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2015年7月18日 (土)

コスパ

先月からG1レーシングの代表に就任した吉田正志氏が、壇上でマイクを取った。ご存じ吉田晴哉氏のご長男。聴衆は500人を超える社台グループ会員の面々である。いつもなら登壇に合わせて、「まぁさしっ!」と声を張るのが私の役目だが、新社長の挨拶となれば結婚披露宴のノリは慎まねばなるまい。固唾を呑んで、その言葉を待った。

曰く。

「経営者という立場になって気を引き締めている」

「コストパフォーマンスを重視して」

「顧客満足度を高めてゆくつもりだ」

彼の口から「コストパフォーマンス」とか「顧客満足度」などという単語が出るとは思わなかったので、会場はソコソコ盛り上がった。「ガラじゃねぇだろ」という笑い声も聞こえる。だが私は、拍手をしながら「つまらないこと言ったもんだ」とガッカリしていた。

G1 

そもそも私はコストパフォーマンス(費用対効果)という言葉が好きではない。最近では「コスパ」とか「CP」と略されて、ネット上のみならずTVや紙媒体にも溢れかえっている。どのくらいの価格が妥当なのか。レストランも、家電ショップも、最近では交通手段までもがコスパで評価されているのだから驚く。

コスパを意識するのは、ゆとり世代の消費の特徴なのだそうだ。幼い時からネットに親しんだ「デジタルネイティブ世代」は、ネットで豊富な情報を仕入れ、「これならいくら払ってもいい」という自分なりの相場観を自然と培っているのだという。

それはそれで良いことかもしれない。だが、ネットで調べる手間のコストや比較に頭を使うコストはどうなるのか。食べたものに金属片や人の歯が入っているリスクはコスト換算しなくてよいのか。私のような古い人間は、そちらの方が負担に思えたりもする。だから私はいわゆる「比較サイト」を利用したことがない。

そもそも、である。理由もなく欲しいと思うものや、唯一無二のものを手に入れようとするにあたり、コスパを考える人がいるだろうか。その典型が競走馬であろう。6000万円で募集されたオルフェーヴルは13億円を稼ぎ出したが、だからといって1億2千万円の馬が26億円を稼ぐかと言ったら、そんなことがあるはずがない。それでも馬を買うのは、単純に「その馬が欲しい」と思う気持ちの強さであり、その馬が地球上で「唯一無二」の存在であればこそではないか。

G2 

正志氏の祖父・吉田善哉氏は競走馬生産を「虚業」と言い切った。それを思えば、コストパフォーマンスや顧客満足度といった「実業」の用語ではなく、「ひとつでも多つ勝つ」「社台やノーザンより強い馬を出す」といった言葉が聞きたかったのが正直なところ。「安かろう。でもソコソコ良かろう」というユニクロ的発想は、競馬の現場には似つかわしくない。もちろん、お客様の満足を願う正志氏の考えはよく分かる。だが競馬は勝ってナンボの世界。追分に期待しているからこそ、言わずにいられないのである。

 

***** 2015/07/18 *****

 

 

 

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