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2015年11月30日 (月)

強い牝馬、負けられぬ牡馬

「負けると種牡馬の価値が下がるんですよ」

先週月曜の東京競馬場。東京スポーツ杯2歳S当日の最終レース終了後に、吉田照哉氏、吉田勝己氏、そして岡田繁幸氏の御三方がパドックでトークショーを行った。雨にも関わらず、多くのお客さんが競馬場に残って三氏の話に聞き入っていたのだが、その中で「ゴールドシップについてひと言」と振られた岡田氏のコメントが冒頭の言葉である。ゴールドシップは年内を以て現役を引退して種牡馬となるが、その繋養先はビッグレッドファームにほかならない。引退まで残り2戦。岡田氏の口調からは、期待よりも不安が見てとれる。

Gold 

そのゴールドシップは12番のゼッケンを着けていながら、先陣を切ってJCのパドックに姿を現した。これもひとつの作戦か。だが、そんな必要があるのかと思いたくなるほど彼は落ち着いていた。むしろ落ち着き過ぎている。瞳からほとばしるはずの魂の発露がまるでない。背後の馬主が「なんだこりゃ」と呟いた。有体に言えば覇気がないのである。

スローの瞬発力勝負が見込まれる今回、瞬発力に不安を抱えるゴールドシップが勝つための方法はただひとつ。3コーナーあたりからマクって先頭に立ち、そのまま押し切るしかない―――。

そんな論評がスポーツ紙を賑わせていたが、実際には「マクる競馬はしないで欲しい」とのオーダーが出されていたという。調教師の真意は測りかねるが、いざフタを開けてみれば1000m通過が59秒3というよどみのないペース。レースの上がり35秒3はこの10年間でもっとも遅い。ゴールドシップにとっては願ったり叶ったりの展開なのに、結果は10着。コンマ4秒だから惜敗と慰められる立場の馬でもあるまい。ひと言完敗であろう。

Gold2 

終わってみれば唯一の見せ場はゲートだけ。それでも調教師は敗戦を嘆くよりもまずゲートに問題が無かったことを無邪気に喜んだ。GⅠ6勝の最実績馬がこんな状況では、馬券など怖くて手を出せない。前年比7.5%の大幅減という売り上げの数字が、ファン心理を見事に物語っている。

勝ったのはショウナンパンドラ。2009年にウオッカが勝って以来、JCは実質的に(2010年は1位入線後降着)牝馬が5連勝していたレースである。6連勝を期して出走した昨年のハープスターこそ、エピファネイアの破壊的なスタミナに屈したが、今年は中山記念、産経大阪杯、オールカマーと古馬の王道路線で牝馬が勝利。ついにJCの牙城も奪い返してみせた。

Jc 

こうなると最優秀古馬牝馬のタイトルはショウナンパンドラで決まりか。いや、まだ有馬記念でマリアライトとの直接対決が控えている。いやいや、ストレイトガールが香港で勝てばどうなるか分らんゾ―――。

かように昨今の牝馬たちの活躍を語ると自然と場は盛り上がる。なぜか。牝馬は成績に傷がつくことを恐れる必要がない。ダメモトでどんどん強い相手に向かっていくことができる。そういう意味ではさまざまな挑戦が可能であり、それが人の心を打つのである。

そこで冒頭の岡田氏の言葉を思い出した。強い牡馬ほど成績が汚れることを嫌う。負け方や引き際にも神経を使わなければならない。種牡馬は人気稼業。イメージが大事なのである。むろんゴールドシップが有馬を勝つなら、それ以上に素晴らしいシナリオはあるまい。ファンも、厩舎関係者も、JRAも、そして岡田氏もみんな喜ぶ。果たしてそんなことな可能なのか。答えは4週間後に明らかになる。

 

***** 2015/11/30 *****

 

 

 

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2015年11月29日 (日)

記憶の中のJC

ジャパンカップも迎えて35回目だという。競馬中心の生活を送っていると、月日の経つのがことのほか早い。

1994 

第1回ジャパンカップの1着賞金は6500万円。当時の東京芝2400mのレコードタイムは、その4年ほど前のAJCCでグリーグラスが記録した2分26秒3だった。それがいまや1着賞金3億円。レコードタイムもジャパンカップの舞台で繰り返し更新され、今では2分22秒1まで縮まっている。35年先は果たしてどうなっているだろうか。なんて、2分半先も見通せないのに、そんな先のことが分かるはずもない。

1995 

いや、先のことはまだしも、覚えているはずの昨日のことすら怪しいのである。今日も地方競馬の関係者とロッキータイガーがシンボリルドルフの2着した1985年の思い出話に花が咲いた。「パドックにロッキータイガーの横断幕が3枚も出ていた」。「桑島騎手の風車ムチは凄かった」。……等々。なのに、去年のジャパンカップに話題が移った時に、その勝ち馬がこない。あれ? 去年勝ったのは……?? 誰だっけ???

昔のレースは覚えていても、最近のレースが思い出せない。私と同年代の方々なら思い当たるフシもあろう。競馬は記憶のゲームであるから、記憶力の衰退は競馬をつまらなくしかねない。でも、トシには勝てないから、最近ではメモを残すようになった。このブログもそのひとつかもしれない。

だけど大事なことはどんどん忘れていく。寝しなに大事なことを思い出すことが多いので、枕元にメモとエンピツを常備してあるのだが、そのメモが中途半端だったりして朝になって首をかしげることもしばしば。つい先日も、朝目覚めたら枕元のメモ用紙に、

「コーヒーの原理」

と書いてあった。

「コーヒーの原理」っていったい何だ?

このメモを書いた時の私は、これだけ書いておけば思い出すはずと思ったに違いない。だが、朝起きた私はその時とは違う自分である。とりあえずコーヒーを飲めば何か思い出すかもしれないと思い、慌てて飲んでみたが、何も出てこなかった。かようにひとたび眠ってしまえば、私の記憶は掟上今日子さんの如く忘却の彼方に飛んでいってしまう。35年後が怖ろしい。

どの世界でもそうだが、一流の人は記憶力が優れている。かつてアイルランドにエイダン・オブライエン調教師を訪ねた時のこと、三百頭以上もいる管理馬の、どの馬のことを質問しても瞬時に答えが返ってきて思わず舌を巻いた。ゲーム好きの子供のようなその風貌に騙されてはいけない。見た目は子供、頭脳は大人。いや大人以上。本当の天才とはこういう人を言うのか。

武豊騎手の記憶力の良さも知られている。いつ騎乗して、どんなレースをしたか。一度乗った馬ならば大抵は覚えているというから凄い。そんな記憶の集積がレース中の一瞬のジャッジにも繋がるのであろう。そんな武豊騎手がジャパンカップに乗り馬がなかったのは2008年以来のこと。あの年のジャパンカップは誰が勝ったんだっけ? う~む、ダメだ。思い出せない。

Dsc_000007 

今年の覇者はショウナンパンドラ。最後の追い比べは見応えがあったし、馬券もわずかだが当たった。それなのに、今日いちばん印象に残ったのは、ゴールドシップの異様なまでの落ち着きである。「覇気のなさ」と言った方が正しいかもしれない。ちょっとショック。さらに、調教師が「マクる競馬はするな」と騎手に指示したとも伝えられている。いったいどういう意図があってのことか。こうやって勝ち馬以外のことばかりが気になるようになって、少しずつレースのことを忘れてゆくのだろう。それならそれで仕方ない。

 

***** 2015/11/29 *****

 

 

 

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2015年11月28日 (土)

馬事公苑にて

東京は快晴無風の小春日和。こんな陽気は今年最後かもしれないので、名残のモミジでも愛でようかと馬事公苑にやって来た。ところが苑内の紅葉は例年に比べていまひとつ。茶色く枯れたり、色づく前に散ってしまったりしている。この秋は気温の高い日が多かったせいだとか。それでも奥のドレッサージュ馬場のモミジだけは、今を盛りとばかりに紅に染まっていた。

Momiji1 

アリーナに戻るとこちらもドレッサージュ競技の真っ最中。「関東学生女子馬術競技大会」だという。日なたぼっこを兼ねて演技を見物していたら、聞き覚えのある一頭がアリーナに登場してきた。

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ランヘランバはタイキシャトル産駒の牡12歳。JRAで通算10勝を誇り、小倉サマージャンプと京都ジャンプSのふたつの重賞を勝った。現役引退後は農大の馬術部に引き取られ、こうして大会で活躍しているのである。

Ranhe 

売店の奥に設置してあるTVではグリーンチャンネルを放映中。そこに人だかりができている。ここまで来て馬券に熱を上げる必要もあるまいに……というわけではなさそうだ。

「あの生垣は割れるんだね」

「ヨーロッパの障害は割れないけど」

「あの飛越姿勢、頭が低すぎねぇか?」

「うわっ! いまの着地怖い」

TVを見ていたのは馬術大会の参加者ならびに関係者であり、彼らが見ているのは東京4レースの障害未勝利戦。つまり競馬と言うよりは、むしろ障害飛越そのものに興味があったらしい。実際、次のレースが始まる頃には、人影はなくなっていた。

Momiji2 

ランヘランバが障害初勝利をあげたのは、2009年11月28日。すなわち6年前の今日であり、今年と同様にジャパンカップの前日の東京だった。つまり先ほど我々が見ていたレースということになる。その翌日に行われたジャパンカップを制したのは女傑ウオッカ。そんなことを思い起こしつつ明日の出馬表を見れば、京都4レースにタニノタキシードの名前を見つけた。母タニノシスター、父タニノギムレットの5歳牡馬は、ご存じウオッカの全弟。しかも障害レースときた。ここまで来れば買わぬわけにはゆくまい。

 

***** 2015/11/28 *****

 

 

 

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2015年11月27日 (金)

2頭のゴールドシップ

ジャパンカップと言えば芦毛の印象が強い。

記念すべき第1回の覇者メアジードーツの2着に粘ったフロストキングは芦毛のセン馬。2分22秒2のレコードが飛び出した1989年は芦毛のワンツーフィニッシュだったし、日本の総大将メジロマックイーンを並ぶ間もなく交わし去ったゴールデンフェザントの輝くような芦毛も忘れがたい。だが1996年、シングスピールと大接戦を演じたファビラスラフインを最後に、芦毛馬の連対(3着以内)は途絶えている。

その間、芦毛の活躍馬が現れなかったわけではない。ただ、ちょっと運が悪かった。出走すれば人気になったであろうセイウンスカイは、天皇賞(秋)でゲート再試験を課されてシーズンを棒に振り、春天と宝塚記念を連勝したヒシミラクルも、JC直前追い切りで4馬身遅れの大不調では勝負になるはずもない。芦毛馬17年ぶりの連対が期待された一昨年のゴールドシップも、差のない2番人気に推されながら、まるでいいところなく15着に敗れた。

Goldship 

そのゴールドシップが2年ぶりにジャパンカップに出走してくる。父・ステイゴールドはJCに4度挑戦して10、6、8、4着と馬券に絡めず、種牡馬としてもGⅠを20勝もしているのにそこにJCのタイトルはない。前述したように、母の父・メジロマックイーンも全盛期にJCに挑戦して4着に敗れた。手綱を取る横山典弘騎手も、なぜかJCのタイトルとは無縁である。

