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2015年9月 6日 (日)

榮久庵デザインに囲まれて

白紙撤回で決着がつくかに思えた東京五輪のエンブレム問題は、どっこい下火になるどころかむしろ火の勢いが増した感がある。外野としては正直もうどうでもいいのだが、メディアは追及の手を緩めようとしない。

招致段階で使った桜のリースを模ったエンブレムに待望論が出ている。だがIOCの規定で五輪エンブレムとしては採用できないそうだ。それならリオに敗れた2016年の五輪招致に使ったエンブレムもダメだろうか。

Gorin 

2016年の水引きのデザインを考案したのは、インダストリアルデザイナーの草分けとして知られ、今年2月に亡くなった榮久庵憲司氏。大陸と大陸、国と国、人と人―――そんなあらゆるものを結び合い、ひとつにしたいとの願いが込められているという。ちなみに、榮久庵氏は2020年の桜の招致エンブレムでもその監修にあたっていた。いずれにせよ、素晴らしいデザインであるのに、使えないというのはもったいない。

榮久庵氏は競馬ともつながりがある。皆さんお馴染みのこの緑のエンブレムは榮久庵氏がデザインしたものだ。

Jra 

このエンブレムが発表されたのは、マックスビューティーが8馬身差で桜花賞をぶっちぎったその翌日の1987年4月13日。以来28年間、JRAの象徴であり続けている。そのコンセプトは競馬場のコースと疾走するサラブレッド。だから、パッと見は円に見えるかもしれないが、実は楕円になっている。ごくごくシンプルでありながら、ターフの上を疾走する馬の躍動感が伝わってくる。

榮久庵氏の代表作として知られるのが、1961年にデザインした「キッコーマンの卓上しょうゆ瓶」。当時主流だった陶器のしょうゆ差しは、注ぎ口から液だれしてしまい、受け皿が必須だったため、同社が栄久庵さんに問題を解決できるデザインを相談したことがきっかけだった。それから半世紀余りが過ぎた現在もその形状が引き継がれているばかりか、世界各国でも同形の瓶が使用されている。

Kikko 

ほかにも、秋田新幹線の初代「こまち」(E3系)や成田エクスプレスといった車両関連にも榮久庵氏のデザインは多いが、その中にはJR南武線に使用されている209系も含まれる。つまり我々は、榮久庵氏デザインの電車に揺られて府中本町に行き、榮久庵氏デザインのエンブレムを見ながら競馬場の正門をくぐり、榮久庵氏デザインのしょうゆ瓶を手に取りつつ食事をしていることになる。

Shouyu 

榮久庵氏がご存命なら、昨今の五輪エンブレムにドタバタ劇をどうご覧になるだろうか。美しい曲線のしょうゆ瓶を眺めながら、そんなことを考えた。「日本も平和だね」。そうおっしゃるかもしれない。

 

***** 2015/09/06 *****

 

 

 

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