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2015年9月30日 (水)

好奇心100%の競馬です

先日、何気なくTVを観ていたら、NTV「ぐるぐるナインティナイン」の「ゴチになります16」に女優の賀来千香子さんがゲスト出演されていた。このコーナーには俳優の柳葉敏郎さんもレギュラー出演されている。画面に映し出された2ショットを見て、思わず90年初頭の競馬を思い出した。オグリキャップが有馬記念を勝ち、トウカイテイオーが無敗でクラシック2冠を制したあの当時である。

同じような感慨を持った方は、ひとり私のみではあるまい。このお二方がJRAのイメージキャラクターを務めていらしたのは1990年からの2年間。オグリキャップ人気と武豊に代表されるアイドルジョッキーの活躍で、競馬場には女性客が急増していた。

Giba1 

そんな時代に流れたのが、柳葉さんと賀来さんのカップルが楽しげに競馬を観戦するというTVコマーシャルである。二人の周りにも若い男女の姿は多い。レースの盛り上がりと共に2人の気持ちも高まってくる様子が伝わってくる。そこはまるでライブコンサートの会場のよう。「競馬場でのデートって意外におしゃれかも……」。世の若い女性にそう思わせるのに、じゅうぶん過ぎるインパクトを与えた。

ただ、ベテランファンを中心に、こうしたライト化路線に違和感を覚えた向きも多かったことも否定できない。

この二人の前にイメージキャラクターを務められたのは小林薫さん。馬主でもあり、また熱心な競馬ファンでもある小林さんが、TVの向こうから温かく競馬を語るそのCMは、多くの競馬ファンの心を掴んだ。それが突然「好奇心100%の競馬です」なんて言われても、既存ファンが戸惑うのも無理はない。

だが、柳葉さんご本人も、実は熱心な競馬ファンであることをご存じだろうか。馬主としてユウサンハッピーやジョニーパシフィスなどこれまでに数頭を所有。また、1996年にNTV系で放映さたドラマ「ナチュラル 愛のゆくえ」では、浦河のサラブレッド生産牧場の跡取り役で出演し、さらに2013年の映画「三本木農業高校、馬術部」でも馬術部の顧問役を演じるなど、馬とのつながりは今も深い。さらに、賀来さんも2005年に公開された映画「ハルウララ」で調教師の妻役を演じている。

Giba2 

25年前、ぎこちなくも楽しそうに競馬場でデートをしていた二人が、今なお競馬に関わっている―――。そんな風に思うことにすれば、どことなくホッとする部分もないだろうか。ないスかね?(笑) ともかく私もトシを取った。それは間違いない。膨大な資料の山の中から、このレープロ(上は1991年の日本ダービー、下は同じ年の有馬記念当日のもの)を引っ張り出しながらつくづくそう感じたのである。「ゴチになります」ごときでそんなことまで考えてしまったのは、さすがに私だけかもしれない。

 

***** 2015/09/30 *****

 

 

 

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2015年9月29日 (火)

六甲おろし

先週土曜の中山5Rは芝マイルの2歳新馬戦。道中3番手追走から逃げ込みを計る前の2頭を、ゴール寸前で差し切ったアポロジョージアが見事デビュー勝ちを果たした。父のロッコウオロシという種牡馬は正直あまり馴染みがない。15年ほど前にダートや障害で活躍した「ロッコーオロシ」なら知っているが、どうやらその馬とは違うようだ。

5r 

「血統は地味だけど……」。アポロジョージアの手綱を取った田辺裕信騎手は、そんなコメントを残した。だが、ロッコウオロシの父ハリケーンランといえば、モンジューとの父子凱旋門賞馬の偉業を達成した名馬であり、また母系にも愛GⅠ・ナショナルSを制したベケットを持つ。すなわち名血である。アジュディケーティング産駒でテンリットルを近親に持つ程度の「ロッコーオロシ」に比べれば、そのブラックタイプは華やかであると言ってもよかろう。

ただ、日本の競馬に合うか合わないかとなると、また話は違ってくる。産駒2世代目にしてこれがJRA初勝利。しかもロッコウオロシ自身、昨年で共用停止となったという。そういう意味では確かに「地味」なのかもしれない。

冬場を中心に六甲山から吹き降ろす「六甲おろし」は、冷たい冷たい北風だ。これが真冬の阪神競馬場を直撃する。時に突風にもなる。例年、阪神競馬場の桜が周辺より若干遅れて開花するのは、幹の根本に氷を撒いているからではなく、この六甲おろしのせいだとも言われる。

Mejiro 

1996年の阪神3歳牝馬S当日も、猛烈な六甲おろしが競馬場を吹き荒れていた。この季節の阪神競馬場は、午後になると陽射しがスタンドに遮られるので、ただでさえ寒い。そこに風速10mはあろうかという北風が直接吹き付けるのである。カメラマンもラチ沿いのお客さんも、みんなガタガタ震えていた。馬だって辛かろう。圧倒的人気を背負って4着に負けたシーキングザパールの敗因に、この風を挙げた評論家もいた。

今や2歳の牡馬も12月の阪神を目指すご時世である。デビュー勝ちを飾ったアポロジョージアも、暮れの阪神で冷たい六甲おろしの洗礼を受けるのかもしれない。だが、そこはロッコウオロシの産駒。六甲おろしに颯爽と、蒼天翔けるかの如き走りを、きっと披露してくれることであろう。

 

***** 2015/09/29 *****

 

 

 

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2015年9月28日 (月)

外ラチのさらに外

その光景を見て、思わず我が目を疑った。

先週土曜の中山。1Rの馬場入り直後でのことである。

Kara1 

カラ馬が外ラチ沿いをこちらに突進してくる。いや、よく見ればそこは外ラチ沿いではない。外ラチのさらに外。普段は警備員やカメラマンのいる狭い隙間を、放馬したシュートラヴがフルギャロップで駆けてくるではないか。

危ない! その先にはウイナーズサークルがあるぞ!

ドガーン!

Kara2 

物凄い音を立ててウイナーズサークルを囲むラチに激突したシュートラヴは、もんどり打ってひっくり返った。ただちに厩務員が駆けつけて、確保。これで怪我人が出なかったことは奇跡であろう。警備員は慌てて馬場に逃げ、普通ならもっとたくさんいるはずのカメラマンも、1レース目ということで比較的少なかった。全力疾走する馬の体当たりを喰らったら、ひとたまりもない。ぐにゃりと折れ曲がった柵がすべてを物語っている。

Rachi1 

騒然とする中でスタートが切られた1レースは牝馬限定の2歳未勝利戦。スタートからハナを奪ったハタノインサイトが、1200mを一気呵成に逃げ切った。フレンチデピュティの産駒。

1r 

2レースは芝1800mの2歳未勝利戦。マイネルファンが先手を奪うと、ディーマジェスティの猛烈な追い込みを凌いで逃げ切った。

2r 

開幕から外差しが目についた中山の芝コースだが、この土曜からCコースに変更された影響であろうか。一転先週は逃げ先行馬の活躍が目立った。不安定な天候と相まって、この中山の馬場は読みにくい。「先週と全然違うよ」。あるベテラン騎手もそう言って嘆いた。ひょっとしたら、冒頭のシュートラヴも馬場状態を隅から隅まで調べたかっただけなのかもしれない。

それでもさすがに外ラチの外はまずかろう。だいたいが、外ラチを越えたということは、フェンスを越えて客席に飛び込むこんでいた可能性も否定できまい。となれば、第二のサッポロホマレ事件である。サッポロホマレはパドックのフェンスを飛び越えて客席に飛び出した。ラチやフェンスに馬を確実に止める保証はない。騒ぎを起こしたシュートラヴが「左後肢挫創」程度の傷で済んだことも含め、そんな思いを新たにした。

 

***** 2015/09/28 *****

 

 

 

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2015年9月27日 (日)

ダンゴの話

今宵は十五夜。月見の風習は奈良時代ごろに中国から伝わり、平安時代には貴族の遊びとして流行、鎌倉時代には武士や庶民にも広がった。その後は豊作への感謝祭として日本人の生活にすっかり定着し、稲穂に見立てたススキと、満月のように丸い団子や里芋を供える風習が各地に残っている。

そこで我が家も近所の多摩川までススキを刈りに行ったのだが、どこにも生えてない。たしか去年もそうだった。10年前は河原一面に生えていたのに……。だが、子供たちに言わせれば、お月見のススキは生花店で買うものらしい。なんか釈然としないが、ススキがダメならせめて団子は自分たちで作ろう。それで朝から家族揃って団子作り大会と相成った。

競馬予想に使われる◎○▲×△の印を「ダンゴ」と呼ぶのをご存じだろうか。由来はもちろん、予想欄に並んだその形状が串に刺した団子の形に似ているから。ゆえに競馬記者は「ダンゴ打ち」とも呼ばれる。

Dango 

競馬専門紙に予想の印があるのは日本独自とされる。欧米の競馬新聞では馬ごとの単勝配当が記載されている程度。だが、この日本が世界に誇る文化も、考案者や始まりの時期はよく分かっていない。JRAの物知りに聞けば、こうした記号は学校の通信簿をヒントにしたという説があるそうだ。もしそうだとすれば予想欄の印を見る目も変わってくる。己の通信簿を客に曝される馬たちは、なんとも気の毒でならない。

◎が本命、○が対抗、▲か×が単穴(1着か着外)、△が複穴(2、3着候補)とするのが、おおまかな約束事。だが、馬券の種類が増えた昨今では△が4~5個に★とか△を二つ重ねたような(二重△)記号も増えた。なにせ3着まで予想しなければならないご時世である。予想欄に印が増えた現状をほくそ笑んでいるのは、間違いなく主催者であろう。どうしたって買い目は増える。