そう考えてみると、ゴールドシップが明日のJCを勝つ可能性はとても低いように思えてくる。そもそも宝塚記念以来の休み明け。帰厩後も有馬出走こそ明言されていたものの、その前にどこを使うかはギリギリまで発表がなかった。

ここはあくまで叩き台で、得意の中山で有終の美を飾るんじゃないか―――。

そんな空気が漂っていることは否定できまい。しかしそういう空気を敏感に感じ取り、人間の勝手な思惑をことごとく裏切ってきたのが、我々の知るゴールドシップの姿ではないか。となれば、逆にここをあっさり勝って、ラストランの有馬でとてつもない凡走―――。そんなシナリオの方がむしろ彼らしい気もする。

Goldship2 

こうしている今もゴールドシップの取り捨てに悩んでいる方は少なくあるまい。阪神大賞典と天皇賞(春)を勝ったのがゴールドシップなら、AJCCと宝塚記念で何もできず、ただ後方のままに終わったのもゴールドシップである。

「実はゴールドシップは2頭いて、当日どちらが競馬に出てくるのかは関係者にも分らないんだ」

ついにそんな噂まで流れるようになった。もちろん笑い話。「関係者にも分らない」というところがミソである。関係者にも分らないものをファンが分かるものか。彼の気持ちは、人間ごときが当てようと思って当てられるほど単純ではない。できることがあるとすれば、ただひとつ。信じるのみであろう。

 

***** 2015/11/27 *****

 

 

 

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2015年11月26日 (木)

天国と地獄

あまりの寒さについにコートを引っ張り出した。

Tck 

ジャパンカップの公開調教でシーズン最初のコートを羽織るのがかねてからの習慣であったが、折しも今朝はその当日である。ただしここ数年は早朝の府中に出かけることもなく、今日にしてもコートをまとって出かけたのは夜の大井競馬場にほかならない。う~、さぶさぶ。もうナイター開催の季節ではないですよ。

Prime 

馬主席からは新スタンド「G-FRONT」がよく見える。3Fのプライムシートは、1人ずつの空間を重視した独立タイプのシート。冷暖房完備の快適な空間。柔らかそうなソファシート。専用モニタ。そして広いデスク。見るからに快適そうではないか。なるほど、これは「プライム」の名にふさわしい。

Banushi 

振り返って私の座る馬主席はどうか。吹きすさぶ北風にガタガタ震えながら、固い椅子に座り、手元にモニタなどあるはずもないから遥か彼方のビジョンに目を凝らしつつ、新聞も置けぬ狭い机でちまちまとマークカードをこする。正直言ってかなりキツい。「馬主席」なんて偉そうに書いてあっても、しょせんこんなもん。すぐ隣のプライムシートについつい羨望の眼差しを送ってしまう。まさに天国と地獄。なんでこんな目に遭わなきゃならんのか―――?

寒さに震えながら自問していると、足下から「にゃーにゃー」という鳴き声が聞こえてきた。ここは5階である。あまりの辛さについに幻聴まで聞こえてきたか。雪山で遭難した経験のある人にそんな話を聞いたことがある。馬券もハズレ続きで意識も遠のいてきた。もとより競馬場でくたばるなら本望。最期は万馬券を握り締めたまま死んでやる。

Cat1_2 

そんなことを考えながら足下を見れば、ホントに猫がいた。客をひとりひとり回って酒のツマミのおすそわけをねだっているようだが、あいにく私は飲んではいない。それが分かるとプイと踵を返して向こうにいってしまった。

Race 

この3号スタンドは年末を以て取り壊されることが決まっている。その跡地に新しいスタンドが建つ予定はない。となればこの景色もこれが見納めだろうか。寒い寒いと文句を言いつつ、それでも敢えてここに座っているのは、30年近く慣れ親しんだこの角度からの大井の景色を目に焼き付けておきたいから。さきほどの猫が心配だが、猫は猫だからきっとうまくやっていくことだろう。

 

***** 2015/11/26 *****

 

 

 

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2015年11月25日 (水)

夢の続き

「強い責任を感じています」

栗東トレセンで緊急会見を開いた松田国英調教師が沈痛な面持ちでそう語ったのは、2010年の日本ダービーを翌日に控えた5月29日のこと。この年のNHKマイルを日本レコードで制した有力馬ダノンシャンティに骨折が判明。無念のダービー取消を余儀なくされたのである。

あれから4年半。そのダノンシャンティの初年度産駒のスマートオーディンが東京スポーツ杯2歳Sを勝ち、父に初めての重賞タイトルをもたらした。

Smart 

スローペースながら後方3番手の位置取り。これで届くのかと不安を覚えた直線だったが、大外に持ち出されると、あっという間に馬群を飲み込んでみせた。上がり32秒9は、ひと言凄い。実況が「父譲りの瞬発力!」と叫べば、武豊騎手は「すごい切れ味!」と興奮を隠し切れぬ様子。だが、誰より喜んだのは松田国調教師ではあるまいか。自らが手がけたダノンシャンティの産駒で、再び夢の続きを見ることができる。これ以上の喜びはあるまい。

一方で、かつて松田国厩舎の調教助手としてダノンシャンティを手がけた高野友和調教師は、1番人気ロスカボスを送り込みながらかつての相棒の末脚に屈した。こちらの心中はいかほどか。

それにしても、フジキセキを父に持つ種牡馬の勢いは目覚ましい。2歳サイアーランキングでキンシャサノキセキが4位と健闘すれば、ダノンシャンティも新種牡馬ランキングで3位に浮上した。カネヒキリも先日のハイセイコー記念をトロヴァオが制するなど、ダートで存在感を示している。

フジキセキはサンデーサイレンスの直子として最も早い1995年から種付けを始め、多くの活躍馬を送ってきたのだが、不思議なことに後継種牡馬には恵まれなかった。それが、自身の種牡馬引退とほぼ同じタイミングでこの3頭が頭角を現すのだから、偶然にしてもでき過ぎの感がある。もちろん、イスラボニータがここに加わることも間違いない。

サンデーサイレンス系と呼ばれた父系血脈は、いずれ「ステイゴールド系」とか「ディープインパクト系」などと分類される日が来るが、ちょっとベテランの競馬ファンなら、そこに「フジキセキ系」も加わってほしいと願っていることだろう。そのためには、フジキセキの孫世代に早くGⅠのタイトルが欲しい。

そういう意味では、京王杯2歳Sと東スポ杯2歳Sをそれぞれフジキセキの孫が勝った事実は見逃せない。特にスマートオーディンについては、「来年のダービー馬」とか「オークス馬」などと前評判の高かった相手を一蹴したのだから、スケールの大きさは文句なしであろう。松田国調教師の調教方針も含め、今後も目が離せそうもない。

 

***** 2015/11/25 *****

 

 

 

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2015年11月24日 (火)

府中で見るダービーグランプリ

昨日の東京競馬場は今年いちばんの寒さに見舞われた。しかも冷たい雨が、ようやく色づき始めた木々を濡らしてなお降り続いている。さすがにパドックを取り囲む人影も少ない。東京スポーツ杯2歳Sの出走各馬が地下馬道に姿を消したを見届けるや、私が向かったのは本馬場ではなく、こちら。

Iwate 

そう、岩手県競馬の場外発売エリアですな。何を隠そう、まもなくダービーグランプリの発走を迎えるのである。

Newspaper 

今年はラッキープリンスを筆頭に南関東から精鋭3歳馬4頭が参戦。東京ダービー馬の参戦はプレザント以来のことではないか。あの当時の南関東では、3歳3冠最終戦の東京王冠賞がちょうどこの時季に行われていたが、プレザントは敢えて全国の猛者が待ち構えるダービーグランプリに参戦。しかし、あえなくシンガリ負けを喫したのである。

まあ、競馬である以上、勝ち負けがあるのは仕方ない。賞賛されるべきはダービーを勝った馬が、ダービーグランプリを目指すというその気概である。となれば買うべき馬券はこの1点しかあるまい。

Baken 

発走時刻が近づくにつれ、この岩手発売エリアも俄かに混雑してきた。入口付近に目をやれば、今まさにという感じで大勢のお客さんがこちらに向かってくる。結構な距離を走ってきたと見え、息を切らしながら、それでもジッと実況モニタに食い入る人の姿も。東スポ杯の本馬場入場をちゃんと見て、その上でダービーグランプリも見たいというファンがこれだけいたということか。それはそれで正統なファンの作法である。そうこうするうちゲートが開いた。

Monitor_2 

勝ったのは羽田盃馬ストゥディウム。2着タイムビヨンドに3馬身差だから、ひと言圧勝であろう。

長く良い脚を使えることはハイセイコー記念でも羽田盃でも証明済みだが、まさかこの小回りの不良馬場でそれが炸裂するとは思わなんだ。隣のおじさんが「おおーっ!」と声を上げるほど見事な捲り一閃。私のささやかな馬券はハズれたが、ストゥディウムのあの脚を水沢の、あるいはJRAの競馬ファンに見てもらえたことは、南関東を根城にする人間としては嬉しい限り。それで興味を持った人が、ひとりでも南関東に足を運んでくれればなおありがたい。南関東のクラシックホースがダービーグランプリを勝ったのは初めての出来事ではないか。そんなこんなで良い競馬だった。

 

***** 2015/11/24 *****

 

 

 

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2015年11月23日 (月)

ウマの国

「シリア」

この3文字が新聞・TVを賑わせている。特にパリのテロ事件の直後からは飛躍的に増加した。結果的に「シリア」という国に対してネガティブな印象を与え続けている感は否めない。

シリアは競馬史を語る上で欠かせぬ土地である。特に北部のアレッポは、かつては有名な馬市が立つ都市として世界中にその名を知られた。今でいえばキーンランドかニューマーケットといったところか。

なにせシリアにおける馬の歴史は長い。少なくとも紀元前18世紀には始まり、アレッポで購入されたダーレーアラビアンが、純血アラブ種の国外持ち出しを禁じたオスマン帝国の命令を破ってまで秘かに連れ出された18世紀まで延々と続いたのである。言うまでもなく、ダーレーアラビアンとは「サラブレッドの三大始祖」の一頭。今や全世界のサラブレッドの95%までが、このダーレーアラビアンの父系子孫とされる。

Start 

三大始祖の残る2頭は、ゴドルフィンアラビアンとバイアリーターク。一部には「サラブレッドは3頭の種牡馬から繁殖の歴史が始まった」と誤解している人もいるようだが、それは正しくない。実際「ジェネラルスタッドブック(サラブレッド血統書)」第1巻には、102頭もの種牡馬が記載されている。18世紀のサラブレッドには多彩な父系血脈が凌ぎを削っていたが、やがて時代と共に淘汰され、現代ではダーレーアラビアン、ゴドルフィンアラビアン、バイアリータークの3系統しか残されていないということだ。競馬という厳しい試練が、残る99頭に父系子孫を残すことを許さなかったと言っても良い。そういう意味では、いずれダーレーアラビアン一頭が、唯一の「始祖」と呼ばれるようになってしまう可能性もある。

ただし、父系が途絶えた99頭の種牡馬たちにしても、母系に入って現代のサラブレッドに遺伝的影響を残している。現代の育種学の立場に立てば、父の父も、母の父も、遺伝的影響は変わらない。こうした視点から、現代のサラブレッドに対するそれぞれの種牡馬の遺伝的貢献度を計算すると、意外なことが明らかになる。

