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2015年10月23日 (金)

鷹番特別の謎

東急東横線の学芸大学駅の東口界隈は「鷹番」と呼ばれる町域。蕎麦好きには名店の多い町として知る人も多いかもしれない。いくぶん変わった町名は、江戸時代に将軍が鷹狩りに訪れる鷹場を監視するため鷹番屋敷が、この地域に置かれていたという史実に由来する。

その鷹番に『恩家』という讃岐うどん専門店がひっそりと暖簾を掲げているのをご存じだろうか。駅から歩いて1分とかからない細い路地の先にある、知る人ぞ知る名店。昼時は開店直後から行列が絶えることがない。私も列の最後尾に並ぶと、席が空くまでの間、鷹番という地名についてしばし思いを巡らせた。

Noren 

むかし大井競馬場で「鷹番特別」というレースが行われたことがある。2006年11月29日の10レース。ダートの1600m戦で、勝ったのは酒井忍騎手騎乗のスズランメイクだった。

Suzuran 

鷹番だけでなく、その隣町の「碑文谷特別」や「柿の木坂特別」というレースが行われたという記録もある。私は幼少期をこの一帯で過ごしたので、誇らしい気持ちを抱く一方で、正直そこはかとない違和感も禁じ得ない。「目黒区特別」のような区の名称や、「自由が丘特別」のように有名な駅の名前を使うのなら分かる。名所名跡があるわけでもなく、知名度だって低いはずの「鷹番」「碑文谷」「柿の木坂」といった単なる町域名が、なぜ競馬に使われたのであろうか。

大井競馬場のお膝元は品川区であるが、「中延特別」とか「八潮特別」といったレースが行われた記憶はない。それを思うと、学芸大学駅一帯の地名がことさらの特別扱いを受けているように感じたとしても無理はなかろう。

敢えて競馬との接点を探せば、かつての目黒競馬場の存在である。当時を知る人に聞いたところでは、鷹番周辺には目黒競馬の外厩施設があり、今の目黒通りは競馬場への行き帰りの馬がポコポコと蹄音を響かせる長閑な街道だったそうだ。

とはいえ、そんな昔の話を引っ張り出してレース名に使ったりするだろうか。そもそも目黒競馬と大井競馬とでは関係がない。

ならば、立会川の源流説はどうだろうか。大井競馬場の脇を流れる立会川は、碑文谷公園の池にその流れを発するのである。しかし、それなら碑文谷公園特別とでもするだろうし、「源流に敬意を表する」というのも理由として理解しにくい。

そんなことを考えているうちに、ようやく席が空いて店内に通された。店内は小じんまりとしていて、座席数はテーブルとカウンター合わせても12席しかない。しかしこれが妙に落ち着くのである。厨房では大将がうどんを茹でる釜をじっと見つめている。

Hanpen 

注文はぶっかけ。トッピングにはんぺんの天ぷら。はんぺんの天ぷらはこの店でしか食べたことがない。もちろん揚げたて。サクッという歯応えは瞬時に消え、たちどころにフワッとした食感が訪れる。これがたまらない。

Onya 

麺はいくぶん細めながら、噛むとしっかり歯応えがある独特の食感だ。人によっては固いと感じるかもしれない。だが、この麺を求めて行列を作る人もいるのだから、これこそ店の個性であろう。イリコが香るかけツユも出色。これにはんぺんの天ぷらをちょいと浸して一口食べたその瞬間、行列の苦労も鷹番特別の悩みもたちどころに吹き飛んだ。悩んだときは、美味いものを食べるに限る。

 

***** 2015/10/23 *****

 

 

 

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