昼間は雲に覆われていた東京上空だが、夜になってぽっかり月が浮かんだ。月見も大事だが、今日の反省も疎かにしてはならない。それで競馬予想紙のダンゴを見ながら団子を食べた。月見と言えば、今日の阪神10Rに行われたムーンライトハンデキャップである。勝ったのはウインリバティで、予想紙にダンゴを並べたレッドオリヴィアは3着。個人的には11着に敗れたアドマイヤドバイに注目していた。なにせお父さんはあのアドマイヤムーン。そういえば彼が札幌2歳Sを勝ったのは10年前のちょうど今頃だった。

Admire 

団子を食べつつ秋の夜長は更けてゆく。中秋の名月はもちろん素晴らしいが、「砂漠の月」と呼ばれた名馬に思いを馳せるお月見も悪くはない。

 

***** 2015/09/27 *****

 

 

 

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2015年9月26日 (土)

牝馬のオールカマー

明日の産経賞オールカマーは、昨年のオークス馬・ヌーヴォレコルトが前売りで人気を集めている。そのヌーヴォレコルトを秋華賞馬で破ったショウナンパンドラも人気の一角。仮に牝馬2頭のワンツーフィニッシュという結果になれば、オールカマーでは20年ぶりのこととなる。

20年前のオールカマーで人気を集めたのはヒシアマゾンだった。その年の3月に米GⅠ・サンタアナハンデに出走すべく渡米したが、慣れぬ環境に馬体を減らし、水も飲もうともしない。挙句の果てに、雨で路盤がむき出しになった馬場での調教が祟って左前脚を捻挫。レースを目前にしながら無念の帰国となった。その後7月の高松宮杯に出走するも、まるで精彩を欠いた走りで5着。牝馬は一度体調を崩すと立て直すのが難しい。一時は引退説も流れた。それでもファンは、オールカマーに挑むヒシアマゾンを1番人気に押し上げたのである。

Ama 

実はこの年のオールカマーは台風12号のために平日の月曜日に行われた。にも関わらず、46,888人もの観衆が中山につめかけたのは、女王復活の瞬間をひと目見たいと願うファンが、それだけ多かったからにほかならない。前日の雨が残って馬場は稍重。アイビーシチーが先導するスローペースに業を煮やしたヒシアマゾンは、3コーナー付近で早くも先頭に立ってしまう。どよめくスタンドの大観衆。ヒシアマゾンが先頭のまま馬群が直線に向くと、満を持してスパートしたアイリッシュダンスが猛然と襲い掛かってきた。

その差は2馬身、1馬身、半馬身。しかしそこからがヒシアマゾンの真骨頂だ。マチカネアレグロを競り落としたニュージーランドトロフィー4歳Sでも、チョウカイキャロルとのマッチレースを制したエリザベス女王杯でも、馬体を併せての競り合いで彼女は負けたことがない。それが女王の女王たる所以。ラスト1000mのラップタイムは、計ったように11.8-11.8-11.8-11.8-11.4である。最後の1ハロンが少しだけ速いのはアイリッシュダンスが競りかけた分であろう。この日もクビ以上にその差を詰められることはなかった。湧き上がる大歓声。女王復活の瞬間である。

Allcomer 

ヒシアマゾンが名牝であることは論を待たないが、アイリッシュダンスにしても牡馬相手にふたつの重賞を勝っただけでなく、ハーツクライという不世出の名馬の母でもある。そういう意味において、この年のオールカマーは名勝負だった。果たして今年のオールカマーはどんな結末になるのだろうか。ヌーヴォレコルトもショウナンパンドラも、誉れ高き2頭の名牝に続きたい。

 

***** 2015/09/26 *****

 

 

 

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2015年9月25日 (金)

眠り

せっかくの休みだというのに東京は朝から冷たい雨が降っている。

今日の浦和1R・新馬戦に出走するフェイムダンサーが、以前から気になっていた。ぼちぼち散髪にも行かねばならない。だが、朝起きてカーテンを開けた途端に外に出るのが億劫になった。レースはネット中継で十分。髪だってひと晩で5センチ伸びるわけでもない。それで今日は一日寝て過ごすことに決めた。

ここのところ睡眠のことばかり考えている。端的に言えば寝不足なのである。正確に言えば、寝不足だと思っている自分がいるのである。

昔は睡眠時間なんて気にしなかった。なのに最近では「昨日は3時間しか寝られなかったから、今日は4時間余計に眠って取り戻そう」などと考えてしまう。それでも睡眠時間の“借金”は膨らむ一方。なぜか。眠ろう眠ろうと焦るあまり、眠ることができないのである。

「眠れない」と嘆くのは、人は眠れて当然だと思えばこそであろう。戦争になると特定の病気が減ると何かで読んだ。“増える”の誤りではない。その病気とは、胃潰瘍とか自律神経失調症の類だったと思う。おそらく不眠症もそこに含まれるはずだ。

競走馬が胃潰瘍になる話はよく知られている。その原因は「苛酷なトレーニングによるストレス」と一括りにされることが多いが、実は動物園に飼われている動物もしばしば胃潰瘍になるらしい。動物園でどのような「過酷なトレーニング」が行われているのか。そんなはずはないから、原因を他に考えてみる。そこで前述の「戦争で胃潰瘍が減る」の話を思い出した。緊張感のない環境に置かれて変調をきたすのは、何も人間に限った話ではあるまい。私が寝不足を感じるのも、私の周囲が平和であることの裏付け。ならば悪い話でもない。

Sleep 

馬は立ったまま眠ることができる。ベテランになれば馬せん棒を枕がわりに眠るなんてこともザラ。人間だって、どうしようもない状況に陥れば寸暇を惜しんで眠る術を備えているはず。寝不足を過度に心配することはあるまい。そうは思うのだが、結局今日も深い眠りを得るには至らなかった。

ちなみに、浦和のフェイムダンサーは2着。あれだけゲートで待たされては、気の毒と言うしかない。気難しいお局様のわがままに屈してしまった感じ。アニマルキングダムの近親だけに、距離を伸ばしての仕切り直しに注目したいが、それにしても眠いですね。

 

***** 2015/09/25 *****

 

 

 

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2015年9月24日 (木)

サバで大当たり?

昨日の浦和でのお昼は、来る途中の駅ナカで買い込んだサバ寿司でした。

Urawa 

秋といえばサンマだろうが、サバも秋になると脂がたっぷり乗って旨味を増す。そんな秋サバを使ったサバ寿司こそマツタケやサンマをも凌ぐ秋の味覚の筆頭と言う人もいるほど。銀色に輝く皮目の美しさを楽しみつつ、大きく口を開けてサバ寿司を一切れ頬張ってみれば、そんな意見にもなるほど納得せざるを得ない。トロッとした身の旨味と酢飯の甘みが口の中に広がり、その間に挟まれた大葉がさっぱりと味を引き締めてくれる。いやあ、美味い。

Saba1 

「秋サバは嫁に食わすな」の格言は、美味いモノを食べさせたくない嫁いびりの言葉だとする見解もあるが、一方でサバは“当たりモノ”の筆頭。とにかく足が早い。「サバの生きぐされ」という言葉もある。だから「嫁に食わすな」の格言は、食あたりをせぬようにと、嫁の身体を気遣った言葉とも言われる。

Saba2 

ところで、なぜ私は昨日のお昼にサバを選んだのか。

実は私、学習したのである。先日、大根おろしを食べて馬券が当たらなかったのは、大根が「当たらぬもの」の代表格だからだと書いた。ならば、当たるものの代表格たるサバを食べれば、馬券が当たるようになるのではないか。しかもサバは「足が早い」ときた。これ以上の鉄板食はあるまい。

そんなわけで、サバ寿司で満腹になった腹を抱えて、浦和10レースの馬券を購入。これはきっと当たるゾ。

Baken 

んで、結果は……。

10r 

ハズレ……。あれぇ? おっかしいなぁ。

ちなみに、「当たるかもしれない」なんて失礼なことを書く以上、サバ寿司を購入したお店の名前は控えさせていただこうと思ったのだが、あらためてその屋号を見れば、あのお笑い競馬予想家・I崎S五郎と同じ名前ではないか。これでは当たるものも当たるまい。ひょっとしたら、お店の方が「当たりませんように」との願いを込めて屋号を決めたのかもしれない。だとしたら効果は絶大であろう。

なんであれ、このサバ寿司がことのほか美味かったことは特記しておきたい。むろん、競馬場から帰宅してからひと晩経った今この時点に至るまで、お腹の状態になんら問題もないこともあわせて付け加えておく。

 

***** 2015/09/24 *****

 

 

 

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2015年9月23日 (水)

浦和の戸崎圭太

浦和競馬場の馬場入りでは、コースを左に折れてスタンドの前を常足で通過するのが一応のルール。だが、ダートグレードレースのJRA所属馬はそれをせず、コースに出るや右に曲がって、1コーナー方面に突っ走ってしまうことが多い。それでカメラマンも1コーナー寄りで待ち構えているのだが、そんな時に限って人気を背負ったJRA所属馬がスタンド方面に走っていってしまい、撮り損なうなんてこともある。

「今日は右にしようかな、それとも左かなぁ」

馬場入りの時間が近づくと、カメラマンたちの悩む声が聞こえてくる。

「戸崎あたりは昔のクセで左に来ることが多いような気がするけど…」

「でも(1番人気の)川田は右に行くだろうし」

私はJRAの馬がどこに走って行こうが、馬場入りはゴール前、すなわち「左」で撮ると決めているので、いちいち悩むことはない。そこでレンズを構えていると、やはり戸崎圭太騎手のレーザーバレットがやって来た。今日は2番人気。

Keita 

もう一頭こちらに馬場入りしてきたJRA所属の馬がいる。岩田康成騎手のルベーゼドラジェ。残るJRAの3頭は右側に行ってしまったようだ。

Iwata 

ルールにしたがって左に馬場入りしてきたJRA所属の2頭が、揃って元地方所属のジョッキーであったことは偶然だろうか。特に戸崎騎手にしてみれば、何百回、何千回と乗った競馬場である。自然とかつてのルーチンをこなしていたとしても不思議ではない。