それによれば、もっとも貢献度が高いのはゴドルフィンアラビアンで14.5%。次いでダーレーアラビアンの7.5%。3位は、なんと現在では父系が途絶えているカーウェンズベイバルブの5.6%。そして4位がバイアリータークの4.8%となる。

なぜ父系子孫で95%を占めるダーレーアラビアンの遺伝的貢献度が、ゴドルフィンアラビアンの半分でしかないのか。それは、ダーレーアラビアンの父系を大きく発展させた実質的功労者のエクリプスの血統表を見ればわかる。ダーレーアラビアンはエクリプスの5代父(血量6.25%)であるが、実はエクリプスの母の父の父(血12.5%)がゴドルフィンアラビアンなのである。ここでついた2倍の差が、そのまま現代のサラブレッドの血統地図に現れた恰好だ。

それならばいっそ三大始祖のうちの一頭はダーレーアラビアンではなくエクリプスにしてしまおう―――。

一部にはそんな主張もあるようだが、私はそれには賛同しかねる。ダーレーアラビアンの名前を残すことは、騎馬国家として3500年以上もの歴史を誇るシリアに対する礼儀であろう。

 

***** 2015/11/23 *****

 

 

 

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2015年11月22日 (日)

都内屈指の味を競馬場で

東京競馬場はどんより曇り空。しかも冬を思わせる寒さ。馬券もまるで当たらず、身体も懐も寒い。

Gate 

こんな状態ではメインまで気持ちが持たないから、気分転換で内馬場へ。「ワールドグルメフェア」が絶賛開催中なのである。

Yatai 

「ワールド」と銘打つのはジャパンカップを意識してのことだろうが、屋台のメニューをざっと眺めてみれば、ケバブ(トルコ)、ロコモコ(アメリカ)、プルコギ(韓国)とJC参加国ではない国ばかり。いちばん奥で行列が出来ている店は……。んーと、あの奥のイタリアンかな? そう思いつつ看板を見て驚いた。

Bingo 

『Bingo』といえば西麻布の有名店。予約が取れない店として知られている。ランチサービスなどはなく、気軽に入れる店ではない。その味が競馬場の屋台で味わえるというのか?

Bingo1 

半信半疑で注文したカルボナーラはスパゲティではなくペンネで出てきた。これは本物であろう。本場のカルボナーラはペンネを使うのである。もちろん味も文句なし。ただし、小さなカップで800円という設定をどう捉えるか。当然大人には足りない。しかし少ない方が食べ歩きにはメリットがあろう。ならもう少し安めに……。正直、そんな声も聞こえてきたが、この値段だからこの程度の行列で済んでいるのかもしれない。注文を受けてからペンネを茹でる手間を考えれば、これ以上の行列は避けたいだろう。

Rossi 

その『Bingo』の隣にはなんと『Rossi』の看板が並んでいるではないか。こちらは麹町の人気イタリアン。カルボナーラを食べたばかりではあるが、これは並ばねばなるまい。注文は牛肉のラグーパスタ。やはり注文を受けてからパスタを茹でて、それをフライパンに移し、ラグーソースを絡めるという手順を踏むから、どうしても待ち時間が長くなる。

Rossi1 

5分ほど待って出されたのは、やはり小さな器にこの分量。価格も同じ800円。でも美味い。店で食べればもっと美味いが、条件を考えれば合格点であろう。できれば、2人前を一気に食べたかったが、後ろに並んでいる人に気を使って遠慮してしまった。明日も出店しているらしいから、あらためて食べることにしよう。

それにしても競馬場で都内屈指のイタリアンの味に触れられるとは思わなかった。競馬場と言えば、おでん、焼きそば、煮込みの3強時代を知る身だけに隔世の感を禁じ得ない。時代は変わった。

 

***** 2015/11/22 *****

 

 

 

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2015年11月21日 (土)

ふるさとより

佐賀県の某町から佐賀牛が届いた。

Sagagyu 

べつにいかがわしいことをしたわけではない。だが、ちょっとだけ寄付させていただいた。いわゆる「ふるさと納税」。お肉はその返礼品である。証明書によれば父は黒毛和牛界のサンデーサイレンスと名高い「北福波」。さすがは佐賀牛。心していただくことにする。

Ketto 

ふるさと納税に手を染めたのはこれが初めてではない。初めての寄付先は北海道の帯広市だった。ばんえい競馬が存廃の淵で揺れていた当時のこと。「ばんえい競馬の存続に役立ててください」。郵便局の振込用紙にそう附記した覚えがある。ふるさと納税制度が生まれた最初の年だった。返礼品なんてあっただろうか。残念ながら記憶はない。だが、その当時は返礼品など問題ではなかった。

それが今では、牛肉や果物といったその土地の特産品はもちろん、パソコンや一眼レフカメラが寄付のお礼としてもらえる時代である。郵便局に行く必要もない。ネットで欲しい返礼品を探してクリック一発。これでは単なるネットショッピングではないか。

己の住まう街を顧みることなく、返礼品に釣られて見ず知らずの土地に税金を払う。これが「税」というシステムのあるべき姿なのか? それがずっと気になっていた。利に走って理を違えるような真似だけはしたくない。そんなわけで、周囲がふるさと納税でアレをもらった、コレが届いたと盛り上がるのを横目に、私自身はふるさと納税と関わらぬ生活を送っていた。

心変わりの原因は、「ふるさと納税した村に行ってみたらたいそう楽しかった」と話す知人の言葉である。ふるさと納税でその村のことを初めて知った。ふるさと納税がなければ絶対に行くことはなかった。そんな話を聞いて、「ああ、たしかにそれは良いコトだなぁ」と山下清風にしみじみ感じたのである。

経緯はともかく、佐賀牛をいただいたからには佐賀牛の素晴らしさをお伝えせねばなるまい。

佐賀県内の和牛は1961年に関西の市場に初進出を果たした。のちに、歩留等級がA、Bでありかつ、肉質等級が最上級の5等級の黒毛和種に限り「佐賀牛」の名称が与えられるようになり、ブランドの定着が図られる。その最大の特徴は和牛ならではの霜降り。赤身と脂肪が織りなすマーブル模様がなんとも美しい。ステーキ、焼き肉、しゃぶしゃぶ―――。どんな食べ方でも、とろけるような柔らかさと、濃厚な味わいを楽しむことができるが、私としてはやはりすき焼きにこだわりたい。和牛の歴史はすき焼きへの適合の歴史だと信ずるが所以である。

ちなみに1961年と言えば、坂本九さんのヒット曲「上を向いて歩こう」が発売された年でもある。この不朽の一曲は、英米において「スキヤキ」の曲名で大ヒットした。その由来には諸説あるのでいちいち紹介しないが、すき焼きがこの時代の日本を代表する料理であったことは間違いあるまい。

先週の東京でウエヲムイテアルコという馬が走っていた。字面を見ただけではこれがあの曲名だと気が付かないかもしれない。マンハッタンカフェ産駒の2歳牡馬。新馬3着なら次は当然勝ち負けの期待がかかる。首尾よく勝った暁には、関係者におかれては是非とも佐賀牛のすき焼きでお祝いしてもらいたい。

 

***** 2015/11/21 *****

 

 

 

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2015年11月20日 (金)

初めての関西

マイルチャンピオンシップに出走予定のイスラボニータは通算13戦6勝。皐月賞優勝、ダービー2着といったキャリアを誇りながら、実は関西の競馬場で走ったことがない。今回のマイルチャンピオンシップでついに関西初見参を果たすこととなる。

Isu 

それを不安材料だと言うつもりはない。イスラボニータ自身、東日本大震災の影響で高速道路が使えない中、一般道を使って山元TCを往復していたというタフな経験を持つ。輸送に心配はない。新潟での好走実績もある。

ただ私が気になったのは、イスラボニータが昨年の「最優秀3歳牡馬」に選ばれたタイトルホースだということ。その走りを関西のファンは見ることができず、ずっと今日まで待っていた。ようやくのお目見えである。実はこの春に産経大阪杯の出走を予定していたものの、1週前になって左前球節に不安を発症。初の関西遠征は流れた。それから7か月半ぶりの仕切り直し。特に関西在住のイスラボニータをお持ちの会員さんにとっては、待ちに待った一戦であろう。

それにしても、関西に疎遠な有力馬が最近は目立つ。ショウナンパンドラのようにエリザベス女王杯ではなく天皇賞~JC路線を歩む牝馬がいると思えば、キタサンブラックのように関西馬でありながら関東ばかりで走り続け、初の地元出走となった菊花賞を勝ってしまうことも。果たしてレース体系に問題があるのか、あるいは関係者の好みのせいなのか。近年の凱旋門賞遠征ブームも、そんな傾向に拍車をかけているような気がしてならない。

Genuine 

イスラボニータにとっては初めての遠征競馬だが、1996年のマイルチャンピオンシップを勝ったジェニュインの例は励みになるのではないか。彼もまた皐月賞馬でありながらその後はGⅠをなかなか勝ち切れず、4歳11月にして初めてとなる関西遠征でふたつ目のGⅠタイトルを手にした。「黄、黒縦縞、袖青一本輪」の服色も同じ。偉大な先輩の通った道を突き進み、関西のファンにタイトルホースの走りをぞんぶんに披露してもらいたい。

 

***** 2015/11/20 *****

 

 

 

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2015年11月19日 (木)

名馬「池月」

大岡山の病院に行ったついでに、ぶらぶらと洗足池まで歩いてみた。

Senzokuike 

池のほとりには千束八幡神社が建つ。その境内、うっそうとした木々に囲まれるように一頭の馬の像が建っているのをご存じだろうか。

Ikeduki_2 

馬の名は「池月」。平家物語の「宇治川の先陣争い」に、もう一頭の名馬「磨墨」と並んで登場する。熱心な南関東の競馬ファンなら、大井競馬場で毎年行われるレース名にもなっていることをご存じのはずだ。

伝承によれば、もともとはこの洗足池付近で捕えられた野馬であったという。その馬体はあくまで逞しく、青い毛並みに白の斑点を浮かべたその馬体が、まるで池に映る月影のようであったことから「池月」と名付けられたという。

だがその一方で、池月は「生食」(いけじき)という名で平家物語に登場してくる。生きているものと見れば何にでも食らい付く激しい気性から、その名がついたという説はなかなか興味深い。

武将が求めた馬の資質は、乗りやすさや足の速さだったわけでは決してない。それは近寄るものを手当たり次第に噛み殺すような悍性の強さである。

当時の騎馬武者の戦法は、荒ぶる馬に跨がって敵陣に深くに飛び込み、手にした槍や刀で相手を斬るのはもちろん、それと同時に自馬が敵を噛み、あるいは踏みつけて殺戮を果たすというものだった。そう思いつつあらためて池月の馬像を見れば、なるほど今にも襲い掛かってきそうな、そんな気性がよくよく表現されている。

中原街道の洗足坂を登ると、こんな黄色いひさしの店が目に入った。赤い文字で『MOON』とあり、ガラス戸には「カレー居酒屋」の張り紙がある。

Moon 

カレー居酒屋とは初めて聞くが、このタイミングで「MOON」とは絶妙だ。しかも「カレー炒飯」なるメニューを見れば、注文せぬわけにはいくまい。ほどなくして出された一皿を見れば、まるで池の水面に浮かぶ月影のようではないか。現代の「池月」はここにいたのである。

