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2015年9月16日 (水)

ドレスコード

競馬場にはドレスコードがある。男性はスーツにネクタイに革靴。女性はそれに準じた服装が求められる。夏競馬は節電の意味も含めて若干ドレスコードが緩むが、ドレスコード自体がなくなるわけではない。ご覧のように、緩くなったらなったでなお細かなルールが依然として存在する。

Dress 

―――といっても、これは広い競馬場の中でもごくごく限られたエリア。馬主席と来賓席に限られた話。もし、すべての入場客に対してドレスコードを求めていたら、週末の武蔵野線や南武線の光景は、今とはまるで違ったものになるはずだ。

海外の競馬場は日本よりドレスコードにうるさい。中でも英国は別格の印象がある。ロンドンから特急で2時間ほどの距離にあるチェスター競馬場は、市内を流れるディー川の広大な河川敷に円形に柵をしつらえただけの牧歌的なコース。世界最古の常設競馬場として競馬ファンには知られる競馬場だが、スタンドなどは日本の地方競馬より簡素で小さい。まさに「古き良き競馬場」の趣だ。

Chester 

あの日、私はボタンダウンのカジュアルシャツにコットンパンツ、革靴、そしてジャケットという服装で、チェスター競馬場のメンバーエリア専用入口から取材証(パス)を見せて中に入ろうした。すると、ただちに屈強な警備員二人に行く手をふさがれたのである。彼らは何やら英語でまくし立てたのち、身振りで「向こうに回れ」と指示をする。その方向に目を向けると、シルバーリング(一般エリア)の入場口があった。

そのパスを持っていれば、どこにでも入っていけるはず。つたない英語でそう訴えてみたのだが、相手は折れるそぶりを見せない。仕方なくいったん街に戻り、安売りのネクタイを購入して、あらためて同じ通路を通ったら、今度は何も言われず、実にアッサリと入ることができたではないか。パスはパス、ドレスコードはドレスコード。そういうお国柄なのだろう。私自身注意していたつもりだが、まさかロンドンから遠く離れた地方の競馬場で、そこまで厳しいことを言われるとは思っていなかった。

その翌日に訪れたのはアスコット競馬場である。前日のチェスターを教訓に細心の注意を払ったことは言うまでもない。ネクタイ着用は当然。わざわざハロッズに立ち寄って高価なシャツも買った。コットンパンツなんか履くわけがない。唯一の不安は一足しか持っていなかった革靴で、私の足下を指差して何事か文句を言う警備員がいたが、それでも中には入れてくれた。そのことについて、アスコットの警備員の方々と競馬の神様に感謝せねばなるまい。なぜか。この日、デットーリ騎手がアスコットで行われた7つのレースすべてに勝つという、世界の競馬史に残る快挙を達成したのである。もしメンバーエリアにいなければ、こんなシーンを目撃することもできなかった。

Dettori 

以来、競馬場には正装かそれに近い服装で出かける癖がついている。中山でも川崎でも区別はしない。基本的にはスーツ、もしくはジャケットを着用。ネクタイもポケットに忍ばせている。先日は、もう秋競馬なのだからノーネクタイはまずかろうと、ちゃんとネクタイを締めて中山に出かけたら、ドレスコードに限ればこの中山最終日まで「夏競馬」と聞かされた。なーんだ。ひとり武蔵野線内で汗だくになって損した。それというのも、かつてチェスター競馬場で怖い思いをしたせいだ。やれやれ。

 

***** 2015/09/16 *****

 

 

 

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