しかし、このレースの1、2着がスタンド側に馬場入りしたJRAの2頭だったことは、さすがに偶然であろう。ともあれ戸崎騎手は昨年のキョウエイアシュラに続きこのレース連覇。レーザーバレットは7歳秋にして、嬉しい重賞初制覇を果たした。

Keita2 

小回りの浦和1400mは騎手の技量がモノを言う。もちろん先行有利。だがどの馬も仕掛けが早いから逃げ切るのも難しい。そんな浦和に戸崎騎手は今年8回騎乗して(3,2,0,3)の好成績。今日は南関東のジョッキーたちと一緒に、豪雨災害への募金活動にも積極的に参加していた。彼がJRAに移籍して2年半が経過。すっかりJRAジョッキーが板についたが、南関東を根城にする人間としては、「浦和で見る戸崎」の方が、やはりどことなく落ち着くものである。

 

***** 2015/09/23 *****

 

 

 

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2015年9月22日 (火)

シルバーウィーク

シルバーウィークも残りわずか。皆様いかが過ごされましたか。私は一日休みがあっただけ。それも埼玉まで墓参りに行っただけで終わりました。5連休なんて夢のまた夢ですな。

「シルバーウィーク」は最近の言葉のように聞こえるかもしれないが、実は半世紀以上も前に「ゴールデンウィーク」とともに生まれた用語。1948年の祝日法施行で、天皇誕生日、憲法記念日、こどもの日、文化の日が制定され、春秋のこの時期に話題作をぶつけるようになった映画界が最初に使い始めた。本来は「映画を見るのに最高の1週間」という意味である。結果、ゴールデンウィークはすっかり定着したが、シルバーの方はまったくと言っていいほど普及しなかった。

シルバーよりゴールドが浸透するのは馬の名前も同じ。現在「ゴールド(ゴールデン)」を含む馬は75頭がJRAに馬名登録されている一方で、「シルバー(シルヴァー)」は12頭でしかない。ゴールドシップ、ゴールドアリュール、ステイゴールド、ゴールドシチー、ゴールドティアラと、「ゴールド」にはGⅠホースも出ているが、「シルバー」はシルヴァコクピットとセンゴクシルバーがGⅢを勝った程度。両者の差は歴然としている。

銀メダルやお年寄りをイメージする「シルバー」という言葉を、勝負事に使いたくないという気持ちは理解できなくもない。それでも「シルバー」と名前が付いた数少ない馬たちは、父がシルバーホークであるか、あるいは単に芦毛であるか。シルヴァコクピットは前者の、センゴクシルバーは後者の好例であろう。

Sengoku1 

93年から94年にかけて重賞戦線で活躍したセンゴクシルバーだが、重賞タイトルはダイヤモンドSのひとつしかない。一方で重賞での2着は4度を数えた。やはり「シルバー」の名がいけなかったのか。それでも芦毛を生かして誘導馬になれたのだから、サラブレッドの人生としては悪くない。古き良き時代の名ステイヤーは、いぶし銀の名脇役でもあった。

Sengoku2 

 

***** 2015/09/22 *****

 

 

 

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2015年9月21日 (月)

ひと夏の成長

セントライト記念で注目すべき点のひとつに、ダービー以来の休み明けとなる馬たちの「夏の成長」が挙げられる。ダービー2着のサトノラーゼンを筆頭に、彼らがどんな夏を過ごしたのか。レース結果よりも気になると言っても過言ではない。中でも驚かされたのはプラス12キロで登場したキタサンブラック。見た目に太いわけでもなく、これを純粋な成長分だと思えば、よほど充実した夏を過ごしたのだろうと認めざるを得ない。

実際のレースでも、キタサンブラックが2番手追走から直線先頭。そのまま先頭を譲ることなく粘り込んで1着ゴールを果たした。スプリングSに続く2勝目。スプリングSとセントライト記念を制したのは、1956年のこのレースを勝ち、その勢いのまま菊花賞をも制したキタノオー以来のこととなる。

だが、優勝騎手インタビューで菊花賞への見通しを聞かれた北村宏司騎手は、質問に対してひと呼吸置いたうえで、「自分の走りのリズムがかみ合えば……ですね」と慎重な姿勢を崩さなかった。

調教師も菊花賞への正式な出否を明らかにしていない。なにせ母の父はサクラバクシンオーである。実際1コーナー入口では、引っ掛かる馬を懸命になだめる北村騎手の姿が大映しになった。菊花賞トライアルであるセントライト記念の勝ち馬が、菊花賞ではなく天皇賞に向かうことになれば、昨年に続く事態。陣営の判断に注目したい。

ただ、菊花賞は「キタ」と繋がりが深いレースでもある。前出のキタノオーを始め、60年キタノオーザ、74年キタノカチドキ、さらに97年のマチカネフクキタルの馬名にもしっかり「キタ」が入っていた。ついでに80年のノースガストまで加えれば、75回の歴史の中で「キタ」関連の馬がなんと5勝である。ちなみに、英語表記を含めても「ヒガシ」「ニシ」「ミナミ」を馬名に持つ馬が菊花賞を勝った例はない。北島三郎氏の所有馬で、北村騎手が手綱を取るキタサンブラックには追い風ではあるまいか。

Kitasan 

ちなみに北村騎手は05年キングストレイル、08年ダイワワイルドボア、13年ユールシンギングに次いで、セントライト記念4勝目となった。これは郷原洋行元騎手、加賀武見元騎手、そして現役の蛯名正義騎手に並ぶ最多勝記録。なんとこの3人、いずれも菊花賞を勝っている。北村騎手もそろそろ本番を勝ちたい。

 

***** 2015/09/21 *****

 

 

 

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2015年9月20日 (日)

秋の風

今日は中山の10レースに初風特別が行われた。一陣の風が運ぶ細波をイメージできれば馬券も取れたかもしれない。勝ったのは3歳牝馬のサザナミだった。

「初」のつくレース名は初音、初茜、初霞、初凪、初富士、初春、初咲、初日の出、初夢と数多いが、どれも1月から2月の年始に行われるのが一般的。だが、この初風特別に限れば9月の中山開催で固定されている。それを不思議に思われる方もいらっしゃるのではあるまいか。

「初風」とは秋に限らず季節の初めの風のことを指すが、実はその中でも秋の風を指すことが多い。残暑もようやく終わりという頃合いに初めて秋を感じるような、そんな爽やかな風のこと。歳時記でも初秋の季語とされている。

2001年の初風特別を勝ったのは牝馬のティエッチグレース。8番人気という低評価を覆しての快勝だった。

Thgrace 

勝ち時計1分7秒3は、当時の中山の高速馬場を加味しても相当に速い。のちにBSNオープンやバーデンバーデンCを勝ち、アイビスサマーダッシュでもあわやの2着に逃げ粘ったスピードの片鱗を見た思いがする。まさに風の如き速さ。「初風」と呼ぶには余りに強烈だった。

ちなみにティエッチグレースは、翌年の初春賞も勝っている。それを持ち出して「ティエッチグレースは“初モノ”に強い」みたいな話を仕立てようかと思ったら、初霜特別にも出走して4着に敗れていることに気付いてしまった。物事はなかなか思うようにいかない。

暑さ寒さも彼岸まで。今日は彼岸の入りでもある。日なたはまだ夏の欠片が残っているが、日陰に入るとさすがに涼しい。中山の馬場を吹き抜ける風はまさしく初風の趣であろう。明日はセントライト記念。ガラス張りのスタンドではなくできればコースの近くに立って、初風をその肌に感じつつ、風のように駆け抜ける3歳馬たちに声援を送りたい。

 

***** 2015/09/20 *****

 

 

 

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2015年9月19日 (土)

大根馬券師の悲哀

秋晴れの東京競馬場には、今日も朝からお客さんがつめかけている。

Dsc_2680 

新潟に行くのはさすがに遠いが、中山に競馬が戻ってくればさすがに皆そちらに向かうものかと思いきや、どうやらそういうものでもないらしい。ちなみに私はできれば中山に行きたいクチ。だが、諸般の事情がそれを許さぬ。新潟開催中のパークウインズは仕方ないが、中山開催中の府中通いはさすがに歯がゆい。ストレスも溜まる。

ストレス発散には腹を満たすのがてっとり早い。それで『馬そば深大寺』の前に立ったら、「新メニュー・おろしそば(温)」という貼り紙を見つけた

あれ? たしか新潟開催中のおろしそばは「冷やし」ではなかったか。先週は来ていないが、秋競馬の開幕に合わせてメニューも変えたのかもしれない。それで「おろしそばをください」と注文。レジのお姉さんは「温かいのになりますが、よろしいですか?」と聞いてきた。問題ない。いつまでも夏の気分を引きずっていられない。

そしたら、厨房から「温かいおろしなんてあったっけ?」「どうやんの?」といった声が聞こえてきた。むむ? ひょっとして私が第1号なのか? 先週からでなく、今日からの新メニューなのか? 出来上がりを待つ私の脳裏に不安がよぎる。

Dsc_2681 

見た目は普通のおそば。具材は大根おろしを中心に、高菜、削り節、ネギである。ささっと混ぜるようにして食べた。むむむ……、なにやら独特の香りが立ちますな。冷たいそばでは気付かなかったが、温かくしたことで、香りが強調されるようになったのかもしれない。大根おろしではないし、高菜でもない。やはり「独特」と表現する以外ない。これは冷たいままの方が良かったかもしれない。

そもそも、個人的には「おろしそば」と聞けば冷たいそばを連想する。夏の暑い盛り、食欲が落ちてきた時には、何かさっぱりしたものを食べたい。そうだおろしそばにしよう。大き目の器に黒っぽい田舎そばを盛り、そこに大根おろしと花鰹をたっぷり乗せ、冷たいつゆをかけ回し豪快にすする―――そんなイメージだ。