Charhan 

ここからなら池上線の長原駅は目と鼻の先だが、腹ごなしに大井町線の北千束駅まで歩く。と言っても10分ほどの距離。このあたりは東急の駅が多い。

Station 

北千束駅はかつて「池月駅」として開業した歴史を持つ。もちろん名馬・池月にちなんでのもの。競馬場の名がついた駅は珍しくないが、馬の名前をそのまま駅名にした例はおそらく後にも先にもこの一例だけであろう。

 

***** 2015/11/19 *****

 

 

 

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2015年11月18日 (水)

これが届けられると秋の深まりを実感する。

Taduna 

「羈(たづな)」は現時点で生産者が売却を希望する1歳馬のリスト。HBAのサイトでもPDF版を公開しているから誰でも見ることができる。セリで主取に終わった馬もいれば、様々な理由でセリにすら出されなかった馬もいることだろう。今年の掲載馬は64頭。10年前は200頭以上が掲載されていたことを考えれば、だいぶ薄っぺらくなった。売れ残りが減っているならむろん良い話だが、それでもエイダイクインの牡馬(父ヴァーミリアン)が掲載されていたりして、オッ!と思ったりする。

Eidai 

エイダイクインは、メジロマックイーンの初年度産駒として1997年にデビューし、翌年のクイーンカップで重賞制覇を成し遂げた。母は重賞3勝のユキノサンライズだから、母娘での重賞ウイナーということになる。

春天連覇のメジロマックイーンのイメージからすれば、3歳2月でマイル重賞を勝つイメージは湧きづらいかもしれない。だが、マックイーンは主戦の武豊騎手がマイルチャンピオンシップを進言したこともあるくらい、実はスピード能力にも長けていたとされる。そのスピードを受け継いだエイダイクインは、クイーンCでのちの秋華賞馬エアデジャヴーに1馬身1/4差をつける完勝。迎えた桜花賞でも前日売りでは単勝1番人気に支持されたほどだ(最終的に2番人気で6着)。

そんなエイダイクインとヴァーミリアンの間に産まれた牡馬が「羈」に載るというのは、正直驚きを禁じ得ないのだが、馬の世界ではよくあること。「えっ? こんなコが!?」というグラビア業界の謳い文句の如き驚きを繰り返すのが、この季節の風物詩でもある。

コスモバルクやメイショウサムソンなど、牧場で売れ残りとされた馬が名伯楽の相馬眼に見出されて引き取られ、のちに大化けするという話はよく聞く。とはいえ、コスモバルクは当歳時に買われているのだし、メイショウサムソンにしても1歳2月時点での「売れ残り」である。1歳11月の売れ残りとは切実度がまるで違う。

Toukei 

例えばトウケイヘイロー。彼は2歳5月のHBAトレーニングセールに上場されたが、公開調教で真っ直ぐ走ることができずに主取となった。さすがにこの時季の売れ残りは痛い。だが、その馬がのちに重賞を4勝し、通算2億6千万円を稼ぎ出した。「羈」に掲載された64頭の中に、第二のトウケイヘイローがいたとしても不思議ではない。

 

***** 2015/11/18 *****

 

 

 

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2015年11月17日 (火)

かける言葉が見つからない

天皇賞当日の東京競馬場ですっごく久しぶりに会ったカメラマンがいた。私の記憶に間違いがなければ、最後に会ったのはミッドナイトベットが勝った香港カップ当日の沙田競馬場。となれば、なんと17年ぶりの再会ということになる。

それで、「久しぶり」とか「仕事どうしてる?」とか「今どこに住んでんの?」みたいな18年ぶりに会う者同士にふさわしいボールのやり取りがあったあと、ふと「奥さん元気?」と聞いてみた。

私は彼の奥さんが元気かどうかを真剣に気にしていたワケではなく、話の流れの中からたまたま引っ張り出してきた話題が「奥さん」だったに過ぎない。別におかしくはない会話の流れだとは思う。でも彼の口から出てきた言葉は「実は離婚したんです」というものだった。

それで私は次の言葉が出て来なかった。「あっ? えっと、う~ん」みたいに口ごもり、相手も「そうなんだ。う~ん」となってしまって、なんとなく「う~ん」のまま別れる羽目になった。あそこで「う~ん」とならずに、もう少し気の利いた言葉が出なかったものか。今でも自問は続いている。

結婚ならすべからく「おめでとう」だけで済む。だが離婚の場合に軽々しく「そりゃ残念だね」と言うのも無責任だし、かといって「すっきりして良かったじゃん」などと言うワケにもいかない。そこには百人百通りの事情があるはずだが、その百通りをひと言で賄える言葉が欲しい。

巷にあれほど『冠婚葬祭挨拶集』のようなマナー本が溢れているのだから、『離婚した男にかける言葉集』なんて一冊があれば良いのにと真剣に思う。

Hongkongcup 

ところで、「かける言葉」と言えば、自分の愛馬が負けてしまった直後の馬主にかける言葉の選択に苦慮することって、よくありませんか?

私はあります。2着、3着なら「次が楽しみですね」で良いだろうし、あからさまな騎乗ミスがあれば騎手を咎めれば済む。困るのは誰が見ても明らかな力負けというシチュエーション。いわんや「3戦続けて二桁着順」みたいに光明が見出だせない場合は特に艱難を極める。

それでも何かしら前向きなポイントを見つけて挨拶に盛り込みたいところだが、それがあまりに些細なコトではかえって白々しくなるし、変な慰めの言葉よりは冷静な視点からの分析を求める馬主も少なくない。よくよく状況を見極めて言葉を探す必要がある。

え~、これはあくまで一般論で、私の周りの特定の馬主さんを書いたものではありません。念のため。(^_^;

だいたいが、ひとつのレースが終わるたびに大勢の「負け馬主」が生まれるのが競馬である。たとえわずか2センチの差であっても負けは負け。競馬が「ほとんど負けるスポーツ」であることを騎手や調教師は良く知っているから、彼らのズボンのポケットには常時20~30個の「言い訳」が詰め込まれている。私の場合は言い訳の必要はないが、慰めの言葉はストックしておきたい。

ともあれ、巷にあれほど『冠婚葬祭挨拶集』のようなマナー本が溢れているのだから、『負けた馬主にかける言葉集』なんて一冊があれば良いのにと真剣に思う。

 

***** 2015/11/17 *****

 

 

 

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2015年11月16日 (月)

ランキングの季節

エリザベス女王杯の興奮が醒めて、ふと気づけば今年も残り1か月半。ぼちぼち2015年の各種ランキングを意識してもおかしくはない時季だ。

ブリーダー部門では、ノーザンファームが110億円(中央+地方)を稼いでトップを独走中。2位の社台ファームとの差が36億円という途方もない数字であることを思えば、4年連続の首位は間違いあるまい。

同様にサイアー部門も、ディープインパクトの4年連続制覇はほぼ確実。2位キングカメハメハとの差は8億円だから、ラブリーデイがJCと有馬を勝ち、ホッコータルマエがチャンピオンズCと東京大賞典を連勝しても、まだ追いつかない。マリアライトのエリザベス女王杯制覇が決定的なダメ押しとなった。

多少興味深いのがJRAのジョッキー部門。現時点で121勝の福永祐一騎手を戸崎圭太騎手が追う展開だが、落馬負傷で年内休養が決まっている福永騎手は、これ以上勝ち星を増やすことはできない。追う戸崎騎手は今週2勝を上積みして111勝とした。残る開催は6週13日間。1日1勝のペースで逆転は可能だが、戸崎騎手とて怪我や騎乗停止やスランプが無いとは限らない。

最後にオーナー部門だが、こちらはサンデーレーシングとキャロットファームの一騎打ち。昔のアイスホッケーリーグの「国土vs西武鉄道」を見るようで、一部にはシラケムードも漂っているが、それでもマリアライトがエリザベス女王杯を勝ったことで、両者の差が若干縮まった。

■中央+地方収得賞金(11/15現在)
1位 サンデーレーシング 24億9815万円
2位 キャロットファーム 23億4940万円

現時点で両者の差は1億4875万円。実は、リアルインパクト、トゥザワールド、そしてステファノスがこの春に豪州や香港に遠征して稼いだ金額約1億6200万円を加味すれば、両者の立場は逆転するのだが、「ランキング」という言葉を使うからには、やはり枠組みはある程度重視したい。

それでも1億4875万円程度なら1日でひっくり返らないとも限らない。だが、両者ともにJCや有馬記念で勝ち負けを意識できる駒が控えているわけでもないから、GⅢ重賞や特別戦すらバカにできなくなってくる。そう思って両者の争いを見てみれば、たとえノーザンファーム内の争いだとわかっていても、多少は興味が湧いてこないか。

Mitaka 

キャロットファームはこの土日で6勝の荒稼ぎだった。三鷹特別に出走したトータルヒートは4番人気ながらクビ差で勝利。貴重な1500万円をもぎ取った。

 

***** 2015/11/16 *****

 

 

 

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2015年11月15日 (日)

ドーピングと政治

ロシアのドーピング問題が連日報じられる中、ついに国際陸連の臨時理事会でロシアの資格停止処分が決定された。暫定的措置とはいえ、このままではロシアは来年のリオデジャネイロ五輪に参加できなくなる。これに対し、ロシア国内では「政治的な決定だ」と反発する動きが広がっているというが、そもそもドーピング問題とは政治問題にほかならない。過去にドーピング問題を報じた新聞・TVの扱い方を見ても、それは明らかだ。

スポーツ選手に対する薬物検査は1986年のグルノーブルの冬季五輪から実施されたが、1930年代の米国では既に競走馬に麻薬や覚せい剤を投与されるケースが問題となっていた。そういう意味では、こと薬物問題に関しては競馬の方が歴史が深い。そもそも「ドーピング」という言葉自体が、競走馬への薬物投与を指す言葉がスポーツ界に転用されて広まったもの。その語源はアフリカの原住民が祭りの景気づけに飲んだ酒「ドップ」に由来する。

Dirt 

それにしても、米国における競走馬への薬物投与への感覚は緩いと言わざるを得ない。なにせウマにバイアグラを投与するお国柄である。ラシックスを認める認めないの議論も、未だ出口は見えていない。

ラシックスは東海岸の競馬場ではかつて禁止されていた。だが、そのせいでラシックスを認める西海岸から有力馬が参戦してこない。これは困った。どうしよう。それで仕方なく認可に踏み切ったのが1996年。今では全米のほとんどの競馬場でラシックスの使用が認められている。対象が人間であろうが競走馬であろうが、薬物問題を左右するのは人間の思惑である。

断っておくが、私はドーピング推進論者ではないし、ロシアの肩を持つものでもない。誤解のなきよう願いつつ、読み進めていただければ幸いである。

そもそも、オリンピックで使用される陸上トラックはその素材にも構造にも時代の最先端技術が駆使されており、それが好記録を生む下地となる。競技者が履くシューズも同様であろう。水泳競技ならスピード社の「レーザーレーサー」を思い出してみるといい。スピードスケートのスケート靴、ノルディックスキーのスキー板やワックスもしかり。そこには莫大なコストと科学技術の粋が惜しみもなく投下され、ありとあらゆるものが徹底的に人工化されている。

だけど、人間の身体に対して人工的に手を加えることは許さない。自然のままで置いておけという。それがアンチドーピングの根本である。だが、果たして実際にそんなことが可能だろうか。

