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2015年3月14日 (土)

選択肢

不肖の娘が携帯電話の機種を交換することになり、しぶしぶと量販店に同伴した。

ガラケーからiPhoneへの交換である。たかがそれだけで貴重な土曜日の2時間が空費されてしまった。ある程度覚悟していたこととはいえ、これに勝る虚しさを探せといわれてもなかなか見つかるものではない。

それにしても、なぜに日本の携帯電話料金はかくも分かりにくいのであろうか。世界中の通信事業に詳しい人物に言わせれば「地球上で最も複雑」だという。ここまで細分化することになんの意味があるのかと思わせるほどの膨大な種類のプランに加え、次から次へと繰り出されるオプションの数々。選択肢が多いことは豊かさの象徴―――。どこかでそんな言葉を聞いたことがあるが、その意味をはき違えた末に、誰もが袋小路に迷い込んでいるように思えてならい。

「選択肢が多いことは豊かさの象徴」という言葉は、「馬券の種類を増やせ」と主張する競馬評論家も、かつては頻繁に使っていたように思う。つい最近まで日本の馬券は、単・複・枠連の3種類しかなかった。日本が世界一の馬券売上額を誇ることになった要因のひとつが、我が国が世界に誇る「枠連」にあったことは疑いようもない。だが、1991年の馬番連勝複式導入を皮切りに、現在ではひとつのレースで買える馬券は8種類に増えた。レース確定後に発表される的中馬券は、なんと12通りもある。

それだけあればもっと当たってもよさそうな気がするのに、自分の買った馬券は相変わらず当たらない。なぜか。的中馬券の種類は増えても、勝つ馬は1頭だけで変わりがないからである。

Kakutei 

自分の本命馬が見事先頭でゴールインしても、その勝負に見合うだけの配当金を得られなければ話にならない。実は多くのファンが発売締切り直前になって悩んでいるのは、本命をどの馬にするかなどではなく、どの馬券をどのように買うか。その一点であったりする。

単勝勝負か? 馬連流しか? 馬単ボックスか? 3連単1頭軸マルチか? あらゆるオッズや手元の軍資金とも相談しつつ、金額配分も決めなければならない。なにせ3連単なら買い目は数十点。百点を超えることも珍しくはない。そうこうしている間にも、発売締切は刻々と迫りつつある。

昔はそんなことで頭を悩ます必要はなかった。枠連の組み合わせ数は最大でも36通り。本命が穴馬ならば、単勝と複勝も加えておけばよい。馬単で万馬券を的中しておきながら、「3連単で買っておけば10万馬券だったのに……」などと、万馬券的中の喜びより10万馬券を逃した悔しさが勝るような、そんなおかしな感情が沸き起こることも、あの当時はなかった。

現代の馬券テクニックは、どの馬を買うかではなく、どの種類の馬券を買うかの巧拙が問われると言っても過言ではない。これが選択肢を増やした末に我々が掴んだ豊かさの姿。携帯電話の料金プランであれ馬券の種類であれ、「豊かさ」という名の不便に翻弄される我々を四半世紀前の人たちが見たら、きっと笑うのではないだろうか。

 

***** 2015/03/14 *****

 

 

 

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