最近の私の傾向からすれば、朝イチの食事の善し悪しが、そのままその日の馬券成績に跳ね返る。それは単なるジンクスや縁起ではない。正しい選択をするのに必要な心の奥底の回路が機能していないか、あるいは誤作動を起こしている。そう思うのである。実際、今日の馬券は散々だった。ダンツメガヒットの関係者には申し訳ない。

Dsc_2684 

そもそも、大根は「大根役者」の使われ方にあるように、古来より「当たらぬもの」の代表格。「大根の医者いらず」の言葉もある。大根で食あたりをする人はいないことからの喩えとして広まった。これでは馬券が当たらぬのも無理はない。そもそも、そこからして間違っていた。

Megahit 

それはそうとして、ダンツメガヒットはまだ3歳。それでこのメンバー相手の初重賞で5着なら悪くない。なにより障害キャリアは2戦のみ。いつの日かオースミムーンを負かす存在になって欲しい。

 

***** 2015/09/19 *****

 

 

 

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2015年9月18日 (金)

デビュー56日目の快挙

今週末(厳密には来週月曜)に行われるセントライト記念は不思議なレースだ。イスラボニータやフェノーメノが鮮やかに勝って、その長い歴史とGⅡ格付けの重みを実感する年がある一方で、「あれ? このレース500万条件だったっけ?」と思わせる年もある。トーセンシャナオーが勝った2006年などは後者の典型だった。

2000年のセントライト記念も1勝馬が優勝を果たしているが、勝ったのがアドマイヤボスだったせいか、この時はレースの格を疑問視するような声は聞いていない。なにせ、ダービー馬・アドマイヤベガの全弟。しかも、デビューからわずか56日での重賞勝利である。2歳や3歳春の重賞ならまだしも、3歳秋のセントライト記念では前例のない快挙。各メディアがいっせいに「新星誕生」と沸き立ったのも無理はない。

Boss

体質的に弱く、3歳夏の函館でようやくデビューを迎えた時でさえも、歩くことすら覚束ない状態だったという。それでも持ったまま4馬身差の圧勝だから、器が違ったのは間違いない。続く500万条件戦はハナ差で敗れるも、勝ったフサイチソニックはのちに神戸新聞杯でダービー馬と2冠馬をまとめて負かす素質馬。デビュー2戦目、しかも初めての芝のレースで、そんな相手とハナ差の勝負をした事実は、むしろアドマイヤボスの評価を高めた。

だが、完勝に思えたセントライト記念でも、体質の弱さがレースぶりに現れていた印象は否めない。

直線で外から豪快に伸びたと言いつつ、その実は内へ外へと蛇行を繰り返し、他馬の進路を塞ぐシーンは一度や二度に留まらなかった。長い審議の末の快挙である。しかし、初めての距離に加え、初めての道悪競馬を考えれば賛辞を惜しむわけにもいかない。そういう意味では、期待と不安が激しく入り混じる微妙な一戦だった。

管理する橋田調教師も、そんな思いを抱いていたのであろう。「成長途上のこの馬に二度の坂越えは厳しい」として、菊花賞に向かうことはしなかった。

Boss2 

セントライト記念で負かしたトーホウシデンが菊花賞で2着したことで、「アドマイヤボスが出ていれば勝ち負けだった」とする声を未だに聞くことがある。確かにそうかもしれないが、逆に取り返しのつかない目が出ていた可能性だって否定できない。アドマイヤボスは引退後に種牡馬となり、早世したアドマイヤベガの代わりに偉大なる母ベガの血を後世に繋ぐ役目を果たした。初年度から136頭もの交配相手を集めることができたのは、あのセントライト記念があったからにほかならない。今年はセントライト記念史に残るような一戦になるだろうか。

 

***** 2015/09/18 *****

 

 

 

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2015年9月17日 (木)

三者三様の東京記念

戸塚記念に続き、南関東の重賞は今週も雨に祟られた。大井競馬場の馬場状態は稍重。まもなく東京記念の発走を迎える。

衆目一致の中心馬は、このレースの連覇がかかるユーロビート。前走のマーキュリーCでは向こう正面から強気に捲って出て、早目に先頭に立つ苦しい展開ながらJRA勢相手に6馬身差圧勝だから、ケチの付けようがない。懸念材料は今回初めて背負う59キロであろう。ちなみに58キロで走ったことは4度あり、最高着順は3着が1回あるのみ。それでも単勝オッズ2.1倍の1番人気に押されている。

06 

2番人気のタイムズアローは、ユーロビートが勝ったマーキュリーCで4着の実績。追い切りではノットオーソリティーを煽って絶好調ぶりをアピールしてみせたが、こちらはこちらでレース中に手前を替えないという不安を抱えているらしい。

一昨年のこのレースの覇者プレティオラスは放牧明け。大井の長距離重賞ではまず崩れない安定感を誇るが、厩舎によればひと叩きするはずのレースを使えなかったことで、いくぶん急仕上げでここに臨まざるを得なくなったとのこと。58キロも気になる。3番人気。

人気上位馬が、それぞれ自信と不安を抱えて臨んだ大井の2400m戦だが、蓋を開けてみれば3番人気プレティオラスの完勝だった。直線で先頭に立ったユーロビートを、ゴール前100mあたりで内から差し切る完璧なレース内容。3年前のダービー馬は、これが4つ目の重賞タイトルとなる。

Pretioras 

上がり37秒4。傍から見ていても、他馬が止まって見えるほどの脚色だったのだから、乗っている本人はさぞかし痛快だったに違いない。戻ってきた本橋孝太騎手は開口一番「気持ちイイ。チョー気持ちイイ!」と繰り返した。次走は明言されなかったが、急仕上げと58キロをものともしないレースぶりを見れば、外野の期待は俄然高まる。JRA勢相手でもと思わずにいられない。

Motohashi 

ユーロビートは、59キロという斤量に加え“人気”も背負ってしまった以上、あのような正攻法で臨むしかなかった。2着は仕方ない。むしろ良く走っている。一方のタイムズアローは、やはり手前を替えようとしなかった。どうやってこれを調教で改善してくるのか。今後の鍵となろう。

 

***** 2015/09/17 *****

 

 

 

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2015年9月16日 (水)

ドレスコード

競馬場にはドレスコードがある。男性はスーツにネクタイに革靴。女性はそれに準じた服装が求められる。夏競馬は節電の意味も含めて若干ドレスコードが緩むが、ドレスコード自体がなくなるわけではない。ご覧のように、緩くなったらなったでなお細かなルールが依然として存在する。

Dress 

―――といっても、これは広い競馬場の中でもごくごく限られたエリア。馬主席と来賓席に限られた話。もし、すべての入場客に対してドレスコードを求めていたら、週末の武蔵野線や南武線の光景は、今とはまるで違ったものになるはずだ。

海外の競馬場は日本よりドレスコードにうるさい。中でも英国は別格の印象がある。ロンドンから特急で2時間ほどの距離にあるチェスター競馬場は、市内を流れるディー川の広大な河川敷に円形に柵をしつらえただけの牧歌的なコース。世界最古の常設競馬場として競馬ファンには知られる競馬場だが、スタンドなどは日本の地方競馬より簡素で小さい。まさに「古き良き競馬場」の趣だ。

Chester 

あの日、私はボタンダウンのカジュアルシャツにコットンパンツ、革靴、そしてジャケットという服装で、チェスター競馬場のメンバーエリア専用入口から取材証(パス)を見せて中に入ろうした。すると、ただちに屈強な警備員二人に行く手をふさがれたのである。彼らは何やら英語でまくし立てたのち、身振りで「向こうに回れ」と指示をする。その方向に目を向けると、シルバーリング(一般エリア)の入場口があった。

そのパスを持っていれば、どこにでも入っていけるはず。つたない英語でそう訴えてみたのだが、相手は折れるそぶりを見せない。仕方なくいったん街に戻り、安売りのネクタイを購入して、あらためて同じ通路を通ったら、今度は何も言われず、実にアッサリと入ることができたではないか。パスはパス、ドレスコードはドレスコード。そういうお国柄なのだろう。私自身注意していたつもりだが、まさかロンドンから遠く離れた地方の競馬場で、そこまで厳しいことを言われるとは思っていなかった。

その翌日に訪れたのはアスコット競馬場である。前日のチェスターを教訓に細心の注意を払ったことは言うまでもない。ネクタイ着用は当然。わざわざハロッズに立ち寄って高価なシャツも買った。コットンパンツなんか履くわけがない。唯一の不安は一足しか持っていなかった革靴で、私の足下を指差して何事か文句を言う警備員がいたが、それでも中には入れてくれた。そのことについて、アスコットの警備員の方々と競馬の神様に感謝せねばなるまい。なぜか。この日、デットーリ騎手がアスコットで行われた7つのレースすべてに勝つという、世界の競馬史に残る快挙を達成したのである。もしメンバーエリアにいなければ、こんなシーンを目撃することもできなかった。

Dettori 

以来、競馬場には正装かそれに近い服装で出かける癖がついている。中山でも川崎でも区別はしない。基本的にはスーツ、もしくはジャケットを着用。ネクタイもポケットに忍ばせている。先日は、もう秋競馬なのだからノーネクタイはまずかろうと、ちゃんとネクタイを締めて中山に出かけたら、ドレスコードに限ればこの中山最終日まで「夏競馬」と聞かされた。なーんだ。ひとり武蔵野線内で汗だくになって損した。それというのも、かつてチェスター競馬場で怖い思いをしたせいだ。やれやれ。

 

***** 2015/09/16 *****

 

 

 

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2015年9月15日 (火)

消えた高速馬場

開幕週の中山競馬は波乱の連続。特に日曜は1番人気馬が1勝しか挙げることができず、メインの京成杯オータムハンデに至っては3連単222万の大波乱だった。本命党の悲鳴が聞こえてくる。

そんな土日のレースを見て、不思議に思った方は多いのではあるまいか。芝のタイムが例年の開幕週に比べて軒並み遅かったのである。高速レースで名高い京成杯の勝ち時計も、レコードタイムより2秒6も遅い1分33秒3にとどまった。開幕週で馬場状態は「良」発表。芝は短く刈り揃えられ、予想紙には「高速馬場」「先行断然有利」の文字が並んでいた。それに踊らされて、逃げ先行馬をベタベタ買ったのは、ほかならぬ私である。

しかし蓋を開けてみれば、見た目より遥かに時計がかかる。とはいえ、馬場が掘れるようなもろい馬場というわけでもない。だから追い込み決着がやたらと目についた。紫苑Sを勝ったクインズミラーグロは道中10番手から、京成杯を勝ったフラアンジェリコに至っては16頭立ての16番手からの差し切り勝ちである。むろん見ている側にとってはこの方が面白いが、まるで馬券が当たらん。いったい開幕週の高速馬場はどこに行ってしまったのだろうか?