それを可能だと主張するのが、米国一流の「人間中心主義」であろう。人間は他の動植物とは違う特別な存在である。だから人間はダメ。でもウマに薬物を投与することは一向に構わない。そんなものは倫理でも論理でもない。

古くは東欧諸国が、近年ではロシアや中国がオリンピックで好成績を挙げた。それを助けたのがドーピングとされる。そういう意味でドーピング問題は倫理でも論理でもなく、やはり政治の問題であった。もともと自然とドーピングに明確な境界はない。境界がないところに線を引くのが政治である。ラシックスは去年までNGだったが、いろいろあって今年からOKとなりました。これが政治的でなくて何なのか。気の毒なのはそれに振り回されるウマである。人間なら多少なりとも自分の意志に基づいて薬物に手を染める。だが、ウマにそれを拒む手立てはない。

 

***** 2015/11/15 *****

 

 

 

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2015年11月14日 (土)

母国に捧げる勝利

テロのニュースで起こされた。

パリ中心部と近郊の7か所で同時多発テロが発生。120人以上が犠牲になったという。その場所のひとつに見覚えがあった。サッカーの国際親善試合が行われていた「スタッド・ド・フランス」は、私がかつて宿泊したホテル「サンドニホテル ノボテル パリ サン・ドニ スタッド」の目と鼻の先にある。

そのスタジアムはFIFAワールドカップ・フランス大会で決勝の舞台となった。フランスのサッカーファンや関係者にとっては「聖地」だそうである。そんな話を現地の人に聞いてスタジアムの周囲をぐるりと散歩し、屋台で焼き栗を買って食べた。1998年10月4日。サガミックスが勝つ凱旋門賞の朝のこと。まさかあの場所で……と思えば、今回の惨劇を遠い国の出来事と片付けられない。テロの脅威を肌で感じる。

そんなことを思いつつ東京競馬場に行ってみれば、雨だというのにお客さんは熱心に声援を送っているではないか。一転して日本の平和を思う。メインの武蔵野Sを勝ったのはジャパンダートダービー以来となるノンコノユメ。初めてとなる古馬との対戦をものともせず、ゴール寸前でハナだけ差し切るという劇的な勝利だった。

Nonko 

3歳馬が武蔵野Sを勝ったのは初めてではないが、3歳馬が58キロを背負って優勝した例は過去にない。いや、4歳以上を含めても初めての出来事である。4コーナーで前との差は約10馬身。届かないか……。一瞬そう思わせたところから怒涛の追い込み。馬の力もさることながら、ルメール騎手の執念を見るような鬼気迫る騎乗ぶりだった。

普段、勝利騎手インタビューでは日本語で応対するルメール騎手である。だが今日は違った。母国フランスで起きたテロに関してのメッセージ。「この勝利を犠牲者の方々にささげたい」。英語でそう発言した彼の心中は察するに余りある。やはりあの最後の1完歩には、不思議な力が働いていたように思えてならない。

フランス当局の発表によれば、パリ周辺で今週末に行われる予定だったすべてのスポーツの試合やイベントは中止だという。もちろん競馬とて例外ではない。今日のサンクルーも、明日のオートゥイユも開催中止。今後の再開についても、現時点でめどは立っていないという。

 

***** 2015/11/14 *****

 

 

 

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2015年11月13日 (金)

ゴボウの季節

先週日曜の銀嶺Sを勝ったのは4歳牝馬のアンズチャンだった。向こう上面では馬群から1頭だけ離れて最後方をポツンと追走。まがりなりにも1番人気であるから、スタンドがざわついたのは無理もない。ところが直線で大外に繰り出すや、前を行く15頭を瞬く間に差し切ってみせた。まさに絵に描いたようなゴボウ抜き。寒くなるにつれ、ゴボウが美味しい季節になってきた。

Anzuchan 

美味しいゴボウは、やはりゴボウ天で味わってみたい。そこで通院ついでに有楽町・交通会館の地下の『よかよか』に立ち寄ってみた。東京には数少ない博多うどんを出す店として隠れたファンは多い。カウンターのみの狭い店内は、13時過ぎだというのにほぼ満席であった。

Noren_2 

透き通ったダシに浮かぶうどんは、まさに「フワフワ」と表現するにぴったり。2年ほど前にこの店で食べた時は、フワフワよりもなお柔らか過ぎ、箸で持つそばからプツンプツンと切れて難儀したものだが、今回はそこまでの柔らかさはない。ひょっとしたら、東京人の好む食感に合わせて調整したのだろうか。

―――なんて考えるうち、背後から「麺ヤワで!」と注文する客の声が聞こえた。讃岐や武蔵野の固さに慣れきった私にはこれでも十分柔らかいのだが、本物の博多うどんを志向する本物の客は、この程度では物足りないのかもしれない。店のほうもきちんと対応しているようだ。こうした柔軟さが博多の懐の深さであろう。もちろんゴボウ天も美味い。

Yokayoka 

交通会館を一歩出て、有楽町駅を挟んだ反対側。もうひとつの有楽町のランドマーク「有楽町電気ビルヂング」の地下にもうどん屋さんが暖簾を掲げてる。その名も『本場讃岐うどん・たも屋』。本場を謳うだけあって、ひやかけ1杯270円とこの立地にしてはかなり安い。

Tamoya_2 

こちらのゴボウ天は大ぶりにカットされたゴボウが串揚げになっている。ツユに浸すとモロモロと衣が剥がれて、ゴボウだけがツルンと抜け出たりするから注意が必要だ。だが、その裸のゴボウを齧ると、これが驚くほど甘い。旬のゴボウならではか。ゴボウが美味しい季節にアンズチャンのゴボウ抜きにもさらに磨きをかけたい。キャリア15戦のうち13戦が東京ダート1400mというスペシャリスト。中1週ではあるが、次走は22日の霜月Sであろう。となれば、その日の昼メシは『むぎんぼう』のゴボウかき揚げ天うどんで決まりだな。

 

***** 2015/11/13 *****

 

 

 

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2015年11月12日 (木)

百本ノックの果てに

先週末の東京競馬場での話をしつこく続ける。

実は、アルゼンチン共和国杯が行われたこの日、長い競馬キャリアの中でも初めてという失態を犯してしまったのである。思い返すも腹立たしく、できることならきれいさっぱり忘れてしまいたいのだが、自戒の為に耐え難きを耐えて筆を執る。長くなるが、まあ聞いてくれ。

Hizume 

数年前まで私は競馬場であまり馬券を買う方ではなかった。表向きは「下手だから」という理由を通しているが、実際には競馬場で写真を撮る仕事をしていると、馬券検討や購入の暇がないのである。パドックを撮り、かえし馬を撮り、レースを撮り、口取りを撮り、そしてまた次のレースのパドックを撮る。延々この繰り返し。敢えて時間を作るなら馬場入りからレース発走の合間だろうが、それでも慌ただしさは否めない。

ところで私は昨年秋を境にJRAの競馬場で写真を撮ることをやめた。いちおうカメラは持参するが、たまに撮ってもスタンドからメインを撮る程度。己の年齢を思えば、この先撮影を続けられる年月もそう長くはあるまい。そんなことも考え始めて、最近では馬券に気持ちが戻り始めた。馬券を楽しむことができなければ、長く競馬と付き合うことはできぬと、今更ながら悟ったのである。

この夏、パークウインズ開催の東京競馬場にせっせと通ったのも、そんな気持ちがあればこそ。馬の走らぬ競馬場では、当然ながら馬券だけで一日を過ごさなければならない。私が挑んだ全国3場12レースを買いまくる36番勝負は、勘を取り戻すための百本ノックのようなものか。おかげで馬券の買い方もずいぶんとマシになってきたような気がする。

11月になった今でも百本ノックは継続中だが、それにしても3場の馬券を律儀に買わんとする行為は思いのほか難しい。なにせ発売締切が10分おきに襲い掛かるのである。

ひとつのレースが終われば、ハズレ馬券を即座に捨て、当たり馬券は上着の内ポケットにしまう。確定を待つ暇などないから、払い戻しもあと回し。モニタに映し出される馬体重とオッズを一瞥すれば、既に締切5分前のアナウンス。マークシートを塗りつつ券売機の前に立ち、財布から札を取り出すそばから発売締切のベルが鳴り、息つく間もなくファンファーレが鳴り響く。かくして私は一個の馬券購入マシーンと化すのである。

時間に追われたとしても、競馬歴36年の威信にかけていい加減な馬券を買うことは己のプライドが許さない。言うまでもないことだが、「青葉でラーメンを食べたから、青葉賞馬2頭の馬連で」などというのは、このブログのためのネタである。右耳で東京の本馬場入場の場内実況を聴きつつ、左耳のラジオのイヤホンでは福島のパドック解説を聴き、右目で京都のオッズモニタを追いながら、左目は手元の専門紙で関係者コメントを読む。しかも頭の中では「今日の昼飯は何を食おうか?」などと考えているのだから我ながら凄い。Windows10も驚くマルチタスクぶりである。

そんなことを繰り返していた先週日曜。東京8Rを的中した払戻金で福島10Rの馬券を買おうと当たり馬券を払戻券売機に突っ込んだところ、「この投票券は的中しておりません」という無機的なアナウンスと共に馬券が吐き出された。再度繰り返してみても同じ。なんだよこの忙しいのに!と若干憤慨しつつ、窓口のおばちゃんに「これ機械が読み取れないみたいなんだけど」と差し出す。すると、「京都8レースの枠連は6-8なので、これは当たっていませんよ」と言うではないか。

京都―――?

返された馬券には確かに「京都8レース」と書いてある。

あれ? ふんじゃあ、私が当てた東京8レースの馬券はどこだ?

