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2015年7月 8日 (水)

【訃報】ユートピア

雨に煙る大井競馬場のジャパンダートダービー。

人気を分けた2頭が直線で馬体を併せ、最後には2番人気の馬が1番人気の馬を差し切ったそのレースを見て、12年前のこのレースを思い起こされた方もいたのではないか。ビッグウルフが接戦の末にユートピアを競り負かしたあのレース。ただ、あの時はもっと接戦だった。その差はわずかにハナ。写真を見る限り私はユートピアが勝ったと見ていたに違いない。それくらいの際どい勝負だった。

Utopia1 

そんな因縁のレースの朝にユートピアの訃報が飛び込んできた。このブログでも、米国からトルコに渡ったとお伝えしたばかり。ともあれ15歳は若い。種牡馬として、もっとも期待がかかる年齢ではないか。

Utopia2 

宝塚記念を勝つなど目下絶好調の金子真人オーナーの、唯一の海外レース制覇を実現した一頭がユートピアである。トゥザヴィクトリーやディープインパクトを以てしても掴めなかった勝利は、2006年のゴドルフィンマイルでもたらされた。同時にそれは日本の競走馬として初となる海外ダート重賞勝ちでもあり、日本競馬界にとっても歴史に残る快挙。いや、それだけでは終わらない。その後に待ち受けていたゴドルフィン移籍も含めれば、まさに壮挙と言っても過言ではあるまい。

ゴドルフィンマイルは賞金60万ドルのGⅡに過ぎないが、持ったまま後続を4馬身も置き去りにするというその圧倒的パフォーマンスがモハメド殿下の心を打ったのであろう。殿下が提示したトレードマネーは400万ドル。ドバイワールドカップの1着賞金360万ドルを上回る金額と聞けば、驚かずにはいられない。なにせ日本の現役馬が海外のトップ馬主に請われて海を渡るということ自体が史上初の出来事。その瞬間は喝采を叫んだ覚えがあるが、これがディープインパクトやウオッカだったら、果たして喜ぶことができただろうか。あれから12年の月日を経て、複雑な思いに駆られることもある。

Utopia3 

ただし、ユートピアはダートGⅠを4勝していたとはいえ、種牡馬としてはさほど期待されていなかったフシがある。我が国のダート競馬の位置付けからすればそれも仕方ない。だから、馬の将来を考えれば、オファーを受けた関係者の選択は正しかった。移籍初戦となる米国ウエストチェスター・ハンディキャップ(GⅢ)で、いきなり優勝。その秘めたる能力をあらためて示したユートピアは、米国サラトガで種牡馬入りを果たし、自身の遺伝子を受け継ぐ多くの産駒を全米に送り出したのである。

Utopia4 

川崎の小さな競馬場で初めて重賞を勝った1頭の2歳馬は、勝ったり負けたりを繰り返しながら、それでも堅実に競走生活を送り、いつしか「世界のユートピア」になっていた。豊臣秀吉も唸るような波乱の出世物語。その生涯は幸福であったと思いたい。

 

***** 2015/07/08 *****

 

 

 

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