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2015年6月30日 (火)

好事魔多し

一昨日の東京競馬場でのこと。

Vision

宝塚記念を映し出すターフビジョンを見つめていた大観衆から「ああーっ!」という悲鳴にも似た歓声が上がった。理由はあらためて説明するまでもない。単勝1.9倍。圧倒的人気のゴールドシップが出遅れたのである。いや「出遅れ」と言うよりは、「出なかった」と言った方が近いかもしれない。

当面のライバルであるキズナ、エピファネイア、スピルバーグは不在。調整過程も順調至極。(6,1,0,0)と滅法得意の阪神コース。そこで引き当てた8枠桃帽は、連覇した過去2回の宝塚記念と同じだった。人気投票1位の“黄金の船”に、これ以上ない追い風が吹いていたことは間違いない。

「好事魔多し」。この格言は世間一般で使われるが、もっともその語感が生きているのは競馬の世界ではあるまいか。無敗の10連勝でダービー馬になったトキノミノルが、その数日後に破傷風で急死したのは有名な話。「天才」の名をほしいままにした福永洋一騎手は、10年連続リーディングジョッキーを目指したその年に落馬で再起不能となった。テンポイントやサイレンススズカの悲劇は言うに及ばず。名伯楽と謳われた尾形藤吉氏は、ラッキールーラーでダービー8勝目を挙げたその夜、自宅が火災に遭っている。ドゥラメンテの骨折も、これら一連のエピソードの末尾に加わることになろう。

江戸の人々はふんどしに小銭を包み、道端にわざと落として厄落としをしたとされる。小さな厄災を自ら用意し、不運が出尽くしたことを安堵した。それを聞いた現代人は、ただのゲン担ぎと笑うかもしれないが、順風満帆の怖さを感じたことはないだろうか。あまりに順調過ぎたゴールドシップの臨戦過程にこそ、「好事魔多し」の物差しが必要だった。

ちなみに筆者は2レース続けて馬券が当たっただけで、帰途の無事を案ずる癖がついている。好事魔多し。「花に嵐」の喩えもある。良いことは続かないもの。むろん人生の教えだが、競馬はそれを身をもって教えてくれる。自戒の種としよう。

 

***** 2015/06/30 *****

 

 

 

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