いやな予感がした。いや「予感」なんて生易しいものではない。慌てて内ポケットを探るがない。他のポケットにもない。席に戻ってみたが、やはりない。

となれば答えはひとつ。さっきハズレ馬券を捨てたゴミ箱。あそこしかない。

慌ててゴミ箱に向かうと、ちょうど掃除のおばちゃんがゴミを集めているところだった。「ちょっとごめんなさい」と言うよりも早くゴミ箱を覗きこむ。だがそこに「東京8レース枠連5-6」と印字された馬券はない。聞けばゴミ箱は5分おきに見回っているのだという。だとすればすでに回収されてしまったのであろうか。

どうかゴミ箱の前に呆然と立ち尽くす哀れな47歳を想像していただきたい。私がゴミ箱の底までを探し尽くし、納得してその場を去るまで、掃除のおばちゃんは黙って待っていてくれた。その優しさだけが身に浸みる。

思い返せば、8レース前後の記憶が曖昧なのである。おそらく、あまりのマルチタスクに私の脳ミソが処理能力の限界を超えてしまったのであろう。百本ノックはもうやめよう。馬券も簡単にゴミ箱に投げ入れてはいけない。さらにゴミの回収はレース発走間隔より短いのである。そんな勉強代だと思うことにしよう。それにしても、嗚呼……。

 

***** 2015/11/12 *****

 

 

 

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2015年11月11日 (水)

多頭数のち少頭数

京王杯2歳Sは、1997年まで「京成杯」の冠名で行われていた。最後の京成杯3歳Sを勝ったのはグラスワンダー。9頭立てとはいえ2着に6馬身差だったから凄い。

その前年。マイネルマックスが勝った年は8頭立てだった。ビッグファイトが勝った1990年は6頭立て。ダイシンフブキが勝った1985年に至っては寂しさも極まる5頭立てである。とまあこんな具合に、昔から京王杯2歳S(京成杯3歳S)といえば少頭数が常だった。

だが、今年は史上初めてフルゲートの18頭立てである。信じられないことに除外馬も出た。ならば勝つのは18号馬かもしれない―――。そんな思いが頭を過ったが、既にファンファーレは鳴っている。私のひらめきは、やって来るのがいつもワンテンポ遅い。

Ko 

勝ったボールライトニングは、2歳サイアーランキング独走中のダイワメジャー産駒。新馬を勝っていきなりGⅡという相手関係に加え、初めての長距離輸送に大外18番枠と、クリアすべき課題は多いように見えたが、そんな外野の声を笑い飛ばすかのような楽勝ぶり。やはりフルゲート必至であろう朝日杯FSに向け、陣営の自信が膨らむレース内容であったに違いない。

一転して、翌日の百日草特別は7頭立てと寂しい顔ぶれとなった。登録段階では10頭の登録があったはずだが、プランスシャルマンがいては相手が悪いとばかりに回避馬が続出。このレースにひときわ強い思い入れを持つビッグレッドファーム系の馬は残ったが、それでも興味の薄らぐ一戦となった感は否めない。

Hyakunichi 

レースは、大方の予想通りプランスシャルマンの快勝。単勝1.3倍の割には詰め寄られた感があるが、陣営とすれば賞金加算に成功すれば御の字であろう。むしろレースが成立したことに安堵しているだろうか。

もともとこの秋の2歳中距離路線は頭数がなかなか揃わない。シルバーステートが勝った紫菊賞が8頭立て。萩Sに至っては5頭立てである。除外馬まで出た京王杯を顧みればその差は歴然だ。

こうなった理由は様々あろうが、2歳サイアーランキングの異変と無関係ではあるまい。

トップを走るダイワメジャーは既に28頭が勝ち上がり33勝を挙げている。昨年の2歳成績が20頭で22勝だから、1か月半を残して既に昨年の成績を大きく超えているわけだ。さらに、ランキング2位に甘んじるディープインパクトに猛然と迫るのが、昨年2歳サイアーランキング13位だったキンシャサノキセキ。彼もまた昨年に並ぶ勝利数を既に挙げている。

そう思いつつ、あらためて京王杯の出馬表を見てみれば、ダイワメジャー産駒4頭にキンシャサノキセキ産駒も4頭。しかも結果は両種牡馬のワンツーフィニッシュではないか。思えばどちらも「JRA賞最優秀短距離馬」のタイトルを引っ提げて種牡馬入りした韋駄天。これなら京王杯のフルゲートも頷けよう。ひょっとしたら、来年のNHKマイルカップはクラシックより狭き門となるかもしれない。

 

***** 2015/11/11 *****

 

 

 

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2015年11月10日 (火)

隠れた出世レース

先週のJRAは土日で重賞4鞍。いずれも暮れのビッグタイトルの前哨戦である。土曜は東西で2歳重賞が行われボールライトニングとキャンディバローズが暮れの2歳GⅠの優先出走権を獲得。日曜の京都・みやこSはロワジャルダンが勝ってチャンピオンズCに名乗りを挙げた。

日曜東京のメインはアルゼンチン共和国杯。勝ったのは1番人気のゴールドアクターだった。先に抜け出したメイショウカドマツを捕まえ切れぬのではないかと思わせる瞬間もあったが、それでも渋馬場をものともせぬ脚できっちり捕えたのだから凄い。吉田隼人騎手は相手を見もせずにガッツポーズを繰り出した。内外離れてのアタマ差である。着差以上に余裕があったのかもしれない。

Actor 

このレースの好走馬からは近年、のちに天皇賞馬となるトーセンジョーダンやアドマイヤジュピタ、宝塚記念を勝つアーネストリーが出るなど、53回の歴史を誇るGⅡには失礼かもしれないが、隠れた出世レースとして知られる。

中でもその傾向が突出しているのは2008年のレースであろう。優勝馬スクリーンヒーローは直後のJCを勝ち、2着馬ジャガーメイルも翌々年の天皇賞・春を勝ってみせた。だが、調べてみると、この2頭以外にものちに重賞を勝つ馬がこれだけいたのである。そのほとんどが初重賞制覇であったのだから、これほど「出世レース」を体現しているレースはあるまい。

2008年 第46回アルゼンチン共和国杯
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1着 スクリーンヒーロー 08年JC
2着 ジャガーメイル 10年天皇賞
3着 アルナスライン 09年日経賞
4着 テイエムプリキュア 09年日経新春杯
5着 ダンスアジョイ 09年小倉記念
6着 ネヴァブション 09-10年AJCC
7着 トウショウシロッコ
8着 キングアーサー
9着 トウカイトリック 10年阪神大賞典など
10着 ヤマニンアラバスタ
11着 ゴーウィズウィンド
12着 マキハタサイボーグ
13着 マンハッタンスカイ 08年福島記念
14着 セタガヤフラッグ
15着 エアジパング 08年ステイヤーズS
16着 メイショウカチドキ

スクリーンヒーローといえばJC史に残る上がり馬でもあるが、アルゼンチン共和国杯の前には、関係者からしてJCなど頭の中にはなかったに違いない。なにせ準オープンの身。除外を想定して京都の自己条件・比叡Sに回るプランもあった。ところがふたを開けてみればレコード勝ちである。JC出走に際しても賞金不足が懸念されたが、どうにか出走馬決定順15番目に滑り込んだ。外国招待馬が4頭に留まった幸運も見逃せまい。JC史上最大の上がり馬は、いくつもの幸運を重なって誕生したのである。

今年のアルゼンチン共和国杯を勝ったゴールドアクターは、そんなスクリーンヒーローの産駒。父と同じくJCを目指すという声も聞こえてくる。思えばオクトーバーSからの転戦で、管理調教師がJRA重賞初勝利となったのも同じ。父子の軌跡を重ねたくなる気持ちも分からないではない。

だが、調教師の口から「JC」が明言されることはなかった。なぜか。おそらく除外を懸念しているのであろう。そんなところまで父の軌跡に似る必要もないと思うのだが、父のような幸運が起きるかどうかは分からない。というのも、今年のJCには外国招待馬6頭の参戦が有力視されている。となれば日本馬の枠は12頭しかない。現時点でJCを展望する日本馬で、ゴールドアクターより賞金上位の馬はラブリーデイやごオールドシップなど12頭前後。エリザベス女王杯の結果によってはさらに増えるかもしれない。

それで思った。京王杯2歳Sも、フェアリーSも、みやこSも、優勝馬にはGⅠへの優先出走権が与えられるのに、なぜアルゼンチン共和国杯にそれがないのか。「隠れた出世レース」の名がすたる。仮に除外ということになれば、もったいないと感ずるのは私のみではあるまい。ゴールドアクターにとって、他陣営の動向が気になる日々が続く。

 

***** 2015/11/10 *****

 

 

 

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2015年11月 9日 (月)

優勝カップはいくら?

昨日はアルゼンチン共和国杯が行われたわけが、実際の「アルゼンチン共和国杯」はこちら。競馬場には優勝賞品の展示スペースがあり、ファンもそれを見ることができる。

Cup 

しかし、これがウイナーズサークルでファンの目に触れることはない。なぜか。実は表彰式で優勝馬主に手渡されるカップは式典用のいわば小道具。私も馬主の代理で表彰台に上がり、優勝カップを受け取ったことがあるのだが、写真撮影が終わればJRAの職員がさっさと持っていってしまった。ただし、GⅠレースの表彰式に限っては本物が授与されるそうだ。そのカップの重みはきっと格別であろう。

NHKマイルカップ、ニュージーランドトロフィー、毎日王冠……等々。こうした冠レースであれば、優勝カップやトロフィーは企業や団体が用意することになっているが、いったいどれくらいの価値があるものなのか? レースの格付けに比例するのか? そこまでは分からない。

ただし海外のレーシングプログラムには賞品の金額が明記されている。こちらは1997年「キングジョージ」のレープロ。エリシオ、ピルサドスキー、シングスピール、スウェインといった豪華メンバーが顔を合わせたことで、The Race of the Decade.(10年に一度のレース)と呼ばれた。

Prog 

ここには競走条件、登録料、賞金額などに加えて、優勝馬主に贈呈される賞品とその金額が明記されている。A piece of plate value £3000 for the winning owner。このレースを勝ったスウェインのオーナーに贈られたプレートの価値は3000ポンド。当時のレートで約60万円だったということが分かる。

ちなみに天皇賞の優勝賞品がご覧の天皇盾であることは広く知られたところ。ゆえに天皇賞を「春の盾」とか「秋の盾」などと呼ぶ人も少なくない。

Tate 

ただし、これはレプリカ。戦前に宮内庁を通じて陛下から下賜された本物は、今では大事に保管されている。レプリカならば、万一1着同着という事態になっても問題はない。しかしながら、戦前の帝室御賞典(天皇賞の前身)の当時は本物が授与されていたため、そうはいかなかった。なにせ盾はひとつしかない。よって1着同着の場合は、日を改めて決定戦をする規定があったという。賞品が競馬のルールを左右することもある。その好例であろう。

 

***** 2015/11/09 *****

 

 

 

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2015年11月 8日 (日)

秋の青葉

府中は雨。それでも、府中本町駅近くのラーメン店『いつみ家』には絶望的な行列ができている。ラーメン一杯のために雨に打たれながら並べるほどもう若くはない。さてどうしたものかと、大国魂神社方面へと歩くうち、そうだココに入ってみようと思った。

ココ。

Aoba 

ラーメンの『青葉』さんですね。東京風のダシを利かせたスープと、博多流のこってり濃厚なスープの両方を兼ね備えた一杯は根強い人気を誇る。ただ、何度も店の前を通る機会がありながら、私自身こちらの府中本町店に入ったという記憶がない。

Ramen 

ところで「青葉」と言えば、今日のアルゼンチン共和国杯には2頭の青葉賞優勝馬が出ているではないか。そう、一昨年の青葉賞を勝った⑩ヒラボクディープと、今年の勝ち馬⑱レーヴミストラルである。

10_18 

それならと、この2頭で勝負してみたのだが―――。

Gold 

結果は3着と18着。ただ一頭、後方から追い込んで馬券に絡んだレーヴミストラルの末脚は見るべきものはあったが、大差しんがり負けのヒラボクディープは大丈夫だろうか。いくらなんでも私の馬券のせいではあるまいが。

同じ東京競馬場のGⅡで、距離も似通ったレースであるのに、青葉賞とアルゼンチン共和国杯の両方を勝った馬はまだ出ていない。それどころか青葉賞勝ち馬がアルゼンチン共和国杯に出てくること自体が珍しいのである。2004年の青葉賞馬ハイアーゲーム以来。2頭の青葉賞馬が揃ってというのは初めてのこととなる。

青葉賞を勝つくらいの能力の持ち主ならば、アルゼンチン共和国杯ではなく1週前の天皇賞・秋を目指すケースが多いのであろう。3歳秋なら菊花賞だってある。そういう意味ではレーヴミストラルの参戦は異例中の異例だった。言い方を変えればワケありであろう。それでもメンバー最速の33秒台で上がった能力は見事。来年のこのレースで、ついに青葉賞とアルゼンチン共和国杯の両レース制覇を成し遂げてくれるかもしれない。いやそれとも、来年は天皇賞からJCの王道ローテに乗っているだろうか。

