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2015年10月29日 (木)

ファンは友達

今週末は天皇賞。勝ち負けはともかく、レースの鍵を握るのが武豊とエイシンヒカリであることは間違いない。

Hikari1 

通算9戦8勝。毎日王冠の逃げ切り勝ちは、あのサイレンススズカ以来のこと。今年の天皇賞(秋)が行われるのは11月1日。偶然にもサイレンススズカの悲劇が起きた1998年と同じではないか。それで早くから、エイシンヒカリにサイレンススズカの姿をダブらせる声が挙がっていた。だが、当の武豊騎手はそれをやんわりと否定する。

同じ逃げ馬と言ってもタイプが違う。サイレンススズカはスタートから猛ペースで後続を突き放しての大逃げ。一方のエイシンヒカリは後続を引き付けてのタメ逃げで、どちらかと言えば“普通の”逃げだ。また、そもそもサイレンススズカの領域にはまだまだ達していないという思いも、武豊騎手にはあるのだろう。それほどあのスピードは強烈だった。

だが、エイシンヒカリの坂口正則調教師が、昨日こんな言葉を漏らしていた。

「たぶんお客さんが嫌いなんだろう。お客さんを好きになってほしい」

Hikari2 

エイシンヒカリはパドックで極端にテンションが上がってしまう。それで毎日王冠ではホライゾンネットを着用したが、あまり効果は無かった。調教師の言葉はそれを嘆いたものだが、これが実に興味深い。というのも、あのサイレンススズカの陣営からも、同じような言葉を聞きたことがあるからだ。

溢れる才能を秘めたサイレンススズカだが、デビュー当初からその素質をぞんぶんに発揮していたわけではない。レース前に何かの理由で興奮すると、それを抑えることができず、ガーッと飛ばしてしまうその気性が特に弱点とされた。ゆえに観客に近いスタンド前の発走は致命的。ゲート扉の下を前肢で掘って、くぐり抜けようとした弥生賞は、今も語り草になっている。

1998年の毎日王冠ではGⅡとしては異例の13万人が東京競馬場に詰めかけた。宝塚記念を楽勝したサイレンススズカに、ひとつ年下のエルコンドルパサーとグラスワンダーが挑む。本馬場入場でサイレンススズカが芝コースに姿を現すと、スタンドからはGⅠ並みの大歓声が上がった。

ただでさえテンションに気を遣うサイレンススズカである。だからなるべくスタンドから遠い内ラチ沿いを一目散に向こう正面まで逃げていきたい。普通はそう考える。

だが、鞍上の武豊騎手は敢えて若いファンが陣取る外ラチ沿いにサイレンススズカを誘導した。頚を上下に振ってイレ込むサイレンススズカを、ゆっくりと1コーナーまで歩かせたのである。そしてレースではエルコンドルパサーらを寄せ付けずに逃げ切ると、今度はGⅠのように芝コースを引き上げてきた。しかも、再び敢えて大歓声の待つ外ラチ沿いをゆっくり歩いて戻ってきたのである。

お客さんは危険な存在ではない。ともだちだ。彼らの大声援は君のスピードに対する賞賛の嵐なんだ―――。

武豊騎手はそれをサイレンススズカに教えていたに違いない。続く天皇賞の本馬場入場でも武豊騎手は毎日王冠と同じように外ラチ沿いをゆっくりと歩いた。ただ毎日王冠と違ったのは、レースが終わってからファンの大歓声が迎える外ラチ沿いを引き揚げてくることがなかったことだ。

Suzuka 

エイシンヒカリにとっては初めてのGⅠレース。そろそろお客さんは友達だと分かってほしい。超満員のパドックでそれが試される。

 

***** 2015/10/29 *****

 

 

 

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