似たような傾向は最近の新潟競馬場でも顕著になりつつある。上がり32秒台の攻防はすっかり影を潜め、ハーツクライやステイゴールドといったパワーを兼ね備えた種牡馬の産駒の活躍が目立つようになった。その要因のひとつにエアレーションを挙げる声を聞く。エアレーションとは「パーチドレン」という鉄製の棒を芝面に差し込んで穴をあけ、地中に空気を入れて芝生を活性化させる作業のこと。新潟やこの時期の中山などの野芝に対して有効な作業で、芝の根付きが良くなるほか、土壌そのものも柔らかくなるため、結果的に走路のクッション性は高まる。秋の中山はスピード勝負―――。そんな先入観は捨てた方がよいのかもしれない。

京成杯を勝ったフラアンジェリコも然り。ネオユニヴァースの産駒で、軽快なスピードを武器をするというタイプではない。芝マイルも9度の出走経験がありながら、持ち時計はメンバー中11番目。そもそもこの馬、以前はダートで走っていた馬ではなかったか? それで昔の写真をひっくりかえしたら、2012年1月の東京ダート1600mを勝った時の写真が出てきた。

Fura 

このレースを覚えていると言う方は、フラアンジェリコの出資会員さんか、あるいはよほどのウチパク・フリークであろう。前年の5月に大井競馬場で落馬。頸椎歯突起骨折のため8か月もの長期休養を強いられた内田博幸騎手が、見事カムバック勝利を果たしたレースである。あの日東京競馬場には重賞レースにも匹敵するような拍手と、そして歓声が沸き起こった。

その内田騎手も昨今は勝ち鞍が思うように伸びずに苦労している印象がある。京成杯のスマートオリオンも内目の絶好位でレースを進めながら、直線何の見せ場もなくブービーに敗れた。馬場の内側は春開催後に芝を全面的に張り替えられており、外に比べてさらにクッションの効いたタフな馬場になっている可能性もある。かつてなら開幕週の内目は絶好のグリーンベルト。だが、もはやそうでもないのかもしれない。来週以降、コース取りをめぐる騎手たちの駆け引きにも注目だ。

 

***** 2015/09/15 *****

 

 

 

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2015年9月14日 (月)

幻の東府中ラーメン

東京競馬場フジビュースタンド西側1Fに店を構えるラーメン店『西海』の経営母体は、鳥そばでお馴染みの『馬そば深大寺』と同じ。だが、最近は食べる機会がほとんどない。好んでラーメンを食べるタチではない上、トシのせいか豚骨スープが堪えるようになってきたせいもある。

Keibajo 

それでもある日突然スイッチが入ったかのように豚骨ラーメンが食べたくなるから不思議ですね。今日も突然そんなスイッチが入ってしまった。府中界隈にはラーメンの人気店が山ほどあるけど、どうせなら『西海』にしよう。でも競馬場のお店は営業していない。それで東府中の『西海』に入ってみることに。この店舗には「東府中ラーメン」というオリジナルメニューがあると聞いたことがある。ぜひともそれを食べてみたい。

Higashi 

んで、「東府中ラーメンを……」と注文しかけたら、

「ああ、今やってないんですよ。ごめんなさい」

がびーんcoldsweats02

ご当地ラーメンが巷に溢れかえる昨今だが、名前に使われるのは県名や市名が一般的。唯一の例外は「長浜ラーメン」であろうが、それでも町域名が使われているのだからまだ許せる。「東府中」は市名でなければ町域名でもない。単なる駅名をラーメンの名前に冠するセンス。それを一口食べて実感してみたかった。聞いたところによれば、ラーメンの上に大きな鶏のから揚げと、千切りにしたキャベツが載っているラーメンだったという。ちなみに、東府中はから揚げやキャベツに特別のゆかりのある土地ではない。

ご当地を名乗るメニューには、その土地にゆかりのあるものや、歴史的にその土地が育んできたものを活かすべきだ―――。そういうポリシーをお持ちの方は多いと思う。私もそれを否定するものではない。だが一方で、それに固執するばかりに、ちょっとおかしなご当地ラーメンが乱立する昨今の風潮には違和感を感じている。そもそも「ラーメン」という言葉が日本に定着してから、まだ50年ちょっとしか経っていない。歴史や因習にとらわれない自由さこそが、ラーメンがこれだけ日本国民に広く愛されるようになった要因ではあるまいか。

Ramen 

―――なんてエラそうなことを言いいつつ、普通に「西海ラーメン」を食べた。椿油を練り込んだちょいと太目の麺は美味しかったです。それにしても、先日の『平次のおうどん』に続き、2週連続でこの町に来て目当てのものにありつけていない。東府中がちょいと鬼門になりつつある。

 

***** 2015/09/14 *****

 

 

 

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2015年9月13日 (日)

8か月ぶりの

開幕週の競馬では、夏のローカル開催で条件戦を勝ち上がってきたグループと、春のビッグレースを戦い抜いて夏を休養に充てていたグループとの、力の比較を抜きに馬券検討は語れない。昨日の紫苑Sも今日の京成杯も、勝ったのは夏競馬からの転戦組。テンダリーヴォイスもアルビアーノも、休み明けにもかかわらず春の実績で1番人気に推されたが、いずれも勝ち負けに加わることができなかった。やはり久しぶりの競馬はどこか勝手が違う。

それで気づいた。昨日の船橋法典駅を降りてすぐのこと。あれ? ひょっとして、私自身ココに来るのは久しぶりなんじゃないか―――?

Nakayama 

前回中山に来たのはいつだ? 少なくとも5月以降は来ていない。だが、春の中山2開催も私は全休したのではなかったか。すると冬開催以来か? それでこのブログを読み返してみたら、1月18日に行われた初凪賞の観戦記録があった。おそらくそれ以来であろう。すなわち8か月ぶりの中山。我ながらこれはひどい。この一年で船橋はすっかり遠い場所になってしまった感がある。

それで久しぶりの競馬場をウロウロ歩いていたら、馬場内に見知らぬ店を見つけた。その名も『丼やらぐぅ』。

Ragu 

「やらぐぅ」ってなんだ?……と思ったら、区切るところが違った。「丼や・らぐぅ」なんですね。「ラグー」とはフランス語で「煮込み料理」を指す。すなわち競馬場グルメの王道とも言うべき煮込みの店である。これは食べなければなるまい。迷わず牛すじ丼を注文した。

Suji 

具材は牛すじ肉とコンニャクと玉ねぎだが、肉の割合が圧倒的に多いことは好感が持てる。それを醤油ベースのタレで煮込み、白いご飯にザッとかけて、ネギを散らして完成。牛すじ肉はとことん柔らかく、肉の旨味が染み出たタレはこれでもかと言わんばかりに白いご飯に良く合う。これは旨い。

しかし、この店はいつから営業しているのだろうか? お店の方の初々しさからして、ひょっとしたらこの夏くらいのオープンなのかもしれない。ならば私が恥じる必要はない。それで思い切って「いつからですか?」と聞いたら、はきはきした声で「2月からです」と答えがかえってきた。そうですか。じゃあ、大半の客は知っていることになりますね。知らぬのは春開催を全休した私だけか。まあ、お詫びを兼ねて次回もお世話になることにしよう。

Chika 

そういえば船橋法典駅から続く専用地下道も、壁に飾ってあった歴代名馬のポスターが取り払われ、動く歩道も使用できなくなっていた。ひょっとして、これも2月からなんだろか? なんてことはないですよね。8か月ぶりの中山で、すっかり浦島太郎になってしまった。

Hodou 

 

***** 2015/09/13 *****

 

 

 

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2015年9月12日 (土)

追想

紫苑Sが新設されて15年。秋の中山開幕日のレースとしてすっかり定着した感があるが、その花をきちんとイメージできる方が果たしてどれほどいらっしゃるだろうか。初秋に花を咲かす菊の仲間で、涼やかな青紫が美しい。原産地は北東アジアとされるが、万葉集や源氏物語にも登場するところを見ると、日本への渡来はかなり古いのであろう。

Shion 

紫苑の学名は「アスター・タタリクス」。それで今日の9Rがアスター賞なのかどうかは知らぬが、こちらは創設4年目とまだ歴史が浅い。今年はメジャーエンブレムが圧倒的人気に応えた。母キャッチータイトルに父ダイワメジャーと言えば、ノーザンではそれこそ“メジャー”な配合として知られる。次走はアルテミスSとのこと。キャッチータイトルの産駒がついに重賞を“キャッチ”するかもしれない。

Mejar 

メインの紫苑Sは直前まで1番人気馬がコロコロ変わる大混戦。最終的にテンダリーヴォイスに落ち着いたが、それでも5.1倍というオッズがファンの迷いを端的に表している。

実際のレースも直線入口付近から、激しく先頭が入れ替わる大混戦となった。いったんは、直線坂下で抜け出したホワイトエレンガンスで勝負あったかに見えたが、坂を上りきってから外に持ち出されたクインズミラーグロが末脚爆発。前を行く各馬をまとめて抜き去って、秋華賞への切符を手に入れた。