 

***** 2015/11/08 *****

 

 

 

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2015年11月 7日 (土)

シャドウ祭り

「シャドウ祭りだな」

競馬専門紙を見ながらつい口走ってしまった。開催替わりの東京初日。その特別戦3鞍すべてに、飯塚知一オーナーの所有馬が出走するのである。

9R 立冬特別
アウトオブシャドウ(5人気)
ロングシャドウ(13人気)

10R ノベンバーS
シャドウパーティー(6人気)

11R 京王杯2歳S
シャドウアプローチ(1人気)

Shadow1 

飯塚オーナーといえば「シャドウ」の冠名でお馴染み。シンガポール航空国際カップを勝ったシャドウゲイトや天皇賞2着のダークシャドウが有名だが、だからと言って年間に何十頭もデビューさせるほどの大馬主というわけでもない(失礼!)。だから「祭り」なのである。要職にある新潟競馬場で複数頭出しをされること間々あっても、今日のようなケースはあまりない。

学生時代に渋谷のウインズに向かう人だかりを見て、競馬に興味を持ったという飯塚氏。いちファンから馬主になっただけあって、その競馬観に感心させられることも少なくない。所有頭数の割に活躍しているイメージがあるのも、きっとそのせいであろう。

昨年の「引退馬ホースサミットin日高」に引き続き、この夏は新潟競馬場で「引退馬の余生を考えよう企画展」を実施。最近はこうした引退馬に関する活動においても、積極的に人前に出られている印象が強い。

きっかけはシャドウクリークだった。バーデンバーデンカップやオーロカップを勝ち、1998年のフェブラリーSで10番人気ながら3着に食い込んだあの馬。彼との出会いによって、サラブレッドはただ走るために産まれてきたわけではなく、多くの人々に喜びや出会いを与えてくれる友であると思うようになったという。友であるからには引退後も面倒を見たい。それから賞金の一部を引退後の余生のために貯蓄するようになったそうだ。

趣味の乗馬は馬主になってから始めたというが、その理由を聞くと「自分の馬を自分で調教しようと思った」と笑う。最初は冗談かと思っていたが、馬に乗ったり手入れをしたりすることで、見ているだけでは分からないこと気付くという話になった。そうなると冗談とも言い切れない。なにせシャドウの馬たちは大事に使われる印象が強い。決して無理をしないのである。10歳にしてアイルランドのレースを勝ったシャドウゲイトなどは、その好例であろう。

Shadow2 

東京競馬場に話を戻す。特別3鞍の結果は、それぞれ4着、13着、5着、3着であった。1番人気で3着に敗れた京王杯は悔しい。だがしかし、「1億円の馬をやっつけるのが醍醐味」と公言してはばからない飯塚オーナーのこと、モーゼス(2014年セレクトセールで1億円)に勝ったからヨシとするだろうか。それにしても、この勝負服を見たあとはTSUTAYAに寄りたくなりますね。

 

***** 2015/11/07 *****

 

 

 

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2015年11月 6日 (金)

ど・みそ@東京競馬場

先週土曜は東京競馬場でラーメンを食べた。なんと、東京競馬場に『ど・みそ』がオープンしたのである。中山競馬場では有名な一軒だが、東京競馬場で食べる一杯は果たしてどうだろうか。おそらく同じ味だろうけど、ともあれ行ってみなければ始まらない。

Domiso 

出店場所は東側のフードコートエリア。かつては『2DAYS』があった場所。ということは『ラーメン北斗』の隣という立地である。趣向の異なる店同士とはいえ、ラーメン屋が隣り合わせというのはなんともえげつない気もするが、『2DAYS』の前はやっぱりラーメン屋さんだったはず。まあ、ラーメンの好きなお客さんにとってみれば悪い話ではあるまい。

「東京スタイルみそらーめん」を注文。麺は「浅草開化楼」の特注中太麺。国産小麦2種類にタピオカ粉をブレンドされたという平打ちの縮れ麺は、モチモチしていながらプリプリと踊るような弾力も味わえると評判だ。これがコッテリ濃厚なスープに負けない存在感を醸し出している。

Kaika 

具はチャーシュー3枚、味玉、コーン、Wもやしに海苔が3枚で1200円だから、中山競馬場の「中山スペシャルみそらーめん」と同じですね。ただし、ひょっとしたらスープが違うのかもしれない。そこらへんまで私はラーメンに自信を持ってない。

Miso 

ハッキリ言えることがひとつある。中山がスチロール製の使い捨てどんぶりを使用しているのに対し、東京はいちおう陶製のどんぶりで提供されている。レンゲはどちらも使い捨てのペラペラのやつですけどね。でもどんぶりだけでも嬉しい。器を持つ左手に安心感がある。

敢えて難点を挙げれば、麺を茹でるのに時間を要することか。下手をするとレースをひとつ見逃すことになる。実際私もこの日の8レースを見逃してしまった。7レースが終わり、着順を確認してからパドックを眺め、2周ほど見ただけで1Fまで降り、『ど・みそ』の前に誰も並んでいないことを確認して注文した。それで8レースに間に合わなかったのである。自分の中では十分余裕を持って食べに来たつもりだったのだが。

私とて間に合わせようという努力をしなかったわけではない。締切5分前のアナウンスを聞いて、慌てて麺をすすって口の中をヤケドしそうになり、それでも怯むことなく大量のもやしと格闘したのだが、その途中であえなくファンファーレが鳴った。勝ったのは3歳馬グレーターロンドン。休み明けをものともせぬ走りで、通算成績を4戦3勝2着1回としたようだ。今後の期待は俄然高まる。あー、目の前で見たかったなぁ。そう思った頃になって、ヤケドのひりひり感が俄然増してきた。

そもそも味噌ラーメンは、時間との勝負に向いたメニューではない。長浜ラーメンとは違うのである。それを覚悟の上で食べる必要があろう。味噌ラーメンが美味しいのは麺とスープが最後まで熱さを保っていればこそ。最後の一口までゆっくり味わえば、じっくり身体を温めてくれる。フェブラリーSの頃には、きっとそのありがたさが分かることだろう。

 

***** 2015/11/06 *****

 

 

 

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2015年11月 5日 (木)

ハズレばかりの日

府中での用事が長引いてマイルグランプリを見逃した昨夜の反動で、今日は昼過ぎに仕事を切り上げた。とはいえ、重賞レースの行われない大井までわざわざ行くのも、どことなくしんどい。

でも、園田では兵庫クイーンカップが行われるはずだ。トーコーニーケとエーシンサルサの対決には興味はある。なら、オフト京王閣に行ってみようか。ついでに大井1レースの新馬も見ておきたい。

それで府中から京王線に乗って京王多摩川で降りたら、京王閣寄りの改札口が閉鎖されているではないか。今日は京王閣競輪の非開催日で場外発売もやっていない。それでちょっとがっかり。なぜか。矢野口駅までの無料バスが運行されないのである。これでは帰途も電車を乗り継がなければならない。

Dsc_2898_2 

とはいえ、ここまで来てしまったのだから、京王閣とは反対側の改札口を出て歩く。大井1レースまではまだ時間があるので、目に入ったお店で昼メシ。それが近年稀に見るハズレであった。紹介もできない。しかもやたら長い時間を待たされるうちに、1レースの発走時刻も過ぎてしまったのである。踏んだり蹴ったりとはまさにこのこと。このあたりから、今日の雲行きが怪しくなってきた。

Dsc_2894 

オフト京王閣に到着。さっそく1レースの結果を確認すると、私が秘かに狙っていたバンダイクイーンが勝っていた。単勝1250円の配当にヘコむ。

いや、それよりもヘコんだのは、京王閣では兵庫クイーンカップの場外発売がされていなかったことだ。今日も広域発売は門別なんですね。これは確認してこなかった私が悪いのだが、これで私がここへ来た理由がなくなってしまった。

大井2レースを見届けて早々に引き揚げ。むろん馬券はハズレ。バスがないから再び歩いて京王多摩川駅に戻る。その途中、たい焼き屋さんを見つけた。そういえば、京王閣の近くに美味しいたい焼きがあると聞いたことがある。それでひとつ買ってみた。

あれ―――?

正直そんな味。おかしいなと思いつつ歩いていたら、すぐ近くにもう一軒たい焼き屋さんがあるではないか。きっとこっちだったんでしょうね。さすがに、もうひとつ買う気にはなれなかった。こんな日もある。

 

***** 2015/11/05 *****

 

 

 

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2015年11月 4日 (水)

【訃報】タガノジンガロ

JBCの3レースを前にカメラマンと話をした。

地方競馬の祭典なのだから、地方所属馬が馬券に絡んで欲しい。できれば2頭、いやせめて1頭でも構わない。その可能性があるとすればどの馬か―――?

そこでふたりの意見が一致したのである。

「タガノジンガロ」

Jingaro1_2 

いま振り返れば虫の知らせだったのかもしれない。

言わずと知れた兵庫現役最強馬。昨年の交流重賞かきつばた記念ではJRAのノーザンリバーやダノンカモンを退けて兵庫史上3頭目となるダートグレード制覇を成し遂げた同馬は、その後も積極的に各地の交流重賞を渡り歩いた。かきつばた記念優勝以後も、地方でのダートグレードに限れば、7着、3着、4着、3着、2着、5着と、掲示板を外したことは一度しかない。

前走の東京盃にしても初めての1200m戦のせいかゲートが決まらず、後方からの競馬を強いられた。それでも、直線だけで5着まで押し上げたのだから立派。今回は2度目の慣れが見込める上、1枠1番を引き当てた。スタートさえ決まればチャンスはある。

そしたらズバッとゲートを決めて、内目の3番手を進んで行くではないか。これは絶好のポジション。ひょっとしたら、やってくれるかもしれない。

大歓声と共に馬群が直線に向く。1番人気ダノンレジェンドにムチが飛ぶが、逃げるコーリンベリーの脚色は緩みそうもない。これはセーフティーリードか。JBCスプリントとしては初となる牝馬のチャンピオンが誕生した。

Sprint 

おや?と思ったのはその直後である。勝ち馬の後ろ姿を撮り終え、ファインダーから目を離したところで、ようやく目の前を後続の馬たちが駆け抜けていった。その中に、木村健騎手の勝負服を見つけたのである。

おかしい。あんなに負ける馬じゃない―――。

この日はGⅠ3連発のJBCデー。レース後のバックヤードは大騒ぎになる。勝ち馬のウイニングラン。口取り撮影。プレゼンターの斎藤工さんの登場。てんやわんやの表彰式が終わるのを見計らったように、JBCクラシックの出走各馬の本馬場入場である。祭りの喧噪のさ中に、タガノジンガロのことはすっかり頭から抜け落ちていた。

Jingaro2 

訃報を知ったのはずっと後のことだ。洗い場に戻ったタガノジンガロが急性心不全で死んだらしい、と。

馬については熱心に取材している方もいるし、私なぞより地元のファンの方のほうがずっと詳しいだろう。だからここであれこれ書くことは差し控えたい。ただ、ひとつ。書かずにいられないのは、オオエライジンに続いてまた大井で残念なことが起きてしまった。そのことである。

