哉氏、吉田勝己氏、そして岡田繁幸氏の御三方がパドックでトークショーを行った。雨にも関わらず、多くのお客さんが競馬場に残って三氏の話に聞き入っていたのだが、その中で「ゴールドシップについてひと言」と振られた岡田氏のコメントが冒頭の言葉である。ゴールドシップは年内を以て現役を引退して種牡馬となるが、その繋養先はビッグレッドファームにほかならない。引退まで残り2戦。岡田氏の口調からは、期待よりも不安が見てとれる。

Gold 

そのゴールドシップは12番のゼッケンを着けていながら、先陣を切ってJCのパドックに姿を現した。これもひとつの作戦か。だが、そんな必要があるのかと思いたくなるほど彼は落ち着いていた。むしろ落ち着き過ぎている。瞳からほとばしるはずの魂の発露がまるでない。背後の馬主が「なんだこりゃ」と呟いた。有体に言えば覇気がないのである。

スローの瞬発力勝負が見込まれる今回、瞬発力に不安を抱えるゴールドシップが勝つための方法はただひとつ。3コーナーあたりからマクって先頭に立ち、そのまま押し切るしかない―――。

そんな論評がスポーツ紙を賑わせていたが、実際には「マクる競馬はしないで欲しい」とのオーダーが出されていたという。調教師の真意は測りかねるが、いざフタを開けてみれば1000m通過が59秒3というよどみのないペース。レースの上がり35秒3はこの10年間でもっとも遅い。ゴールドシップにとっては願ったり叶ったりの展開なのに、結果は10着。コンマ4秒だから惜敗と慰められる立場の馬でもあるまい。ひと言完敗であろう。

Gold2 

終わってみれば唯一の見せ場はゲートだけ。それでも調教師は敗戦を嘆くよりもまずゲートに問題が無かったことを無邪気に喜んだ。GⅠ6勝の最実績馬がこんな状況では、馬券など怖くて手を出せない。前年比7.5%の大幅減という売り上げの数字が、ファン心理を見事に物語っている。

勝ったのはショウナンパンドラ。2009年にウオッカが勝って以来、JCは実質的に(2010年は1位入線後降着)牝馬が5連勝していたレースである。6連勝を期して出走した昨年のハープスターこそ、エピファネイアの破壊的なスタミナに屈したが、今年は中山記念、産経大阪杯、オールカマーと古馬の王道路線で牝馬が勝利。ついにJCの牙城も奪い返してみせた。

Jc 

こうなると最優秀古馬牝馬のタイトルはショウナンパンドラで決まりか。いや、まだ有馬記念でマリアライトとの直接対決が控えている。いやいや、ストレイトガールが香港で勝てばどうなるか分らんゾ―――。

かように昨今の牝馬たちの活躍を語ると自然と場は盛り上がる。なぜか。牝馬は成績に傷がつくことを恐れる必要がない。ダメモトでどんどん強い相手に向かっていくことができる。そういう意味ではさまざまな挑戦が可能であり、それが人の心を打つのである。

そこで冒頭の岡田氏の言葉を思い出した。強い牡馬ほど成績が汚れることを嫌う。負け方や引き際にも神経を使わなければならない。種牡馬は人気稼業。イメージが大事なのである。むろんゴールドシップが有馬を勝つなら、それ以上に素晴らしいシナリオはあるまい。ファンも、厩舎関係者も、JRAも、そして岡田氏もみんな喜ぶ。果たしてそんなことな可能なのか。答えは4週間後に明らかになる。

 

***** 2015/11/30 *****

 

 

 

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