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2015年10月 2日 (金)

まさかの優勝

今年のプロ野球セ・リーグを制したのは、昨年5位との差6.5ゲーム差でダントツの最下位に沈んだヤクルト・スワローズだった。前年最下位からの巻き返し優勝は史上7例目。関係者ならびにファンの皆様にはお祝いを申し上げる。

実は、ヤクルトが首位を走っていた春先に、一度このネタを書いている(4/18付「無敗の戴冠か大化けか」)のだが、その時はまさかホントに優勝するとは思ってなかった。人気薄の逃げ馬を軽視すると痛い目に遭う。

4/18付では、大レースにおける前走最下位からの巻き返し例として、1948年オークスのヤシマヒメ、55年桜花賞のヤシマベル、62年オークスのオーハヤブサ、そして67年天皇賞(秋)のカブトシローの4例を紹介している。だがもう一例、大事なレースを忘れていた。80年の天皇賞(秋)を逃げ切ったプリテイキャスト。彼女もまた前走目黒記念で大差のしんがりに敗れていながら、続く天皇賞で圧巻の逃げ切り勝ち。やはり人気薄の逃げ馬は侮れない。

プリテイキャストの手綱を取ったのは柴田政人騎手(現調教師)。前々走の毎日王冠からコンビを組んでいたが、ハナに立つしか勝ち目はない馬なのに、毎日王冠ではスタートに失敗して、先頭に立つまでに力を使い果たしてしまい、続く目黒記念ではハナに立つことすらできなかった。その反省から、天皇賞ではスタートだけに集中していたという。出ムチで気合を入れたのも、そんな覚悟の現れであろう。先頭に立ってからはマイペース。1週目スタンド前を過ぎるあたりから後続馬を徐々に引き離しにかかる。50m。60m。向こう正面で100m近く引き離したところでスタンドが大きくどよめいたが、政人騎手の耳には届いていなかった。

政人騎手が耳を澄ませて聞いていたのは何か? それは後続の馬の蹄音である。レース途中から、その音が聞こえなくなった。自分ではそんなに早いペースだとは思っていない。ひょっとしたら事故でも起きたのか? そんな不安が頭を過ったが、それでも後ろを振り返ることはしなかった。ペースそのものは間違っていないという確信があったという。

このレースでメジロファントムに騎乗していた横山騎手(ヨコテンのお父さん。和生騎手のおじいさん)は、政人騎手に乗り替わる前にプリテイキャストとコンビを組んでいた唯一の騎手。彼女が気分よく走っているのは、はるか後方からでも感じ取ることができた。そこで周りの騎手に「遅いぞ! なにしてるんだ。早く捕まえに行け」と怒鳴ったが、先頭との距離があり過ぎるせいかどの馬も動くに動けない。仕方なく3コーナーで自力で仕掛けて行くことになるのだが、その時はもうプリテイキャストにやられたと感じていたことだろう。結果、メジロファントムは2着でゴールするが、それでもプリテイキャストとは7馬身の差があった。

プリテイキャストの母タイプキャストは、マンノウォ―Sなど通算21勝を挙げて全米最優秀古馬牝馬にも選ばれた名牝。オーナーが飛行機事故で亡くなり、財産整理のため同馬を手放すことを知った吉田重雄氏が、72万5000ドルという当時の世界最高落札価格で購入して話題となった。「無茶な買い物」と揶揄する声もあったと聞くが、産駒が日本最高峰のレースを勝ったのだから、文句を言われる筋合いはなかろう。なにより、あれほど鮮やかな逃げ切りは見たことがないと言うファンは今なお多い。

Kencast 

今年のヤクルトは大差圧勝とまではいかなかったが、選手個々の成績を見れば優勝して当然と思わせる。春先の快走を他球団はどう見ていただろうか。前走シンガリ負けなのだから、そのうち止まる。誰もがそう思う。そこに落とし穴が潜んでいるかもしれない。「相手を間違えた」は、検量前で良く聞く言い訳のひとつである。

※写真はプリテイキャスト最後の産駒・ケンキャスト

 

***** 2015/10/02 *****

 

 

 

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