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2015年8月 5日 (水)

ジャガバターとTPP

1か月ぶりの新千歳空港に降り立ち、取り急ぎ向かった先のノーザンホースパークで真っ先に手に取ったのはこちら。

Jaga 

ジャガバターです。ほくほくで甘いジャガイモに、濃厚なバターの風味が食欲をそそる。

「まず馬を見るのが先だろ!」という指摘もあろう。しかし考えてみて欲しい。環太平洋経済連携協定(TPP)交渉の閣僚会合は、日本時間8月1日に大筋合意に至らないまま閉幕したばかり。その合意を阻んだ一因はニュージーランドが日本国内のバター不足などを指摘して、ニュージーランド産乳製品の大幅な輸入拡大を強く求めたことにあり、さらにジャガイモについても日本が輸入関税を死守したい「重要5品目」に含まれている。すなわちTPP交渉に振り回される北海道を象徴する一品が、このジャガバターにほかならない。

―――なんて、ただ食べたかっただけです(笑)

ノーザンホースパークではデルタブルースやタップダンスシチーなど、現役を退いて今では乗用馬となった重賞ウイナーたちを厩舎で見学することができるが、そこにウインドインハーヘアが含まれていることをご存じだろうか。いわずもがなディープインパクトのお母さん。アイルランド生まれの彼女は1994年のエプソムオークスで2着すると、翌年のアラルポカル(独GⅠ)ではアラジの種を受胎しているにも関わらず優勝するという離れ業を演じる。1999年にデインヒルを受胎した状態で日本に輸入され、2002年に不世出の名馬ディープインパクトを産んだ。そして今はこうしてノーザンホースパークでのんびりと過ごしている。彼女を見ていると、人生(馬生)の数奇を思わずにいられない。

Wind 

しかし、今日に限ればTPPで頭がいっぱいの私である。現在日本では輸入競走馬に一律340万円の関税をかけているが、これは受胎繁殖牝馬に対しても同様で、逆に空胎牝馬や乗用馬には関税はかからない。当然、ウインドインハーヘアが日本にやってくるのに際しても税金が発生したわけだ。

本来、輸入馬に関税をかけるのは日本の生産者を保護するためだが、一方で中小の牧場にとっては繁殖牝馬導入の阻害要因になっているという見方もできる。仮に輸入検疫後に流産した場合でも関税は支払わなければならない。そんなリスクと税金負担を背負ってまで海外から受胎繁殖牝馬を輸入できるのは、おのずと大手牧場に限られ、結果それが生産界の格差拡大に繋がっているとの指摘もある。

Wind2 

今回のTPP交渉で競馬の話題は出ていないが、今後どうなるかはわからない。特に米豪新の3か国は、GATT・ウルグアイラウンドの当時から、競走馬にかかる関税撤廃のみならず、外国産馬や外国調教馬へのレース開放拡大、さらに外国居住馬主問題や外国人騎手のライセンス発行などで、かなりの圧力をかけてきたという過去がある。ほとんどのオープンレースが外国調教馬に開放され、シェイク・モハメドの所有馬を普通に応援し、デムーロやルメールが毎週のように活躍する昨今の競馬の姿は、実はそうした外圧によってもたらされたものだ。

今はジャガバターに固執しているニュージーランドやアメリカも、「それが済んだら次は競馬」と思っている可能性は十分にある。調教師も、厩務員も、獣医も、装蹄師も、海外の同業者との競争を強いられる時代がやって来たとしても不思議ではない。たいへんだ。逆に、輸入飼料や牧草、薬品類が安くなれば、預託料が下がって喜ぶ馬主も出てくるだろう。TPPの問題のひとつは先が見通せないこと。このジャガバターだって、数年後にはどうなるか分からない。だから今のうちにしっかり食べておかねばならないのである。

 

***** 2015/08/05 *****

 

 

 

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