11r 

クインズミラーグロのお父さんは、先月亡くなったばかりのマンハッタンカフェ。ルージュバックにひと頓挫があったと思ったら、すぐに新顔が台頭してくるあたり、この世代の層の厚さを実感する。春の2冠には惜しくも手が届かなかったが、残された最後の1冠を天国のマンハッタンカフェに届けることができるだろうか。紫苑の花言葉は「追想」。娘の活躍に触れ、いまは亡きマンハッタンカフェに思いを馳せるのも悪くない。

 

***** 2015/09/12 *****

 

 

 

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2015年9月11日 (金)

太目の明暗

東京は朝から久しぶりの青空

Sora 

爽やかな陽気に誘われるように出かけた先は、

Bank 

はい。例によってオフト京王閣でございます。船橋の新馬戦を見たかったのだが、時間的に都合がつかなかった。

Monitor 

今日の新馬戦は1~3Rの3鞍でいずれも1000m戦。1Rは中野省吾騎手のハルクシーザーが逃げ切った。ゴール前は相手の手応えを確認する余裕のレースっぷり。モルフェデスペクタ産駒の牡馬で、重馬場の勝ち時計は1分01秒0。

2Rを勝ったのはアートオブスノー。プリサイスエンド産駒の牝馬で2番手追走から直線で逃げ馬をねじ伏せる味のある競馬だった。勝ち時計は1分01秒6。

River 

ここで、『めんこや』さんでうどんタイム。悩んだ末に「ごま2色うどん」を注文する。メニューには「女性に人気です!」と書き添えてあるが、この店にどれほどの女性がくるのだろうか。

Menu 

3Rで1番人気の支持を集めているビーインマイハートは、ダートグレード5勝のグラッブユアハートの産駒。知人の共同所有馬だから応援してあげたいのだが、パドックを周回するビーインマイハートは見るからに太く見える。それで「太いよなぁ…」と呟いたら、後ろでウーロンハイを飲んでいたオジサンも「そうだろ。オレも太ぇって思ってたんだよ」と相槌を打った。

Nishoku 

でも現場にいたら、そんなことを言うわけにいかない。なにせ周囲は社台の関係者ばかり。当然みなさん勝つつもりで来ている。「太いくらいでちょうど良いですよねぇ。ははは」なんて言ってるに違いない。純粋に馬を見ようと思うのなら、現場にいない方が良いのかもしれない。

ともあれ2~4番人気の馬券をベタベタ買ってみた。それが私の応援馬券。しかるのちに発走。ビーインマイハートはやや出負けで、外の3番手を回されている。1000mでこれは苦しい。案の定、3着争いにもアタマ差及ばなかった。

勝ったガーニーフラップは4代母が桜花賞馬エルプス。3代母イシノアバトゥーラがテイエムオーシャンの妹だから、良血という意味ではビーインマイハートに勝るとも劣るものではない。ちなみにお母さんのハンナリトは、安田美沙子さんの命名でも知られる。勝ち時計は1分01秒5。

Udon 

期せずして馬券が当たったので、さっきのオジサンと乾杯。それにしても、ごま2色うどんは美味しい。女性だけでなく、男性の私もこれなら満足。ごまの強い風味を、太い麺がガッシリと受け止めてくれるのである。太くて困ることもあれば、良いこともある。

 

***** 2015/09/11 *****

 

 

 

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2015年9月10日 (木)

メガネの悲哀

一昨日の戸塚記念は、台風18号の影響で雨が降り続く中で行われたわけだが、その雨は2日後の今日まで間断なく降り続いている。その間、川崎市には大雨洪水警報、土砂災害警戒情報、そして昨夜はついに避難勧告まで発令された。小向のトレセンも水没。被害を受けられた関係者の皆様には、謹んでお見舞い申し上げます。

Rain 

それにしても最近の関東地方は雨ばかり。競馬場ではいつも傘を持ち歩いてるような気がする。戸塚記念のレース中も雨は小康状態になっていたとはいえ、しっかりと霧雨が場内を舞っていた。

馬場を叩きつけるような豪雨も辛いが、メガネの人間にとっては、風に舞う細かな霧雨というのは豪雨と同じくらい嫌なもの。ジョッキーのゴーグルみたいに、重ねて着用し、濡れたら捨てるというわけにもいかない。この時ばかりは「メガネって面倒臭いよなぁ」と痛感する。

騎手にメガネはいない。競馬学校入学には裸眼で0.8以上の視力が必要だし、その後に視力が落ちればレーシック手術を受けることを迫られる。競馬に限らず、アスリート全般にとって視力は命でもある。

視力が命という点では競馬場の決勝審判委員も同じ。言うもまでもなくレースの着順を判定する係の人。この仕事を任されるための最低条件は視力。決勝審判委員にもメガネはいない。

彼らはスタンドの最上部、ゴール正面に設置された決勝審判室から入線順位に目を凝らしている。委員は3人で構成され、縦一列に並んでゴールの瞬間を見極め、ノートに全着順をすばやく書き取る。実況アナウンサー同様、事前に騎手の勝負服、ブリンカーやシャドーロールの有無、馬の毛色などの特徴を頭に叩き込んでおかねばならない。

ゴール板から遙か遠く離れたスタンド上階からスローVTRにも頼らずに全頭の着順を判断するなんて私には到底できぬ芸当である。最近はスタンドから競馬を見る機会が増えた私だが、コースを走る馬のゼッケンを読み取ることはできない。数字の「3」と「6」と「8」はすべて同じに見える。勝負服でかろうじて判別しているという状況だ。

ちなみに決勝審判委員が一様に「難しい」と声を揃えるのは中山競馬場。直線が短くて大勢を把握するゆとりが短い上、ゴール前に急坂がある影響でゴール寸前での大逆転がしばしば起きる。それはカメラマンでも同じこと。大外の追い込みに常に注意を払わなければならないのは、意外にも東京ではなく中山なのだ。

Ah 

そんな中山の秋開催がいよいよ明後日から始まる。雨ばかりの昨今ではあるが、おかげで暑さもひと段落。すっかり秋らしくなった昨今なら、「オータムハンデ」の季節にふさわしい。

 

***** 2015/09/10 *****

 

 

 

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2015年9月 9日 (水)

矢野貴之騎手が戸塚記念制覇

横殴りの雨が馬場を叩く中で行われた昨夜の戸塚記念は、先行したミスアバンセが最後の直線で先頭に立ち、4連勝で重賞初制覇を果たした。

Avancer_2 

手綱を取っていたのは矢野貴之騎手。もともと同馬は真島大輔騎手とのコンビで連勝街道を進んできたのだが、真島騎手が同じ椎名広明厩舎のゴーオンに乗ることが先に決まっていたため、矢野騎手に依頼が回ってきたという経緯がある。自らの手綱で黒潮盃を勝ったブラックレッグが戸塚記念を回避した途端に有力馬の手綱が回ってきた事情を知る人からは、「(矢野騎手は)運が良い」という声も聞こえた。とはいえ、テン乗りで結果を出すことは決して簡単なことではないのだし、そもそも矢野騎手のこれまでの歩みは、幸運ばかりだったわけでは決してない。

彼は2002年に高崎競馬場で騎手デビューを果たした。その年にいきなり23勝を挙げて、一躍注目を浴びる存在となる。

Yano1_2 

だが、そのわずか3年後に待ち受けていたのが、所属競馬場の廃止という試練だった。2005年2月に大井の高橋三郎厩舎に移籍。その年の5勝という勝利数は、JRA所属の武豊騎手(7勝)より少ない。ちなみに内田博幸騎手はこの年464勝を挙げて南関東リーディングを獲得している。試練はその後も続いた。

移籍してきたばかりで騎乗数に恵まれなかったのは事実。矢野騎手自身もまだ若かった。腐ってしまってもおかしくないし、実際危ないところだったとも聞く。かつて高崎競馬で矢野騎手と一緒に口取り写真に写る機会があった私は、彼の動向が気になって仕方なかったのである。

Yano2_2 

だから、ここ数年の彼の躍進ぶりを見るのは嬉しい限り。南関東4場での勝利数は年を追うごとに倍増している。昨夜の戸塚記念が今年の125勝目。特筆すべきはその3分の1を大井以外の3場で挙げていることであろう。数年前までは彼が大井以外で勝つシーンを見ることなど、ほとんどなかった。ちなみに大井に限れば現時点でリーディングトップを独走中。タイトル獲得に向けて一鞍一鞍を大事に乗りたい。

 

***** 2015/09/09 *****

 

 

 

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2015年9月 8日 (火)

秋の始まり

夏競馬も終わり、今週の中山メインは関東の競馬ファンに秋の到来を告げる京成杯「オータム」ハンディキャップ。なのに「サマー」マイルシリーズの一戦でもある。

実際、夏競馬と秋競馬が混ざり合うメンバーになることが多い。ローカルを使われ続けてきた馬たちと、ここから秋の大一番を展望する馬たちの激突。しかもハンデ戦。力の比較は難しい。だから波乱になることも。2003年のこの一戦でも、勝ったブレイクタイムは前年の覇者であったにもかかわらず6番人気の穴評価。連覇でありながら波乱でもあった。

B_time 

それにしてもこのレースを「京王杯」と間違える人は、未だに多いのではあるまいか。実は私もその一人。こうして書いていながら間違えやしないかとビクビクしている。

もともとは春・秋の東京開催のオープニングを飾るレースが京王杯だった。それがスプリングカップとオータムハンディキャップである。1974年の京王杯オータムハンデが行われたのは9月東京の芝1800m。名手・野平祐二が手綱を取ったスガノホマレがスタートからぐんぐん飛ばして、イチフジイサミら有力馬を突き放して一人旅のゴールを果たした。その勝ち時計は1分46秒5。日本競馬史上、1800mで初めて47秒の壁を破った驚異の日本レコードに、場内のファンは騒然としたという。