「また大井か」

きっと兵庫の方はそう思わずにはいられまい。ただ少なくとも、私とそのカメラマンはタガノジンガロを応援していた。どうか大井を忌み嫌うことだけは避けて欲しい。地元の最強馬を遠征先の客死で失う悲しみは知っているつもりである。昨年は選出されたJBCではなく京都のみやこSを選んだ陣営も、今年は―――右回りということもあっただろうが―――大井を選んでくれた。そのこと自体、感謝の気持ちでいっぱいなのである。

 

***** 2015/11/04 *****

 

 

 

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2015年11月 3日 (火)

ラブリーデイの憂鬱

思えば今年の正月の時点では重賞未勝利。一介のオープン馬に過ぎなかった。

ところが明けて5歳の中山金杯でアッサリ重賞初制覇。ただしここはハンデ戦である。フランシス・ベリーの腕にも助けられた。内枠有利の馬場状態で2番枠を引いた運も見逃せない。この時はたしかその程度の評価だった。

続く京都記念は別定GⅡだから斤量の恩恵はない。ところがこのレースは、ハープスターとキズナという我が国の2大スターホースが出走するとあって、GⅡとは思えぬ熱気に包まれていた。ハープスターの単勝オッズ1.8倍。キズナは2.3倍。その両馬が後方で牽制し合うのを尻目にまんまと先行して勝ったラブリーデイの評価は、高いものだったとは言い難い。実際、翌日の新聞では、勝ったラブリーデイよりも負けたハープスターやキズナの記事に多くの紙面が割かれていた。

2番人気で臨んだ鳴尾記念は2馬身差の圧勝。だが、あろうことか、このレースは土曜日の重賞だった。しかもダービーと安田記念の狭間とあっては、大きく取り上げられずはずもない。このころになってようやく、この馬が背負う不思議な宿命に気づき始めた。池江調教師の管理馬で金子オーナーの勝負服なら、もっと人気を集めてもおかしくはない。上半期だけで重賞3勝。そこで負かした相手は、ロゴタイプ、ハープスター、キズナといった一流馬。しかもそのすべてがレコード勝ち。なのに宝塚記念でも6番人気に留まるのである。

秋初戦の京都大賞典でようやく1番人気の栄誉を掴むが、3.1倍というその微妙なオッズにファンの心理が現れていた。重賞未勝利馬のサウンズオブアースでさえ3.9倍。このレースでラブリーデイが見せた上がり32秒3の鬼脚は、自身の評価が上がらないことに対する抗議のパフォーマンスだったのかもしれない。

迎えた天皇賞。「それでも」はまだ続く。

直前まで1番人気はエイシンヒカリで、ラブリーデイへの票は思いのほか伸びない。絶好の秋晴れなのに入場者数は前年比減。ゴール後の盛り上がりもいまひとつで、ウイニングランの浜中騎手が手を振って観衆を煽るシーンもあった。1番人気が勝ったGⅠレースでこのような光景は過去に見たことがない。むしろゲストの東出昌大さんへの歓声の方が、大きかったのではあるまいか。

Hamanaka 

2歳時から重賞戦線で活躍していてダービーにも出ているから、遅れてきた大物とも言い切れぬ。この勝負服では「苦労人」のイメージも抱きにくい。ごくありふれた黒鹿毛で、好位追走からゴール前でちょいと前に出るだけのシンザンタイプ。ハラハラの大逃げを打つわけでもなく、かといって豪快な追い込みを見せるわけでもない。良くも悪くも個性に乏しい。

Lovely 

調教師の口からは次走JCが明言された。それを聞いていた記者が、JCを勝てば年度代表馬かなぁ……と呟く。

いや、ドゥラメンテの2冠は確かに凄いが、宝塚記念、天皇賞、JCの3勝には及ぶまい。それでも記者は悩むのである。これひとつ取っても、ラブリーデイの置かれた立場を端的に表している。JCにはミッキークイーン、ゴールドシップが参戦予定。よもやラブリーデイが1番人気を譲るなんてことはあるまいな。

 

***** 2015/11/03 *****

 

 

 

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2015年11月 2日 (月)

ふつか記

11月1日。9時00分。自宅を出発。晴れ。無風。絶好の天皇賞日和。

9時30分。府中本町からの連絡通路は人の波。子供連れの姿もチラホラ。

Dsc_2848 

9時35分。東京競馬場上空も雲一つない青空。まさにまさにラブリーデイ(すばらしい好天の一日)。ラチ沿いにはビニールシートの花が咲き、スタンドの席もすでにあらかた埋まっている。

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9時40分。スタンド3F・メインインフォメーション隣では生バンドの演奏の真っ最中。

Dsc_2854 

10時06分。1レースとは思えぬ大歓声が上がる。GⅠ開催日を実感しますな。

Dsc_2855 

10時15分。ちなみに今日は馬主席も満席。私も席はない。ロビーに空いている椅子を見つけたので、ここを一日の居場所と決める。

10時40分。『むぎんぼう』で朝食。朝からゴボウかき揚げの花が咲く。

Dsc_2860 

11時31分。4Rは芝1600mの新馬戦。人気のルフォールが外から伸びて前を捕まえると、余裕たっぷりに突き放してみせた。着差以上の完勝。8分のデキと聞いていたのに、それでこの勝ちっぷりだから次への期待は当然高まる。キングカメハメハの牝馬。

4r 

12時21分。5Rの発走。今度は芝1800mの新馬戦。ここも人気のブラックプラチナムが外から伸びて、前に並んだかと思うや一気に2馬身突き放した。先ほどのVTRのようなレース。評判馬が集まったレースだけに、こちらも展望は明るい。

5r 

12時30分。いま勝ったばかりのブラックプラチナムのお祖母ちゃんがグレイスルーマーだと気づいた。ということはラブリーデイの従兄弟ではないか。さっきの4レースはキングカメハメハ産駒が勝ったことだし、これはもう天皇賞はラブリーデイで決まりか?

15時00分。天皇賞のパドックに出走18頭が姿を現した。エイシンヒカリの落ち着きぶりに驚く。いや落ち着いているというより覇気がない。大丈夫か?

Hikari 

15時32分。カシオペアSの中継も終わり立錐の余地なきスタンド。

Stand 

15時38分。うっすらと富士山が見えたので両手を合わせる。馬券当たりますように。

Fuji 

15時40分。天皇賞のゲートイン。

Gate 

15時42分。ラブリーデイだ!!

Lovely_2 

16時05分。表彰式。昨年の今頃はアルゼンチン共和国杯でスーパームーンやアドマイヤケルソに負けていた馬が……。たった一年で馬は大きく変わる。

Winner 

16時30分。最終レースも終わり、かなり遅い昼食は『馬そば深大寺』の鳥そば。さすがにこの時間なら客はいないだろうと思ったら、私の前に3人も並んでた。びっくり。

Kanban 

17時15分。今日はこのまま府中に泊まるのでまだ競馬場にいます。それにしても陽が短くなりましたね。

Dsc_2870 

23時00分。さすがに疲れたのでオロナミンCを飲んで元気はつらつ。

Dsc_2871 

11月2日。2時30分。疲れがどうにもならないので今度はデカビタCでデカビタチャージ。

Dsc_2872_2 

6時00分。明るくなったら外は雨が降ってた。少し寝る。

Dsc_2873 

12時00分。昼メシ。きのこの少ないきのこうどん。

Dsc_2874 

14時30分。京王線に乗って大井へ。

15時00分。スマホのバッテリーが切れた!

15時55分。大井競馬場に到着。雨が上がってなによりだが、それにしてもなんちゅう寒さじゃ。むろん私は昨日の服装のまま。コートなど持ってきているはずがない。

16時31分。大井3レースがスタート。

16時33分。目当ての馬は惨敗。

16時34分。騎手の言い訳を聞いて、再び府中へ逆戻り。

18時20分。府中に到着。さすがにもうクタクタ。寝過ごしそうになったが、府中で自然と目が覚めるのは長年のキャリアの為せる業か、あるいは病気か。

18時30分。乾杯。スマホのバッテリー復活。

Dsc_2876 

19時45分。しかし今度は私の方がバッテリー切れ。ウトウトし始める。

20時25分。私の隣に座る若者が競馬ファンであることが判明し、若干元気が回復。昨日の天皇賞どうだった? いいえダメでした。そうなの?実はオレはね……むふふ。

20時55分。その若者がディープインパクトを知らぬという。そんなバカな。それでよくよく聞いたら1994年生まれだという。ナリタブライアン三冠の年。ディープインパクトが引退時は小学生だと? それでまた気を失う。

21時20分。意識を回復したところで宴はお開き。電車に乗って帰宅。

22時00分。37時間ぶりの帰宅。あ~長い「一日」だった。これで明日はJBCかぁ。アラフィフの身には厳しい。

 

***** 2015/11/02 *****

 

 

 

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2015年11月 1日 (日)

今日は金子省吾騎手の誕生日

先日行われた埼玉新聞栄冠賞で私が注目していたのは、今年の羽田盃の勝ち馬ストゥディウムと、

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今年のダービー馬ラッキープリンス。2頭の3歳馬だった。

06 

それにしても、その年の牡馬クラシック2冠を分け合った2頭が埼玉新聞栄冠賞で対戦することなど、かつてあっただろうか。休養明け3戦目で調子が上がっているであろうストゥディウムと、浦和コースでは重賞を含めて4戦無敗のラッキープリンス。彼らならば、並み居る古馬を蹴散らしてのワンツーフィニッシュを決めたとしても、なんら不思議ではない。

しかし、そんな世代交代を願う私の思いはあっさり打ち砕かれた。9歳馬カキツバタロイヤルが4角5番手から大外を豪快に追い込むと、内で粘る8歳馬ガンマーバーストを半馬身かわしてゴール。2012年川崎マイラーズ以来約3年半ぶりの勝利を果たしたのである。

Shogo 

馬上で喜びを爆発させた中野省吾騎手は、デビュー7年目でこれが嬉しい重賞初制覇。今もっとも躍進著しい騎手と言えるかもしれない。今年は71勝を挙げて南関東リーディング9位。たしか通算100勝を達成したのは昨年の6月だったはず。つまり100勝するのに丸6年かかっていたジョッキーが、今年はたった10か月間で71勝を稼いで、さらに重賞まで勝ってしまったのだから、きっと何かを掴んだのであろう。あるいは魔法の鞭でも手に入れたのかもしれない。

実は今日11月1日は彼の誕生日。24歳だから、当然彼はオグリキャップの現役当時を知らない。だがその若さが競馬を面白くしてくれる。

Shogo2 

優勝騎手は若くても、勝ち馬は高齢だった。2頭の3歳馬のマッチレースを夢見ながら、終わってみれば9歳、8歳、7歳の順だから言葉もない。勝ったカキツバタロイヤルは、埼玉栄冠賞には4年前から皆勤しており、その着順はそれぞれ②②③②と惜しいところであと一歩足りなかった。

つまり「5度目の正直」である。それ自体が重賞では珍しいことだから、勝ち馬に賞賛を惜しむつもりはまったくない。だが一方で、ただ単に順番が回ってきただけという気もする。今回着外に敗れた若き2頭には、ぜひとも巻き返しを期待したい。若い力が競馬を面白くするのである。

 

***** 2015/11/01 *****

 

 

 

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