中山のマイルにコースが移ったあとも、このレースは「速い時計の出るレース」としてそのイメージが定着している。87年ダイナアクトレス(1分32秒2)、94年サクラチトセオー(1分32秒1)、01年ゼンノエルシド(1分31秒5)、そして12年レオアクティブ(1分30秒7)。数々の日本レコードがこのレースから生まれた。

ただ、このレースでレコードが更新されるたびに「マイルの世界レコード」と騒ぎ立てるのはいかがなものか。タイムに現れるのは馬の能力だけではない。多分に馬場の状態が影響するのは誰もが知るところ。そもそも1マイルは1609.3mではないか。

それでもこのレースを迎えると時計が気になるのも事実。果たして今年の勝ちタイムはどんなもんだろうか。

 

***** 2015/09/08 *****

 

 

 

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2015年9月 7日 (月)

トンビとパスタの関係とは

東京競馬場は昨日も雨だった。ていうか東京はずーっと雨ですよ。毎週毎週同じ景色の繰り返しは仕方ないが、少なくとも先週の轍を踏むのだけは避けたい。

Stand 

「先週の轍」とは何か。そう、札幌、小倉、新潟の計36レースで全敗した上に、水沢にまで手を出して喫した歴史的惨敗のことである。そのすべては、競馬場に着くなりおかしな穴子天うどんを食べさせられたところから始まっていた。勝負事に流れは大事。だから今日はいつものようにうどんを食べるのはやめよう。居場所も変えた方が良いかもしれない。それで、いつもより4コーナーに近い方に今日の根城を定めた。

すると当然店も変わる。どうせなら徹底して変えてみるか。『パスタ・デ・ドマーニ』は、その名の通りパスタのお店。永年競馬場に通い詰めていながら、これまで利用したことはない。

Domani 

ドマーニと言ったら、むかし京王杯スプリングカップを勝ったドバイの馬かと思ったら、あっちは「ドゥマーニ(Dumaani)」でしたね。イタリア語で「明日」を意味する「ドマーニ(domani)」とは違う。まあ、どうでも良い話ですが。

ともかくミートソースを注文。メニューには「昔ながらの」という副題が付いている。麺が茹で上がるまでしばし待つ。その間、新潟のパドックをモニタでじっくり確認。べつに急ぐわけでもない。しかるのち「お待ちどお様です」の声に振り向いて驚いた。

なんと目の前に出されたのは巨大なドンブリである。

Meat1 

普通の店の大盛りはあろうかという分量。その麺は細めだが、これは茹で時間を考えればやむを得まい。挽肉の旨味を感じるミートソースには自然の甘さとコク。なるほど「昔ながらの」と言うだけあって、どこか懐かしい味わいだ。

Meat2 

食べながら新潟記念の予想をしてみたが、抜けたメンバーも見当たらない開催最終日のハンデ戦でしかも道悪とくれば、あれこれ考えても無駄なような気がする。それで考えるのを諦めてマイネルミラノを買うことにした。パスタと言えばイタリア。イタリアと言えばミラノである。こんな買い方は邪道の極みだが、それでも当たるときは当たるのが競馬だ。

Baken 

しかし、よくよく血統を見てみれば、マイネルミラノの6代母は米3冠馬アソールトの全妹だから、母系はアメリカ血統。父ステイゴールドからもイタリア・ミラノは連想しにくい。なんでこんな名前付けたんじゃ?と思ってさらに調べたら、なんとスペイン語の「鳶(とんび)」を意味する「milano」から取ったんだという。衝撃の事実。つまりイタリアの「Milano」とはなんの関係もない。むろんミートソースとの関係など皆無であろう。それでも当たるときは当たる。それが競馬だ。

 

***** 2015/09/07 *****

 

 

 

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2015年9月 6日 (日)

榮久庵デザインに囲まれて

白紙撤回で決着がつくかに思えた東京五輪のエンブレム問題は、どっこい下火になるどころかむしろ火の勢いが増した感がある。外野としては正直もうどうでもいいのだが、メディアは追及の手を緩めようとしない。

招致段階で使った桜のリースを模ったエンブレムに待望論が出ている。だがIOCの規定で五輪エンブレムとしては採用できないそうだ。それならリオに敗れた2016年の五輪招致に使ったエンブレムもダメだろうか。

Gorin 

2016年の水引きのデザインを考案したのは、インダストリアルデザイナーの草分けとして知られ、今年2月に亡くなった榮久庵憲司氏。大陸と大陸、国と国、人と人―――そんなあらゆるものを結び合い、ひとつにしたいとの願いが込められているという。ちなみに、榮久庵氏は2020年の桜の招致エンブレムでもその監修にあたっていた。いずれにせよ、素晴らしいデザインであるのに、使えないというのはもったいない。

榮久庵氏は競馬ともつながりがある。皆さんお馴染みのこの緑のエンブレムは榮久庵氏がデザインしたものだ。

Jra 

このエンブレムが発表されたのは、マックスビューティーが8馬身差で桜花賞をぶっちぎったその翌日の1987年4月13日。以来28年間、JRAの象徴であり続けている。そのコンセプトは競馬場のコースと疾走するサラブレッド。だから、パッと見は円に見えるかもしれないが、実は楕円になっている。ごくごくシンプルでありながら、ターフの上を疾走する馬の躍動感が伝わってくる。

榮久庵氏の代表作として知られるのが、1961年にデザインした「キッコーマンの卓上しょうゆ瓶」。当時主流だった陶器のしょうゆ差しは、注ぎ口から液だれしてしまい、受け皿が必須だったため、同社が栄久庵さんに問題を解決できるデザインを相談したことがきっかけだった。それから半世紀余りが過ぎた現在もその形状が引き継がれているばかりか、世界各国でも同形の瓶が使用されている。

Kikko 

ほかにも、秋田新幹線の初代「こまち」(E3系)や成田エクスプレスといった車両関連にも榮久庵氏のデザインは多いが、その中にはJR南武線に使用されている209系も含まれる。つまり我々は、榮久庵氏デザインの電車に揺られて府中本町に行き、榮久庵氏デザインのエンブレムを見ながら競馬場の正門をくぐり、榮久庵氏デザインのしょうゆ瓶を手に取りつつ食事をしていることになる。

Shouyu 

榮久庵氏がご存命なら、昨今の五輪エンブレムにドタバタ劇をどうご覧になるだろうか。美しい曲線のしょうゆ瓶を眺めながら、そんなことを考えた。「日本も平和だね」。そうおっしゃるかもしれない。

 

***** 2015/09/06 *****

 

 

 

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2015年9月 5日 (土)

新潟のうどん

新潟競馬場正門を入って左手に見える『さぢみ』といううどん屋さんは、2012年オープンした比較的新しいお店。先日訪れた際も、昼休みに限らずいつも賑わっていた。

Sajimi 

競馬場のうどん店にしては珍しく「冷やしぶっかけうどん」がメニューにあったので注文。さほど期待せずに食べてみると、これが意外に美味い。何が違うのか? まず麺が違う。それで店の人に聞いてみた。するとこちらの麺は「低温熟成生麺」というオリジナル麺のとのこと。なるほどね。たかが競馬場のうどん、どうせぶよぶよの麺だろうと決めつけていた自分を恥じねばなるまい。

Sajimi2 

さらに聞けばJR新潟駅にもお店があるのだとか。それで、帰途に立ち寄ってみた。在来線側の駅ビル「Cocolo万代」の地下。エスカレータを降りたすぐ目の前にその店はある。カウンター席のみ10席にも満たない小さな店だが、店内に製麺機があるということは、切りたて茹でたてが味わえるということか?

Sajimi3 

メニューは競馬場と似ているが、こちらの店舗には丼メニューもある。新潟名物のタレかつ丼なんかもあるから、観光客には嬉しい。だが、時間が悪いのか16時半の時点では丼類はお休み中であった。残念。悩んだ末に冷やし野菜天ぷらうどん(大盛り)をオーダー。

Sajimi4 

ちなみに出てきたうどんは茹で置きであった。残念。丼類がお休みだったように、ひょっとしたら時間が悪かったのかもしれない。温め直しでも麺には独特の旨味があったから、茹でたてはもっと美味いに違いない。次回の課題としたい。

惜しむらくはツユの醤油が強いのである。ダシには枕崎のかつお節と北海道産の昆布を使用しているとのこと。競馬場も同じだという。だが、そんなせっかくのダシの風味も醤油の分厚い味の下に隠れてしまっている。あるいは新潟ではこれくらいの醤油の濃さが普通なのだろうか。この辺の解明も次の機会に委ねたい。

Sajimi5 

一方でうどん大盛無料のサービスは嬉しい。食券にこのシールを貼れば大盛りにしてくれる。ちなみにシールをふたつ貼ったところで大盛りに変わりはないそうです。夏の新潟開催も明日でおしまいだ。

 

***** 2015/09/05 *****

 

 

 

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2015年9月 4日 (金)

夏の終わりの宴

ヘンテコな穴子天うどんを食べてからというもの、食事の店選びも軸馬選びもことごとく失敗が続くので、今週は外で飯を食べたり馬券を買ったりするのは控えようと思ったのに、今夜の競馬絡みの飲み会のお店選びを任されてしまった。なんと畏れを知らぬ人たちであろうか。今の私は、あらゆる選択においてミスチョイスを犯してしまう可能性が極めて高いというのに……。

困った、困ったと考えながら開催2日目の川崎競馬場に向かう途中で、ふと思いついた。そうだあそこに寄って、穴子の呪いを解いておこう。

そう、『麺一滴』ですね。

Itteki 

こちらの天ぷらのタネは仕入状況によって変わるのだが、果たして今日は穴子は入っているだろうか……?

Menu 

おおっ!?

Anago1 

やりました! これはツイている。

Anago2 

いやぁ。待ち焦がれていたせいもあるけど、やはりこの店の天ぷらは美味い。サクッと噛みきれる衣はとことんカラッと揚がっていながら、その身はふわりと柔らかい。さすが江戸前。これで穴子の呪いも解けたはず。しかもその勢いのまま川崎1レースに挑むと

Kawasaki 

なんと的中! 穴子の呪いは解けたに違いない。全快宣言出させていただきます。

Baken 

ちなみに勝ったヒーリング(父:バトルプラン)は、前走の新馬戦が7頭立て7番人気で7着という成績だったのが、ここでは一転完勝。それで大穴かというと、そうでもない。地方では番組編成の都合でこういうことがよく起きます。

気を良くして銀座へ。

Sizuku_2 

メンバーはそれぞれ社台の会員さんたち。夏競馬が終わるこの時期は、馬を持つ人にとってある意味節目である。首尾よく未勝利を勝ち上がった人もいれば、ついに勝ちあがれず愛馬の引退に直面している人もいる。悲喜こもごもの1年を振り返り、間もなく迎える2歳馬たちのデビューに思いを馳せつつ盃を酌み交わした。ちなみに私のオシャレバンチョウも引退が決定したばかり。個人的には通算27戦3勝の成績を残した彼に、今宵の一盃を捧げたい。

穴子の呪いが解けたせいか、いい宴会になった。皆さん、お疲れ様でした。

 

***** 2015/09/04 *****

 

 

 

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2015年9月 3日 (木)

半世紀の節目

先月23日、JRの寝台特急「北斗星」の臨時列車がラストランを終え、57年の歴史を持つブルートレインが姿を消した。さらに31日には、日本を代表するホテルのひとつ、ホテルオークラ東京本館が53年の歴史に幕を下ろしている。

半世紀は大きな節目。時代の境目に新旧の入れ替えが起きるのは世の常だが、それでもこういうニュースに触れるたび一抹の寂しさが募る。

そんな感慨に浸る間もなくトウショウ牧場閉鎖のニュースが飛び込んできた。1965年の開業だから、やはりこちらも半世紀。老舗の退場が止まらない。

Sweep 

トウショウ牧場を開いた故・藤田正明氏は、フジタ工業副社長、藤和不動産社長などを歴任した実業家であり、歴代最年少(当時)の64歳で参院議長に就任した政治家でもあり、日本馬主協会連合会の会長職を務めた日本屈指のホースマンでもあった。なんでも、戦時中の学徒出陣で軍馬の世話係を担当して以来、無類の馬好きになったのだという。

今回の牧場閉鎖、馬主廃業に関しては、突然のニュースとして受け止められているようだが、実際には夏前から既に伏線は表れていた。これまでセリで生産馬を売却したことがほとんどなかったトウショウ牧場の1歳馬が、セレクションセールに3頭、サマーセールには大挙13頭が上場されたのである。そして先週上場馬が発表されたオータムセールにも10頭が上場。トウショウ牧場の昨年の生産頭数は牡13頭、牝16頭の合計29頭だから、そのほとんどが売りに出されたことになる。早晩、牧場をたたむんじゃないか?―――そんな噂が広まるのも無理はなかった。

Shiis 

気になるのはスイープトウショウやシーイズトウショウといった繁殖牝馬たちの動向だ。名門牧場が大切にする牝系ラインは、時が経過しても決して鮮度を失ったりはしない。トウショウ牧場が近年送り出した活躍馬の父を見ると、そのことがよく分かる。

トウショウショウギア(父:オジジアン)、トウショウヴォイス(父:ラストタイクーン)、トウショウノア(父:オールドヴィック)、……等々。サンデーサイレンス系の人気種牡馬でなくても活躍馬を送ることができるのは、それだけ母系の力が優れている証拠。トウショウブランドの繁殖牝馬を手に入れたいと思う人は、少なくあるまい。あのウオッカだって、母系に流れるのはトウショウ牧場の血筋だ。

Voice 

政治家として参議院改革に熱意を燃やした藤田正明氏も、牧場経営については何かと批判を浴びていたという。フジタ工業の大株主でありながら、その配当収入を上回る額の赤字を牧場が出し続けているとして毎年のように赤字申告を繰り返していた。それを悪質な所得隠しだとして、野党やマスコミが叩いたのである。

しかし、その後もトウショウ牧場は生産活動を続けて今日に至る。競馬ファンとしての私は、そのことに感謝したい。この名牧場の歴史が途絶えていたら、スイープトウショウやウオッカといった歴史的名馬の活躍を、我々は目にすることができなかったのだから。

 

***** 2015/09/03 *****

 

 

 

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2015年9月 2日 (水)

【太麺礼讃⑦】イタリアン@みかづき

新潟開催もあと一週を残すのみ。その新潟で以前から一度味わってみたい料理があった。へぎそばやわっぱ飯といった郷土料理ではない。その名も「イタリアン」。新潟市内の喫茶店で軽食メニューとして昭和30年代に登場、老若男女問わず幅広い世代から愛されている地元のソウルフードだという。

イタリアンを出しているのは、新潟の『みかづき』と長岡の『フレンド』の二つのチェーン店舗。学生時代、縁あって毎月のように新潟や長岡に通う時期を過ごした私なのに、そんな料理があるとは全く知らなかった。それから30年が経過し、今度は競馬のために新潟を訪れるようになってからも、なかなか食べる機会に恵まれない。だが今回、ふと思いついて『みかづき』の万代店に立ち寄ってみた。実は、この店舗が入るビル「万代シティバスセンター」からも、新潟競馬場行きのバスが運行しているのである。

Mikazuki01 

ご覧の通り、パッと見はトマトソースのスパゲッティ。だが、そのソースは意外にも甘くコーンがちりばめられている。その下に隠れる麺はスパゲッティではなく、まごうことなき太麺の焼きそば。ねっちりした独特の歯応えは、なるほど癖になりそうだ。

Mikazuki02 

『みかづき』の屋号は、お月様からとったものではなく、ここの店主の姓が「三日月」さんだから。初代が甘味処を始めたのは明治年間という老舗中の老舗で、このイタリアンは3代目店主が浅草で食べたソース焼きそばをヒントに考案したものだという。

極太焼きそばにトマトソース。一見、奇妙な取り合わせが見事にハマるのがB級グルメの面白さだ。トマトソースという「洋風の香り」に目を付けたのは、先日(8月30日付・【太麺礼讃⑥】イタリア軒@新潟競馬場)も書いたように、新潟が西洋の食文化を真っ先に取り入れた西洋料理先進地であることと無関係ではあるまい。その先進性を受け入れつつ、今日に至るまで「ふるさとの味」として愛してやまない県民性にも感服する。しかも、それが気取らずに食べられる身近な存在であり続けたのだから凄い。だからこそ人々の舌に深く馴染んでいるのであろう。新潟に真のB級グルメを見た。

 

***** 2015/09/02 *****

 

 

 

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2015年9月 1日 (火)

穴子の悲劇

先週日曜も何だかんだで場外の東京競馬場で日中を過ごした。冷たい雨の降る暗い空の下、ターフビジョンを眺めてはため息の連続。好きでやっていることとはいえ、これ以上悲しい日曜の過ごし方を探せと言われても、「仕事」以外にはなかなか思いつかない。

Stand

夏競馬最後の週だというのに、こう肌寒くては冷たいうどんなど食べていられぬ。それで、久しぶりに温かいうどんを食べることにした。トッピングも熱々の天ぷらがよろしい。それで、穴子天を頼んだら、「これから揚げますんで」という声が返ってきた。これは嬉しい。油から揚げたばかりの天ぷらに「シューッ」とツユをかけた天ぷらうどんほど美味いものはない。

そんで渡されたのがこの一杯。

Udon

パッと見ておかしいと思いませんか? 普通天ぷらというのはたいてい黄色っぽい。競馬場の使い古した油なら、茶色とか、こげ茶色とか、下手したら限りなく黒に近くなってもおかしくない。なのに、この白さ。箸でちょっと押したらサクッと割れる―――なんてことは全くなくて、ふにゃりと曲がる。

恐る恐る一口食べてみた。すると案の定火が通ってない。私は鰻屋の家系に育っているので、鰻や穴子の生が禁忌であることくらい知っている。穴子の血にはイクシオトキシンという毒が含まれているのである。とはいえ、それはあくまで活穴子の場合。これはおそらく韓国産の業務用であろうから、それくらいの処理はしてあるはず。だが、私のつたない文章で、生の衣の味を表現することはとてもできない。このブログは「悪口を書かない」を旨としているから、店の名前は敢えて伏せる。きっと何かの間違いだったのだろう。

結果、穴子が“当たる”ことはなかったが、馬券の方もまったく当たることはなかった。3場合計36レースに手を出してまさかの全敗。しかも新潟最終レースの直後に水沢の10Rにまで手を出してしまい、1日37敗という歴史的敗北を喫してしまったのである。

馬券の負けを半ナマの穴子天のせいにするつもりはないが、穴子というのは我々穴党にとっては神聖な食材でもある。穴の神様にそっぽを向かれてはたまったものではない。これは食べ直しをしておいた方が良いのではないか。それで翌月曜日、わざわざ東府中の『平次のおうどん』へ出向いた。府中の穴子の仇は、府中の穴子で果たさねばならない。たしかこの店は揚げたてを食べさせてくれるはずである。

心配事がひとつ。いま時計は午後3時を過ぎている。それで念のためにお店のホームページを確認したら、営業時間に関する記載がない。そんなワケあるか? だが、どう探しても見当たらないのである。それで仕方なく「ぐるなび」や「食べログ」のサイトで確認してみる。するとどちらも「月~日 11:00~21:00 (年中無休)」となっていた。ひとまず安心し、ようやくお店に辿り着くと……。

Heiji

むむっ!?

Kanban

ふざけんな!!angry

しかし店の前で怒りをたぎらせたところで、看板が「営業中」に変わるわけでもない。それで、シクシク泣きながら府中まで歩き、牛丼を食べて腹を満たした。穴の神にのみならず、あらゆる神に見放された気持ちがしないでもない。こういう時は何を選んでも裏目に出るのであろう。しばらく馬券と食べ歩きは控えた方がよさそうだ。

 

***** 2015/09/01 *****

 

 

 

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